【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~   作:初雪空

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第61話 お前たちは、本物の引き篭もりを知らない!(後編)

 警視庁での話し合いが終わり、俺たちはカペラが運転する車で移動中。

 

 運転席にいる俺は、夜の高速道路を眺めた。

 

 たまに強力なライトが照らしつつ、光と闇を繰り返す。

 長距離トラックや家族サービスらしき一般車が、距離を保ったまま。

 

 他の連中が寝ている時間帯だけに、見ず知らずの相手でも妙な連帯感がある。

 

(こういう物流が、今の日本を支えているんだよな……)

 

 深夜だけに、ほぼトラックだけ。

 思わず眠くなる、単調な景色。

 

「ま、あいつらは体育会系だからな?」

 

 その独白に、後部座席の女子2人が答える。

 

「うーん? 引き篭もりには、『頑張れ!』と言うぐらいしか……」

「警視庁本部のエリートだけに、尚更ですね」

 

 隠し子とはいえ、天ヶ瀬(あまがせ)(うらら)は恵まれた立場だからな。

 

(引き篭もりの気持ちは、分からないか……)

 

「警視庁の奴らに分かってもらえるとは、考えていないさ」

 

 俺の発言で、麗が動揺した。

 

 バックミラー越しに、俺に嫌われたと思った彼女が映る。

 

「えっ! し、重遠(しげとお)さんも?」

 

「俺は、高校生になるまで霊力ゼロだった! 厳密な意味での引き篭もりじゃないが、似たようなものさ! 気持ちは、よく分かる……。麗は気にするな」

 

「は、はい……。その、すみません……」

 

 意気消沈した麗に代わり、未来の娘である天ヶ瀬まりんがフォローする。

 

「室矢さんには、もう真実が見えているのでは?」

「……答え合わせが残っている」

 

 その会話に、麗がいじけた。

 

「私より、まりんのほうがいいんじゃない?」

「麗? もうすぐ捜査が終わるから、しばらく2人で過ごそうな? 詩央里(しおり)には、俺が許可をもらう」

 

 機嫌を直した麗はニヤニヤするも、ハッと気づく。

 

「まりんも――」

「わたくしは、結構ですわ! ぜひ、お二人でゆっくりなさってください」

 

 様子を窺う麗だが、まりんは上機嫌で、ニコニコしたまま。

 

 社交辞令という雰囲気でもない。

 

 途中のサービスエリアで休憩しつつ、監視カメラがないポイントで走りながらワープしていく。

 

 女子2人が、話し合う。

 

「大丈夫かな?」

「不自然ではありますが、この捜査はアンタッチャブルなので」

 

「俺も、まりんと同じ意見だ! お前らに徹夜をさせられないから、早く済ませて帰ろう」

 

 

 ――中国地方 仲四氏(なかよし)真琴(まこと)の地元

 

 真っ暗な、戸建て。

 

 古い民家が立ち並ぶ住宅街で、俺たちは夜道に立っていた。

 

 俺の壁抜けにより、同じように暗い室内へ。

 

 天ヶ瀬麗の小さな声が、響く。

 

「だ、誰もいないよね?」

 

「大丈夫だ……。土足のままで歩け! 目的を達成したら、すぐに離脱する」

「分かりました」

 

 天ヶ瀬まりんの返事で、俺たちは動き出す。

 

 スマホの灯りで2階へ行き、仲四氏の自室に入った。

 

 俺はアルバムを見つけて、ページを開く。

 

 思った通りだ。

 

「フフフ……。ハハハハハッ! だと思ったぜ!!」

 

 不思議がる女子2人に、開いたままのページを見せて、指さす。

 

 スマホの灯りで照らされたページを。

 

 絶句した母娘は、やがて感想を述べる。

 

「えっ!? そんな……」

「なるほど……。言われてみれば、この結論しかありませんね?」

 

 暗闇で、俺たちが覗きこんでいるページ。

 

 その写真にいる昔の仲四氏真琴は……。

 

 まったくの別人だった。

 

 混乱した麗が、叫び出す。

 

「だって! 衆院選に出ているんだよ!? 成りすませるわけが……」

 

「彼は、中学時代に不登校のままです。行政への登録や更新も、やりようはいくらでもあります。タイミングと運にもよりますが」

 

 まりんの指摘に、俺は頷いた。

 

「そうだ! こいつには、顔を合わせる友人や家族がいなかった……。成りすましても、それを指摘する人間がいないんだよ。お役所は、書類に不備がなければ受け付けるだけ」

 

「問題が1つあります……。本物の仲四氏真琴は、今どこに?」

 

 女子2人に見つめられたまま、俺は立ち上がった。

 

「引き篭もりってさ? 他人の視線が怖いんだよ、どうしようもなく……」

 

 暗闇の中で、1階へ歩き出した。

 

 ついてくる、女子2人。

 

「せいぜい、夜に近くのコンビニへ行く程度……。それだって、おっかなびっくりだ」

 

 階段を下りて、リビングに入った。

 

「衆院選? 冗談を言うな! あんなパリピをやれるわけがない! 大金があったら、ずっと引き篭もっているよ! 料理の配達ですら、置き配で! 買い物も全てネットだ」

 

 言いながら、壁際にある低い棚の前で立ち止まった。

 

「となれば、本人がどこへ行ったのかは、自明の理だ」

 

 壁と棚のスキマを指さす。

 

 察した女子2人が、ショックを受ける。

 

「まさか……」

「……そのまさか、ですわ」

 

 気丈にも棚の上にのっかった『まりん』は、自分のスマホで照らした。

 

 けれど、首を横に振りつつ、ため息をつく。

 

 強張った顔の麗も、それに続いた。

 

 言い出した俺も、空いているスペースから覗き込む。

 

 そこには……。

 

 まだ着れそうな服を身につけたままの白骨死体が、挟まっていた。

 

 脱出しようと足掻いた形跡もあるが、見事に落ちたままで、焼け石に水だったようだ。

 

「死んだことにすら……気づいてもらえないの?」

「今の仲四氏は、偽者ですね」

 

 女子2人の嘆きと共に、真実は明らかになった。




過去作は、こちらです!
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