【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~   作:初雪空

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明らかになった、召喚儀式の実行犯。
今日、ベル女で召喚された存在によって世界が終わる。

4巻目は、ついにバトルへ!
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第30話 勢いで誤魔化した感が強い

 どれだけ鍛えようとも、限界がある。

 

 例えば、ボクシング。

 

 限られたウェイトで計算された筋肉をつけながら、対戦相手を研究する。

 だが、最後に勝敗を決めるとなれば、我慢比べの根性論になることも。

 

 まして、全身を使う打撃系で、休憩タイムがなければ――

 

 振り回すような拳に、片腕で受け流す。

 

 カウンター気味で、ローキックからの頭突き。

 

 密着している永 飛龍(ヨン・フェイロン)が後ろによろめくも、すぐに体当たりからの突き上げ。

 

 今度は、こちらが後ろに下がる。

 

 どちらも息が上がっていて、もはや技とは呼べない応酬だ。

 普段ならカウンターをとられる大振り。

 

 そもそも、飛龍(フェイロン)は一撃必殺の拳法。

 いくら連撃でも、ここまでの長期戦なぞ、想定していないのだ。

 

 俺も同じ。

 ただの喧嘩だ。

 

 打撃がぶつかり合う鈍い音が、しばらく続いた。

 

 やがて、後ろにふらついた男子が、さらに後ろで立つ人物に支えられる。

 

 彼の父親の永 俊熙(ヨン・ジュンシー)だ。

 

「倒れるな、飛龍(フェイロン)! お前は、開門搏撃拳(かいもんはくげきけん)の次期宗家候補だろ?」

 

 肩を上下させた男子は、首肯するだけ。

 

 それを見た俊熙(ジュンシー)が、宣言する。

 

「この室矢(むろや)水平波状拳(すいへいはじょうけん)の達人と認め、同時に時翼(ときつばさ)月乃(つきの)を任せるに足ると判断する! 異議がある者はいるか?」

 

 日本語で言った後に、大陸語で続けた。

 おそらく、俺向けと、ここにいる弟子に向けてだ。

 

 そして、師範代の力を示す立ち合いも終わった。

 

 フラフラのまま、月乃に付き添われ、大陸街を後にする。

 

 

 ――数日後

 

 派手に殴り合ったことで、ダメージが抜けない。

 

 スマホが鳴ったから、手に取る。

 

「はい……。月乃か」

 

 用件は、とてもシンプル。

 

 大陸武術の道場で会った季 一诺(チー・イーヌオ)が亡くなったと。

 

 月乃は泣いていて要領を得なかったが、葬儀に出ることを約束。

 

 

 ――葬儀

 

 大陸式か、この門派の独自か。

 よく分からないまま、やり過ごした。

 

 民族衣装や稽古着のような服装の人々は、それぞれに集団を作る。

 

 月乃にとっての一诺(イーヌオ)は母親と自分の恩人で、武術の師でもあったが……。

 

(俺には他人だな)

 

 数日前、いきなり会った人間だ。

 

「室矢! こいつから目を離すな! お前の実力は見せたが、誰が何をやり出してもおかしくないんだぞ!?」

 

 男子の声で、我に返る。

 見れば、泣き腫らした月乃を連れた飛龍(フェイロン)

 

 それにしても、武術の宗家の嫡男だけに、めちゃくちゃ強そうな名前だ。

 

「あ、ああ……。すまない」

 

 傍に立つ月乃は、(うつむ)いたままだ。

 

 飛龍(フェイロン)は忙しいだろうに、わざわざ連れてきたのか。

 意外に、面倒見がいい奴だな?

 

 息を吐いた奴は、周りを見た後で、小声に。

 

「腹違いとはいえ、こいつは姉だ……。こいつの母親には思うところがあるし、文句を言い尽くした上でぶっ飛ばしたかったがな?」

 

 なるほど。

 自分の父親を誘惑した女は憎いが、まだ生まれていなかった娘に罪はないと。

 

「その辺は、お前との立ち合いでスッキリした。殴る相手がいて、日本に来た甲斐があったな?」

 

 ニヤリと笑った飛龍(フェイロン)は、手短に告げる。

 

「今後は、こいつを含めて大陸街に近づくな! ウチも一枚岩ではない。メシを食ったら意識を失って攫われるか、闇討ちや毒ナイフで刺されても、知らんぞ? あまり言いたくないが、大陸のほうは手段を選ばん! 俺も、信用できる人間とだけ付き合っている。そいつら以外は、全て敵だ」

 

「肝に銘じておく……」

 

 怯えた月乃は、俺にしがみついた。

 

 誰かが近づいてきたことで、飛龍(フェイロン)はスマホを取り出す。

 

「嫌ならいいが、SNSアプリの連絡先を交換しないか? とりあえず、だ」

 

「分かった」

 

 これ以上の会話は難しいようだ。

 

 別れれば、もう一度会うことは不可能。

 今後の方針を立てるため、情報が欲しい。

 

 

 ――さらに数日後の国際空港

 

 VIP用の待合室で、俺たちは向き合っていた。

 

 サッパリした雰囲気の飛龍(フェイロン)が、ソファに座ったまま、話し出す。

 

「お前たちには、色々と面倒をかけたな? 俺の顔を見たくないかもしれんが、お互いの立場を考えれば、こうやって顔を合わせるのは最後になる」

 

 息を吞んだ月乃は、おずおずと話し出す。

 

「あの……。どうして、ボクの母親をそこまで敵視するの?」

 

 全員が見つめる中で、座っている飛龍(フェイロン)は腕を組んだ。

 

「お前には、聞く権利がある……。そうだな、どこから話したものか」

 

 やがて、飛龍(フェイロン)は口を開いた。

 

「そもそも親父の許嫁(いいなずけ)は、俺の母親、雪玲(シューリン)だった」

 

「え?」

 

 驚いた月乃がチラリと見てきたが、俺はお前の母親ではありません。

 知らんよ。

 

 頷いた飛龍(フェイロン)は、腕を組んだまま、説明する。

 

「時系列で並べると、まだ幼い親父と雪玲(シューリン)が家同士で約束を交わし、その後にお前の母親がやってきた。……安心しろ! お前の母親が誘惑したのではなく、親父が一目惚れしたらしい」

 

 …………

 

 あのさあ?

 

 ものすごく気まずそうな俊熙(ジュンシー)は、必死に顔を背けているが。

 

 ネコなら可愛いけど。

 お前は許さないわ。

 

 俺の隣に座っている月乃の雰囲気が変わった。

 

 正直、今すぐに帰りたい。




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