TS幹部さんは推しの魔法少女を『改造』したい   作:廃棄工場長

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第十八話 新しい玩具

「ふう……一仕事が終わった後の休憩で、苦悶に歪む女の子達を眺めるのは格別ですなぁ……」

 

 

 その場の勢いとはいえ、『アクニンダン』の首領――『ボス』に不意打ちという形ではあるが、下剋上を果たしてしまった僕。

 

 

 『ボス』を『シャドウ』さんでガチガチに拘束した状態で、『調整』用のカプセルに突っ込んだ後。僕は急いで、次の行動に移った。

 

 

 『ボス』が他の幹部達にどう思われているのかは、交流の少なかった僕の知る由もないのことだが、あの『ボス』が自ら勧誘したメンバーだ。

 ウィッチのように恐怖で従っていれば良いのだが、そうではないだろう。もしもそうなら、とっくの昔に離反して『ボス』の怒りに触れて、この世にはいないはずであるからだ。

 

 

 つまり、僕を除いた幹部達は『ボス』に悪感情を抱いている者はいないということになる。まだ利用価値がある為『ボス』は始末していないが、トップが不在になったことで我こそはと組織を乗っ取ろうとする者がいるかもしれない。

 『ボス』に心酔している幹部から襲撃を受ける可能性もある。

 

 

 アマテラスを迎える準備が整っていない内に、死ぬ訳にもいかない。という訳で、『生体改造』を施した高性能ボディの試運転も兼ねて、先手を打って他の幹部達を襲撃。

 他の『試作品』達の援護もあり、驚く程に順調に捕獲することができた。

 

 

 今は『ボス』の近くのカプセルで、仲良く『調整』中である。

 

 

 反逆の可能性がある幹部達の無力化という、『アクニンダン』の新首領としての初仕事は無事に終わった。

 

 

 今は増設したラボで、新しく『試作品』の仲間入りをした元幹部達の様々な表情や悲鳴を肴にして、茶をしばいていた。

 

 

 しかし、次は何をするべきだろうか。絶対に安全とは言えないが、『ボス』と幹部達はこうして拘束している。少なくとも、背後から刺されて夢半ばにして第二の人生が終わることはないはず。

 組織内の不安の芽は摘んだ。だとすれば、フィナーレを彩る為の準備。その第一段階に取りかかるとしよう。

 

 

 自業自得とはいえ、ほぼワンオペで『アクニンダン』を運営することになってしまったのだ。『調整』の序でに、『ボス』の記憶を見ておかないと。

 

 

 始めは興味の素振りもなかった『ボス』が何故突然に、アマテラスに興味を持ち始めた理由。『ボス』が語っていた、幹部達すら把握していなかった『アクニンダン』の真の目的。そして、『ボス』の過去。

 

 

 成り行きで新しい首領となってしまったが、僕には知らないことが多すぎる。その問題も、『ボス』の記憶を読み解けば解決するだろう。

 それに――。

 

 

「――アマテラスを曇らせるのに使える何かがあるかもしれないからね」

 

 

 あの『ボス』がアマテラスに執着した理由。当然、僕が彼女を殺すようなことをする訳はないが、『ボス』が行う予定であった計画には参考になる部分は必ずあるはずだ。

 

 

 先日のウィッチの件で見たアマテラスの姿からは、少し前まで絶望に染まっていたとは思えない程に凛々しく、正義のヒロイン然としていた。

 

 

 新しい魔法の力にも覚醒し、一ファンとしても嬉しかったのだが、今のアマテラスを曇らせるとなると生半可な手段は通用しそうにない。

 

 

 それができそうであったウィッチも、あっさりと僕の『生体改造』の支配下から解放させられてしまった。その一連の流れは本当に素晴しく、新しい玩具(・・)を仕上げるスパイスにもなったので良かったのだが。

 

 

 新しい玩具で思い出した。ウィッチでは、あまりアマテラスの新たな力を拝見することはできなかったので、彼女の新鮮な曇った表情を見る為に、玩具(・・)の『調整』を頑張るとしよう。

 

 

「――じゃあ、休憩は終了。いっぱい良い声で鳴いてよね。ダイヤモンド・ダスト?」

 

 

 そう僕は、『ボス』や幹部達とは離れた場所に配置されたカプセルの内部にいる少女に声をかけた。

 

 

 

 

 先日の一件にて、『アクニンダン』に拘束された一人の魔法少女がいた。彼女の名前は、ダイヤモンド・ダスト。

 

 

 昼間の街に現れて、一般人や魔法少女に関係なく大きな被害を齎した『改造人間』第五号(ウィッチ)を止める為に派遣されたダイヤモンド・ダストだが、『魔法庁』はそれ以降の彼女の行方を把握することができていなかった。

 

 

 正確に言えば、『魔法庁』にそれだけの余裕がなかったのだ。

 『改造人間』第五号(ウィッチ)による甚大な被害。周辺住民の避難誘導に、同時に出現した高難易度の魔物の討伐。

 それらへの対処で一時的にとはいえ、『魔法庁』の機能はパンク寸前に追い込まれていた。

 

 

 そして、止めに『改造人間』第五号(ウィッチ)を倒したアマテラスの存在である。

 『魔法庁』のデータベースに記録されている彼女の情報では、性格は良く活動熱心ではあったが中堅以下の力を持ち合わせていないはずだった。

 

 

 けれど現に大衆の目の前で、命を奪わずに『改造人間』第五号(ウィッチ)を倒した。

 そのアマテラスとウィッチの処遇を巡り、『魔法庁』は復興作業も合わさり、上から下にてんてこ舞いであった。

 

 

 ――トップ層に位置するとはいえ、一人の魔法少女の行方不明が発覚するのが遅れるぐらいには。

 

 

 流石の『魔法庁』もダイヤモンド・ダストが、『アクニンダン』に捕まっているとはつゆ知らず。肝心の本人は、その『アクニンダン』のアジトにて囚われていた。

 

 

 囚われの身であるダイヤモンド・ダストの扱いは決して良いものではなく、彼女は声なき悲鳴を絶えず上げていた。

 

 

(――嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ! もう見たくない、見たくないっ!?)

 

 

 ダイヤモンド・ダスト専用に作られた特製のカプセルに満たされた液体の中で、彼女は四肢を動かせないように枷を嵌められて、『ある映像』を四六時中見せられていた。

 

 

 その『映像』の内容とは、ダイヤモンド・ダストが助けると誓った少女(ウィッチ)がアマテラスに止めを刺される直前をひたすらにループするというもの。

 

 

 実際には、ウィッチは――アリサはフランの魔法『生体改造』の影響下から解放されており、『改造人間』でも『アクニンダン』の幹部としての力も失っていて、ただの少女に戻っているのだが。

 途中から視界を塞がれて、アリサが救われる光景を見ることができなかったダイヤモンド・ダストは、未だにアマテラスが止めを刺したという勘違いをしていた。

 

 

 そんな彼女が――魔法少女として正義感の強い少女が、自分がした約束が守れない象徴を延々と見せつけられて、果たして正気を保てるだろうか。

 

 

 結果はご覧の通り。ダイヤモンド・ダストは、自責の念で潰れそうになっていた。当初はアマテラスに対する憎悪があったのだが、映像の最後に映るアリサの全てを諦め切った風の表情を見せ続けられることで、自責の念――というよりかは、無力な自分への憎しみへと変化していた。

 

 

 しかし、怒りという感情は意外と長続きしないものらしい。ダイヤモンド・ダストが自分自身へと向けていた怒りは小さくなり、やがては助けられなかったと思っているアリサへの謝罪、見せ続けられる映像から必死に目を逸らそうとしていた。

 

 

(――ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい)

 

 

 端的に言うと、ダイヤモンド・ダストの精神は壊れかけていた。

 

 

 そもそも成人もしていない年若い少女が、今のような状況に置かれてこうなるのは当然だろう。

 むしろ『調整』の方向性が違っていたとはいえ、決定的な瞬間を迎えるまで正気を辛うじて保っていたアリサの方が例外だった。

 結局離反したけれど、彼女も『アクニンダン』の幹部に勧誘される程度には、どこか常人とは外れていたのかもしれない。

 

 

 話は少し逸れたが、フランが雑に編集をした映像を見ることをダイヤモンド・ダストには拒否することができなかった。

 目を瞑ったり、頭を逸らそうとした瞬間には彼女に付けられた首輪から電流が流れる仕様になっていて、映像を見続けることが強制されていた。

 

 

 逃げることのできない精神的な拷問を受けるダイヤモンド・ダストの元に、近づく人物が一人。公式的には発表されていないが、『アクニンダン』の新首領のフランであった。

 彼女の顔には、見る者に嫌悪感を抱かせるような笑顔が張り付いていた。

 

 

「うふふ。相変わらず良い表情だねぇ、ダイヤモンド・ダスト。無力な自分が起こした過ちをずっと見ているのって、どんな気分かな?」

(もう嫌です見たくないです早く楽にしてください痛いのも嫌なんです!)

 

 

 歪な笑みを浮かべるフランに、ダイヤモンド・ダストはこの地獄から解放してくれるように懇願をする視線を送るが、それは異常者(フラン)にとっては興奮する材料にしかならなかった。

 

 

 もしも、ダイヤモンド・ダストに冷静な判断力が残っていたら、全ての元凶がフランであることに気づけたのだが。

 現状の彼女に、それを求めるのは誰が見ても不可能だと判断するだろう。

 

 

「何を言っているか分からないけど、喜んでくれているのかな?」

(――お願いしますお願いします私をもう殺して)

「だけど、最近は反応がワンパターンになってきてつまらないなー。……うーん。そうだ! そろそろ実戦に投入しても良いかも。

 ――ねえ、ダイヤモンド・ダスト。僕のお願いを聞いてくれたら、君の望みも叶えてあげるけど。どうする?」

(私は――)

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