【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~   作:初雪空

49 / 83
澪は、ついに室矢家と会った!
いっぽう、誰にも知られないままで進んでいく、日本滅亡!?
同時進行する状況に、ついていけるか?
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DHV47WQ9


第49話 命は大事だから、ちねぇええええっ!

 呆れ果てた笹西(ささにし)新太(あらた)ことハイドネウスは、吹き飛んだ倉庫跡で日光に照らされつつ、髪をかき上げた。

 

 低いイケボで、語り出す。

 

「そのギアは、君の最高傑作である瞬く星々(トゥインクル・スターズ)じゃないか……。今のボクは、神話時代とは違うのだけどね? 高次元で望んだ未来を選べるチートを持ち出してくるとは、本当に大人げない」

「うるさいです!」

 

 白い騎士となったカレストゥーナは、すかさず突っ込んだ。

 

 ため息をついたハイドネウスが、さらに指摘する。

 

「だいたい、神話時代にも君は守護者(ガーディアン)と称して、若い男を囲っていたじゃないか」

「うるさぁあああああいっ!」

 

 知的でお淑やかな美女が、絶叫した。

 

 わりと子供っぽい性格だな? と思う、ギャラリーの槇島(まきしま)睦月(むつき)

 

 ハイドネウスが、ついに逆鱗に触れる。

 

「聞いたよ? 自分の寝室でテオフィルを露骨に誘ったが、断られたそうじゃないか! そんな言動だから――」

 

 睦月は、その時にバチンッと、何かがキレる音を聞いた気がした。

 

 案の定、カレストゥーナが小さく震えながら、笑い出す。

 ほぼ同時に、片手に長い槍も出現する。

 

「フ、フフフ……。あなたと一緒にテオフィルが消えてから、時間だけはあったんですよ? だから、これを作ったんです」

 

 黄金色のような輝きを放つ槍を立てたカレストゥーナは、説明する。

 

「これはね? あなたへの対策として、1万年以上もかけて作り上げたんですよ♪ どうせ殺せないから、どんどん遠くへ飛んでいくように」

「君にそこまで想われていたとは、光栄だが……。遠慮させてくれないか?」

 

 ハイドネウスは、引きつった顔。

 

 動物病院の待合室にいるペットと同じだ。

 

 いっぽう、カレストゥーナは満面の笑みだ。

 目だけ笑っていないけど。

 

自動次元跳躍槍(ピドルダス)……。そんなに別世界へ飛ぶのが好きなら、その願いをかなえて差し上げます」

「頼むから、人の話を聞いてくれ」

 

 諦めたハイドネウスの抵抗は、カレストゥーナの投擲モーションにさえぎられた。

 

「他の女に譲って順番を待つのなら、構いません。テオフィルは、モテますからね? しかし、男にとられたら、もう立ち直れません!」

 

 それが本音か、と思う、睦月ちゃん。

 

 カレストゥーナは、やり投げの選手のように投げつつ、叫ぶ。

 

「あなたであろうと、命は大切なもの! ゆえに、この神造武器で追放します! 死ねぇええええええっ!!」

 

 せめて、その発言の中では矛盾しないで。

 

 心の中で突っ込んだ睦月は、奥襟をつかんでいる西永(にしなが)和一(かずいち)を地面に引き倒しつつ、自身もうつ伏せに……。

 

 表現できない音と光が荒れ狂い、空間が歪み、破裂する音が響く。

 

 やがて、バチバチと感電しているような音と、一部に歪みが残った空間が残った。

 

 顔を上げたら、カレストゥーナと目が合った。

 

「ああ、うん……。要するに、神格みたいなもの? ちょっとスケールが大きいけど」

 

「……そうです」

 

 カレストゥーナの返事に、睦月は息を吐いた。

 

「よく分からないけど、その姿が本当で、カレナの姿になっているのは事情があるんでしょ? いいよ、黙っておく! この世界では、僕たちのデータリンクもないし」

 

「感謝します……」

 

 そして、唖然としたままの和一を見る。

 

「あなたには、ご迷惑をおかけしました」

「……い、いえ」

 

 何を言おう? と悩んでいる和一に、カレストゥーナが告げる。

 

室矢(むろや)重遠(しげとお)は、私が助けます……。ここの警察に絡まれても面倒なので、私たちはこのまま元の世界に帰ります。迷惑ついでに、願いがあれば聞きますが?」

 

 いきなりのことで、混乱する和一。

 

「だったら、俺も一緒に……」

 

 連れて行ってくれ、と続けようとした後で、言葉を切った。

 

 気になっている二条(にじょう)(さえ)は、そちらの世界の未来にいるのだ。

 そもそも、上流階級にいる彼女に、俺が身一つで行ったところで……。

 

 住んでいる世界が違う。

 

 それを痛感した和一は、深呼吸をした。

 

「いえ、何でもありません……。お気をつけて」

 

「重遠達が世話になったこと、あなたのゲーム会社が潰れたことの清算で、1つアドバイスをします! プライドを捨てて、小波(こなみ)三奈(みな)に頭を下げてみては? どうするにせよ、相談できるのは彼女だけのはず」

 

「なぜ……。いえ、ありがとうございます」

 

 和一が顔を上げたときに、カレストゥーナたちの姿はなかった。

 

 じりじりと照り付ける日差しの中で、慌てて立ち去りつつ、途中の自販機でジュースを買っての一気飲み。

 

 冷えすぎた液体と、炭酸が下りていく。

 

「俺も……。せめて、高校を卒業した資格はとらないと!」

 

 二条さんとは、二度と会えない。

 

 それを実感しつつ、あのレベルの女子とも縁がないだろうと覚悟した。

 社会のレールを外れたことで、苦労することも。

 

「だけど、二条さんに『お元気で』と言われたものな……。今は、前に進まないと」

 

 

 ◇

 

 

 未来に戻った二条冴は、母親の二条(すみれ)に抱きつかれたまま。

 

 大泣きする菫に、困り果てていた。

 

「よかった゛あ゛~! 重遠さんに襲われず、貞操も無事で、本当によか゛っだー」

 

 自分の父親が襲ってきそうな場面がなかった冴にしてみれば、オーバーそのもの。

 

 離してくれない母親に、ふと思う。

 

(西永くん、大丈夫かな?)

 

 未来の室矢(むろや)カレナによれば、それなりに生きている、と投げやりな返事だった。

 駆け落ちのように会う気はないため、この話は終わり。

 

 だが、箱入り娘の冴にとって、初めての気になる男子だった。

 

 それもまた、事実……。




過去作は、こちらです!
https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。