【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~ 作:初雪空
第55話 国民に気前のいい政治家!?
俺の義理の父親にあたる
「
いかにも堅苦しい雰囲気のスーツ男は、畳の上で座ったまま、会釈した。
「警視庁から来た、
会釈しつつ、返答する。
「室矢です……。こちらこそ、よろしくお願いいたします」
話の流れから、この男が本題らしい。
(元首相の巌夫さんと、中央でも上にいる財務省のトップと対等か……)
だとしたら、警視庁でのポジションは、自ずと知れる。
相手の反応をうかがっていると、その雰囲気を察した緒方が話し出す。
「ご存じだと思いますが、今は衆議院選挙で都心は騒がしくなっています」
「はい」
相槌を打ったら、緒方はためらったあとで口を開いた。
「実は……。現在、我々の管轄でテロが頻発しているのです」
驚いた俺が、まじまじと見つめる。
その視線を受け止めつつ、緒方は畳の上に置いていたビジネスバッグを手にとった。
「全て小規模で、幸いにも大きな被害が出ておらず、カバーストーリーで誤魔化しています……。これをご覧ください」
デジタル全盛期の時代に、紙の書類だ。
「拝見します」
ローテーブルをはさんで受け取り、眺める。
(……思っていたより、多いな?)
東京のマップに、赤のマジックらしき印が点在している。
横から覗き込んできた
「規則性は……なさそうだな?」
「はい、ご明察の通りです! 我々のプロファイリングと分析でも、今のところは……」
俺は、別紙に箇条書きとなっている事件を眺めた。
目的不明のハッキング、多数。
それに伴う、不法侵入や器物破損、脅迫……。
反社会的勢力による犯罪行為、その資金源となっている疑いあり。
実行犯は――
年齢と性別に関係ない、引き篭もり。
それに、主婦、学生、社会人、宗教法人、公務員……。
傷害事件であっても、殺人はない。
顔を上げた俺は、率直に言う。
「申し訳ありませんが、これらを摘発するか、検挙のお膳立てをしろというのは遠慮させてください」
正直、付き合いきれない。
俺の表情を見た緒方は、慌てて言う。
「いえ! これらは、すでに把握済み! 室矢さんに頼みたいのは、これらを指示したと思われる人物の特定、できれば身柄の拘束です! 無力化でも、当方は構いません。最後の1枚をご覧になっていただければ、お分かりいただけるかと」
催促されて、それを見た。
警察のデータベースによる、個人情報だ。
捜査した情報も、書き込まれている。
隣に座った小田切も、興味深げに覗き込む。
「男性の
首をひねった小田切に、巌夫さんが説明する。
「今の選挙に立候補していますよ?」
「ああっ! それでか!?」
俺は、緒方に尋ねる。
「仲四氏が見つからない?」
「ええ! ネット……正確にはスマホで指示していると思われるのが、この仲四氏でして」
緒方の説明によれば――
アプリなどで指示しているが、いずれかの場所まで。
そこへ行くと、オンラインの端末や紙による作業指示と、封筒に入った現金などがある。
中身は……平均10万円?
場合によっては、50万円、100万円。
実行させることに対して、破格すぎる。
「要するに、スパイごっこですな! アナログと組み合わせていることで、点と点が繋がらんのです」
ここで、巌夫さんが捕捉する。
「警察官の一部も、見つけた現金を自分のモノにしたらしくてな……。現場へ睨みを利かせるので、手一杯だそうだ」
「あー! たまに聞くよな、そういうの?」
小田切が茶々を入れたが、他は反応せず。
俺は、緒方を見た。
首肯した彼が、話し出す。
「選挙の間は、治安維持がやっとでして……。ですが、やつが代議士になることは看過できません!」
そりゃ、そうだ。
自分たちをコケにしたうえ、身内に犯罪者まで出した相手となれば……。
そう思いつつ、核心を突く。
「仲四氏が当選する可能性は、あるんですか?」
ため息をついた巌夫さんが、首を縦に振った。
「そこだよ、室矢くん! 個人へのバラ撒きで、人気が高まっている! アバターとかいうCGで主張しており、若者を中心とした浮動票をまとめられたらマズい。支援している政党はないものの、老若男女問わずに支持者がいるようだ」
「ついに、政治家もVtuberになりやがったか……」
ツッコミ役になった、小田切。
いっぽう、俺は返事をする。
「桔梗さんの依頼でもありますし、仲四氏に対処します」
見るからに喜んだ緒方は、声を上げる。
「おおっ! では――」
「この捜査の間だけで良いから、以下の条件をご承諾ください」
室矢家が、警部としての警察手帳、実弾の銃火器を行使する。
警視庁に、24時間対応のサポートチームを置く。
室矢家の責任は一切問わず、表に名前を出さない。
「分かりました! ただちに、サポートチームを編成しますので!」
畳の上で土下座しながらの、よろしくお願いいたします、という言葉で、緒方は退席した。
摺り足の気配が遠ざかった後で、日本酒を飲んだ小田切が笑い出す。
「クククッ! 警部に頭を下げる総監は、初めて見たわ!!」
やっぱり、その立場だよねえ……。
そう思いつつ、俺も目の前にある酒を飲む。
また、面倒になりそうだ。