【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~   作:初雪空

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明らかになった、召喚儀式の実行犯。
今日、ベル女で召喚された存在によって世界が終わる。

4巻目は、ついにバトルへ!
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第二章 月光の下でのかぐや姫の娘
第25話 原作にはなかった開門搏撃拳の来日


 とある道場の中。

 木の格子から差し込む光で、ぼんやりと照らされる板張りの床。

 

 そこに、若い男が動きやすい服装のまま、座っていた。

 

 普段ならば、多くの門弟がズラリと並び、上座に立つ師範代なりの模範演舞に従っての稽古だろうが――

 

 今は早朝で、その男だけ。

 

「いよいよか……」

 

 黒髪を後ろにまとめて縛っている男は、端正だが気難しそうな顔で、その黒目によって周りを見る。

 

 スッと立ち上がり、ストレッチのように、ゆっくりと手足を伸ばしていく。

 

 一見すると子供の遊びだが、その状態を保つには相当な修練が必要。

 

 いかにも大陸風で、道場の内装や、彼の服装もそうだ。

 

 動物の動きを参考にした象形拳(しょうけいけん)にしては、そっけない。

 南北で大きく分かれるものの、それらは指を重視した技が多く、相手の急所をつかみ、そのまま握りつぶすか突く。

 

 彼の動きは、どちらかといえば、体の全体を重視したもの。

 ダイナミックで、悪く言えば、素朴だ。

 

 しかしながら、それを侮った相手は、すぐに後悔するだろう。

 

 この拳法は、相手に触れた時点で壊す。

 

 威力だけを追求して、門弟を集めるための見せ技をあまり考えない。

 その在り様は、多くの拳法の中でも特異。

 

 徐々に上がるスピード。

 

 風切り音が響き始めて――

 

「ここにいたのか、飛龍(フェイロン)!」

 

 30代の後半ぐらいの男が、叫んだ。

 

 永 飛龍(ヨン・フェイロン)は、片足を上げたまま動きを止め、顔だけ向ける。

 全く揺らがない姿勢が、彼の努力を物語っていた。

 

「まだ時間はあるだろう、親父?」

 

 長い黒髪を後ろで縛った、薄い青の瞳をした永 俊熙(ヨン・ジュンシー)は、笑った。

 

「国際線だぞ? すぐに移動しないと、空港で日をまたぐぜ!」

 

「分かった……。今、行く」

 

 

 ――国際空港

 

「はー、間に合った! お前のワガママに付き合っているんだから――」

「元はと言えば、親父のせいだ」

 

 旅客機のファーストクラスに入った親子は、言葉のドッジボール。

 

 言い捨てた永 飛龍(ヨン・フェイロン)は、席に座る。

 

 息を吐いた永 俊熙(ヨン・ジュンシー)も、自分のシートへ。

 

 別々の席で、間隔が空いているため、会話もない。

 

 

 飛龍(フェイロン)は、せまい窓から大空を眺めつつ、思う。

 

(日本……。俺の母親をコケにした女の子供がいる国か)

 

 小袋から取り出したナッツを握りしめながら、決意を新たにする。

 

(我が開門搏撃拳(かいもんはくげきけん)の柔拳において印可を授けられ、親父の子供ができたうえ、正妻として迎えたというのに!)

 

 握っている拳の中で、ナッツが砕けた。

 

(何が不満だ!? こちらの秘奥を2つも抱えて、日本へ逃げ帰るとは……)

 

 チラッと、父親である俊熙(ジュンシー)のほうを見た。

 

 個別のシェルの中で、暢気にくつろいでいるようだ。

 

 ため息を吐いた飛龍(フェイロン)はシートを後ろに倒し、自分のスマホ――機内モード――を利用者向けの無線LANに繋ぐ。

 

 イヤホンで音楽を聴きながら、取り留めもなく、ニュースを見る。

 

 表示している画像には、女子高生ぐらいの女子が1人。

 

 ストレートで長い黒髪と、紫の瞳。

 日本の着物で、撮影者に微笑む。

 

 童顔だが、思わず見惚れるほどの美貌。

 

 しかし、それを見る飛龍(フェイロン)の顔は険しい。

 

 まるで、親の仇を見るような目つき。

 

(確か、板村(いたむら)迦具夜(かぐや)と言ったな?)

 

 

 大陸の東アジア連合から日本へ向かう国際線。

 そこにいた乗客の親子は、誰あろう、時翼(ときつばさ)月乃(つきの)に因縁が深い人物だった。

 

 原作【花月怪奇譚(かげつかいきたん)】のヒロインである彼女は、どのルートでも非業の死を遂げる。

 

 その運命は室矢(むろや)重遠(しげとお)の手で打ち砕かれたが、月乃にまつわるエピソードはまだ終わらない。

 

 死ななかったからこそ、だ。

 

 

(板村の返答によっては……。門派を守るため、母子ともに殺すしかない)

 

 飛龍(フェイロン)は、開門搏撃拳の次期宗家の候補者として、当然の考え。

 

 むしろ、今まで泳がせていたのが、異常すぎたのだ。

 

 その理由は――

 

(老師も老師だ! この悪女の肩を持ち、門派での将来と国を捨てるとは……)

 

 全ては、板村迦具夜が原因だ。

 

 そう考えるのも、無理はない。

 

 何にせよ、過去からの使者たちは、日本の大地を踏みしめた。

 

 

 ――東京の国際空港

 

「おー! 大陸より湿気がすげーな?」

「早く行くぞ、親父」

 

 スーツ男たちに荷物を預けた飛龍(フェイロン)は、そっけない。

 

 肩をすくめた俊熙(ジュンシー)も、それに続く。

 

 高級車の後部座席に乗り込んだ2人は、横浜の大陸街へ向かいながら、話し合う。

 

「季 一诺(チー・イーヌオ)は、もう長くないらしい……。大陸に残っていれば間違いなく高弟として、あるいは1つの流派を築いただろう。残念だよ」

 

「老師が半生を棒に振った原因の親父が言うか!?」

 

 しょげた俊熙(ジュンシー)は、言い訳をする。

 

「分かってる……。だが、最後に顔を見て話したい。それすら、ダメだと?」

 

「……そこまでは言わん」

 

 しかし、飛龍(フェイロン)は向き直った。

 

「親父? 俺は、まだ納得していない! 日本にいるはずの板村迦具夜とその子供が分かれば、話をするぞ? ……子供について、本当に知らないのだな?」

 

 まっすぐ見た俊熙(ジュンシー)は、首肯した。

 

「ああ……。先祖と開門搏撃拳の宗家の座に誓って! 少なくとも、迦具夜の行方を知らないし、子供は名前すら不明さ」

 

「なら、いい」

 

 

 1つだけ言えるのは、室矢重遠くんに死亡フラグがまた増えたことだけ。

 

 強く生きろ。




過去作は、こちらです!
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