【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~ 作:初雪空
深海に住むもの。
それは母なる海に生きると同時に、邪神クルールーを信奉するディゴン秘密教団にも属している。
プロスルイスという港町は、漁をすることで、その日暮らしがやっと。
そのはずだった。
この町を仕切っているスムメルス家が、貴重な鉱石やエネルギー、金塊を手に入れるまでは……。
Hなことはいけません! と言う女子も、5万円でペチペチ叩かれれば考え始めて、20万円となれば真剣に悩み始める。
ともあれ、そんな感じで、プロスルイスは発展したのだ。
当然ながら、金の匂いを嗅ぎつけた大企業やマフィアもやってきたが――
不思議なことに、どいつも行方不明になるか、発狂して自分の頭を撃ち抜く始末。
やつらのプロス顔と呼ばれる魚面は、海に帰っていくサイン。
要するに、人間を利用して繁殖するのだ。
基本的に血族であれば同胞と見なし、いずれは魚市場で競りにかけられても違和感のない面へ……。
あまりにヤバいことで、多少知っている人間や地元民は間違っても近づかない場所だ。
公共インフラも逃げ出したことで、廃線になった線路と駅が残るだけ。
今となっては、
そもそも、
ダイナーと呼ばれる食堂が1つで、保安官事務所とガソリンスタンドぐらい。
金も人もなく、若者は都市へ逃げていく。
地元に大企業があるかどうかで、天と地だ。
その意味では、寂れた港町のプロスルイスは判断に苦しむ。
金がある雰囲気なのに、人を呼び込む姿勢はない。
大きな採掘場などはあるが、それなら作業者が必要なはず……。
千波とエカチェリーナは、ホテルのカウンターで呼び出した老人にチェックインを頼み、泊まる部屋を確保した。
しかし――
「あらら……」
「鍵が……ない?」
薄いベニヤ板のようなドアには、何と鍵がついていない!
さっそく階段を下りて、苦情を言うも、他に使える部屋はないと拒絶されただけ。
あとで、SNSに最低評価をつけておこう。
足元を見られるどころか、もはや腰まで海水に使っているレベル。
トボトボと部屋に戻った2人は、ドアを閉めたあとで話し合う。
「まいったわ!」
「……貴重品と大事なものを除き、ここに捨てていこう」
エカチェリーナの真剣な声に、千波はキョトンとした顔。
「そりゃあ、最悪のホテルだけど……。USで野宿をしたら、翌朝までにエロ同人と同じ目に遭うわよ? バリケードを作れば、朝までは大丈夫だと思う。食事とかで外へ行く時には――」
「町の様子が、どうにもおかしいんだ……。遠くで銃撃のような音もあったし、ずっと見張られている気がする」
マットレスの役割を果たしていないベッドに座った千波は、両手を軽く上げた。
「考えすぎじゃない? 勢いで来ちゃったのはマズかったけど、観光客が来ない田舎なら排他的で当然よ! 地元の常連だけの個人店じゃ、何を出されるやら……。チェーン店はないかな? 最悪、持っているものだけで翌朝まで――」
コンコンコン
ノックの音と気配に、女子2人は
どちらも両足で立ち、自然体へ。
海上防衛軍で、陸上ほどの白兵戦ではないが、それでもプロだ。
『俺だ! バスを運転していた!』
焦ったような男の声に、聞き覚えがあった。
千波は、低い声で訊ねる。
「何の用?」
『差し入れっつーか、頼まれて持ってきたんだよ! ここに置いていくから――』
「鍵はかかっていない。ゆっくり、入ってきて」
悩んだ気配のあとで、ギイイッと開く。
片手でアタッシュケースを下げていて、もう片方は肘を曲げたままで上げている。
「入るぜ? ハアッ……。妙に手馴れているな、お前ら?」
ドアが当たらないほうの壁に張りついていたエカチェリーナは、片手のミラーで廊下をチェック。
いっぽう、少しだけ歩いた男は、アタッシュケースを置いた。
「ほらよ! 俺に頼んだやつは、言えん……。あとは捨てるなり、好きにしな! お前は、ちったあ礼儀を知っているらしいな?」
エカチェリーナは、10$を差し出した。
当たり前のように受け取った男に、尋ねる。
「ここで安全に食える店と、代わりのホテルは?」
両手を上げた男が、言い捨てる。
「密封されているメーカー品だけにしときな! ホテルはさっき教えた通り、他にない。先に言っておくが、ここの誰かと仲良くなって泊めてもらうのはやめとけ! ここなら、夜までは安全のはずだ」
呆れた千波が、すかさず突っ込む。
「鍵もない部屋が?」
「余所者は、お前たちだけ! 赴任した教師とか、運の悪い奴らはビクビクしているさ。俺を含めてな?」
街の雑貨屋を教えた男は、ニヤリと意味ありげに笑ったあとで、立ち去る。
「じゃあな! せいぜい、楽しめ……」
ドアを閉めたあとで、エカチェリーナがアタッシュケースの一部をさわったら、電子音と共に解錠された。
「指紋認証? でも、どうして……」
不安げな彼女が開けば、色々な機器などが入っていた。
それを覗き込んだ千波は、自分の感想を述べる。
「リーナの知り合い?」
「……ここにいると知っているのは、かなり不自然だけどね」
ふうっと息を吐いたエカチェリーナが、頭を切り替えた。
「ここから脱出しないと……」