【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~   作:初雪空

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原作の澪ルート。
それは、日本が滅びる道だった。
 
繰り返される悲劇に対して、それぞれが動くが……。
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第47話 真実への招待状

 下町で閉店した、住居兼用の店。

 古臭い木造の1階へ降りれば、ダイニングと呼ぶには狭すぎる空間。

 

 それでも、シンクのある台所と、家族団らんとなるテーブルを完備。

 

(椅子を後ろへズラしたら、壁にぶつかりそうだけどな……)

 

 心の中で突っ込みながら、窓を通して差し込んでくる日光に照らされている場所へ。

 

 朝というには遅いが、ここの住人である西永(にしなが)和一(かずいち)に咎める気配はない。

 

 ダイニングテーブルにある椅子の1つに座ったままで、こちらを見た。

 

 心なしか、そのメガネも元気がない。

 

「おはようございます」

 

「おはよう」

「おはー!」

 

 心配になった俺は、向かいにある椅子に腰を下ろしつつ、尋ねる。

 

「ちゃんと寝たか?」

 

 和一は、作り笑い。

 

「え、ええ……。スマホは、充電しておきましたので」

「助かる!」

 

 テーブルに置かれたスマホを手に取り、バッテリーのマークを見た。

 充電器も、バッグに入れておく。

 

 指で触り、スッスッと動かせば――

 

「本当に……違う世界から来たんですね」

 

 しみじみとした声。

 

 顔を上げれば、和一がこちらを見ていた。

 

「今だと、2000年ぐらいか……。じきに、個人で買えるだろう。10万ぐらいするが」

 

「携帯にそこまでの金は、ちょっと出せないです!」

 

 肩をすくめた、和一。

 

 まあ、アプリ必須の社会にならないと、必要性を感じないよな……。

 

「西永くん、朝食は?」

「いえ、まだです!」

 

 槇島(まきしま)睦月(むつき)は、和一に尋ねる。

 

「良かったら、みんなの分を用意するけど……」

「お願いします! あるものは、使ってくれていいので」

 

 和一の許しで、立ち上がった睦月が手を洗い、冷蔵庫や棚を調べ始めた。

 

「ん……。昨夜の残り物があるから、もう丼でいいよね?」

 

「ああ!」

「はい、それで……」

 

 俺と和一の返事を聞いて、睦月は冷蔵庫の中にあったご飯などを取り出し、温める。

 

 和一は、俺を見た。

 

「今後の話ですけど――」

 カタンッ

 

 外で、軽い金属の音。

 ザクザクと、遠ざかっていく足音も。

 

 立ち上がった和一が、断りを入れる。

 

「すみません! 郵便が届いたので」

 

 几帳面な性格らしく、ダイニングテーブルをなぞるように外へ。

 玄関の外側にボックスがあるため、すぐにキイッと開く音。

 

 パタパタと、戻ってくる。

 

「お待たせしました……。たまに、急ぎのやつも交じっているから」

 

 言い訳しつつ、ダイニングテーブルに郵便物をぶちまけた。

 

 自身も座りつつ、両手で仕分けする。

 

二条(にじょう)さんに頼まれたし、室矢(むろや)さんを手伝ってもいいですよ? 俺も、笹西(ささにし)さんに文句を言いたいですし」

 

 手を止めた和一が、一箇所を見つめる。

 

「どうした?」

 

 言葉にならない和一は、ダイニングテーブルの上にある郵便物の1つを指さした。

 

 その先には――

 

“室矢くんへ”

 

 白い封筒に手書きの文字だ。

 

 おそらく、男……。

 

 見れば、和一が頷いた。

 

 手に取り、裏側を見る。

 

“笹西新太(あらた)

 

「奴だ……」

 

(切手と住所はない……。さっきのは、奴が投函したのか?)

 

 テーブルをはさんでいる和一は、立ったままで覗き込む。

 

「な、中身は!?」

 

 端をちぎって、中身を取り出す。

 

“君を待っていた。色々な(もよお)しを考えていたが、今の君は非能力者に近いようだ。フェアじゃない”

 

“会って、話をしよう”

 

 同じく、手書きの地図。

 どこかの場所を示している。

 

 ずっと見ていた和一に、手渡す。

 

 彼は食い入るように読んだあとで、記憶をたどる。

 

「確か……。これ、再開発を待っている川沿いのどっかですね?」

 

 テーブルに手紙を置き、俯いたままで立ち尽くす。

 

「笹西さん……。どうして……」

 

 混乱しているようだ。

 

 俺の視点ですら、ツッコミどころしかない。

 

 俺たちがここにいる事実をどうやって知った?

 どうして、家主である和一の名前にしなかったのか?

 

 そもそも――

 

「奴の目的は……何だ?」

 

「俺も!」

 

 和一が絶叫したことで、台所に向かっていた睦月も振り返った。

 

 俺たちに注目されたまま、彼は叫ぶ。

 

「笹西さんのせいで、株式会社エーテルハートは潰れたんだ! 小波(こなみ)さんも、他の人だって、みんなゲームが好きで……。何でも実現できるあの人にとっては、ただの遊びだったかもしれない。だけど……」

 

 俺の未来の娘である二条(さえ)との別れとは違う涙。

 

「頑張ったんですよ! みんなで……。ううううっ」

 

 近づいた睦月は、優しく声をかける。

 

「大切な場所だったんだね?」

 

「はい……。普通の高校に馴染めなかった俺は、あそこで立ち直れたんだ。それなのに……」

 

「西永……。お前が俺たちについてくるのは、構わない」

 

 俺の発言に、和一は顔を上げた。

 

「話をする余裕があれば、奴に質問しても構わないが……。おそらく、殺し合いになる」

 

「いや、そこまでは――」

 

 俺は右手でグリップを握ったまま、左手で底からマガジンを差し込んだ。

 

 次に、左手で上のスライドを後ろに引き、離す。

 

 シャカッと、実銃だけの音が響いた。

 

 ごくりと唾を呑み込んだ和一は、おずおずと尋ねる。

 

「お、玩具ですよね?」

 

「冴を帰しておいて、良かったよ……。できるだけ守ってやるが、お前の安全までは保障できない。ついてくるなら、覚悟しておけ」




過去作は、こちらです!
https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31
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