【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~   作:初雪空

71 / 83
この魔法少女たち、危険につき……
「俺の部下は訳あり魔法少女3人!~傷心の女子を慰めたらハーレムに!?~1」
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CVFGWMFZ


第71話 On the run is

 日が暮れた。

 

 潮風によって運ばれる生臭さは、止むことがない。

 

 内側にエネルギーシールドを張っていた女子2人は、むくりと起き上がる。

 真っ暗な部屋には、閉めているカーテンを通しての月光。

 

 港町のプロスルイスはそれなりの都市であるのに、外から聞こえてくる声や物音は少ない。

 

 空賀(くが)エカチェリーナは外出できる服装のまま、近くに置いていたリュックを背負い、半長靴のように頑丈な靴を履いた。

 

 開けたままのアタッシュケースの中をいじると、赤いデジタル表示が動き出す。

 

 小声で、自分のパートナーに催促する。

 

「急いでね?」

「……分かっているわよ!」

 

 支鞍(しくら)千波(ちなみ)も、すぐに外出できる格好だ。

 

 暗闇でも慣れた様子で、同じような靴を履いた。

 

 いっぽう、エカチェリーナは呟く。

 

「5人以上……。窓からにしよう」

 

「次から、チェーン店がない場所には行かないわ!」

 

 涙目の千波も、両足で立って、トントンと軽くジャンプ。

 

 下から押し寄せてきた足音は、どんどん近づいてくる。

 

 魔法で身体強化をした2人のうち、エカチェリーナは閉めている窓のほうを見た。

 

 ドン! ドンドンドンドン!!

 

 すぐに蹴破るつもりだったのか、戸惑ったあとに連打。

 

 薄いドア越しに、訛りの強い英語による罵倒が続く。

 

 エカチェリーナは魔法による空気の壁を形成して、ただ加速させた。

 

 いつ倒壊してもおかしくないホテルの外壁ごと、吹っ飛んだ。

 

 凄まじい音と土煙、さらに瓦礫の散弾が、向かいを襲った。

 

「Go!」

「……あー、もう!」

 

 走り幅跳びのように走り出した2人は、一瞬でトップスピードに達して、床を蹴る。

 

 放物線を描いた末に、向かいの屋上へ着地して、そのまま走り続ける。

 

 

 ◇

 

 

 ようやくドアを蹴り破った連中は、一斉になだれ込む。

 

 けれど、さっきのホテルを揺るがす振動や音で、外へ逃げたことは把握済み。

 

 街に住んでいる魚面の奴らは、なくなった外壁から外を見たまま、ギリリと悔しがる。

 

『知っていた?』

『どうせ、街から逃げられん! すでに配置済みだ!』

 

『あのバス運転手……。余計なことを喋ったな?』

『今は、どうでもいい!』

『裏切るつもりなら、昼に逃がしていたさ! 放っておけ』

 

 一通り言ったことで、ようやく落ち着いた魚人間たち。

 

『ともかく……。あいつらの荷物を調べるぞ?』

『スーツケースは、どちらも置き去りか』

『さすがに、持っていく余裕はないだろう?』

 

 魚人間の1匹が、動いている赤いデジタルに気づいた。

 

『おい! これは――』

 

 次の瞬間に、ホテルにできたばかりの穴を埋め尽くすほどの炎が噴き出した。

 

 海鮮バーベキューだ。

 お好きなだけ、どうぞ!

 

 アタッシュケースに仕込まれた爆弾だ。

 

 みづはがバス運転手に運ばせたアタッシュケースが、さっそく役に立ったのだ。

 

 若いときの実の母親に、どれだけ物騒な代物を持たせたんだ?

 

 

 ◇

 

 

 空賀エカチェリーナと支鞍千波は、待ち構えていた奴らを避けながら、脱出しようとするも――

 

 車のライトが横に並んで、ずっと照らしている。

 

 そのスキマを縫おうにも、小銃を持った奴らが立っていた。

 

「ダメだ! 鉄道の廃線のほうは、テクニカルまでいる!」

「あいつら、紛争でもする気?」

 

 テクニカルとは、オープンの荷台に重機関銃を設置した車だ。

 民間用を改造することが多く、なぜか日本車が多い印象。

 

 即席とはいえ、その有効性は正規軍を足止めしつつ、被害を出せるほど……。

 

 いくら異能者でも、ズラリと並んだテクニカルや小銃には勝てない。

 

「どうするの? 私たちが乗ったバスの道路を行く?」

「……そちらは、もっと危険だろう」

 

 エカチェリーナは、アタッシュケースに入っていたタブレットにより、1つの個所を指さした。

 

「私たちは、海の魔法師(マギクス)だ! 奴らがその情報を知る前に、海上から脱出する。ただし、ストレートに行くわけにはいかないから……」

 

 考えつつ、もう使われていない採掘場の跡地を示した。

 

「ここを突破して、人がいない沿岸からボートか何かで脱出しよう! 上手くいけば、歩いてプロスルイスの外だ」

 

 その作戦に穴がないか? を思案していた千波は、腕を組んだまま。

 

「いいと思うわ……。天然の洞窟があるのね? 海蝕か」

 

「人が入れるかは不明だが、強引に突破するしかないだろう? 魔力が尽きるのが先か、それとも、無事に朝日を拝めるか」

 

 エカチェリーナは、反対がないことから動き出した。

 

 千波が続く。

 

 日が昇った時点で脱出できなければ、詰み。

 チャンスは、今晩だけ!

 

 その海蝕洞窟こそ、ディゴン秘密教団の本拠地だが……。

 

 女子2人には、知る由もない。

 

 包囲している奴らも、そちらは手薄。

 あくまで、外へ逃げられるルートを潰しているだけ。

 

 最初に魚雷を撃たれた巨大サメ、未来の娘が乗っている潜水艦、置物になっている巨大ボール、そして魚面の邪神教団……。

 

 分かっているのは、失った荷物の買い直しで出費があることだけ。

 

 現代の魔法は、果たして魔術に対抗できるのか!?




過去作は、こちらです!
https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。