ダーク・フォー・ワン『新時代を作るには何が必要だと思う?そう、人々の笑顔だ!』 作:バケギツネ
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平和の象徴・オールマイトが、2人の魔王との激闘を演じている頃。
場面は変わり、ここは警視庁のとある会議室。
薄暗い無機質な部屋の中で、集められた各部署の主要人物たちの視線を一身に浴びているのは、オールマイトとの交流も深い警察官・塚内直正だった。
彼の元にはまだ、現在雄英で起こっている、
敵連合襲来
↓
ダーク・フォー・ワン襲来
↓
オール・フォー・ワン襲来
というアホみたいな報告が届いてはいなかった。もしそれが耳に入っていれば、いくら感情の起伏の乏しい彼でも、その死んだ目ん玉を飛び出させ、良いリアクションをしてくれた事だろう。
『本日はお忙しい中、お集まり頂きありがとうございます。』
マイクの調子を軽く確かめた塚内は、資料の映し出されたモニターをバックに、慣れた様子で進行を務める。
『今日の議題は、先日密入国が確認された、ヨーロッパ最大級の犯罪組織・ゴリーニファミリーについてです。』
彼の言葉と同時に、モニターには何枚もの写真が映し出された。
『今回、日本に侵入した疑いがあるのは、組織の次期後継者である、バルド・ゴリーニ。そして、彼との関係が深い幹部数人であるとの事です。』
映し出されているのは、ゴリーニファミリーの構成員についてのデータだった。顔写真の有無、個性の記載の有無、その情報量は1人1人マチマチとなっている。
『詳細な情報が判明している者の中で、特に警戒すべきなのは奴らでしょう。』
画面に大写しになったのは、ペストマスクの顔と黒ハットを被った異形の男。
『奴の名は、パウロ・ゴリーニ。詳細は不明ですが、“個性を封じる個性”を持っているとの情報です。』
次にスポットが当たったのは、無表情な巨漢と、つば広帽子と紫ドレスを身に纏った女。
『瞬間移動系の個性を持つジル・ゴリーニ。そして、幻覚系の個性を操るデボラ・ゴリーニ。奴らも、決して無視できない存在でしょう。』
画面は再び切り替わる。
『最後に。奴らを束ねるバルド・ゴリーニについては、容姿や個性を含めた多くの情報が、未だ謎に包まれています。』
彼のデータはその殆どが“不明”で埋め尽くされていた。
『唯一の証拠は、イタリアのとある事件現場から検出された、奴の物と思われる指紋のみ。これだけを手がかりに、奴を発見・特定するのは困難というのが現状です。』
あらかたの説明を終えた塚内は、少し呼吸を整えた後に締めくくりに入っていく。
『なおバルド・ゴリーニは組織の方針を巡り、先代のボスである実の父親と対立関係にあるとの事です。今回の密入国に、それが関係している可能性も視野に入れて......
◇
『筋骨発条化+鋲+槍骨!!』
『
場面は戻り、ここはUSJの跡地。
2人の魔王による連携攻撃が、平和の象徴を着実に追い詰めていた。
『槍骨+増殖+肥大化+鋲突』
地面に叩きつけられたオールマイトに、無数に枝分かれした堅牢な触手が巻きつき、その動きを封じる。
『こんなものっ!OKLAHOMA SMASH!!!』
身体を回転させながらの打撃で、それを振り払うオールマイトだったが、その反撃で生じた隙をダーク・フォー・ワンが見逃しはしない。
人の機微には疎いくせして、偽の魔王はそういった点には目敏かったのだ。
『
オールマイトの頭上には、純金製のオール・フォー・ワンたちが、腐るほど大量に錬成されていく。
『うわぁ。』
『オール・フォー・ワン!!突然ですが、抱きしめていいですか?』
『......ん?何故だい?』
『では、お言葉に甘えて!!』
嫌がるオール・フォー・ワンに抱きついたダーク・フォー・ワンは、そのまま彼と共に瞬間移動を行い、オールマイトとの“間合い”をとる。
『
その上で、オールマイトに纏わりついていた金ピカオール・フォー・ワン‘sから錬成した十字架で、彼を磔にしてしまう。
『どうかなオールマイト!“アン・イデオロギー”。僕の個性の1つさ!!』
『なんだこれは!?ワン・フォー・オールが使えない...!?』
オールマイトに超パワーを与えていた個性は、使用不能に陥っていた。
『この個性は、相手と一定の間合いを保つ事で、その個性使用を封じ込める!逆に、自分自身や間近にいる相手には、個性の使用を妨げない!!』
個性についての説明を聞き、未だダーク・フォー・ワンに抱きつかれているオール・フォー・ワンは、ようやく合点がいく。
『なるほど。つまり、こうして密着している僕も、君と同様に個性を使えるというわけだね?』
『いえ、僕の半径五メートル以内にいれば、密着する必要はありません。ただこうしていると、僕は少しだけ強くなれる、そんな気がするのです。』
『じゃあ、今すぐ離れてくれるかな?』
ダーク・フォー・ワンを鬱陶しげに引き剥がし、スーツの新調を決意するオール・フォー・ワンだったが、その働きについては高く評価せざるを得なかった。
『礼を言うよ。ダーク・フォー・ワン。』
『っ...!!!!!お、おおっ、お、オ、オール・フォー・ワン!ようやく僕をっ、その名前でっ!!!』
『相変わらず、君が何者かについては全く心当たりがないが、ここまで役に立つなんて思いもしなかった。よくやったね。』
『ありがとうございます、オール・フォー・ワン!僕には勿体ないお言葉です!!』
涙を流して再度抱きつこうとしてくる偽魔王を華麗にスルーしたモノホン魔王は、動けない宿敵へと向き直る。
『それにしても無様だなぁ、オールマイト。こんな敗北は、予期していなかっただろう?どうやら僕の方が、No.1ヒーローである君よりも、”ファン“に恵まれていたみたいだ。』
『貴様っ....!』
魔王の放った空気砲が、象徴の脇腹を掠める。その場所は、5年前の戦いで、オールマイトが内臓をぶち撒けた箇所であり、彼の最大の急所ともいえる部位。
しかし、そこを撃ち抜かれても尚、オールマイトの瞳から闘志が消える事は無かった。
『眉1つ動かさないか。ここまで来ると恐怖すら感じるよ。一体何が、君をそこまで突き動かすのかな?』
『ヒーローである事。象徴である事。先代たちから思いを託された事。守るべき市民の幸せがある事。応援してくれる人がいる事。戦う理由も、負けられない理由もっ、ありすぎて困るほどさっ!!』
怖い時こそ、辛い時こそ、オールマイトは胸を張って笑顔を浮かべる。
『.........』
『ふふっ、素晴らしい!平和の象徴として、これ以上ない程の最高の遺言だよ。』
オールマイトに心無い拍手を送った魔王。彼の顔には、オールマイトとは似てもにつかない醜悪な笑顔が浮かんでいた。
『さて、さっきから考えているんだ。君にとって、一番嫌な死に様は何かってね。』
オール・フォー・ワンは、平和の象徴をジッと見つめるダーク・フォー・ワンの肩に、手を触れた。
『そこで思いついた。トドメは君が刺すんだ、ダーク・フォー・ワン。』
『僕が、ですか...?』
『ああ。最強のヒーローを終わらせるのは、魔王でも何でもないポッと出の新キャラ。何とも痛快な悲喜劇じゃないか。』
オール・フォー・ワンは、カラカラと愉快そうに笑う。
『しかし、もう勝敗はついています!動けない相手にトドメを刺すなど、魔王として相応しくは
『これも、“僕たち”の覇道の為さ。やってくれるね?』
『僕はっ....うっっ!!!!』
その時だった。
ダーク・フォー・ワンの身体を形成していた黄金は崩れ、別の姿へと変形を始める。
『がああぁあぁああ!!』
『? どうしたんだい。』
予想外の事態を前に、オール・フォー・ワンすらも混乱していた。
『オール・フォー・ワン...!...げて、逃げてっ......くださいっ....!!』
金のドロドロに身を包んだままのダーク・フォー・ワンは、頭を抑えて苦しみながらも、魔王に何かを伝えようとしていた。
『抑えっ、きれないっ...!!!“奴”が来るッ!!!うっ、うわあああああああああああああああ!!!』
ダーク・フォー・ワンのシルエットは崩れ、新たな影が浮かび上がる。黒の全身タイツは純白の白スーツへと変わり、はためいていたマントも消えていた。
彼の顔を覆っていた金色の仮面はドロリと溶けて、新たな顔を錬成する。
『どうなっている...?』
その顔はまるで、
『オールマイ
『うおおおおお!!!』
ダーク・フォー・ワンだった者の拳が、魔王に牙を剥く。その一撃をモロに食らったオール・フォー・ワンは、呼吸器を粉々に砕かれながら、宮殿に建てられていた自身の黄金像へと吹き飛ばされていた。
『オールマイト、もう大丈夫!俺が来た!!』
声色すらも変化している“元”ダーク・フォー・ワンは、唖然としているオールマイトに、笑顔を向ける。
『お前は本当にっ、何者なんだ?』
真の象徴からの問いに対し、“偽物の象徴”は答えを告げた。
『俺の名は、シャイニングマイト!この混沌に希望の光をもたらす、天下無敵の新たな英雄だ!』
優勢かに思われたオール・フォー・ワンの前に立ちはだかったのは、ダーク・フォー・ワンとは真逆の信念を持つ、オールマイトにそっくりの人物。
『さあ、シャイニングマイト伝説の、幕開けだぜっ!』