ダーク・フォー・ワン『新時代を作るには何が必要だと思う?そう、人々の笑顔だ!』 作:バケギツネ
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USJだった頃の面影が、影も形も無くなった
ダーク・フォー・ワンと死柄木たちは対峙する。
魔王から次を託されようとする少年と、魔王から次を託されたのだと頑なに主張を続ける謎のオッサンが、雌雄を決しようとしていた。
魔王のバトンを受け取るに相応しい者を決める頂上決戦。そんな勝負が、オール・フォー・ワン本人に無許可のままスタートする。
しかし、
『弔!今の君は、力を失ったただの人間!自分の脆弱さを思い知るんだ!!それもまた、君の成長に繋がる!自分の限界を越えるんだ!さあ、頑張れ!僕も全力で迎えてあげよう!!』
ダーク・フォー・ワンの“2つめ”の個性によって、死柄木たちの力だけが発動を封じられていた。
『これが、魔王の力っ!!』
攻めあぐねる教え子たちに対して、未来の魔王(自称)は容赦なく第三の個性を使用する。
『っ!!』
『黒霧!!』
仮面の奥に隠れた、ダーク・フォー・ワンのギラギラした目を覗き込んでしまった黒霧は、強制的に意識を奪われ昏睡状態に陥る。
『おい、どうした!?』
『黒霧は誘われたんだよ!優しい優しい夢の世界にね!!』
個性の術中に嵌った黒霧は、自身の願望を満たす幻想の中に囚われていた。言うまでも無い事だが、その理想の世界にダーク・フォー・ワンの姿は影も形も無い。
『チッ、脳無!!』
個性を失ってもなお、オールマイト並みのフィジカルを有する改造人間。そんな異形が、ダークなんちゃらへと襲い掛かった。
『ブラボー!ブラボー!良い動きじゃないか!!』
強力な調整を施された脳無へ賞賛の言葉を送った直後、ダーク・フォー・ワンの姿はいきなり消失する。
『ほらほら、こっちこっち!』
いつの間にか
『さあ、おいで!鬼ごっこといこうじゃないか!!』
自身の標的に何度も何度も突進する脳無だったが、ダーク・フォー・ワンはその度に瞬間移動を繰り返し、接近を許させない。
『こっちだこっち!僕を捕まえてごら〜ん!!」
『ああ、惜しかった!さ、もう一回やってみよう!ネバギバッ!!』
『あー、今の勿体無いなぁ〜!結構サービスしてあげたんだけどなぁ〜!あ〜あ〜!!』
その様子が死ぬほどウザかった事を明記しておく。
『さて、4つめの個性も絶好調!試運転はこのくらいで良いだろう!次は僕のターンだ!!!』
ダーク・フォー・ワンは個性を使用し、脳無の数十倍のサイズを誇る黄金の拳を錬成する。
『有り難く受け取るといい!これが新たな魔王の放つ、全力のゲンコツさっ!!』
振り下ろされた鉄槌は、未だ衝撃吸収・超再生の封じられている脳無を押しつぶし、地面に巨大なクレーターを作り上げる。
対オールマイト用に造られた最強クラスの改造人間は、一撃でその機能を停止していた。
『このっ、バケモンがっ...!』
『おいおい。僕は化け物じゃなくて、魔王だぜ?二度と間違えないでくれ。僕もそこんところは、プライド持って魔王してるんだから。頼むよ、ほんとマジで。』
急にガチトーンで死柄木を諌めた自称魔王は、自身がペシャンコにした改造人間の元へとスキップしながら歩み寄る。
『それにしても、この脳無は素晴らしかった!個性を封じていなかったら、もっと手こずっていただろう!僕の為に、こんな素晴らしいサンドバッグを用意してくれるなんて、流石はオール・フォー・ワンだ!!』
『おい待て、なんでそうなる。ソイツはオールマイトを殺す為に.....
『ああっ!ありがとうオール・フォー・ワン!!憧れの魔王にっ、ここまで目をかけて貰えるだなんて!くぅ〜!!!』
ダーク・フォー・ワンは、その仮面からボロボロと涙を零しながら、自らが作り上げた黄金の
死柄木は、もはや困惑を通り越して恐怖を感じ始める。
『僕はなんてっ、幸せものなんだっ!!』
『確かに頭は幸せもんだな。』
『どうした弔。ヤキモチかい?』
『だから何でそうなる!?』
今に始まったことではないが、ダーク・フォー・ワンに話は通じない。
『ふふっ、参ったな〜!!まあ、分かる。分かるよ!僕ほどオール・フォー・ワンから期待されている男は、そう居ないからねぇ!!』
『どっから来んだ!その自信は!!』
『でも安心してくれ!弔だって、僕の次くらいには期待されている!だから自信を持っていい!!うん!そうそう!!(僕の)次はキミだから!うん!』
『もういい!イラつき過ぎて死にそうだ!!』
『ほお、カルシウム不足かな?ミルクでも飲むかい?』
『死ねえぇ!!』
魔王の正統後継者は、自身と師の間に挟まろうとしてくる異物を排除すべく、駆け出していた。
直情的な死柄木だが決して馬鹿ではない。脳無をあしらっていたダーク・フォー・ワンが、どんな時も一定以上の間合いを保っていた事を、見逃してはいなかったのだ。
詳しい事は分からないが、至近距離まで近づかれる事は相手にとって都合が悪いのだと、死柄木の直感はそう告げる。
『敢えて接近してくるとは!はっ!!!!まさか僕が、自分の半径数メートル以内にいる者の個性を封じられないと見抜いて!?し、しまった!!!』
そしてダーク・フォー・ワンは直情的な馬鹿だった。
『そこに気付くとは!なんて洞察力なんだ!やはり君は優秀だね弔!!!』
『......と、当然だ。』
正直、そこまで具体的に見抜けてはいなかった死柄木だが、少しだけ見栄を張る。
『だがねえ、弔!個性が使えたところでという話なんだよ!!』
ダーク・フォー・ワンは辺りに金貨をばら撒き、錬成兵を作り出す。それはオール・フォー・ワンの姿形を真似た、数百体の金ピカホムンクルスだった。
『
控えめに言って、それは地獄絵図だった。
『何だこれっ...!』
『これぞ、リスペクトの力ぁ!!敬愛するオール・フォー・ワンを忠実に再現した兵士さ!この力で僕はっ、君を試す!さあ、ゆけぇ〜!!』
ダーク・フォー・ワンの合図で、量産型オール・フォー・ワンは、何故かバク転しながら死柄木の元へと迫る。
『どこが忠実な再現だ!?クッソ、やたら強え!!』
彼らはやたらとアクロバティックな感じで、死柄木を圧倒する。特殊能力のないホムンクルス達にとって、その攻撃手段は、シンプルな殴る蹴る。
“死柄木を集団リンチするオール・フォー・ワンの群れ”という、カオス過ぎる光景がそこにはあった。
『ゲームオーバーかな?弔。悪く思わないでくれよ?これも君を思っての、愛の鞭ってやつなんだ!』
ボロボロになった死柄木は、ホムンクルス達に羽交締めにされる。
ダーク・フォー・ワンはその近くで、量産型オール・フォー・ワンに淹れてもらった、紅茶を楽しんでいた。
『さて、弔。君に1つ問おう。』
カップを置いたダーク・フォー・ワンは、魔王の後継へと語りかける。心なしかその口調は、いつになく真剣なものだった。
『君には2つの道がある。』
彼の傍らにいた2体のホムンクルスは変形し、オール・フォー・ワンの姿から、別の2人の形をかたどっていく。
1つは死柄木弔の姿に。もう1つは目元の皺が特徴的な黒髪の少年の姿へと変わっていた。
『ここが分岐点さ。今なら、君はギリギリ引き返せる。世界のどうこうはこの僕とオール・フォー・ワンの最強タッグに任せて、君自身は平凡で平穏な生活に戻る。そういう選択肢もあるよって話さ。』
何故だか死柄木は、ダーク・フォー・ワンの隣に立つ少年から、目を離せない。
『さあ、どちらの道を歩む?決めるのは君さ!!』
死柄木弔の、いや、志村転孤の頭には、家族の思い出が一瞬だけ蘇った。
その上で彼は自分自身の答えを出す。
『言ったろ。俺はただ壊すだけだ。お前みたいな邪魔なもんを。』
死柄木はその手で、量産型オール・フォー・ワンへと触れる。飛躍した崩壊は伝播し、数百体のホムンクルスを粉々に打ち砕く。
志村転孤の姿をした個体も、塵となって消えていた。
『やはり君は破壊を望むか!魔王的には不正解だが、生徒が真剣に考え、導き出した答えだっ!!僕も先生として、全力で向き合うとしよう!!』
崩壊に巻き込まれないよう、自身と巨大要塞を宙に浮かしていたダーク・フォー・ワンは、脳無に放ったのと同じ黄金の鉄拳を錬成する。
充分に距離を取られた事で、死柄木は再び個性が使用できなくなっていた。
『さあ、君の覚悟をみせてみろ!!頑張れ弔あああああ!!君はまだまだ強くなれる!僕はもう、とっくにplus ultra しているよおお!!』
今にも振り下ろされようとしている、自称魔王の巨大なゲンコツ。
『空気を押し出す+筋骨発条化+瞬発力×4+膂力増強×3』
それを打ち砕いたのは、遠方から放たれた超威力の空気砲だった。
『弔。よく1人で頑張ったね。』
ダーク・フォー・ワンの前に、見た目は彼にそっくりだが真逆の信念を持つ男が、真の魔王が立ちはだかる。
『もう大丈夫だ、僕がいる。』