【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~ 作:初雪空
キィイッ!
カペラの自動運転によって、黒い高級車が停まる。
外は、すっかり暗くなった。
車内から横を見れば、ご立派なタワーマンションがある。
未来の娘である女子高生の
「ここが……
「うわ! 怖そうな人が、いっぱい!?」
彼女たちが言ったように、高級車から迫力のある奴らが出ては、同じくヤバそうな若衆がヘコヘコしている。
(政治家だって、どんどん険しい顔になるわけだしな?)
運転席にいる俺は、小型モニターでエントランスに入っていく奴らを見た。
(必ずしも、ヤクザじゃないな? 妙に解放感があって押しが強そうなのは半グレか、ベンチャー企業の経営者……。貫禄があるのは、関係のある社長だろう。インテリっぽいのは、ヤクザか士業?)
思っていたより、幅広い面子だ。
すると、こちらを気にする奴がいた。
「カペラ、出してくれ! 顔を見られたくない」
『りょー!』
運転席でハンドルをいじっていないのに、ゆっくりと動き出す。
人工的な灯りで照らされた道路を安全運転で走っていく、俺たちの車。
「監視や盗聴を防ぎたいから、ランダムに走り続けてくれ! 俺は警視庁のサポートチームと打ち合わせをする。尾行があったら、すぐに報告しろ」
『別命あるまで、走り続ける! 異常を見つけたら報告!』
復唱したカペラの声を聞きながら、ホルダーのスマホを触る。
プルルル ガチャッ
『はい、警視庁!』
「
カタカタと操作する音が、聞こえてきた。
『……通常回線のため、属性のみでも?』
「お願いします」
『選挙応援の名目で、広域団体の幹部とその手下、都内の半グレ集団、これといった支持母体に入っていない経営者、詐欺の疑いがあるビジネスを手掛けている有名人。あとは、彼らが呼んだと思しき業者です。どれも、外で見張ったことでの情報。セキュリティが複数で常にチェックしているため、仲四氏の物件だけではなく、エントランスホールにも入っていません。公安のほうは、何か知っている可能性がありますけど』
「ありがとう! 俺は、中を見てくる。出たら、連絡するので」
驚いた様子のあとに、お気をつけて、という返事。
電話を切った後で、車を停めさせた。
後ろを向く。
「麗? 戻るまで、お前が警視庁との連絡役になってくれ」
「……えっ!?」
まりんが、説明する。
「室矢さんは、ここにスマホを置いていくようです……。位置情報がありますし、持っていくのは危険ですわ」
「だ、だったら、まりんさんのほうが……まりんのほうが」
本人による、無言の圧力。
俺は、すぐに命じる。
「麗を信用しているんだ……。この車は、潰しても構わない。カペラ? お前に任せるから、2人を頼む! 俺のほうは、すぐ合流できるから」
『りょー! ガトリング砲やロケットがあるけど、撃っていいの?』
「相手が危険だったらな?」
ドアを開けて、地面に立った。
「じゃあ、またな!」
バンッと閉じた後に、片足で円を描き、そこに落ちる。
◇
肌寒い風が、ずっと吹いている。
「タワマンの屋上か……」
少しズレたので、同じく円を描いて、下へ……。
ズンズンズン♪
腹に響くような、重低音。
どこかのアミューズメント施設のように、様々な光も。
ガラス張りの広い空間で、奥のステージにDJがいる。
集まっている若者が、踊ったり、ナンパしたり。
ドリンクバーでは、バーテンのような人が用意。
一息したい奴らが、どんどんコップを取っていく。
「いえー!」
「これ、効くぜ?」
「そんなもん、お子様だろ! 男なら、これだよ、これ!」
DJのスクラッチとBGMが、止まった。
『みなさーん! 楽しんでますかー!?』
ステージに、アラフォーの男が立っている。
「おっ! 仲四氏さんだ!」
「楽しんでるよー!」
片手を上げて答えた男は、定番と思われる掛け声。
『仲良しになろー!』
「なかよし!」
「なかよし!」
『ボクは、そろそろ自分の選挙区に行ってきまーす! みんなは引き続き、楽しんでいってねー?』
「おおおっ!」
「頑張れー!」
「お前が、政界に出て欲しいんだよ!」
俺は、目立たないようにパーティールームから出て、物陰へ。
床へ落ちるように、外にワープした。
さっきとの落差で、しばし夜風に当たる。
じきに黒の高級車が停まり、再び運転席に乗り込んだ。
自動運転で走りつつ、後ろの女子2人が聞きたそうにしているのを無視して、スマホで電話。
『はい、警視庁!』
「室矢です。タワマンで、仲四氏を見ました」
息を呑む気配。
すぐに、オペレーターが尋ねる。
『ど、どうでしたか?』
「パリピでした」
沈黙。
『そ、そうですか……。他には?』
「意見交換をしたいので、今から警視庁へ行っても?」
『はい! こちらは構いません! えっと……班長はいると思うので。あ! お食事は、どうされますか?』
「3人分で、お願いします! 俺は名乗りますが、残り2人の素性は聞かないでください」
『……了解しました! 3人分ですね? ただちに、用意いたします!』