【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~   作:初雪空

58 / 83
女子だけの剣術大会と、水着が似合う南国の海!
どちらも、命を落とすほどに刺激的!?
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DNMBVV8L


第58話 逃亡犯のような引っ越し歴

 お目当ての車に近づくも、その近くに警官が2人いた。

 

 どうやら、路駐で違反切符のようだ。

 

「すみません!」

 

 歩きながら叫べば、年配の警官が振り返った。

 

「……これの運転手? 放置駐車違反だから――」

「警視庁の室矢(むろや)です! 特命で動いています」

 

 片手で上下に開いた警察手帳をかかげたら、彼はギョッとした。

 

 食い入るように上の写真を見た後で、慌てて敬礼する。

 

「し、失礼しました! 原田(はらだ)、やめろ!! これは捜査車両だ!」

「……えっ? ちょっ、ちょちょっ!」

 

 フロントガラスに黄色いステッカーを貼ろうとする警官は、よっぽど集中していたらしく、その寸前で決めていた両手を止める。

 

 年輩の警官が声にならない叫びを上げる中で、ギリギリの停止。

 

 気まずい雰囲気だが、待っている暇はない。

 

「急いでいるので……」

「はい! 聞いております! 引き留めしてしまい、大変申し訳ございません! 原田!」

 

 呆けていた警官も、慌てて敬礼する。

 

「失礼しました!」

「……御二人とも、ご苦労さまです。俺たちは行っても?」

 

 ブンブンと首を縦に振った年輩の男は、頭を深く下げた。

 

「はい、お気をつけて!」

 

 俺の後ろに立っている天ヶ瀬(あまがせ)(うらら)が、ポツリと呟く。

 

「ステッカー……」

「い、いえいえ! 次に使えばいいので!」

 

 使える放置駐車を急いで見つけるのか……。

 

 息を吐いた俺が、締めくくる。

 

「特命ゆえ、こちらの名前を出したくありません。そういうことで……」

「承知いたしました!」

 

 周囲の注目を浴びながら、俺は運転席に、女子2人は後部座席の左右から乗り込んだ。

 

 警官コンビが、交通誘導を始めた。

 

「カペラ? この2人に悪いから、すぐに出してくれ」

 

 可愛い女子の声が、スマホから流れた。

 

『どこへ向かうの?』

 

「ひとまず、下の道路で流してくれ」

『りょー!』

 

 ウィンカーを点滅させて、黒い高級車は走り出した。

 

 四方のガラスを通しての景色が、どんどん変わっていく。

 

 俺はスマホをダッシュボードのホルダーに差し込みつつ、命じる。

 

仲四氏(なかよし)真琴(まこと)の金の流れと、現住所は?」

 

『国内と海外に証券口座があって、主にそこ! 現住所は……新築タワマンの一室だけど。都内での引っ越しの履歴がすごい!』

 

「どれぐらいだ?」

 

『ざっと、20以上! それも、この数年で!』

 

 後ろで、女子2人が呆れた気配。

 

 未来の娘である天ヶ瀬まりんは、言い捨てる。

 

「怪しい……という次元ではありませんわね? 今のうちに、私たちの呼び方を決めておくべきでは?」

 

「そうだな! 俺と(うらら)とカペラは、名前で呼び合っている。お前は?」

 

「室矢さん、天ヶ瀬さん、カペラさんとお呼びします! わたくしのことは、『まりん』と呼び捨てで」

 

 ビクッとした天ヶ瀬麗が、恐る恐る、確認する。

 

「えっと……。名字か、さん付けのほうが――」

「どうか、まりんとお呼びください」

 

 上品に言われて、借りてきた猫のように、ハイと答える麗。

 

(自分の未来の母親から、よそよそしい呼ばれ方は、嫌だよな……)

 

 そう思いつつ、指示を出す。

 

「じゃあ、まりんと呼ぶぞ? 今日だけで、住所の履歴を追いかける! 都内に限定するが、ほぼマラソンになるだろう」

 

 眉をひそめた『まりん』が、バックミラーに映った。

 

「時間が足りないのでは?」

「壁抜けする! 警察の監視チームに教えるために、スマホの位置情報は俺だけオープンにするから」

 

 ゲートによる瞬間移動をしないのは、そのためだ。

 

 納得した『まりん』が、隣に座っている麗を見た。

 

「それでいいですか? 天ヶ瀬さん……」

 

「う、うん!」

 

 コクコクと頷く麗が、可愛い。

 

「今から、俺のスマホは位置情報をオープンにする! ……室矢です。今から都内にある仲四氏の住所を古いほうから追います。スマホの位置情報で、そちらへの途中経過としますので」

 

『警視庁のサポートチームです。仲四氏の足取りを追うこと、了解しました! スマホの位置情報、現在は……3号線の六本木駅を通りすぎたぐらいで?』

 

「はい! 電話は、これで切ります」

 

『ご用がありましたら、いつでもどうぞ! 失礼します』

 

 

 ◇

 

 

 俺を先頭に、ギシギシと鳴る床を踏みしめつつ、木造の階段を上る。

 

 角から覗けば、人の気配はなく、薄暗い内廊下だけ。

 左右には、引き戸が規則正しく並ぶ。

 

 ズボンの前にあるグリップを意識しつつ、とある引き戸に両手をかける。

 

 ガタガタと音がしながらも、出入りする空間ができた。

 

 鍵すら、かかっていない。

 

 昼でも暗い場所に入ってみれば――

 

「何もないな……」

 

 遅れて、女子2人も、ハンカチで口を押さえつつの入室。

 

「何もありませんわ……」

「本当に、人が住んでいたの?」

 

『少なくとも、住民票の履歴ではね?』

 

 スマホのスピーカーで、カペラの声がした。

 

(一番古い場所で、これか……)

 

 今となっては廃墟だが、それでもショボい構造。

 

 管理人どころか、他の住人すらいない。

 それも、見ただけで分かる。

 

「警察が匙を投げるはずだ……。コンテナハウスのほうが、立派だな?」

『現住所のタワマンを除いて、詳細が分かったよ!』

 

 全員で俺のスマホをのぞき込めば、残り19ぐらいの物件リスト。

 

「取り壊された四畳半、都内にある戦中からの木造……」

 

「現存しないか、悪だくみをする場所ではありませんね?」

「お金をばら撒くわりに、自分はとんでもない場所に住んでいたの?」

 

 首をひねっている女子2人を追い立てて、車に乗り込んだ。

 

「カペラ! 今のタワマンに向かってくれ!」

『りょ~』

 

 ダミーか、心を病んでいたのか、それとも、自分が狙われる心当たりがあったのか……。

 

 今の住所であれば、何らかの手掛かりを得られるだろう。

 

 他は、時間のムダだ。




過去作は、こちらです!
https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。