ダーク・フォー・ワン『新時代を作るには何が必要だと思う?そう、人々の笑顔だ!』   作:バケギツネ

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ダーク・フォー・ワン伝説の幕開けだぁ!!!

 

 

『初めまして。我々は敵連合。』

 

 USJにて、救助訓練を行なう筈だった雄英一年A組。彼らの前に現れたのは、“敵”を名乗る無数の悪意だった。

 

『僭越ながらこの度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは、平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思っての事でして。』

 

 身体に幾つもの手を貼り付けた、不気味な少年・死柄木弔。黒いモヤで全身を覆った謎多き男・黒霧。そして、対オールマイト用に調整された改造兵器・脳無。

 

 数十人に及ぶ敵連合の中でも、特に異質な雰囲気を纏った3人。彼らの放つプレッシャーに、肌で感じる本物の悪に、生徒達は戦慄する。

 

『私の役目は、貴方達を散らしてなぶり殺す事!』

 

 優秀な金の卵たちを排除すべく、黒霧は個性を行使した。生徒たちを飲み込む為に、自らの纏うワープゲートを押し広げようとする。

 

 

『さあ、始めよう!伝説の幕開けだ!!』

 

 

 そんな中、突如として現れた巨大要塞が、USJの内部へと突っ込んでくる。

 

『っ!? おい、脳無!何とかしろ!!』

 

 敵連合の有象無象を蹴散らしながら、死柄木達へと迫り来る巨大要塞。その直進は、主の声に反応した脳無によって漸く押し止められた。

 

『黒霧どうなってる!?もう雄英(クソ共)の援軍が来たのか!?』

『いえ、幾ら何でも早すぎます!それに、先日頂いた情報には、あんな巨大要塞なんて何処にも...!』

 

 計画外の乱入者に作戦の中断を余儀なくされた死柄木達は大いに取り乱していた。しかしそれは、雄英側とて同じこと。

 

『(敵側も戸惑ってる?アイツらの仲間じゃないのか?)』

 

 雄英教師・イレイザーヘッドは有象無象の残党を片付けながらも、その頭を悩ませていた。

 

 敵も、ヒーローも。今この場で起きている事を、説明できる者は居なかったのだ。

 

 要塞の持ち主である、たった1人を除いて。

 

『ふふっ、すまないねえ!コイツの操縦には、まだ少し不慣れなんだ!』

 

 要塞は更なる変形を見せ、1本の柱がせりあがってくる。その上には1人の男が立っていた。

 

『っ!? そのお声は...!』

『先生、なのか...!?』

 

 死柄木と黒霧の耳に響いたのは、聞き馴染みのある指導者の声だった。要塞の墜落で生じた砂埃は徐々に晴れていき、声の持ち主はその姿を露わにする。

 

『諸君、もう大丈夫だ!僕がいる!!』

 

 その男は全身に黒いタイツを纏い、骸骨のような金色の仮面で顔を包んでいた。その背では、長いマントがヒラヒラと風にたなびいている。

 

『僕はダーク・フォー・ワン!敬愛するオールフォーワンの意志を引き継ぎ、この世界に愛と平和(ラブ&ピース)をもたらす新しい魔王さ!』

 

『『『『『????』』』』』

 

 巨大要塞を引っ提げていきなり修羅場へと乱入し、意味不明な宣言を喚き散らす、ピチピチタイツの中年男性。

 

 余りにも支離滅裂な事態に、USJに居る全員が思考を停止していた。

 

 よりによって、そのオッサンが知り合いにそっくりだった死柄木と黒霧は、尚の事である。

 

『おい黒霧。なんだあの先生のパチモンは。』

『分かりません死柄木弔。あの御方と似ても似つかない事は確かですが、全く意味が分かりません。』

 

『おお!そこに居るのは、弔と黒霧じゃないか!ふふっ、調子はどうだい?』

 

 ダーク・フォー・ワンと名乗った怪しい男は、目を点にしている黒霧達に、やたらとフレンドリーに近付いていった。

 

『何で俺たちの名前知ってんだよ...』

 

『ふふっ、僕は魔王だぜ?知らない事なんて無いさ!それに、僕と弔の仲だろう?今さら何を言ってるんだ?ふふふふふっ!』

 

『......お前こそ何を言ってんだ?』

 

 知らないオッサンにバンバン背中を叩かれる羽目になった死柄木は、苛立たしげに首を掻きむしりながら悪態を吐く。

 

『よく聞けパチモン。アンタが誰かは知らないし、興味も無い。見て分かるだろ、取り込み中だ。後にしてくれ。』

 

『おいおい。自分の“先生“に向かって、何て事を言うんだ。』

 

『ざけんな!アンタがいつ、俺の先生になったんだよ...!』

 

『キミの指導者として1つ問おう。』

 

『話を聞けっ!!』

 

 残念ながら、死柄木の願いは届かない。

 

『問題だ。テテンッ!新時代を作る為に、君の為すべき事は何だと思う?』

 

『知るか!俺はただ、ぶっ壊したいんだよ!お前みたいな、気に入らないゴミをなぁ!!』

 

 ふざけた態度を取り続けるダーク・フォー・ワンに、ただでさえ沸点の低い死柄木の怒りは、ピークを迎えた。

 

『消えろっ!!』

 

 彼はダークなんちゃらを”崩壊“させるべく、その右手を伸ばした。

 

『やれやれ。元気があって大変よろしい!だが、指導者への暴力は減点対象だ!』

 

 死柄木の腕はダークなんちゃらに触れる前に、彼の足元から出現した金色の巨腕に掴まれていた。

 

『何だっ!?この個性...!』

『死柄木弔!』

 

『それに、”気に入らないモノを壊す“だって?不正解っ!新時代に必要なもの、それは人々の笑顔だ!!気に入らないものすらも、受け入れっ、愛しっ、幸福を与えるっ!それこそが魔王の“器”さ!!』

 

『『はぁ?』』

 

 死柄木と黒霧の声が重なる。

 

『勿論、君達は知っているだろうが、改めて言わせてくれ!人々が互いの個性を尊重し合いっ、笑い合って暮らせる世界っ!それが“僕とオール・フォー・ワン”の夢なんだ!』

 

『『......はぁ!?』』

 

 死柄木と黒霧の声が再び重なる。

 

『黙れパチモン。お前が先生を騙るな...!』

『そんなつまらない理想を掲げるなど、あの御方なら絶対にしな

 

『ああ!可哀想なオール・フォー・ワン!本当はっ、愛と平和を望んでいる誰よりも優しい人なのに!誰にもっ!自分の部下や教え子にすら、それを理解して貰えない!!』

 

 ダーク・フォー・ワンは涙を流してその場に疼くまる。彼は心から、敬愛する人物を苦しめる世界からの誤解を、嘆き悲しんでいたのだ。

 

『でも僕は違う!僕だけが本当のあの人を理解しているんだ!僕はあの人をっ、魔王を引き継ぐ!世界中の人間を統べ、明るい未来へと導いてみせる!次は僕だあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!』

 

 いきなりその場に立ち上がったダーク・フォー・ワンは、両手を大きく広げて、天に向かって咆哮する。

 

 死柄木と黒霧は言葉を失いドン引いていた。オールマイトを殺すだなんだと言う当初の目的を、彼らは目の前の劇物(ダーク・フォー・ワン)によって、大分忘れかけている。

 

 因みに脳無は、主人である死柄木からの命令を待ちながら、その場で大人しくしていた。大分暇そうだった事をここに付け加えておく。

 

『あああああああああああああああああああああああああああああ!!!......さて、弔。先生として、君に大事な話がある。雄英への襲撃。弔なりの考えがあっての事なんだろう?』

 

 ひとしきり叫び終わったダーク・フォー・ワンは、最速の男・ホークスもびっくりの速さで、テンションを切り替える。

 

『でもね、無関係の人間を傷つけるのは、魔王の行いとしては下も下なんだ。いや、それ以前に人して間違っている!そんなのは、卑怯で陰湿な三下(ヴィラン)のやる事なんだよ!正々堂々正面からっ、宿敵に打ち勝ってこその魔王なのさ!!分かるかい!?』

 

 敬愛するオール・フォー・ワンをさりげにディスっている事に、ダーク・フォー・ワンは気付いていない。憧れの人物への理解度が、彼は大分浅かった。

 

『いや、これ計画したの、せんせ

 

『それに君は、破壊に囚われすぎている!破壊(スクラップ)の後、より良い創造(ビルド)を行う事こそ、魔王の責務なんだ!!』

 

 ダーク・フォー・ワンは、オール・フォー・ワンの思想を完全に曲解していた。ある程度の姿形や表面上の口調こそ似せているものの、その信念は真逆と言っていい。

 

 当のダークなんちゃらさんは、その事に微塵も気づいていないが。

 

『死柄木弔。どうやらこの男、話が通じるタイプではなさそうです。』

『見りゃ分かる。おい脳無!コイツを殺せ!!』

 

 死柄木は対オールマイト用の最高戦力を差し向ける。ようやく命令を与えられた忠犬・脳無は、その巨体を躍動させて、待ってましたとばかりに主の標的へと襲い掛かった。

 

 しかし、自らに迫る異形を前にしても、ダーク・フォー・ワンのイカれた態度と謎の余裕は崩れない。

 

『丁度いい!次代を担う若人達にも見せてあげよう!これが新たな魔王の力さっ!!』

 

 そんな中、突如として謎の巨大要塞が七色の光に包まれ、ヒーローや敵を飲み込んでしまう。

 

『何が起きてる!?”抹消“できない!』

 

 自身の身体全体を予め”金“で覆っていたダーク・フォー・ワンは、対象者を“直接”見る事で発動する個性・抹消の天敵となっていたのだ。

 

 完全に偶然だけど。

 

 個性の為、ツッコミを必死に堪えて息を殺しながら、ダーク・フォー・ワンのクソ茶番を見続けていたという男相澤の苦行は、完全に無駄だったわけだ。

 

 ひたすらドンマイ。

 

『僕はこの力で、魔王を引き継ぐ!!』

 

 膨張を続ける虹色の光に、敵味方の区別は無い。

 

『おい、死柄木!!どうなってんだ!?』

『何で俺たちまで!!』

『聞いてないぞ!何なんだ、ダーク・フォー・ワンって...ぎゃああああああああ!!』

 

 敵連合の有象無象を。

 

『規模が大きすぎる!ブラックホールでも防ぎきれない!!』

『俺たちは良い!お前だけでも離れろ飯田!!』

『何を言っているんだ!ヒーロー志望としてそんな事っ、くっ...!』

 

 雄英の教師や生徒達を。

 

『(話が違う!ねえ、これどこまでが計画!?どうなってんのオール・フォー・ワン!!)』

 

 多分一番パニクっているであろうA組の内通者を。

 

『だ

 

 一言しかセリフを貰えなかった原作主人公を。

 

 理不尽な煌めきは全てを飲み込んだ。

 

『世界よ、もう大丈夫だ!!僕はここに居る!!!』

 

一帯を包んでいた輝きは次第に薄まり新たな姿となったUSJは、その歪んだシルエットをゆっくりと青空の下に晒す。

 

 何という事でしょう。

 

 未来のヒーローを育てる筈だった雄英の一大施設は、未来の魔王が監修を務める、金色の宮殿へと早変わり。

 

 災害救助用に用意された6エリアには、1体ずつオール・フォー・ワンの巨大像をブッ建てています。これでもう、オール・フォー・ワン・ロスの心配は要りません。

 

 6体の像には、1体1体微妙な差分が設けられてるのが、匠のこだわりです。

 

 USJの設計者である13号先生は、泣いていいと思います。

 

『今ここにっ、改めて宣言しよう!!』

 

 宮殿の中心に聳え立ち、その両手を大きく広げる一際大きなオール・フォー・ワン像。

 

 その掌へと飛び乗った新たな魔王(自称)は、恐らくCV:大塚明夫になるであろう美声を、無人の楽園に響き渡らせる。

 

『ダーク・フォー・ワン伝説の幕開けだっ!!』

  

 

 

 言い忘れていたが、これはダーク・フォー・ワンが真の魔王になるまでの物語。そして彼が、敬愛するオール・フォー・ワンに迷惑をかけ続けるだけの物語でもある。

 

 

 

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