ダーク・フォー・ワン『新時代を作るには何が必要だと思う?そう、人々の笑顔だ!』   作:バケギツネ

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これが象徴の力ぁ!!!

 

 平和の象徴と2人の魔王が対面する数分前まで、時間は遡る。

 

『何が起きてるんだ...!?』

 

 根津校長からの有難いお言葉を拝聴した後、少し遅れて授業へと赴いたオールマイト。

 

 彼が目撃したのは、USJのあった筈の場所に鎮座する、黄金の宮殿だった。

 

『生徒たちや、相澤くん達は無事なのか...!?一体、誰がこんな事を...』

 

 生徒たちに訪れた予期せぬ危険に、彼は大いに動揺していた。

 

 揺れる心をなんとか落ち着かせたオールマイトは、注意深く巨大な建造物を観察する。

 

『まさかっ!そんな筈は...!』

 

 宮殿には、同一人物の様々な姿を表現したと思われる、幾つもの像が乱立していた。赤子や少年の像、仮面を被った姿の像も見える。

 

 その殆どに心当たりの無かったオールマイトだったが、像の中に“師の仇”を見つけて、顔色を変えた。

 

『オール・フォー・ワン...!!!』

 

 ワン・フォー・オールをつけ狙い、その先代継承者である志村菜奈を殺めた、最悪の魔王。

 

 5年ほど前に起きた決戦の末に、オールマイトが半ば相打ちのような形で引導を渡した筈の男。

 

 雄英の敷地内に堂々と聳え立っていたのは、そんな人物の黄金像だったのだ。

 

『間違いない。奴が戻ってきたんだ...!狙いは私か!つまらない挑発を!!』

 

 その名こそ、裏社会に広く知れ渡っているオール・フォー・ワンだが、その素顔を知る者は非常に限られている。

 

 それを象った像がある時点で、奴が事件に関与している事は明白だった。人の神経をどこまでも逆撫でする挑発じみたやり口に、無辜の生徒たちを巻き込む卑劣な手口。

 

 怒りに燃えるオールマイトは、マッスルフォームの大きな拳を力強く握りしめる。

 

『次こそは逃がさない!生徒たちも全員返してもらう!!』

 

 その場で跳躍した平和の象徴は、そのひとっ飛びで(ヴィラン)の元へと到達する。

 

『来たか。随分と遅かったじゃないか。』

 

 変わり果てたUSJに潜伏していた怪しい人影。趣味の悪いマスクを付けたその男の声は、紛れもなく彼の宿敵のものだった。

 

『DETROIT SMASH!!!!!!!!!』

 

 オールマイトは、その剛腕を全力で振り抜いた。

 

 天候を変える程の威力を秘めたその一撃は、直撃を避けた筈の者達を、その風圧だけで吹き飛ばす。

 

『貴様はここで終わらせる...!その為に、私が来たっ!!!』

 

 オールマイトは今一度、自らの存在を突きつける。

 

 平和の象徴に悪の魔王、役者は出揃った。

 

 その勝敗が個性社会の未来を大きく左右するであろう頂上決戦が、今ここに始まろうとしている。

 

『覚悟しろっ!オール・フォー・ワ......2人ぃ!?』

 

 誰も予測できなかった突然の追加キャスト、ダーク・フォー・ワンの姿がそこにはあった。

 

 平和の象徴と悪の魔王の間に挟まった謎の不審者は、オールマイトを一目見て、喜びの声をあげる。

 

『会いたかったよ、オールマイトォォォ!!!』

 

 誰よりも趣味の悪い格好をしたその男の声は、此方もやはり、紛れもなく彼の宿敵のものだった。

 

 オールマイトは軽いパニックに陥る。

 

『貴様は何者だ、答えろ!!』

 

 2人目の大塚○夫ボイスに向かって、オールマイトは問いかけた。

 

『よくぞ聞いてくれた、オールマイト!僕の名はダーク・フォー・ワン!オール・フォー・ワンから次を託された新しい魔王さ!』

 

 平和の象徴からの質問に、金の仮面を付けた方の魔王はノリノリで答える。オールマイトは余計に混乱していた。

 

『つ、つまり、オール・フォー・ワンの部下という事か!』

 

『いや違うんだ、オールマイト。彼と僕は全くの無関係なんだよ。赤の他人なんだ。』

 

『な、なんだと!?』

 

 オールマイトは更なる混乱に陥った。

 

ありがとうございますオール・フォー・ワン!そう、僕とあの人はいわば戦友にして親友!対等な関係なんだよ!部下と上司なんていう、ありきたりな関係じゃない!!

 

『話がややこしくなるから、君は黙っていてくれ。』

 

 真の魔王はストレス由来の頭痛を感じながらも、ダーク・フォー・ワンという意味不明な男の存在を、できるだけ簡潔に説明しようと試みる。

 

『いいかい?僕がここの襲撃を計画したのは事実さ。でも僕が到着した時、そこには見知らぬコスプレ男がいたんだ。ソイツはUSJを改造して作った宮殿に、雄英生を勝手に閉じ込めている。因みに僕は、彼について何も知らない。......まあ、そういう事なんだ。』

 

『そんな馬鹿な話があるか!!!!』

 

『君と初めて意見が一致したね。オールマイト......』

 

 残念ながらオール・フォー・ワンの語った内容に嘘はない。現実は虚構よりもよっぽど奇天烈だった。

 

 そして、ただでさえ信用ならない宿敵の言葉を、オールマイトが飲み込むわけもない。

 

『何を今更!お前が部下であるあの男に、自分自身と瓜二つの格好を強要し、こんな趣味の悪い宮殿を作らせた事は分かっている!』

 

『ちょっと待った。』

 

 オールマイトの中では、オール・フォー・ワンへのイメージが思いもよらぬ方向性へと変化していた。

 

『1つ確認させてくれオールマイト。君は僕を、そんな低次元な事をする(ヴィラン)だと思っているのかな?』

 

『それが私の嫌がらせになるなら、貴様は喜んでやるだろう!』

 

『流石に心外だなぁ!』

 

 悪名高いオール・フォー・ワンだが、彼にだって、プライドや魔王としての矜持がある。意味不明なパワハラの濡れ衣を着せられるのは、耐えられなかったのだ。

 

『僕ならもっと、スマートかつ効果的な手段を使う!.....例えばそう、』

 

 少し迷った後に、オール・フォー・ワンは10年以上温存していた、とっておきの切り札を切る。

 

 正直、こんなところで使うつもりはなかったのだが、オールマイトとサシで対峙できる、またとない機会。(なんか変な金ピカは居るが)

 

 彼は今この場を、攻め時と判断する。

 

『僕の偽物のせいで、君と会わせる機会は奪われたがね。死柄木弔という少年がいる。』

 

『死柄木弔?何者だ?』

 

『僕の後継者さ。そして、先代のワン・フォー・オール継承者、志村菜奈の孫でもある。』

 

 オール・フォー・ワンの明かした事実に、オールマイトの顔は大きく歪む。その表情は、混乱と後悔に塗れていた。

 

 そんな宿敵の絶望に、魔王の心は満たされていく。

 

『っ!う、嘘だ!』

 

『本当だ『本当だよ!この僕が証人さ!!』...今、良いところなんだ。邪魔しないでくれ。』

 

『お師匠のご家族が....まさか、そんなっ...!』

 

 オール・フォー・ワンの目論み通り、平和の象徴の心は確かなダメージを負っていた。

 

『おやぁ?おかしいなぁ、オールマイト。笑顔はどうしたぁ?』

 

 魔王はその両手を上げ、仮面に覆われた自らの頬の辺りに触れる。笑顔を形作るように。志村菜奈が、かつてそうしていたように。

 

『ふふっ、やはり楽しいなぁ。他人の大切なものを奪うのは。』

 

 原作でのオールマイトを立ち上がらせたのは、その場に居合わせた人々の声援だった。しかし今この場には、彼を励ます人物はいない。

 

『しっかりするんだ、オールマイト!!魔王の宿敵として、そのザマはなんだ!!』

 

『『!?』』

 

 しかし、宿命のライバル(自称)として、彼を鼓舞する人物がいた。誰あろう、ダーク・フォー・ワンである。

 

『君は一体、どっちの味方なんだい...?』

 

 

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