【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~   作:初雪空

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第六章 ユニオンに里帰りする母娘
第63話 小さいけど陽気な娘と親子問題


 ようやく落ち着いたので、明示(めいじ)法律大学で講義を受ける。

 

(都心のど真ん中にあるのは、それだけで勝ち組だな……)

 

 そう思いつつ、微妙に左右が空いている長机の椅子に座っていた。

 

 チャイムと共に、正面にいる講師が終わりを宣言。

 

 固定の椅子から立ち上がる音に、学生の話し声による喧騒。

 

 スマホを見ると――

 

“マズい状況です。これを見たら、ただちに帰宅してください! レジデンスのエントランスにいます”

 

 差出人は、悠月(ゆづき)明夜音(あやね)だ。

 

 ふうっと息を吐いた俺は、立ち上がる。

 

(そうだな……)

 

 俺はデイパックを肩に引っかけ、講義室を出た。

 

(ゆっくり帰るか!)

 

 この前、衆院選で特命を受けたばっかりだぞ!

 いい加減にしろ!

 

 1人の大学生として過ごすのは、いいものだ。

 

 誰も、俺を気にしていない――

 

「おい? あいつだろ?」

「……今日は、女がいねーじゃん?」

「喧嘩したん? なら、そいつを口説くチャンスだろ?」

「俺に聞かれても、知らねえよ!」

 

「何か、すごい豪邸に住んでいるって!」

「タワマン?」

「ううん、億ション!」

「マジ!? えー、誰か知り合いじゃないの?」

 

 …………

 

 まあ、邪魔してくるわけじゃない。

 

 

 都心の広い歩道を歩き、最寄りの主要駅へ。

 

 おや? 駅前の開けた場所に人だかりが?

 

 まーた、誰かがストリートライブをしているのか……。

 

 可愛らしい少女の声で、中高生のようだ。

 平日の真昼間とは、珍しい。

 

 盛り上がっている人だかりの後ろを歩き、モブとして構内へ――

 

『あ、パパだ!』

 

 ストリートライブの中心にいるらしき、可愛らしい少女の声。

 

(落ち着け……。まだ、俺のことだと決まったわけでは……)

 

 足を止めずに歩くも――

 

『パパー! 室矢(むろや)パパー!!』

 

 舌打ちした俺は、霊力による身体強化。

 

 地を蹴り、空中の足場となる部分を蹴ることで、一気に移動する。

 

 東京のコンクリートジャングルで視界が高くなり、空気の壁を感じた。

 

 主要駅と一体化している商業施設の屋上に立てば、俺の正面に少女も降り立つ。

 

 女子中学生のようだが、幼い雰囲気。

 

 白い肌に、長い銀髪。

 赤紫の瞳で、こちらをジーッと見たまま。

 

 どこかの制服を着ている。

 

「パパ?」

 

「今度は、誰の娘だ?」

 

 くるっと回った少女は、バッとポーズをとる。

 

「ママの娘!」

「名前で言え!」

 

 わりと天然だ、この娘……。

 

 そう思っていたら、天然娘は胸を張った。

 

咲良(さくら)マルグリットおおおおっ!」

「え? 本当に?」

 

 反射的に、空気抵抗が少なそうな胸を見た。

 

 両手で隠しつつ、身をよじった娘は、顔を赤くしつつ抗議する。

 

「NG! 本番NGだから! あと、失礼!」

 

「ああ、すまん……。というか、初対面で本番言うな」

 

 向き直った娘が、力強く言う。

 

「終わってからでは、もう遅い!」

「ラノベのタイトルじゃないんだぞ? で、お前は何をしに来た?」

 

 キョトンとした娘は、自己紹介をする。

 

「咲良一舞(いぶ)だよ! 中学生! みんな遊びに行っているから、私も!」

「……特に、目的はないか」

 

 ここで、ウーウーというサイレンの音。

 

 誰かが通報したか、巡回中のパトカーが群衆を見つけたようだ。

 

 下は、だいぶ騒がしい。

 

「一舞は、俺の自宅へ来るか?」

「本番NG!」

 

 笑顔のままで、未来の娘がビシッと言った。

 

「分かったから、急ぐぞ? 俺じゃなく、メグのところで泊まればいい」

「……ママの家!? 楽しみ! 行こう行こう!」

 

 穴に落ちるように、俺たちはレジデンスの入口前へ。

 

 複数のセキュリティを突破して、中に入れば――

 

「マルグリットちゃん! 私たちと一緒に、お家へ帰りましょう?」

 

 美術館のようなエントランスホールに、悲痛な女の叫び。

 

 対して、本人の返事。

 

「行かない! 今更になって、何のつもり!?」

「シュンに子供がいたと、知らなかったのよ! 私たちだって必死に――」

 

「君にとって、唯一の家族だよ? おばあちゃんの家に行ってみなさい」

「あなたが成人でも、円満にしておいたほうがトラブルになりません」

 

 どうやら、大勢でいるようだ。

 

 びっくりした一舞が、俺を見上げた。

 

 先ほどまでの明るい雰囲気が鳴りを潜め、不安そうな表情。

 

 俺の片腕に、ピタッとくっついた。

 

(ここは出口で、今の奴らが来る可能性が高いな……)

 

 タイミングを間違えたことで、ゆっくり息を吐いた。

 

 小声で、一舞に言う。

 

「ここも危険だ。俺の傍にいて、何か言われても口を開くな」

「……う、うん」

 

 こっそり出ていくのも選択肢だが、(しゃく)に障る。

 

 超空間のネットワークで、明夜音に問いかける。

 

『俺だ! 今はエントランスの入口側にいる! 何があった?』

 

 呆れたように息を吐いたあとで、明夜音が答える。

 

『メグの父親の親、つまり彼女の祖母、祖父が来たんです! だから、すぐに帰ってくるようにと――』

『すまん! こっちも、メグの未来の娘といて……』

 

 再び、呆れたような雰囲気。

 

『子供に聞かせる話じゃないですよ!? ハアッ……。重遠は、どうするつもりで?』

 

『そいつらを叩き出せない理由は? 少しだけ聞こえたが、メグは拒否しているだろう?』

 

 俺の質問に、明夜音が答える。

 

『弁護士と地元の政治家が同伴のうえ、彼らが通報したことで警官2人もいます』

 

 わーお! フルハウスじゃん!

 

『……重遠に丸投げしても?』

 

 心を読んだ明夜音は、冷たく言い捨てた。

 

『少し待て……。警官2人を除き、下に落として地元へ帰してやれ』

 

 ウキウキした様子の明夜音が、応じる。

 

『ええ、そうしましょうか!』

 

 喧嘩をしているような言い合いで、小さな悲鳴が聞こえた。

 

 それっきり、静かになる。




過去作は、こちらです!
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