ダーク・フォー・ワン『新時代を作るには何が必要だと思う?そう、人々の笑顔だ!』   作:バケギツネ

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ダーク・フォー・ワン : オリジン

 

 

 

 

 

『可哀想に。今まで辛かったね、苦しかったね。でも、もう大丈夫だ。何故って?僕がいる。』

 

 それは、ダーク・フォー・ワンであり、シャイニングマイトでもある者に残った、朧げな記憶の残滓。

 

『君は何も悪く無い。ただ、身に余る個性を生まれ持ってしまっただけさ。』

 

 力無く横たわる男に手を差し伸べたのは、彼の憧れていたヒーローでは無く、悪の魔王だった。彼にとって魔王(オール・フォー・ワン)は唯1人の救世主だったのだ。

 

『君を苦しめるその力は、僕が貰ってあげよう。』

 

 優しげな声色でそう語りかけたオール・フォー・ワンは、男の個性を奪い取る。それと同時に、身体と命を蝕んでいた呪い(個性)から、彼は解放されていた。

 

 

『あり......がと......う』

 

 

 幸か不幸か。

 

 男の絞り出した途切れ途切れの掠れ声は、その場から立ち去ろうとしていた魔王の足を止めた。

 

 男は力無くその手を伸ばし、泡を吹きながら必死に言葉を紡いでいく。

 

『あ、の......』

 

 たった人撫でで自身を救った御技に男は魅せられ、その心には確かな憧れが芽生えていた。

 

 彼のようになりたいと、男はそう願ってしまった。希望を抱くほどの未来をそこに見て、愚かな夢に浸ってしまったのだ。

 

『お、れも......』

 

 男は憧れの魔王に、自らの夢を問う。

 

『俺も、なれ、ます......か?貴方......みたいな、立派な

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『老人...?』

 

 魔王の一撃によってその頭部を失った、偽の魔王と偽の象徴を兼ねる者。

 

 彼の身体は再生を始め、傷口からはボコボコと新たな部位が生えて来る。ダーク・フォー・ワンでもシャイニングマイトでも無い、彼の皺がれた素顔は白日の元に晒されていた。

 

 その人物は、オール・フォー・ワンにもオールマイトにも似つかない、ヨボヨボの老人。

 

 見た目に関しては、オールマイトの師であるグラントリノや、雄英の誇るリカバリー・ガールよりも、はるかに老けた印象を受ける。

 

 そして平和の象徴は、その人物に心当たりがまるで無かった。

 

『そうか、君だったか。』

 

 一方、その顔を一眼見たオール・フォー・ワンは、ダーク・フォー・ワンとシャイニングマイトの正体を悟るのだった。

 

『久しぶりだね。個性を貰ったあの時以来かな?君の力はなかなか便利でね。重宝しているよ。』

 

 未だ意識が安定せず、生気の無い眼で虚空を見つめている変わり果てた旧知へと、魔王は愉快そうに語りかける。

 

『ダーク・フォー・ワンとシャイニングマイトが君だったとは思わなかった。でもそうなると、全てに説明がつく。』

 

 自身の頭を悩ませ続けていた問いへの答えを、オール・フォー・ワンは漸く手にしていたのだ。

 

『不安定な精神、複数の個性、筒抜けだった僕の情報......ふふっ、なるほど。やはり個性というのは面白い。こんな事態は想定外だが、嬉しい誤算だよ。』

 

『オール・フォー・ワン!この老人は何者だ!?お前の関係者なのか!?』

 

 ひとり納得するオール・フォー・ワンに、未だ謎の男の正体を知らないオールマイトは、当然の疑問を投げかける。

 

『まあ、そんな所さ。』

 

 眼下の老人を一瞥した魔王は、仮面の下に隠れた口を醜く歪めていた。

 

 思いがけず転がり込んできた“使い捨てライター”を前にして、オール・フォー・ワンの頭には、幾つもの素敵なプランが浮かんでは消える。

 

『それとね。彼は魔王でも、英雄でも無い。夢の残滓に縋る、哀れなh

 

『があぁああっぁああっぁああ!!!』

 

 大気を切り裂くような叫びが、USJの跡地に木霊する。

 

 オール・フォー・ワンの言葉を遮るように、突如意識を取り戻した老人が雄叫びを上げていたのだ。

 

 彼から吹き上がった黄金はその醜い素顔を包み隠し、その身体を白と黒の入り混じったコスチュームで覆っていく。

 

『もう目が覚めたのか。流石は

 

『『違うっ!僕は/俺は化け物なんかじゃないっ!魔王/英雄なんだっ!訂正しろおぉおっっ!!』』

 

 ダーク・フォー・ワンとシャイニングマイトが歪に混じりあったナニカは、完全に正気を失っていた。

 

 もはや敵意も悪意もない。ただ迸る本能のままに、周囲を無差別に攻撃しながら、その身体を膨れ上がらせる。

 

 オールマイトとオール・フォー・ワンも、堪らずその異形から距離を取っていた。

 

『悪いがオールマイト。君と白黒付けるのは、またの機会にさせてもらうよ。僕は“彼”を連れて行く。』

 

 豪躯やその他複数個性の併用によって、身体能力を極限まで高めている魔王は、自らのなり損ないへと狙いを定める。

 

『豪躯+空気を押し出す+筋骨発条化+瞬発力×12+膂力増強×9+風刃+加速』

 

『DETROIT SMASH !!!』

 

 その一撃を逸らさせたのは、部分的なマッスルフォームを再び発現させた、手負いの象徴の拳だった。

 

『おいおい、無茶はよせよ。オールマイト。』

 

『ハァ、ハァ、出来ない相談だな......』

 

 豪躯による人間離れしたフィジカルで、100%相当のスマッシュを耐え切った魔王。軽くため息を吐いた彼は、肩で息を続ける憎き宿敵を睨みつける。

 

『君はもうワン・フォー・オールを持っていない。誰かに譲渡しているんだろう?タイミングを考えると、お相手は雄英生といったところかな?』

 

 オールマイトの全盛期。その異次元の強さを、オール・フォー・ワンは身を持って知っている。それに比べれば、諸々の弱体化を考慮したとしても今のオールマイトは衰えすぎているのだ。

 

 彼の身体に残っているのが消えかけの残り火に過ぎないと、魔王は既に見抜いている。

 

『このまま戦い続ければ、君の中のワン・フォー・オールは間違いなく消える。そうなると、オールマイトを失った社会は、一体どうなってしまうんだろうねえ?』

 

 それでも、オール・フォー・ワンよく知っていた。覚悟を決めたヒーローの恐ろしさを。今も彼の呼吸を支える黒の酸素マスクが、それを雄弁に物語っているのだから。

 

 だからこそ魔王は、宿敵の心を揺さぶり続ける。

 

『多忙な君は僕と違って、後進の育成もままなっていないだろう?象徴の居ない世界で、その秩序は大きく揺らぐ。沢山の犠牲が出るだろうねぇ。力の使い時を誤った、君のせいで。』

 

『話は終わりか。』

 

 確かな意志を宿したその眼で、平和の象徴は憎き宿敵を射抜く。どれだけ身体が傷つこうとも、どれだけ心を乱されようとも、彼が歩みを止める事はなかった。

 

『例え私が力を失おうと、次の象徴はすぐに現れるさ!自由を願いっ、闘い続けるその意志が受け継がれて行く限りっ、貴様の野望が叶う事は絶対にない!』

 

 紡がれてきた聖火は、七色の光となってオールマイトの右手を包む。彼の中のワン・フォー・オールは、最後の煌めきを放っていた。

 

『全く、これだからヒーローは。』

 

 オール・フォー・ワンもまた、今持てる個性を総動員し、その右手を最高最適の“殴る形”へと変形していく。

 

『『ぐあぁがあぁじゃあばあ!』』

 

 それに呼応するように、黄金の化け物もその両碗を肥大化させていた。

 

『『があぁぁあああっあああ!!!』』

 

『豪躯+スケイルメイル+筋骨発条化+瞬発力×12+膂力増強×9+増殖×3+肥大化+鋲+エアウォーク+槍骨』

 

『UNITED STATES OF SMASH!!!』

 

 異形、魔王、象徴。

 

 三者三様のフルパワーは、轟音と共に混じり合う。

 

 

 

 

 

 

 

 長かった三つ巴の戦いは、漸く終わりを迎えていた。

 

 たった一人の勝者を残して。

 

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