正義の理解者   作:火取閃光

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第3話

「う……うぅ……ここ、は……??」

 

 意識が覚醒する。知らない天井だ。病院の天井では無くホテルかどこかの民家の様な天井だった。

 

「おはよう、シロウ君。大丈夫だったかい……?」

 

「貴方は、確か……。切嗣さん……でしたっけ??」

 

 身体中の神経に電撃がビリリッと走った後に頭と目にザザッと砂嵐が起きた古いテレビの様な痛みが走る。

 

「あぁ、その通りだよ。僕の名前は衛宮切嗣。魔術使いだ」

 

「魔術、と言う事は……アレは夢では無かったのですね」

 

 それは落胆とも絶望とも呼ばないなんとももどかしい気持ちだった。あれは悪い夢だと言ってくれれば良かったのに実感のない空虚感が身体を蝕んだ。

 

「うん、ごめん……。謝って済む問題じゃない事は分かっているけど現状の説明をする為に改めて自己紹介をお願い出来るかな?」

 

「っ!? 失礼、しました……! 僕の名前は嗣郎(シロウ)安綱(ヤスツナ)嗣郎、7歳です。遅れましたが、あの時は僕を助けてくれてありがとうございました」

 

「っ!? 君がお礼なんて言う必要はないよ……。あの大火災は僕にも原因があったんだ。だから、僕には君のお礼を受け取る資格は無いんだ……」

 

「分かっています。他の世界の僕の記憶を見ました。確かに、父さんや母さん、姉ちゃん達や友達が死んだ事は悲しいし、まだ受け止めきれない部分もあります。

 

 でも、全部が全部貴方の所為って訳じゃない事は知っています。だから、今は自分を責めないで下さい。お願いします」

 

 夢の中で目の前の人がどれだけ苦しんだのか? どれだけ僕たちの生存を願ったのか? どれだけ僕の生存を喜んだのか理解出来たから咄嗟に彼の手を握りしめた。

 

「っ!? 参ったな……。これじゃ、どっちが大人なんだか……。分かった。そして、ありがとう、嗣郎君」

 

「僕の事は嗣郎、と呼び捨てにして下さい……その、お義父さん??」

 

「無理しなくて良いよ。でも、分かった。これからは君を僕の養子として育てる。よろしくね、嗣郎」

 

「はい……。よろしくお願いします、切嗣さん……」

 

「うん。それじゃ、早速だけど現状について説明しておくね」

 

 そして、切嗣は僕の現状についてなるべく専門用語を用いず分かりやすく説明した。どうやら僕は魔術師の悲願でもある根源へ限定的にだけど接続した到達者らしい。

 

 元々、物体の構造が詳しく見え過ぎていた僕の両目は聖杯の泥へ触れた事で接続した並行世界の自分達の情報を解析した事で根源へ接続した新たな魔眼へと変貌したそうだ。

 

 切嗣の説明を纏めると僕は魔術協会の総本山である時計塔からその身を狙われかねないらしく身の安全と力の制御、自衛手段の為にこれから彼を師匠として魔術を学びながら生活するそうだ。

 

「恐らくだけど……他の世界の嗣郎と同様に君は固有結界に適した魔術回路を有していると思う。

 

 でも、僕が調べる限りだけど君は魔眼の保有本数やこの前の暴走で一部の神経が魔術回路へ変質した事で他の士郎達よりも本数が多くなっている。

 

 こんな事例は本来ならあり得ない事だけど、恐らくは英霊エミヤと言う座を起点にした事で擬似的に発動したアヴァロンの加護も関係しているのだと思う……」

 

「なるほど……。それで、具体的にはどのくらいあるんでしょうか……??」

 

「嗣郎の本来……衛宮士郎と呼ばれた存在の魔術回路は27本だった事は君も知っているね?」

 

「はい……」

 

 衛宮士郎。僕の名前も衛宮嗣郎。1つ違いの同じ名前。僕は多分梯子が外れた彼の同一存在なんだと理解している。

 

 ただ、あの地獄を生き残る時に、アヴァロンを宿す前の泥で未来の自身を見せつけられた存在。

 

 本来ならその記憶と言う情報量で廃人となり生きてはいない筈のエラー個体が僕である。

 

 切嗣さんもそれを理解した上で僕の可能性がどれだけ悲惨な運命かを知った上で抗える強さを与えられる様に協力してもらっている。

 

「そして、両目に開眼した解析の魔眼だったナニカはざっと16本。そして、新たに神経の一部が変質して増えたのは君達と同数の27本だった」

 

「つまり合計本数は70本、ですか……」

 

 多い、と思い同時に扱えるのだろうかと疑問視した。本来の27本ですら衛宮士郎が扱えていたとは言えないからその倍以上ある事に不安を覚えた。

 

「あぁ……。これは一般的な魔術師と比べてもかなり多い。だけど、それ故に制御もまた難しくなるだろう。

 

 それに、神経が変質した方の魔術回路は強度もそうだけど生来からある魔術回路43本と比べてより暴走しやすい未熟な回路だ。

 

 魔力制御が難しい嗣郎がこっちの魔術回路を使おうとすればあの時の病室の様に身体中から剣が突き出やすくなるだろう……」

 

「分かりました。しばらくの間はこっちは封印する感じですね」

 

 全部を扱う必要がないと思いほっと胸を撫で下ろした。分不相応な力にはいずれその反動が来る。褐色さんの気持ちが思い出た。

 

「理解が早くて助かるよ。それもエミヤ達の記憶が影響した結果なのかい?」

 

「恐らくそうだと思います。僕自身でもちょっと不思議な感じがするのですが……なんというか前までの僕ならここまで大人の話について来れなかったと思います。

 

 でも、病室の事件から目覚めると目は前よりも見えやすくなっているし、切嗣さんの話もすんなりと理解することが出来ました」

 

「そう言えば、アレから魔眼はどうなったんだい? 今も根源の渦に接続は可能なのかい??」

 

「やってみます……。魔眼発動(トレース・オン)……!!」

 

 目に力を集中する。目が起動したと言えば良いのだろうか? 目を開くとさっきまでとは全く違う様に世界が見える。

 

「……あの時はこんなにじっくりと見る事はなかったけど瞳の色が淡くエメラルドグリーンに変化するんだね。魔眼は元からその色なのかい??」

 

「……いえ、覚えている限りだともっと青かった様な気がします」

 

「そうなのかい? まぁ、魔眼の中には超能力や異能に分類される能力も含まれている謎が多い代物であるから、これからじっくりと時間を掛けて調べていくとしようか。それよりもどうたい?」

 

「……一応、接続した感じでしょうか? ただ……」

 

「ただ? どうかしたのかい??」

 

「そうですね……。エミヤ達の記憶にある根源接続者達の様な全知全能感は無いですね……」

 

 世界の見え方が違うのは確かだけど、じゃそれで全ての理が理解出来るのかと言えばそれは違った。

 

「うん? それはどう言う事だい? 君は根源の渦に接続したのだろう? 根源は全ての始まりと言われている場所だ。

 

 そこへ繋がったとすればあらゆる知識や力を得られると言っても過言では無いとされる。違うのかい??」

 

 切嗣は自身の知識と彼が言うすれ違いの違和感を正そうとした。

 

 切嗣も根源については知識としてしかこんな感じって言うアバウトなモノしか知らない。

 

 嗣郎も似たようなモノで切嗣の知っている知識に自分の感覚を照らし合わせるとなんか違うと言うか違和感があった。

 

「本来なら多分そうなんだと思います。この例えで僕の感覚が伝わるのか少し微妙なんですけど……今も僕って何処か別の島から根源と言う離島を視認している感じなんです。

 

 そして、僕の魔眼……根源からの情報だと"究明の魔眼"が僕のいる島と根源の離島を繋ぐ海の様なイメージで、その海の中を泳ぐ感じで擬似的に? 根源へ接続している感じ、だと思っています??」

 

「うーん……他の根源接続者達とはどう違うんだい?」

 

「これも多分なんですが……そもそも僕以外の根源接続者はワープにしろ、飛行にしろ、そこへ住んでいるにしろその離島の中にある全知全能のパソコンへ直接アクセスしている感じです。

 

 だから、僕なんかよりもよりアクセスしやすくそれでいて多くの事を得ているんだと思っています。現状の僕は魔眼と色々な偶然で制限付きの根源へアクセスしている感じです。

 

 なので本来なら実感ある筈の全知全能的な能力もあくまでも現状の僕が出来る事も延長線に近い状態かそれの応用までが限度と言う感じですね……。伝わるか微妙な感じですが……」

 

 根源の使い方の汎用性とも呼ぶべきか? 嗣郎の根源の使い方は特化していてとても使い難い。

 

 その反面完全に根源に接続した人達は世界を思うように出来るほど汎用性に優れており使いやすい感じと言えばイメージが着くのだろう。

 

「なるほど……。つまり、君の能力や知識が増えれば増えるほど根源はのアクセス制限が外れていって本来の能力を得る感じで良いかい?」

 

「多分、そんな感じです。僕も全部を理解している訳ではないのでこれから要検証が必要になるかと……」

 

「ありがとう。確かに君の言う通り要検証が必要だね。魔眼を止めて構わないよ」

 

「分かりました……。魔眼終了(トレース・オフ)……。うっ!?」

 

 目の起動を辞めるとそれまであった世界から今までの世界へ戻り、同時にそれまで得ていた情報が頭の中を駆け巡る。

 

「だ、大丈夫かい!?」

 

「え、えぇ……。どうやら根源の情報を少し引き出した事の情報処理がそのまま脳に来た様です……。ちょっと気持ち悪い……」

 

「……今はあまり多用しない方が良さそうだね」

 

「そうします……。改めて、これからよろしくお願いします」

 

「僕の方こそよろしくね、嗣郎」

 

 意識を失う嗣郎の頭を撫でようとしてふとイリヤスフィールを思い出したのかギュッと拳を握る切嗣だった。




ポケモンとかダンまちとか書いていると時折書きたくなる衝動!
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