【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~   作:初雪空

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召喚儀式は終わった。
室矢重遠が気づかないうちに……。

そして、咲良マルグリットの姿もない。

5巻目で、ベル女編がどうどうの完結!
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第34話 ゆっくり会話したのは初めて

 食事のついでに、ホテルのバーへ立ち寄った。

 

 こちらは薄暗く、正装のバーテンダーが両手で振るシェイクの音ぐらい。

 まだ時間帯が早いため、客はまばら。

 

「いらっしゃいませ。御二人でしょうか?」

 

 やはり教育の行き届いたバーテンダーに案内され、テーブル席へ。

 

 カクテルはよく分からないので、食後で軽くとだけ伝える。

 

 先にナッツ類が出てきて、それをつまみながら話し合う。

 

「ボク、初めてだよ」

「俺も、ホテルのバーは来たことがないな」

 

 テーブルには、読書灯のようなスポットライト。

 

 それ以外は暗く、同じ高層ビルでも違った雰囲気だ。

 

 歩み寄ったバーテンダーが、逆三角形のグラスを2つ。

 それぞれに説明して、会釈する。

 

 カウンターへ戻ったバーテンダーを後目に、俺たちは乾杯。

 

 ショートのため、強い度数を少しだけ。

 ここは、大学生ならではの時間。

 

 酔った雰囲気の時翼(ときつばさ)月乃(つきの)が、カラフルな色のドリンクを傍に置きつつ、ポツリと言う。

 

「美味しくて飲みやすいけど、これ酔うね?」

 

「ああ……。グイグイ飲むものじゃないし……。というか、月乃は大丈夫だったか?」

 

「ん?」

 

「大学だと、まだ不慣れな新入生を酔わせて持ち帰るんだよ」

 

「今の重遠(しげとお)みたいに?」

 

 クスクスと笑った月乃だが、すぐに答える。

 

「大丈夫だよ! ボクたちはベル女で固まっているから……」

 

 聞けば、明示(めいじ)法律大学でナンパしてくる男は多いが、常にグループ行動をしているそうだ。

 

「ウチは秘密結社みたいなものだからね? 高校卒業までに婚約者がいて当然だし、あとはボクのような訳あり。ヤリたいだけの男子じゃ、手に負えないよ! ヤバい物を使ったり、数で押したりすれば、そいつらが消えるだけ」

 

「俺たちのせいで、悪いな? 東京魔法大学に行くはずだったろ?」

 

「こっちで良かったよ! 自力で入ろうとしたら、たぶん無理だった」

 

 二杯目。

 

 締めのつもりで、甘く飲みやすい系統に。

 

 この雰囲気に慣れてきた月乃が、感想を述べる。

 

明大(めいだい)に来て、ビックリ……。文字通り、都心部を押さえているキャンパスだし」

 

「サークルの数も、三桁だしなあ……。隠れているトラブルが多いだろうな? 早く、室矢(むろや)クァトル大学だけのキャンパスにしないと」

 

 飲みながら、呆れた顔の月乃。

 

「その名前、ずっと慣れないんだけど? 異能者で四大流派のボクたちじゃ、頭が下半身になっているチャラ男が徒党を組んでいる場所ではキツいね! ボクが知らないだけで、遊ばれている魔法師(マギクス)もいそうだ」

 

 他の四大流派と比べれば、一般社会に慣れているけど。

 

 フォローのつもりか、笑いながら付け加えた。

 

「重遠が生きている間は、この流れが続くだろうね? でも……」

 

「俺がいてこその室矢家だ……。四大流派の結束や非能力者との融和までは、考えちゃいない」

 

「そっか……」

 

 言葉が見つからないようで、月乃は飲むだけ。

 

 雰囲気を変えるためか、明るい声で言う。

 

「そういえば、武術サークルをやっているんだ! 実質的にマギクスの互助会で、他を受け入れる気はないけど」

 

「入りたい奴は、多いのか?」

 

「まーね! ボクたち、見た目はいいし……。ひどい時には、部室の前でずーっと粘っていたっけ」

 

 遠い目になった月乃が、俺を見た。

 

「講義を受け始めてまだ日が浅く、いったん潜り込めば自分たちで牛耳れると思ったんだろう……。陽キャの男子によるナンパや、そいつらの手下みたいな男女が困った振りで接触してくる。勘違いした格闘技のサークルは、彼氏面で乗り込んできたし。同じ女子が宥めすかしで入り込もうとした時もあったよ? いい男を紹介するとか……。男子のマギクスから攻略する手口で、ハニトラを仕掛けてきたこともあったねえ! 盗撮とかで脅してきた奴らは、もういないけど」

 

 四大流派の1つだけあって、どれも真牙(しんが)流として共有するそうだ。

 

「ボクの武術サークルは、ベル女で格闘技をメインにしていた人が中心だよ! 周りの雰囲気にあてられてか、部員同士でくっついた例もあるけどさ?」

 

 下のマギクスは機密に触れる機会が少なく、ほぼ一般人に戻るケースも多いとか。

 

「ボクみたいな立場だと、そうもいかない……。今になってみれば、ベル女とかの恋愛禁止で交流会とお見合いだけってのも頷けるよ! あまりに、誘惑が多すぎる」

 

 俺に言えない事情もあるようで、ため息を吐く月乃。

 

「そうだ! 重遠も、ボクらのサークルに来なよ? 入れとは言わないから」

 

「また、今度な? しかし、同じ大学でこういう会話になるとは」

 

 下手をすれば、別の大学のほうが接点あるぞ?

 

「人が多いから……。地方都市ぐらいはありそう」

 

「そう思えるな」

 

 雰囲気とお酒の力か、だいぶ打ち解けた。

 

「じゃ、部屋に戻るか? 一応、明日の朝食までは買っていこう」

「うん!」




過去作は、こちらです!
https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31
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