【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~   作:初雪空

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明らかになった、召喚儀式の実行犯。
今日、ベル女で召喚された存在によって世界が終わる。

4巻目は、ついにバトルへ!
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第20話 相容れない存在

 血だらけのワイシャツでスーツを着ている吉見(よしみ)は、壁に背を預けて座り込んだまま、顔を上げた。

 

 肌を焼いたときの臭いが漂う住宅の中で、強面を歪ませる。

 

 本人としては、笑ったつもりか。

 

「とりあえず、礼は言っておく……。おかげで助かった」

 

 向き合ったまま片膝をついている(りょう)愛花莉(あかり)は、無言で片手を差し出した。

 

 手の平を上に向けている。

 

「取り上げた銀の弾丸(シルバー・ブレット)……セミオートマチックを返しなさい。さっきの連中は、すぐに戻ってきますわよ?」

 

 そっぽを向いた吉見が、とぼける。

 

「あいにく、ここへ来るまでに落としちまってな……。すまん」

 

 雰囲気を変えた愛花莉は、もう一度だけ、繰り返す。

 

「同じことを言いたくありません。シルバー・ブレットを返しなさい! お前のくだらない駆け引きのために使うのは、絶対に許しません!」

 

 床に座り込んだままで、吉見がまっすぐに見つめ返した。

 

「それは、こっちのセリフだ……。お前がもっと早く俺たちに協力していれば、明大(めいだい)自汰(じた)教授だけではなく、その研究室の学生も迷い込まずに済んだかもしれないんだぞ!?」

 

 シルバー・ブレットという(バレ)があれば、事件に魔法師(マギクス)が関係していた証拠となる。

 

 巻き込まれた男子も、証人だ。

 

「梁あかり……。確か、そうだったな? 同じ名字でそのキャンパスに住んでいる学生の梁有亜(ありあ)にも、事情を聴かせてもらうさ」

 

「お母さんを巻き込むつもり……」

 

 愛花莉が感情的になれば、自汰教授の研究室にいる男子、草道(くさみち)が割り込む。

 

「ちょっ! ちょっと待ってください! 今は、そんな場合じゃないでしょう!?」

 

 ようやく自分のペースにできたタイミングとあって、吉見は心の中で罵倒した。

 

 (なだ)め役になるつもりだった女刑事、八代(やしろ)沙矢(さや)も、肩透かし。

 

 ここで、とにかく情報を引き出したい刑事コンビと、自分が助かりたい大学生の温度差になった。

 

 大きく息を吐いた吉見は、宣言する。

 

「この応急処置と、さっきの氷柱(つらら)を見る限り、お前は魔法を使えるだろう? 銃を返す必要があるとは思えない。……今は非常時だ! 魔法の不正使用については擁護しよう。約束する」

 

 恩着せがましく言われたことで、愛花莉は深呼吸。

 

 笑顔を作り、言い返す。

 

「帰れるといいですわね? では、失礼」

「あ、愛花莉ちゃん! 少し待ってくれるかな?」

 

 立ち止まった女子は、不機嫌そうに振り返った。

 

 草道は刑事2人に向き直り、早口で言い切る。

 

「ここへ逃げてきた近藤(こんどう)は、どこですか? あなた達が追跡したと思いますが」

 

 少し間があって、座り込んだままの吉見が答える。

 

「この住宅へ入ったところまでは、見たぞ? 俺たちも突入して、すぐに探したんだが」

 

「いなかったのよ、どこにも!」

 

 沙矢が、結論を述べた。

 

 彼らが話している間に、愛花莉は魔法によるサーチを終えた。

 

「その方は、もう別の場所へ移動しましたわね……。運が良ければ、自力で脱出するでしょう」

 

 言っている本人が、その未来をまったく信じていない様子。

 

「一応、その痕跡を見ておきます?」

 

「あ、うん!」

 

 草道は、慌てて返事をした。

 

 スタスタと歩き出した、ブレザーの女子高生についていく。

 

「いったい、どこに――」

 

 吉見の声が追いかけてきたが、無視する愛花莉。

 

 

 1階から地下室に通じる階段。

 

 その入口で、愛花莉は途中まで溜まっている泥水を眺めた。

 

「錯乱していたか、モンスターや特殊部隊に追われたか……。よりによって、こことは」

 

 ただでさえ薄暗い室内で、地下室へのルート。

 

「暗いし泥水だから、全く中が見えない……。確かに、こんなところへ潜ろうとは思わないよ、普通!」

 

 隣に立つ草道も、呆れている。

 

 ふーっと息を吐き、仲間のことは諦めたようだ。

 

 着衣水泳の難易度は、想像を絶する。

 水の抵抗が大きすぎて、まともに泳げず。

 

 さりとて、ウェットスーツなしの裸では、体温を失って終わり。

 

 視界ゼロの水中は、洞窟のダイビングと同じ。

 

 内部の構造も分からず、下手をすれば、海水と真水が混ざっていて浮力も変わる、死に一番近い場所。

 

 

「あの……。本当に、ここへ潜っていったの?」

 

 見張りのつもりか、沙矢もいた。

 

 愛花莉は、彼女も無視する。

 

 当たり前だ。

 

 

 1階を歩く2人は、最終確認をする。

 

「ここから移動しますわよ? 覚悟なさい」

「ああ……」

 

 その時に、野太い声が響く。

 

「八代も、連れて行ってくれないか!?」

 

 息を吐いた、愛花莉。

 

 いっぽう、その八代沙矢は血相を変えて、吉見のところへ走っていった。

 

 それを見届けた愛花莉は、草道に告げる。

 

「私から絶対に離れず、タイミングも合わせなさい! さもなければ、あなただけ別の場所に飛ばされますわよ?」

 

「わ、分かった!」

 

 言いながらも、吉見を見捨てないと思しき沙矢の大声を聞いて、物言いたげだ。

 

 喧嘩をしているような会話を耳にした愛花莉は、あっさりと告げる。

 

「あの女刑事も残りたいようですから、好きにさせますわ。あなたは?」

「一緒に行くよ、もちろん!」

 

 2階に上がり、とある部屋のクローゼットを開けた先に踏み出せば――

 

 そこは、引っ越しが終わった後のオフィスのような室内だった。




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