【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~   作:初雪空

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原作の澪ルート。
それは、日本が滅びる道だった。
 
繰り返される悲劇に対して、それぞれが動くが……。
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第48話 『神話伝承テオフィル』の大ファンである中二病のシリアルキラー

 東京を流れている川。

 発展途上国のような水上の住宅から、段差に応じての密集した木造の並び。

 

 船がつけられる埠頭(ふとう)のような場所から平らで、その奥に大きな建物があった。

 

 ボロボロになった廃屋。

 広い開口部を見る限り、中で加工する町工場か、一時的に保管する倉庫だ。

 

 外からの光が差し込む、ランチタイムが迫っている頃。

 

 薄暗く、ホコリだらけで、かび臭い。

 鉄の臭いも漂っている。

 

 中に残された木製のテーブルだったようなものに腰掛けた若い男が、鼻歌をしていた。

 

 けれど、急にそれを止めて、ぶらぶらしていた片足を地面に下ろす。

 

 モデルのように、すっくと立つ。

 

 声優になれば人気が出そうな、低いイケボで喋った。

 

「やあ? 本当に久しぶりだね、テオフィル……。会いたかった」

 

 オシャレな短い銀髪で、金色の瞳をしたイケメンだ。

 

 俺は、返答に困った。

 

「人違いです」

 

「……今は違う名前か! しかし、まさかここで会えるとは! カレストゥーナが君を手放すとは思わなかったが」

 

 俺が(いぶか)しげに見ていたら、イケメンが苦笑した。

 

「ボクは、ハイドネウスだ! 君の次元召喚(ディメンション・コール)に巻き込まれ、一緒にこの世界へ流れついたじゃないか? ああ、記憶はないんだね」

 

 『神話伝承テオフィル』の最後に出てきて、主人公のテオフィルと相打ちになった神格だな?

 

 こいつは『神話伝承テオフィル』の大ファンで、中二病のようだ。

 

笹西(ささにし)さん! どうして……。どうして、いきなり失踪したんですか!? 株式会社エーテルハートは倒産しました! 今は、残った手続きで小波(こなみ)さんがいます。あなたがいれば……」

 

 西永(にしなが)和一(かずいち)慟哭(どうこく)に、俺は気づく。

 

 こいつが、笹西新太(あらた)だと……。

 

 向き直った新太は、悲しそうな顔へ。

 

「西永くんか! すまない……。つらい思いをさせたね? ボクにも大事な目的があって……。楽しかったよ、【花月怪奇譚(かげつかいきたん)】を作るのは! おかげで、ボクは悲願を達成できた」

 

 俺のほうを見る新太。

 

 姿勢を変えずに右手を後ろへ回して、拳銃のグリップを握った。

 

 いっぽう、新太は話し続ける。

 

「本当にすまない、西永くん……。ボクはもう、君たちといられないんだ。けれど、その姿を見るのは忍びない。せめて――」

 

 ズボンのベルトに挟んでいた、セミオートマチック。

 

 右手で握ったまま、銃口を前に立っている新太へ向けた。

 

 その間に、左手を添える。

 

 パアンッ!

 

 当たるコースだったが、新太は片手を振るだけで受け止めた。

 

「テオフィル? 西永くんに死の安らぎをもたらすのに、邪魔をしないでくれ」

「へっ!?」

 

 いきなり殺されかけた和一は、間抜けな声を上げた。

 

 それに対して、俺は叫ぶ。

 

睦月(むつき)は、西永を!」

「分かった!」

 

 和一の前に出た槇島(まきしま)睦月は、身構えた。

 

 微笑んだ新太が、短い銃身のリボルバーを持つ。

 

「あの刑事に借りておいて、良かったよ! たまには、こういう趣向もいいだろう!」

 

 未来の娘である二条(にじょう)(さえ)を帰したことで、今の俺は無力だ。

 

「チッ!」

 

 セミオートマチックを連射するも、手応えはない。

 

 パンッ!

 

 俺の片腕に当たった。

 セミオートマチックを取り落とす。

 

 パンパンッ!

 

 横へ移動するも、片足の太ももに当たった。

 その場で崩れ落ちる。

 

 パンパンッ!

 

 避けられないので、硬い部分で受ける。

 

「ガッ!? ぐうぅ……」

 

 その場で座り込んだ俺に、感嘆した様子のやつが見下ろす。

 

「すごい……。急所となる臓器を避けて、骨で受けたのか!? しかも、まだ戦意を失わない。やはり素晴らしいよ、君は! 敬意に値する!」

 

 銃口を向けたままトリガーを引くも、カチカチと鳴るだけ。

 

「もう終わりか?」

 

 ヒュッと投げられたリボルバーは、ガシャンと音を立てた。

 

重遠(しげとお)!?」

「もう止めてください、笹西さん!!」

 

 観戦していた2人の叫びを聞きながら、俺は意識を失った。

 

 

 ◇

 

 

 激怒した槇島睦月は、霊力を全開にしながら叫ぶ。

 

「お前えええええええっ!」

 

 面倒そうに、笹西新太が振り向いた。

 

「うるさいよ? 君に用はない――」

「あなたにとって、死は救済でしょう。しかし……」

 

 大人の女の声だ。

 

 宙を舞っていた埃が全て、いきなり地面に落ちた。

 

 今にも弾丸のように向かいそうだった睦月も、上から押さえつけられたように立ち止まる。

 

 崩壊寸前だった廃屋も、一瞬で外側へ消し飛ぶ。

 

 最も高くなった太陽に照らし出された一同は、優美なラインを描く白い騎士のような全身アーマーを着た人物を見る。

 

 頭部だけティアラのような形状で、顔がよく分かった。

 

 動くことでガシャリと鳴らしたのは、20代の前半で、長い黒髪をした女。

 宇宙を思わせる、紫がかかった深い青色の瞳が、かつての宿敵をとらえた。

 

「ごきげんよう、ハイドネウス」

 

 ため息をついたイケメンは、しぶしぶ応じる。

 

「カレストゥーナか……。いい加減、テオフィルに執着するのは止めたらどうだい?」

 

 室矢(むろや)カレナは、本来の姿である女神カレストゥーナ。

 それも完全武装で、神話の終わりを告げた決戦を思い出す。

 

「あなたに言われる筋合いは、ありません!」




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