【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~ 作:初雪空
「
大陸語の叫び。
そちらを見れば、永 飛龍(ヨン・フェイロン)が立ち上がっていた。
「
壁際に並んでいた弟子一同と、上座の師範代らしき連中が言い返しているが、全く理解できず。
むろん、
アウターをその場に落とし、前に歩み出てきた後で、手足を動かしている。
少なくとも、握手のつもりではなさそうだ。
……ここまで、俺のために翻訳してくれる人はいない。
「よせ、
「親父は黙っていろと、言ったはず! こいつは、あの女の弟子だ! ならば、俺が叩く!」
その剣幕に、永 俊熙(ヨン・ジュンシー)は口を閉じる。
道場が静まり返った。
向かい合った
「貴様も構えろ……。さもないと」
――死ぬぞ?
瞬く間に、
柔拳のため、そのまま押し込むようにショルダーアタック。
ダンスのように合わせて、側面へ回り込む歩法でかわす。
相手は拳をねじり込む必要がなく、触れるだけ。
そこから、
厄介なのが、相手に密着して見ないままでの連撃だ。
素直に後ろへ下がると、前へ踏み込み、突きから肘。
全てを躱しきるのは不可能で、ぶつかってきた箇所はこちらもぶつけて相殺。
本来は、相手の腕をどかしつつ、確実に仕留めるまで動くのだが……。
俺を
意外にも、
ざわつく、ギャラリー。
一撃必殺の拳法としては、下がることは負けたに等しいのだろう。
◇
(すごい……)
アイススケートをしているかの如く、鮮やか。
相手が動いているタイミングで崩すか、途中で止める。
それは、床に接している足を邪魔することで、
死に
(確かに、これなら密着して浸透させる武術にも対抗できるね?)
月乃は、素直に感心した。
同時に、戦っている
(高校生で、あれだけの技術と判断……。これが、その道だけに邁進している人間の実力か)
打撃技は、相手の間合いに入ることを意味する。
少しでも読み間違えるか、対応しきれなければ、まともに食らうのだ。
ならば、大陸を代表する勢力の次期宗家についていく重遠は、いったい何だ?
(重遠に、ボクの母親と稽古をできるはずがない……。お互いの年齢を考えれば……)
殺し合いと化した組手が続く。
工事現場で基礎工事をやっているような衝突音。
直線に手足の円運動による体捌きの
(ベル女の交流会では、ボクも重遠と戦った。でも、これほどの技術は……)
あの時に、わざと隠していた。
だとしても、次期宗家候補と対等に戦える腕は、おかしすぎる。
月乃は消去法で、結論を出す。
(やっぱり、お母さんが教えたんだ……。でも、どうやって?)
まだ幼い自分を置いたまま、先に死んだ母親。
それも、志願する形で。
ベルス女学校にいた母親と同年代で、一緒に過ごした
なぜ、自分に母親だと打ち明けなかったのか?
なぜ、死地へ行ったのか?
真実を知らない月乃にとっては、まさに愛憎の対象だ。
いずれは、愛澄か重遠に尋ねようと思うが――
摺り足で後ろへ下がった
見れば、先ほどまでと迫力が段違いだ。
そのプレッシャーで、服越しに身を削られているよう。
(くっ……)
何とか
道場内の格子や壁がビシビシと鳴り、板張りの床が凹む。
その張本人である
「感謝するぞ、室矢! 貴様のおかげで、俺はあの女への決着をつけられる!」
殺す気だ。
そう思った月乃は、声を出そうとする。
けれど、
「最期に……言っておきたいことはあるか?」
自然体のまま、両手を下ろしている重遠は、静かに述べる。
「お前は……似ている。
やはり、月乃には意味が分からない。
けれど、
「そうか……。では、いくぞ!」
放出していたオーラが止み、それを内側に秘めた弾丸が放たれた。
間合いで繰り出された拳に対して、正面から向き合った重遠が差し出した手の甲が逸らしつつも、彼の外側へ滑っていく。
すかさず、
重遠は素直に後ろへ吹き飛び、相手が攻撃する直線上から逃れた。
相変わらず、アイススケートのような歩法。
その動きから
カウンターでぶつけようとした
その着地点に突進した
お互いの両腕が違う生き物のように動き、目まぐるしくポジションを変えながら、相手を見たまま離れた。
どちらも、肩を上下させる。
戦っている2人に、誰も言葉を発しない。