【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~   作:初雪空

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原作の主人公は、悪役を理解できない。
すでに彼の理解を超え、どんどん成長しているのに……。

紫苑学園に戻った室矢重遠は、日常の中で次なる戦いに備える!
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第46話 知りすぎたんだ、あなたは……

 夜が明ける直前の、気だるい空気。

 東の空が白々としてきた頃に、地面を見ている鑑識はまだ仕事をする。

 

 建設中のビルは、むせかえるような血の臭いだ。

 

 中年の刑事は、コンビニで買ってきた袋パンをかじりつつ、その様子を見上げていた。

 

「ひでーもんだ」

 

 相棒になっている若手の刑事が、すぐに答える。

 

「ええ! 殺された死体はどれも、この近くにいる組事務所の連中のようです。……奴らは白を切っていましたけど。やっぱり、抗争っすかね?」

 

「そっちは、専門に任せりゃいい! っと、少し待て」

 

 中年男が、取り出したガラケーを耳に当てれば――

 

浦路(うらじ)の旦那! ザザザ……あるんですがね?』

 

 鉄骨に囲まれた場所だからか、電波の状態が悪い。

 

 舌打ちした浦路は、通話するほうに手を当てながら、指示する。

 

「用事ができた! ここは任せるぞ?」

 

「……あ、はい」

 

 部下らしき刑事が応じるも、その時には遠ざかる背中を見るだけ。

 

 ため息をついた若者は、現場で続く作業を見守った。

 

 

 ――下町にあるサウナ

 

 刺青を入れた客が珍しくない、古びた空間で、2人の男が汗を流していた。

 他に客はおらず、どんどん体温が上昇。

 

 股間を隠しているだけの浦路は、隣に座っている男に話しかける。

 

『んで、ネタは?』

 

『昨夜の建設中のビルでの虐殺だよ! いやー、これがまたビックリで――』

『買った!』

 

 情報屋は、もったいぶる。

 

『ククク……。ホシは3人だから、いつもの3倍でたのまあ』

『5倍出してやる! 男に焦らされる趣味はねえよ!』

 

 真面目な顔になった情報屋は、すぐに話す。

 

『俺も、信じられねえんだが……。大学生らしき男子1人と、女子2人だ。うち1人はセーラー服で、追われていただけ』

 

『残り2人が?』

 

『ああ! どうも、大学生がやったようで……。けど、最後に女子2人で飛び降りつつ、地上にいたヤーさんを撃ち殺したみてーでな?』

 

 

 サウナから出て、袋の中で現金を数えた情報屋は、コインロッカーの鍵を渡す。

 

「毎度、どうも! そっちの写真や映像はブレまくりだから、期待しないでくれ」

「料金分は、期待しているぜ」

 

 服を着た浦路は、足早に出ていった。

 

 それを見届けた情報屋は、盗み聞きした奴がいないかを探りつつ、袋のままでロッカーに仕舞い直す。

 

(どうせだから、サウナに入り直すかね?)

 

 刑事との取引のせいで、整える暇もなかった。

 

 今度はゆっくりと入り、水風呂によって冷やす。

 

 すると、こんな場末に似つかわしくないイケメンの姿。

 

 ジッと見られたので、警告する。

 

「兄ちゃん? ここは、そういう場所じゃねえぞ?」

 

「……失礼。少し遅かったようだ」

 

 優雅に会釈したイケメンは、さっそうと出ていった。

 

(何なんだ、ったく……)

 

 けれど、予想よりも多くの収入を得たことで、すぐ機嫌を直す。

 

(次は、虐殺されたほうに売り込みますか! 気が立っているから注意しねえと――)

 

 急に苦しくなった情報屋は、立ち上がろうとするも、ドタッと倒れ込んだ。

 

「ぐうぅっ……」

 

 近くにいた客が驚き、声をかけるも、彼はそのまま目の光を失った。

 

 

 ◇

 

 

 駅前のコインロッカーを開けた浦路は、包装を破り、中身をチェックした。

 

 そこに映っていたのは、セーラー服の女子高生である二条(にじょう)(さえ)や、槇島(まきしま)睦月(むつき)

 

 和装に刀を下げた室矢(むろや)重遠(しげとお)も……。

 

「マジか……。その筋でも、これほどヤバくねーだろ?」

 

 何の躊躇いもなく、魚を下ろすようにどんどん斬っていく姿。

 邦画の撮影としか思えない。

 

 商店街の店は仕込みで、もう動き始めていた。

 

 適当に声をかけた浦路は、警察手帳と写真を見せて、尋ねる。

 

「セーラー服の嬢ちゃんなら、元家電屋に住んでいる西永(にしなが)の坊主と一緒にいたぜ? 彼女かどうかは微妙だが」

 

「ご協力、ありがとうございました」

 

 理由を説明せず、いかにも聞きたそうにしている店主から離れた。

 

(ちょうど朝駆けになる……。このまま、突っ込むか? いや)

 

 武装した5人以上が返り討ちだ。

 

(署に応援を頼むか! 緊急通報は、まだ早え……)

 

 けれど、ガラケーは残りのバッテリーが不安だ。

 

 舌打ちした浦路は、近くの公衆電話へ向かおうと――

 

「すまないが、止めてくれないか?」

 

 立ち止まった浦路は、短めの銀髪で金色の瞳をした若い男を一瞥しただけ。

 

(仕事明けのホストか……)

 

 そう思いながら、釘を刺す。

 

「警察だ! それ以上は、お前をしょっ引くからな?」

 

 

 ――10分後

 

 緑色の公衆電話を見つけた浦路は、受話器を持ち上げ、カチカチと番号を押していく。

 

 プルルル……ガチャッ

 

『はい、江戸杯(えどはい)警察署です』

「刑事課の浦路だ! そっちに繋いで――」

 

 殺気を感じた浦路は、とっさに片手でリボルバーを抜いた。

 

 振り向きざまに、後ろへ銃口を向ける。

 

 そこには、さっき会ったばかりの若い男。

 笹西(ささにし)新太(あらた)が立っていた。

 

 リボルバーを向けられているのに、困ったような笑顔。

 

「優秀というのも、考えものだね? 知りすぎたんだよ、あなたは」

「お前――」

 

 手から滑り落ちたリボルバーが下のコンクリートにぶつかり、ガシャリと音を立てた。

 

 本人も、膝から崩れ落ちる。

 

 新太は、棒立ちのままで告げる。

 

「警察署ごとでなくて、まだ良かった」

 

『浦路? おい、どうした――』

 ガシャン

 

 ぶらぶらと揺れていた受話器を戻した新太は、浦路の資料を持ちながら立ち去った。

 

「彼は、ボクが待ち望んでいた人間だ……。それを邪魔するのは、やめてくれ」




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