【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~   作:初雪空

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第60話 お前たちは、本物の引き篭もりを知らない!(前編)

 警視庁で、“選挙対策室” と、お馴染みの黒字で書かれた紙が貼られたドア。

 

「ここが、専属の班がいる部屋です!」

「ありがとうございます」

 

 バッと、お辞儀したスーツ男。

 

「失礼します!」

 

 彼は、キビキビと歩き去った。

 

 ノックをすれば、競歩のような感じで近づいてくる人物。

 

「あっ! お、お疲れ様です! 弁当を取りに行っていて……」

 

 見えてきた顔で、若い女だと分かった。

 電話で聞いた声と同じ。

 

 見れば、両手で平たい箱を上に重ねたままの運搬。

 

「手伝ってあげろ」

 

「うん」

「分かりました」

 

 天ヶ瀬(あまがせ)(うらら)と『まりん』の2人が、分担して持つ。

 

「お手を煩わせて、申し訳ありません! すぐに開けますので!」

 

 手が空いた女は、鍵を差し込み、解錠した。

 

 ドアを開けながら、どうぞ、と控える。

 

「失礼します」

「お、お邪魔します……」

「失礼いたします」

 

 小さな会議室で、複数のモニターがある長机や、資料のボックスが並べられている長机……。

 

 ホワイトボードには、黒いマジックでの書き込みや付箋。

 

 バタンと閉じた女は、自分のスマホを確認する。

 

「班長たちは、こちらへ向かっているようです! たぶん、上に報告していると……。お弁当は、もう食べますか?」

 

「すぐでしたら、待ちます」

 

 

 ――10分後

 

 淹れてもらったコーヒーを飲みつつ、責任者らしき班長とその部下に対面した。

 どちらも、男。

 

 3人とも、スーツ姿だ。

 

「レジデンスでお会いした野見山(のみやま)です! わざわざ、すみません」

「いえ。急に押しかけて、こちらこそ」

 

 待っている間に、弁当を運んできた若い女がそのレジデンスにやってきた1人である登根(とね)だと分かった。

 

 新顔の若い男は、会釈したぐらいで無言だ。

 

 全員に弁当が配られ、飲み物の紙コップも。

 

 時間がなく、食べながらの話し合いだ。

 

 呑み込んでいるようなスピードで、年輩に見える男、野見山が食べていく。

 

「このチームは警視総監の肝いりなんで、役員弁当を許されましたよ! いつもこれなら、いいんですけどね? ハハハ」

 

 冗談を言いながら、俺の顔を見た。

 

 頷いて、捜査結果を報告する。

 

「自宅のタワマンで見かけた仲四氏(なかよし)真琴(まこと)は、『これから自分の選挙区へ行く』と言っていました。そこはパーティー用の大部屋で、いわゆるクラブハウスみたいにDJが音楽を流し、支援者らしき群衆が踊っていました」

 

 デジタル機器で撮影した写真や動画を見せたら、食い入るように覗き込む面々。

 

「コピーして、構いません」

 

 俺の言葉に、すぐ反応があった。

 

「助かります! 登根?」

「はい! お借りします!」

 

 バタバタと動いた女が、俺のデバイスを移動させて、ケーブルに繋いだ。

 

 いっぽう、野見山が説明する。

 

「こちらは、『仲四氏の自宅で本人を見た』と上に報告しました。別で監視している班がいるから、そちらへ情報共有です。……やつは、中国地方へ行っちゃいますか」

 

 もう食べ終わった野見山は、コーヒーを飲んだ。

 

「そっちで立候補を?」

「ええ! 現住所に関係なく出馬できるそうで……。私も、初めて知りました」

 

 全員が、俺を見ている。

 

「やつは、生まれ育った地元で代議士になる気ですよね? 現地へ行くしかないです。選挙中に家宅捜査は、無理でしょう? 本人がいないし」

 

 ため息をついた野見山は、腕組みしたあとで、首肯する。

 

「その通りです! 警視総監の特命だし、うちのヘリですぐに――」

「目立ちすぎます。あちらの県警が知れば、上のやり取りなしで縄張りを荒らされるのを嫌がるでしょう。それでなくても、選挙で神経質になっている人たちが騒ぎます」

 

 こちらを見た野見山が、提案する。

 

「では、高速道路を走るか、そちらへの電車に乗りますか? ウチの車を出すか、チケットを取ります!」

 

「お気持ちは嬉しいですが、俺たち3人で調べます。移動手段はありますから」

 

 俺の返事にうなずいた野見山は、質問する。

 

室矢(むろや)さんは、どうするつもりですか? 仲四氏に出馬を辞退させることが最良ですけど、もう時間との勝負です! 期限前の投票日になったら、やつに手を出せません」

 

 抹殺してくれないか? という打診だな。

 

 まあ、そこまでは思っていないかもしれんが……。

 

「野見山さん? 引き篭もりを知っていますか?」

 

 虚を突かれたらしく、ポカンとした表情の彼。

 

 すぐに、返事をする。

 

「ええ……。単語としては……。急に、どうしたんですか?」

 

 いきなり話がそれたことで、若干イライラした様子。

 

 俺は、構わずに告げる。

 

「仲四氏の経歴は、不登校のまま、公立中学を卒業させられたはず……。そうですよね?」

 

 犯人のプロファイリングと分かり、野見山の表情が変わった。

 

「ああ、そういうことですか……。登根!」

「……はい!」

 

 若い女が、慌ててボックス、リングファイルを崩し始めた。

 

 じきに、開いたままで長机に置く。

 

 仲四氏真琴の個人情報だ。

 

 俺は、視線を上げた。

 

「今から数時間後に、俺たち3人で仲四氏がいる地元へ出発します。睡眠をとりながら移動して、翌朝から捜査を始める予定です。それまで、ブレーンストーミングをしませんか?」

 

「いいですね! ここで、次の一手を読み切るってわけですか……」

 

 野見山が応じたことで、モブに徹していた若い男は椅子を持ってきて、近くで座り直した。

 

 お題は……引き篭もりについて。




過去作は、こちらです!
https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31
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