【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~   作:初雪空

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召喚儀式は終わった。
室矢重遠が気づかないうちに……。

そして、咲良マルグリットの姿もない。

5巻目で、ベル女編がどうどうの完結!
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第38話 室矢家で一番優しい娘

 都心部の中心にある明示(めいじ)法律大学のキャンパスは、商業施設のよう。

 

 いつも通りに1人で講義を受け、待ち伏せや毒を仕込まれないため、空間移動を織り交ぜることでランダムに移動しての食事や休憩。

 

 面倒だが、悠月(ゆづき)明夜音(あやね)のように護衛をゾロゾロと引き連れるよりはマシだ!

 

 誰にも縛られない大学生は、他人を気にしないが……。

 

 見下ろせば、私服で行き交う都心らしい周りと比べて幼い雰囲気の姉妹がいた。

 中央が広い吹き抜けになっている1階だ。

 

 何も知らずに見れば、ただのデパート。

 

 1人はセーラー服の女子高生で、優しい感じの黒髪ロング。

 それより身長が低い感じの少女は――

 

『私じゃ!』

 

 脳内に、室矢《むろや》カレナの声。

 

 超空間ネットワークによる通信だ。

 

 お前か……。

 

「ねーねー? 君ら、高校生?」

「俺らが案内してあげよっか?」

 

 女子2人が所在なげに立っていたことで、チャラ男の参戦だ。

 

 俺は、上を通り抜ける通路の端にある落下防止をふわりと乗り越えて、落ちた。

 ちょうど、5階の高さ。

 

「キャァアアアッ!?」

「ちょっと!」

 

 通りがかった女子大生グループが、甲高い悲鳴を上げた。

 

 重力に引かれつつ、斜め下にある3階の空中通路を避け、回転しながら足を下へ向ける。

 

 1階は試合ができるほど広く、加工されたコンクリートの地面だ。

 

 大学生の一期一会となっているメインストリームに両足で着地しつつ、すかさず並べた両膝を曲げつつ、体の外側へ受け流していく。

 

 ネコのように回転した勢いで、起き上がり人形のように立ち上がる。

 ダンッという着地音に、転がる音。

 

 余った勢いは、片足で円を描くことで逃がす。

 

 周りの唖然とした視線を感じつつ、口が半開きのチャラ男2人に告げる。

 

「そいつらは、俺と約束している。ナンパなら、他を当たれ」

 

 半開きの口で、首を縦に振るチャラ男たち。

 

 じりじりと後ずさり、やがて出口へ走り出した。

 

「あの! わ、私、どうしてもお父さんに会いたくて――」

「話は後だ……。システム上で処理をしておけ。穏便にな?」

『かしこまー♪』

 

 俺のスマホで、可愛らしい声が流れた。

 アプリとして常駐する美少女、カペラだ。

 

 我関せずのカレナに呆れつつも、女子2人と一緒に建物の外へ。

 

 

 ――都心の高級カフェ

 

 奥のテーブル席を占領して、ようやく落ち着いた。

 

 向かいに座っている女子2人を見る。

 

「で?」

 

 顔を伏せていたセーラー服の少女は、思い切ったように俺を見た。

 

「に、二条(にじょう)(さえ)です! 今は女子高生でして……。未来からやってきました。お母さんは、(すみれ)と申します」

 

 普通に考えれば、ドッキリか、ただの冗談。

 

 けれど、前例があり、カレナの説明を受けている俺は、頷いた。

 

「そうか……。今の菫はようやく中学生だけど、優しい雰囲気はそっくり! 納得できるよ」

 

 嬉しそうに微笑んだ冴は、こくりと頷いた。

 

「信じてもらえて、嬉しいです! 詐欺と思われるかも、と心配していました」

 

「カレナがいるからな……。(りょう)愛花莉(あかり)も来たし」

 

「愛花莉さんとは、友人です! お父さんの娘は、流派に関係なく女子会で集まっているから」

 

 それぞれに所属があるから、俺たちのようにはいかんか……。

 

 少しだけ寂しく思いつつ、安堵する。

 

「やっぱり……。1つの家でまとめていくのは、無理か」

 

 俺たちの子供ですら、距離感があるんだ。

 孫となれば、自分が学ぶ場や就職先に染まるだろう。

 

「……ご迷惑でしたか?」

 

 冴の声で、我に返った。

 

「そうじゃない……。俺と観光でもしたいのか? 今の母親と会うのは、あまりオススメしないが」

 

「お父さんと遊びたいし、お母さんの若いころに興味はありますけど……。私がカレナさんに無理を言ったのは……」

 

 自分のバッグを漁った冴は、年季が入った携帯ゲーム機を取り出した。

 

 ティーカップや皿があるテーブルに、ゴトッと置く。

 

 見覚えがある。

 特に、前世の久次(ひさつぐ)竜士(りゅうじ)だった頃に……。

 

 冴の指が伸びてきて、パチッと動かした。

 軽快な起動音で、OSが動き出す。

 

 中のディスクを読み込み、タイトル画面へ。

 

 【花月怪奇譚(かげつかいきたん)

 

 両手に、汗。

 

(まさか……)

 

 無言で手を伸ばし、両手で持ち直す。

 

 セーブデータを見る。

 

 律儀な性格のようで、冴の名前があった。

 そちらを間違って消さないように、他をチェックする。

 

 “久次竜士”

 

 思わずゲーム機を落としそうになるも、ギリギリで耐えた。

 

 ゆっくりと、テーブルに置き直す。

 

「冴? これは、どうやって入手した?」

 

 ビクッとした本人は、片手で耳にかかった黒髪を触りつつ、答える。

 

「えっと……。お父さんのルーツに興味があって、ネットオークションに出ていたのを落札しました。半信半疑でしたけど、値段は安かったですし」

 

 何てことだ。

 

 俺がこの世界へ来たときに、遊んでいたゲーム機も迷い込んだのか?

 

 悩んでいたら、カレナが宣言する。

 

「残念だが、もう時間だ……。冴は巻き込まれたゆえ、いったん飛ばすしかない。お主は、言うまでもないのじゃ! 前に話したことは、覚えているな?」

 

「ああ……」

 

 首肯したカレナは立ち上がり、無言で立ち去った。




過去作は、こちらです!
https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31
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