【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~ 作:初雪空
『円卓の騎士』の本拠地である、キャメロット。
そこへ向かう車内で、俺はユニオンの景色を見る。
「場合によっては、二度と見られないんだな……」
「そうですね」
俺の呟きに、正妻の
「うむ……。ユニオンがなくなったら、私の王国でも作るか!」
引きつった笑みのアドラステア・リーディ・シェラフィールが、突っ込む。
「あのー? 国を亡ぼすと聞こえたんですが?」
そちらを見たカレナが、頷く。
「
アドラステアが、そーっと俺の顔をのぞきこむ。
「そうなんですか?」
「今のシャーリーを知らないから、何とも言えん! 決闘と言うのなら、誠実に対応するだけ……。悪いが、今は世間話をする気にならん。集中させてくれ」
「は、はい……」
彼女は、自分の席に座り直した。
◇
シャーリーは、動きやすい
急所を覆いつつも手足の付け根といった可動部は空いているプレートアーマーだ。
よく見れば、手足の先まで保護されており、いくつかのパーツによる複合的なものだと分かる。
暗がりだが、白銀の輝き。
頭部のヘッドギアは、女性用のホワイトブリムと似ている。
その控室に、1人の影。
若い男の声で喋る。
「シャーリー、今からでも辞退できないか?」
顔を下へ向けたまま、彼女が答える。
「できないよ……。散々に話し合ったでしょ、ロルフ?」
誰あろう、彼女と一緒に日本で冒険した男だった。
今は、シャーリーの婚約者だ。
政略的ではあるが、ほぼ恋愛結婚として。
「この約束のために、数年間を捧げた……。それに、お爺ちゃんと最後に戦った相手とやり合える、最初で最後のチャンスなんだ」
「それは分かっている! 私では、ダメなのか!?」
感情的になったロルフが詰め寄るも、顔を上げたシャーリーは首を横に振る。
「もう言わせないで! あなたが戦っても、意味がないの!!」
近くの壁を殴ったロルフは、慟哭する。
「数年間で鍛えたのは、私も同じだ! クッ……。肝心な時に……」
シャーリーが、独り言のように呟く。
「私は、剣聖だったお爺ちゃんの名誉を回復する! 勝てば、それでいい。負けても、今の私が死力を尽くした結果なら――」
「死なないでくれ! お願いだ……。なぜ、結婚式を行おうとした時に」
彼女の両肩に手を置いたまま、膝を落としたロルフは、泣き始めた。
その手に自分の手を重ねつつ、シャーリーは言い聞かせるように告げる。
「だから、済ませておくの……。家の名誉とか、私の社交界での立場は、どうでもいい! あいつと決着をつけなければ、一歩も前へ進めない」
――だから、行かせて?
ガシャリと立ち上がった女は、歩き始めた。
後ろ姿のままで、最後のお願いをする。
「私を見守って? これからも、2人で歩むために……」
指まで保護されているガントレットの拳は、震えていた。
◇
俺は、アウェーらしく敵意に満ちた視線の中で、立っていた。
すでに和装となり、左腰に刀を差したまま。
白足袋に草鞋で、ユニオンの空の下、それも伝承のキャメロットにいるのだ。
「今日は良い日だ……。そういえば、英語の発音によっては to die になるんだっけ? 死ぬのに良い日か」
反対側がざわついたことで、そちらを見る。
動きやすい軽鎧、つまり
(拳を守る鍔がある……サーベルの片手持ちか)
奇しくも、日本刀のような武器だ。
合図を待たずに、こちらもゆっくり抜刀する。
このまま襲い掛かられても、俺が油断していたのが悪い、とされかねない。
ガランガラン
乾いた金属音が響く。
そちらを見れば、シャーリーが武器を落としていた。
急いで拾うも、思っていたよりも手こずる。
指が震えているようだ。
しゃがんだまま、俺のほうを見ている。
(怖いか……。俺を見て怖いと思えるぐらいには、強くなったと……)
残念ながら、俺はもう剣戟で殺すとか、そういう段階ではない。
ようやく拾ったシャーリーは、ヒュッと体の正面で剣身を立てる。
(剣礼……)
俺のほうは両手で
開始の合図を出しそうな審判役の女は、無言で下がった。
シャーリーを見ながら、正眼の構えのまま、摺り足で移動する。
(お前にとって、今日は良い日か?)
裂帛の気合と共に一瞬で近づいたシャーリーに対して、その突きを払いつつ、カウンターの機会を窺う。
鋭い風切音が続き、じきに金属同士がぶつかる。
火花と耳を塞ぎたくなる音に、お互いが押し込むことでの駆け引きへ。
俺を見たままでバックステップを繰り返したシャーリーは、サーベルを下ろしつつ、呼吸を整える。
(今の俺には、戦いを楽しむことができない……。負けるほうが難しいんだ)
たぶん、人に向けてはいけないのだろう。
それでも――
(お前にその価値があるのなら……殺してやるよ!)
俺は両足を広げ、初めての攻撃的な姿勢へ移る。