【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~   作:初雪空

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召喚儀式は終わった。
室矢重遠が気づかないうちに……。

そして、咲良マルグリットの姿もない。

5巻目で、ベル女編がどうどうの完結!
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第37話 どうか未来に帰ってきてください、冴さん……

 主だった子供が、中高生になった未来。

 

 内々で一代限りと決めた室矢(むろや)家だが、今のところは四大流派をまとめる立場だ。

 それぞれに派閥争いがあり、当主である室矢重遠(しげとお)が睨みを利かせつつも口を出さないことでバランスを保っている状態だ。

 

 圧倒的な霊力と実績、さらには秘密裏であるものの、高天原(たかあまはら)の系譜ということで、その子供についても垂涎(すいぜん)の的。

 

 非能力者で限られた情報だけの中央省庁、特に警察は精力的に動いている。

 子供の1人でも取り込めば、あの室矢家の権威、力により、四大流派を制することが可能に……。

 

 四大流派の中では、重遠がいよいよ神格にふさわしい待遇。

 本殿のような場所に祀り、直属の指示で四大流派が動く形になっている。

 

 ずっと重遠たちを見ていた存在にしてみれば、最初からそうしてくれ、と言いたくもなるが……。

 

 室矢家の子供たちは、妻の実家に預けられた。

 どれも異能者の名家とあって、中央省庁の付け込む隙はない。

 大学進学に伴うフリータイムを活かし、何としてでも親睦を深める所存だ。

 

 ともあれ、子供たちは自分の父親に会えず、不満を募らせていた。

 

 娘たちにとっては、これだけのハーレムを築きつつ円満である、という驚くべき話。

 

 思うところはあれど、母親にそうしなければ殺されるか死ぬよりひどい目に遭っていたと言われれば、納得するしかない。

 彼女たちも、数年後には政略結婚で初夜を迎える身だ。

 

 その中の1人、(りょう)愛花莉(あかり)が若いころの父親と会ったことで、娘たちに大きな変化があった。

 

 二条(にじょう)(さえ)

 

 室矢家で唯一の非能力者である二条(すみれ)の娘とあって、四大流派で継承されてきた血筋と比べれば、弱い。

 けれど、母親譲りの優しさを持ち、非能力者と異能者の架け橋たる存在だ。

 

 彼女はツテを辿り、父親に所縁(ゆかり)が深いアイテムを手に入れた。

 

 二条家の屋敷。

 自分の部屋となっている和室で、古めかしい携帯ゲーム機を手にする。

 

「これが……。お父さんの原点」

 

 紫の瞳を輝かせて、前髪パッツンの黒髪ロング。

 

 セーラー服のままで、すぐに起動する。

 

 紙芝居にボイスがついている、マルチエンディング。

 

 今となっては退屈しそうなゲームだが、冴は夢中になってプレイする。

 食事の時間を忘れるほど。

 

 気づけば、縁側に面した中庭が明るい。

 

 障子を通しての柔らかい日光は、冴の疲れた目を刺激する。

 

「んんっ……。私、悪い子ですね?」

 

 寝ぼけた頭で、学習デスクにつっぷす冴。

 

 それでも、考えてしまう。

 

「……どうして、お父さんが悪役なの?」

 

 泣いていた彼女の脇に置かれたままのディスプレイに表示されていたのは――

 

 【花月怪奇譚(かげつかいきたん)

 

 タイトル画面から移動できる回想シーンは、100%。

 

 すうすうと眠ってしまった、冴。

 

 

 ◇

 

 

「冴さんが過去へ行った!? ど、どういうことですか?」

 

 すっかり成長した、大和撫子の二条菫。

 

 行方不明になった娘を探すため、どうしようかと悩んでいたところに、ショッキングな報告だ。

 

 室矢家の嫁データリンクによって、遠くにいる南乃(みなみの)詩央里(しおり)が告げる。

 

『カレナが連れて行きました……。どうやら、考えがあるようです』

「考えって、何ですか!? 娘を……娘を返してください! お願いします!!」

 

 大人の年齢だが、室矢家では昔のように話せる。

 

 元々、荒事をしていなかっただけに、自分の娘がトラブルに巻き込まれたこと――それも命懸けであろう話――で動転した。

 

 パニックに陥ったままの菫。

 

「あの子は、戦いに向いていないんです! か、代わりに私が――」

『落ち着いてください! 旦那さまが執着していた原作を片づけるには、このチャンスしかありません。大学生のときの旦那さまに会わせるから、大丈夫です! 守ってくれますよ?』

 

 我に返った菫は、ようやく呼吸を整えた。

 

「そ、そうですよね! 重遠さんがいれば……。あ゛!?」

 

 目の光を失った菫に、詩央里が説明する。

 

『気づいてしまいましたか……。梁愛花莉さんの前例から察するに、冴さんは処女を失う可能性が高く、そればかりか』

 

「そ、そればかりか?」

 

『旦那さまにドハマりして、過去に残ってしまう恐れすらあります。両目をハートマークで、何もかも投げ捨てて』

 

 脱力した菫は、その場に崩れ落ちた。

 

 右足を浮かべたまま、同じく右手でパアンッと下の畳を叩く。

 

 乾いた音が、虚しく響いた。

 

 ちゃんと横受け身できて、偉い!

 

 倒れ伏したままの菫は、自分の娘を想った。

 

 弱々しい声で、呟く。

 

「か、帰ってきてくださーい! 冴さん……。処女がなくなってもいいから……。せめて、私のところへ」

 

 もはや放心状態の菫に、詩央里は追加の説明をできなかった。

 

 どこぞのエロ同人みたいな展開に、息を吐く。

 

(私の娘じゃなくて、良かった……)

 

 わりと酷い感想である。

 

 ともあれ、冴の貞操はまだ無事。

 

 未来にいる彼女たちにとっては、終わったこと。

 

 不可思議な状態のまま、過去へ移動した二条冴へ場面が移る。




過去作は、こちらです!
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