正義の理解者   作:火取閃光

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第7話

 静寂の中に沈黙と啜り泣く音が流れた。

 

 イリヤスフィールはその音の方を見て驚いた。涙を流していたのは嗣郎に加えて少し離れた場所に居た切嗣だった。

 

 彼には嗣郎の思いが、苦悩が、悲しさがとても理解出来た。

 

 そして、救いたい人を救う為に自分を曲げる事がどれだけ胸が裂ける思いをしているのか自分の事の様に苦しかった。

 

 そして、ふと思った。

 

 嗣郎にとっての自身の様に切嗣にとっての母であり父の様な存在のナタリアを助けられるなら、果たして自分は嗣郎の様に自分を曲げられただろうか? と思い考えるのをやめた。

 

 あの時の選択は間違っていないと断言出来る。

 

 しかし、同時にあの選択を後悔しなかった事は一度も無い。

 

 嗣郎の様に誰かを頼る事をしていれば結果が変わっていたかもしれないと思いその尊さに涙した。

 

「嗣郎よ、頭を上げなさい……」

 

「はぃ……」

 

 涙と泥に塗れたグチャグチャな顔で顔を上げた嗣郎へゼルレッチはハンカチを渡した。

 

「嗣郎よ、本当にすまなかったな……。儂は魔法使いとなり地球と言う学校を卒業した者としてその地球が崩壊しない限りはその揉め事に干渉せず一歩引いた所で見守って来た。

 

 しかし、その傲慢さがそなたの様な被害者を見て見ぬふりに繋がった様だ。

 

 第三次聖杯戦争の際にアインツベルンがこの世全ての悪(アンリ・マユ)を召喚した時に一度彼等を戒めるべきだった。

 

 儂が聖杯戦争の儀式に立ち会ったのはこの世全ての悪を根絶したいと願う彼等の理想に賛同したからだった。

 

 しかし、長い年月を経て彼等はその理想を忘れて儀式は形骸化した。

 

 本来の目的を果たさなくなった時点で儂が介入してでも止めるべきだった。そうすればそなた等の様な無関係な犠牲者を出さずに済んだかもしれん」

 

「ゼルレッチさん……」

 

「フッ、ようやく硬さが取れたな」

 

「あっ……」

 

 もう嗣郎の中で目の前の人物が偉大な魔道元帥では無く優しく気品に満ちたお爺ちゃんにしか思えなかった。

 

「そのままで良い。そなたの願い、このゼルレッチが確かに承った。なぁに、安心しなさい。そなたの思いもしっかり伝えた上で奴等に引導を渡す。そなたはゆっくり休んで果報を待ちなさい」

 

「はいっ……! どうか、桜をっ……! よろしくお願いします!!」

 

 そして、僕達と魔道元帥ゼルレッチ卿はその場を別れた。僕は緊張やストレス、魔眼の副作用で体調を崩してそのまま眠りに就いた。

 

 SIDEゼルレッチ・キシュア・シュバインオーグ

 

「イヤッ……! やめて下さいっ……! お爺様っ!!」

 

 間桐家にあるとある蟲蔵。そこには幾つもの蟲が存在して幼き少女の裸体を蝕み陵辱の果てを尽くしている悍ましい場所だ。

 

「クフフフフッ。桜よ、儂の蟲を受け入れもっと苦しめ。クックック、フハハハハ!!」

 

 桜を甚振れば甚振るほどに、陵辱すればするほど桜の属性が虚空元素が水に変化していくのを感じる。

 

 これで間桐の魔術師を造れる。また、聖杯戦争に参加する為の人形を造り出せる。その思いで彼の脳内は一杯だった。

 

「……マキリよ、これはなんだ?」

 

「っ!? 何者じゃっ!? どうやって儂の結界を掻い潜ったのじゃっ……!!!?」

 

 ゾォルケンは背後に気配無く忍び寄った老紳士を見て警戒する。自分の結界は完璧だった。

 

「マキリよ、儂の顔を忘れるほど耄碌したのか?」

 

「なん、じゃ、と……? っ?! あ、あな、た、様はっ……!?」

 

 思い出が蘇る。過去の自分自身が蘇ろうとしていた。

 

「もう一度問おう。マキリよ、これはなんだと聞いておる」

 

「ゼルレッチ・キシュア・シュバインオーグ殿……!? こ、これはっ……!?」

 

 その後に続く言葉を探すが見つからない。これとはなんなんだろうか? と自問自答しても分からなかった。

 

「貴様は第三魔法(ヘブンズフィール)を目指す為に儂の立ち合いの元で儀式を始めたのではなかったのか?」

 

「っ!? そ、そうじゃ! これは儂が魔法を得る為に必要な事なんじゃっ!! 幾ら貴方様とは言え邪魔立てはさせんぞっ……!!」

 

 冷たい視線で見下すゼルレッチに対してゾォルケンはギリッと睨み付けるようにその思いを手放したくなかった。

 

「なぁ、マキリよ……。貴様の盟友であった遠坂永人とユスティーツァと誓ったあの想いを覚えておるか?」

 

「何を今更な事をっ……!! そんな事、覚えて、いるに……?? 儂、は……あの日、盟友、達と……何を誓ったのじゃ??」

 

 ゾォルケンは初めて膝から崩れ落ちて架空を見つめる。そうだ、私は、彼等と約束したんだ。

 

 だけど、その約束がなんだったのかは分からずじまいだった。それがあまりにも、あまりにもどうしようもなく悲しくなった。

 

「……マキリよ、今一度問う。貴様達が第三魔法を手に入れて何を成したいのか? あの時の誓いを、願いをもう一度聞きたい」

 

「儂っ……ワタシ、はっ……!?」

 

『問おう、我等が仇敵にして盟友よ。貴様は一体何者なのか?』

 

「っ?! 永人に、ユスティーツァよ……。そうか……そうじゃったなぁ」

 

 間桐臓硯もとい大魔術師マキリ・ゾォルケンは幻影である仇敵にして盟友である彼女とその側で不敵に笑う永人を見て穏やかに笑う。

 

 そして、蟲蔵から桜を連れ出して彼女の中に居る蟲を全て体外へ吐き出させた。

 

 それは、心臓に根付いた彼の本体もだ。その結果、桜はストレスと嘔吐したショックで気絶した。

 

「ゾォルケンよ、ようやく思い出した様だな」

 

「はいっ……。貴方様にご迷惑をお掛けした様で申し訳ない限りで一杯です……」

 

 憑き物が落ちたとはこの事を言うのだろう。

 

 ゾォルケンの表情は穏やかさとは無縁に少女を陵辱して悪に染まった自分自身を殺してやりたい気分だった。

 

「良い。だが、儂はそなたに引導を渡しに来た」

 

「はいっ……。その覚悟は出来ています。最後まで貴方様にお手数を掛けて申し訳ございませんでした」

 

 マキリ・ゾォルケンは魔道元帥ゼルレッチ・キシュア・シュバインオーグに地獄すら緩い業火で焼き尽くして欲しいと願った。

 

「気にするな。それが年長者としての責任だ。なぁ、ゾォルケンよ……本当はな、儂は今の今までそなた達にこうして介入するつもりは無かったのだ。

 

 しかし、先ほどそなた達と同じ志を持つ少年に会ってな……。彼は先の聖杯戦争で出た無関係な犠牲者だった。家族を理不尽に奪われた儂等が見て見ぬふりをした被害者だった。

 

 そんな彼は並行世界の自身達と記憶を共有しそこにおる少女とそなたを救って欲しいと願ったから来たのだ……」

 

「ゼルレッチ様、その少年の名前は……?」

 

 自分自身を止めてくれた少年には感謝しかなかった。だから、死ぬ前にその少年の名前を聞いて感謝したかった。

 

「衛宮嗣郎と言う少年だ。若かりし頃のそなたに良く似たそなた達の意志を受け継ぐ少年だ」

 

「……。そうでしたか。私達の意志は引き継がれたのですね……」

 

 ふと、彼の両目からは枯れた筈の涙が流れ落ちる。外道に堕ちた自分にもまだこんな感情があるのだと驚いていた。

 

「あぁ、だから安心して逝くが良い。その少女の保護はこちらでなんとかしよう」

 

「ありがとう、ございます……。あぁ、ユスティーツァ、永人よ……あとちょっとだったんだがなぁ……。でも、これで、ようやく、貴様等の元へ、逝ける、ぞ……」

 

 マキリ・ゾォルケンの身体が崩れると共に蟲蔵の中にた刻印蟲達も崩れて消えていく。

 

 ゼルレッチは自身のマントに少女を包むと間桐の家にいるゾォルケンの子孫と思う酒に酔った大人へ事情を話した。

 

 酒に酔った子孫は初め何を言われたのか分かっていたかったが、蔵の中を見てようやく悟り涙を流した。

 

 その光景を見てゼルレッチは酷く落胆した。ここまでだったのかと悲しさを胸に少女を衛宮邸へ連れ帰って行った。




キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグだと思っていたけど
ゼルレッチが先っぽい。
なんか、名前の入れ替えがあったっぽい。
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