ダーク・フォー・ワン『新時代を作るには何が必要だと思う?そう、人々の笑顔だ!』 作:バケギツネ
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『この俺こそがっ、最高の英雄だ!!!』
シャイニングマイト、オール・フォー・ワン、雄英関係者、敵連合、ごった煮のようなカオスなメンバーを乗せたまま、金の巨大なロボは眩い光に包まれ、無意味な回転を始める。
100人近くの乗組員から強制的に吸い出された個性因子は、エネルギー源として黄金の中に蓄えられ、それを解き放たんとするイカれた主人からの合図を待っていた。
『刮目せよっ!シャイニングマイト伝説の終幕だっ!』
オール・フォー・ワンもワン・フォー・オールも、ヒーローも敵も、全てを消し去らんとする、終末の光が満ちていく。
『ああ、素晴らしい!漸くだ。漸く俺は夢を叶えて楽になれる。......今いくよ、父さん。』
シャイニングマイトは恍惚とした表情で、甘い夢の中へと堕ちていった。
『SMASH!!!!!!!!!』
『っ!!!!』
歪んだ夢の中にいた偽りの英雄を叩き起こしたのは、真の英雄の放った一撃だった。
コクピットから引き摺り出されたシャイニングマイトは、勢いよく地面を転がる。それと同時に、個性の発動者を失った要塞はその光を閉ざし、自爆は中断されていた。
『イタタタ、一体どうしたんだオールマイト!?話があるならっ、後にしてくれぇ!!!!』
身体を起こしたシャイニングマイトは、崩れかけた顔面のまま、憧れのヒーローに抗議する。
『もう少しで、最悪の魔王・オール・フォー・ワンの息の根を止められる!ついでにダーク・フォー・ワンもだ!』
『その為に、未来ある子供達を犠牲にする気か?』
とうに身体の限界を迎えているオールマイトは、部分的にマッスルフォームを発動させた歪な状態のまま、顔だけは自身とソックリな目の前の男を睨みつけていた。
その瞳は怒りに燃えている。
『仕方ないさ!正義に犠牲はつきものだろう?
『その犠牲を、守るべき者達にすら強要するというのなら、それはヒーローとは言えない!お前の正義は間違っている!!』
『どうして!?どうして分かってくれないんだ!?』
崩れかけたていた黄金製の顔面を修復し終えたシャイニングマイトは、自身を否定する憧れへとその拳を向けていた。
『悪を討つっ!それが
『少し違うなっ!!!』
シャイニングマイトの拳を紙一重で避けたオールマイトは、強烈なクロスカウンターを叩き込む。
『悪を討ち、人を助けるのがヒーローの仕事だ!!』
顔面を殴り抜かれた偽りの英雄は、再び地面を転がってその白いスーツに汚れを増やしていた。
『そうか!分かった!分かったぞ!!』
錬金でスーツを新調し、その場で立ち上がったシャイニングマイトはオールマイトに指を差す。
『オールマイト!君は魔王に操られているんだ!おのれオール・フォー・ワン!洗脳の個性を持っていたとは!!』
覚束ない足取りのまま、シャイニングマイトは声を張り上げていた。
『それ以外に考えられない!オールマイトなら、俺の正義を否定するなんて、絶対にしない筈なんだ!!』
シャイニングマイトの背後で、無数のロケットランチャーが錬成されていく。
『少し手荒になるが仕方ない!目を覚ますんだオールマイト!』
一斉に行われた砲撃は、爆炎と共にオールマイトを飲み込んだ。
『やったか!?』
その声と同時に、炎の中から平和の象徴が現れる。彼は腹部から内臓を撒き散らしながらも、その拳を掲げていた。
『DETROIT!TEXAS!CAROLINA!!OKLAHOMA!!NEW HAMPSHIRE!!MISSOURI!!CALIFORNIA!!!SMASH!!!!!』
オールマイトの放つ渾身の7連撃。
それはシャイニングマイトを叩き伏せ、陥没した地面に巨大なクレーターを形作った。
『ハァ、ハァ、どうして......』
『シャイニングマイト。目を覚ますのはお前の方だ。』
1人のヒーローとして。そして、1人の教師として。倒れたままの英雄を夢見る男に、オールマイトは語りかける。
『君だって、ヒーローを目指す者。悪戯に人の命を奪いたくはないはずだ。』
『.........』
血反吐を吐き、痛みにフラつきながらも、オールマイトは語り続けた。
『こんな事はもう止めよう。他の道を探すんだ。君の生まれ持ったその個性を、他人を救う為に使ってみないか?』
『.........』
平和の象徴はその痩せ細った手を、偽りの象徴へと差し伸べる。
『......分かった。』
それと同時に、シャイニングマイトの身体から再び黄金が噴き上がったた。
『分かった!分かったぞ!全ての謎は解けた!!お前はオールマイトじゃない!そう!偽物だ!偽オールマイトだったんだ!!』
動かない身体を、黄金で無理やり立ち上がらせたシャイニングマイト。その目はもはや、焦点が定まっていない。
『この偽者め!お前がオールマイトを騙るな!!平和の象徴とは似ても似つかないコスプレ中年男が、何を偉そうに!!』
子どものように喚き散らしながら、シャイニングマイトは地団駄を踏む。
これには、流石のオールマイトも言葉を失っていた。
『覚悟しろ偽オールマイトめ!象徴の意志を冒涜するお前を、俺は許さない!本物のオールマイトに代わって、粛清を......っ!!!』
偽りの英雄を模っていた黄金の鎧が崩れ、別の形へと姿を変える。シャイニングマイトの右半分は、ダーク・フォー・ワンとなっていた。
アシュ○マンを想像して頂ければ、分かりやすいだろうか。
『往生際が悪いなぁ、シャイニングマイト。君は負けたんだ。実力でも精神でもね。僕がこうして出て来れたのがその証拠だよ。さあ、今すぐオール・フォー・ワンを解放『黙れ悪党どもめ!貴様らだけは必ずこの手で始末してやる!!』
傍迷惑な2人で1人が、顔の左右で喧嘩を始めた頃だった。
多数の人間を閉じ込めたまま、その機能を停止していた巨大ロボ。その装甲が突き破られ、真の魔王が帰還する。
『オール・フォー・ワン♡』
『オール・フォー・ワン...!』
『なんだ、その姿は!?』
個性・剛躯。
脳への負荷というリスクを嫌い、今まで使用を控えていたオール・フォー・ワンの隠し球。
それを発動した彼の身体は、怪物のように膨れ上がり、圧倒的なパワーを手に入れていた。
ある意味では魔王らしい、第二形態のお披露目である。
『僕は仲間外れかい?寂しいじゃないか!!』
手負いの魔王は、今までとは比較にならない程に高められた筋力で、得意の人間空気砲を放つ。
『豪躯+空気を押し出す+筋骨発条化+瞬発力×12+膂力増強×9+風刃+加速』
その凶弾は、音を置き去りにする程の速度で、満身創痍のオールマイトを撃ち抜こうとしていた。
『オールマイト!』
『偽オールマイト!』
片や、魔王と象徴の決着はもっとドラマチックであるべきという理想から。
片や、偽のオールマイトにトドメを刺すのは自分であるべきという理想から。
光と闇の利害は一致する。
ダーク・フォー・ワンとシャイニングマイトが混ざりあったナニカは、平和の象徴の前に、盾として立ち塞がった。
異常事態に反応が遅れたオールマイトの目の前で、光と闇の偽物はその頭部を吹き飛ばされる。
『シャイニングマイト!ダーク・フォー・ワン!!』
頭部を失った2色の体は、力無くその場に倒れ込むのだった。
『オール・フォー・ワン...!』
『そう怒るなよ。邪魔者が消えて、せいせいしたじゃないか。』
真の象徴と魔王は、互いに歪な形態のまま向かい合う。
その背後で、頭を失ったはずの男が立ち上がった。
『っ!?』
『...!!』
吹き飛ばされた筈の頭部はみるみる修復されていく。
ダーク・フォー・ワンやシャイニングマイトのような“錬金製の鎧”とは異なる、
男の素顔が白日の元へと晒される。
『老人...?』
その容貌に、オールマイトは驚愕する。彼が目撃したのは、皺だらけの顔をした謎の男。
『そうか、君だったか。』
その顔を一眼見て、魔王はダーク・フォー・ワンの正体を悟るのだった。