義父となった衛宮切嗣の養子となってもう直ぐで2年が経とうとしていた。
アレから俺達は切嗣が冬木の拠点としていた武家屋敷へ引越し彼から魔術や自衛の手段について学ぶ日々を送っていた。
あの後、解析の魔眼が変質した事で新たに備わった究明の魔眼を用いた様々な検証を行った。そもそも、究明の魔眼とは一体なんなのかについて説明しておく。
究明の魔眼はその名前の通り"真理や道理などの様々な理を突き詰めて明らかにする魔眼"だ。
僕は聖杯の泥に触れて並行世界に存在するエミヤ達の記憶と経験を継承した。
そして、その事を経て魔法級の大禁呪とも称される固有結界の世界を心象で塗り潰す理を明らかにする事で根源へ接続した。
僕自身が暴走した時に使った切嗣の起源を改造して流用する事で切り抜けられたのは僕達の固有結界に含まれる同調や解析、改造などが応用出来る範囲に含まれていたからだ。
そして、あの時にどうやら僕は純粋な人間ではなくなったらしい。今の僕は人間と一部精霊が混じった人間モドキだ。
人間と精霊の比率は8:2くらいの割合だけどこの2割の部分が変質して増えた27本の魔術回路だ。
何故こうなったのかと言うと理由は至極簡単で僕の起源である鞘と聖遺物のアヴァロン、英霊エミヤとの接続などの暴走が奇跡的に合致したからに他ならない。
具体的に言えば並行世界に存在する腕士郎や美遊のお兄ちゃんが近い状態だと言える。
彼等はその存在を精霊の域にいるエミヤと融合した僕と似た様な人間モドキだ。
ただし、美遊のお兄ちゃんの様に英霊エミヤとして置き換わったデミサーヴァントの様な存在でも、腕士郎の様に英霊エミヤの腕に侵食されている存在ではない。
衛宮又はエミヤ達の記憶と経験、人格などが混合していた時に彼等の情報を素早く処理しきる為に脳や心臓がそれに耐えられる様にエミヤに引っ張られる形で精霊化してアヴァロンが誤認識して肉体を作り替えた。
本来ならそれを行うには騎士王アーサー・ペンドラゴンとの繋がりや魔力が必要だ。
しかし、聖杯の泥との接触で生命危機に陥った僕は彼等の記憶からアヴァロンの不完全投影を行いその呪いに耐えながらアルトリアと一時繋がりその魔力の一部を貯蔵していた。
そして、切嗣から聖遺物のアヴァロンを譲渡された後、病室で起こった暴走の際に貯蔵されていた魔力を使い治癒へ至ると言う感じだった。最も無我夢中だったのでほとんど覚えておらず推測も混じってはいる。
「嗣郎、そろそろ夕食の時間だよ」
「っ!? もうそんな時間か……」
武家屋敷にある聖杯戦争でとある衛宮士郎がセイバーを召喚したあの蔵で僕は投影魔術の訓練を行っていた。
「今日の夕食はハンバーガーさ。嗣郎の作るご飯も美味しいけど偶にはこう言うのも食べたくなるから買ってきたよ」
「おぉ……! ハンバーガー!! 直ぐに行く! ありがとう、義父さん!」
「期間限定の商品もあるからそれは半分こしようね」
「うん!」
僕は魔術の修行に使っている英霊召喚の魔法陣がある蔵から出て洗面台へ向かう。
ハンバーガーは僕の大好物の一つだけど切嗣からは身体は資本と言う事で栄養価が高い食事の為にそんなに食べる機会は無い。
英霊エミヤ達から受け継いだ経験は何も魔術や戦闘技能だけではない。普段から食べる料理のレシピや技術も僕は引き継いでいた。
ただ、彼等にも同じ事が言える話だけど僕達は別に料理が好きな訳ではない。
英霊エミヤや他の衛宮士郎達の様に誰かの役に立たなければと言う強迫観念から手頃に役立てる手段が料理と言うだけだ。
ただ僕達は中途半端にやるのが嫌いだから得意になったと言うだけで料理自体は嫌いじゃないが特別好きでもない。
僕自身はその精神性の違いから役に立たなければと言う強迫観念はかなり薄い。なんて言うか一周回って冷静になった感じに近い。
だから、切嗣と同じ様に手頃で素早く美味しい食べ物が食べられるファストフードが好きだ。
だけど、同時に記憶にある衛宮士郎達が切嗣に家庭の味を食べて欲しいと言う思いも理解出来るから普段から作っている感じだった。
「ふぅ〜。ご馳走様でした」
「久しぶりのハンバーガーはどうだったかい?」
「偶に食べるとやっぱり美味しいね」
「アハハ、そうだね。ねぇ、嗣郎」
「ん? 義父さん、どうしたの?」
「少しの間、出掛けたい所があってね……。数日、留守を任せても良いかい?」
「……それって、イリヤスフィールがいるアインツベルン城?」
彼等の記憶から切嗣には血の繋がった家族が居て連れ帰る事が出来なかった事を後悔していた様な記憶があった。
恐らく言いにくかったのは切嗣が僕の家族を奪ったにも関わらず自分だけ本当の家族を助ける事に負い目があったからだろうと察した。
「っ!? そう言えば並行世界の嗣郎とイリヤは義姉弟みたいな関係だったね……。うん、そうだよ」
「……義父さん、俺を対価にアインツベルンと交渉は出来ない?」
アインツベルンの魔術師は第三魔法の習得を目的にしている。それなら限定的にでも根源接続が出来る自分ならトレード出来ると提案した。
「……っ。それは……出来ないよ」
「それは、僕じゃ交渉材料にならないって事? それとも、僕を対価にする事は出来ないって事?」
「……後者の方だよ。制限があるとは言え根源に接続出来る嗣郎を交渉材料にすれば間違いなくアハト翁はイリヤを返してくれると思う。だけど、それを僕はしたくない。
その為に嗣郎を養子にしたんじゃないからね……。嗣郎にどんな経緯があろうともイリヤと同じくらい大切な僕の家族だ。だから、連れて行く事は出来ないんだ。ごめんね……」
切嗣には曲げられない信念があった。過去にはそれを曲げて後悔した事もあったから余計にしたくないと思った。
「……分かった。でも、その呪いに汚染された体と魂で本当に助けられると思っているの?」
嗣郎には見えていた。魔眼がなくても切嗣の魂と肉体は聖杯の泥によって呪われている。
並行世界の衛宮切嗣達がどう言う状態だったのかまでは分からないが、少なくとも今の切嗣がアインツベルンの魔術工房を抜けられるとは思えなかった。
「……っ!? それは……なんとか、してみるさ」
「それなら、僕にも手伝わせてよ」
「だから、嗣郎は連れて行けないって……」
「うん、僕は義父さんが安心出来る様に藤ねぇと一緒に冬木に残るよ」
「だったら、どう言う……??」
切嗣は珍しく我儘を言う嗣郎に苛立ちを隠せなかったが話していくにつれて段々と落ち着きを取り戻した。
「こう言う事だよ……!
「っ!? 嗣郎、まさかっ……!?」
「
嗣郎の頭の中にある並行世界の自分が体験した設計図を元に起源を使った完全なる投影魔術。
「それ、はっ……!?」
「これはコルキスの王女や魔女としてその身を歴史に刻んだメディアが持つ宝具・
その特性は対魔術特化であらゆる魔術を初期化する能力を持つ魔術武器だよ」
「なっ!?」
正に魔術師殺しの異名を更に深めた衛宮切嗣が欲していた武器だった。
「つまり、これを使えば例えアインツベルンの城と言う超巨大な魔術工房のトラップでも無力化する事が出来ると思う。
これと他に幾つかの回復系の宝具と攻撃系の改造宝具で他人が使えるやつを渡しておくよ」
「嗣郎っ……! ありがとうっ……!!」
「僕達は家族なんでしょ? なら、助け合わなくちゃね!」
「うんっ……うんっ……!!」
「本当は義父さんの呪いを解呪出来れば良かったんだけど……今の僕じゃここまでが限界なんだ。
だから、イリヤを連れて帰って来てね。死んで帰って来たら許さないからね」
「あぁっ……! 絶対に生きて必ず帰って来るよ」
こうして衛宮切嗣は笑顔でアインツベルン城へと足を運んだ。彼が持つ魔術武器はチートを超えた存在だ。
それを悪魔の様な男が持ったのだ正に鬼に金棒とは彼の事を言うのだと後にアインツベルンは語った。
チートだぜ! ヒャッハァー!!