【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~   作:初雪空

31 / 83
明らかになった、召喚儀式の実行犯。
今日、ベル女で召喚された存在によって世界が終わる。

4巻目は、ついにバトルへ!
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DD2BFM7R


第31話 こういう時は男が悪いにされる

 永 飛龍(ヨン・フェイロン)は、話を続ける。

 

「日本から短期留学でウチに来たのが、お前の母親だ! 当時は……高校生になるかどうかのはず」

 

 ジト目の時翼(ときつばさ)月乃(つきの)が、こちらに顔を向けないままの永 俊熙(ヨン・ジュンシー)を見た。

 

 その間にも、飛龍(フェイロン)の説明が続く。

 

板村(いたむら)迦具夜(かぐや)は、ウチの本拠地で門派の1つである水平波状拳(すいへいはじょうけん)で印可を授けられた。分かりやすく言うと、俺と親父が修行している開門搏撃拳(かいもんはくげきけん)が父親で、その子供のようなものだ。それらをまとめて、門派と呼んでいる」

 

 つまり、枝分かれした流派の数だけ宗家がいて、序列もあると……。

 

 興味を持った月乃が、飛龍(フェイロン)を見た。

 

「さっきの重遠(しげとお)のように戦うの?」

 

「水平波状拳のことだな? ああ、そうだ! 見ての通り、カウンター狙いのため、女の弟子が多い流派と言える。来たばかりの板村はその流派を選び、形ばかりの下積みから体験コースへ進んだ」

 

 聞けば、外国人や観光客のために、楽しみながら修行できる、お遊びがあるらしい。

 

「昔とは違うからな……。俗な言い方をすれば、『お金と知名度がなければ』という話だ! それなりに払ってもらい、現地の料理や滞在する家も提供する」

 

「へー! でも、奥義に属する技は教えないんだろ?」

 

 俺のツッコミに、飛龍(フェイロン)は頷いた。

 

「ああ……。板村は筋が良く、本格的に修行する運びになったようだ」

 

 言葉を切った後で、付け足す。

 

「本来は、部外者にそこまで教えん! 例外にしたのは、叔母上と仲が良かったからだ……。ちょうど同年代で、同じ水平波状拳を学んでいたから、気が合ったのだろう」

 

 国籍と立場が違うものの、宗家の血筋となれば、対等に付き合える同性はいなかったらしい。

 

 姉妹のように一緒だった2人は、迦具夜の妊娠と帰国により、今生の別れとなった。

 

「叔母上は、親友を失ったことを嘆いた。今でも原因となった兄を恨み、合同稽古のたびに痛めつけている」

 

 そういえば、釣りのネトゲで俊熙(ジュンシー)が、妹と仲が悪いと言っていたな……。

 

 本人が、反論する。

 

「俺も後悔しているんだぜ!? だけど――」

「板村が死んだことは、自分で叔母上に言え! 俺は知らん」

 

 息子に突き放されたことで、低く呻き出した俊熙(ジュンシー)

 

 今の水平波状拳の宗家はその叔母上であることも、判明。

 

 ヤベーよ。

 真実を伝えたら、殺人事件が起きてしまう。

 

 そう思っていたら、飛龍(フェイロン)がこちらを向いた。

 

「ちなみに、室矢(むろや)は水平波状拳の免状がいるか?」

 

「どういう意味だ?」

 

「もし必要なら、その叔母上と会え」

 

 すぐに否定する。

 

「いや、面倒になりそうだから遠慮するよ」

 

「それが賢明だ! あとで言われても困るのでな? 今、確認した」

 

 話を戻すべく、声をかける。

 

「それは分かったが……」

 

「俺の母親と婚約を解消した親父は、時翼がお腹にいる板村を正妻にするべく、根回しを始めた。業腹(ごうはら)だが、ここまではいい」

 

 腕を組んだ飛龍(フェイロン)は、目を閉じる。

 

「板村に逃げられた親父は、俺の母親を婚約者に戻した」

 

 …………

 

 えっと?

 

「そんな大事なことを、切れた電球を交換するみたいに言われても」

「やはり、おかしいよな!?」

 

 すごい勢いで、飛龍(フェイロン)が同意を求めてきた。

 

 その時に、俊熙(ジュンシー)が口を挟む。

 

「宗家の妻になれて子供を産める女は、数えるほどで……」

 

 飛龍(フェイロン)は、それを無視する。

 

「そういうわけで、俺は板村迦具夜に言いたいことが山ほどあった! 今となっては墓を暴くわけにもいかんし、室矢が代わりにケジメをつけたがな? 時翼は、自分の母親がいきなり帰国した理由を知らんのか?」

 

 月乃は、首を横に振った。

 

「自分の母親だと知ったのも、大きくなってからで……。写真が少しあるぐらい」

 

「そうか……。悪かったな?」

 

 全員で話しているうちに、月乃の細かいことを気にしない性格は父親似と思えた。

 

 飛龍(フェイロン)が、話を締めくくる。

 

「宗家の直系を孕んだ板村が暗殺されずに帰国できたのは、亡くなった老師が庇ったことに加え、叔母上の親友であったことも大きい! 子供ごと始末すれば、女たちも動揺する」

 

 俊熙(ジュンシー)が手を出したのが、悪い。

 

 そう言ってしまえば、終わり。

 

 言い方から察するに、迦具夜は俊熙(ジュンシー)許嫁(いいなずけ)がいたことを知らなかったようだ。

 

 ただでさえ、国際結婚は難しい。

 

 それに、宗家の利権やらメンツが加われば……。

 

 現地に留まり、寿命の問題がなくても、2人は幸せに過ごしましたの一言では済まなかったと思う。

 

 俺のようにハーレムでどんどん女が増えていくのと、どちらがマシかは、何とも言えない。

 

 正妻の南乃(みなみの)詩央里(しおり)は、高校時代とは違い、リラックス中。

 式神である猫又のルーナの前足に両手をかけて、縦にビローンとしつつ、長ーい! と喜んでいる。

 その時のルーナは、達観した顔のまま、ニャッ! とお愛想の鳴き声。

 

 けれど、室矢家の女はまだ増える気配。

 

 大学は自由で、サークルや付き合いがなければ、よっぽど大丈夫だが……。




過去作は、こちらです!
https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。