【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~   作:初雪空

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世界は滅びた!
残った人類が争う中で、ユースティア達が動く!
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第72話 USなら、魚料理よりもハンバーガーだよね?

 真っ暗な海底で、ボゴッと音がした。

 

 同時に、巨大な何かが身じろぎする。

 

 周りにいた魚やイカが、慌てて逃げていく。

 

 いっぽう、海底から浮かび上がった巨大サメは、深海で首を振った。

 

『ふむ……。最近の若者は、すぐキレる! 困ったものだ……』

 

 私のように落ち着きを持ってくれ、と呟く。

 

 言いながら、どこからかゴソゴソと、ロケットランチャーのような箱を取り出し、自分の左右に装着した。

 

『少し、気分転換をするか……』

 

 力強く泳ぎ出した巨大サメは、海中とは思えない速度へ。

 

 同時に、左右の巨大な水中用スピーカーが稼働した。

 

 大音量のユーロビートを流すことで……。

 

 電子的なリズムに合わせて、巨大サメも加速する。

 

 泳ぎ去った後には、ぐったりした魚介類が海上へ浮かび上がっていく。

 この海域の生態系は、もうメチャクチャだ!

 

 最初の原潜は、こいつに前方の発射管でサルボーするべきだった……。

 

 

 勢いよく海面に出た巨大サメは、さらに速度を上げた。

 

 海を割るほどの勢いで、彼は思う。

 

(今ならば、あの岩場のスキマを華麗にドリフトできるに違いない!)

 

 減速するべき難所で、体を横にしてドリフトする巨大サメ。

 

 次の瞬間に横へ転がりつつ、海面を跳ねていく。

 

 盛り上がる、ユーロビート。

 

 狙ったわけではないだろうが、ちょうど山場のシーンで巨大サメが横にスピンしながら岸壁にぶつかった。

 

 

 ◇

 

 

 深夜の港町プロスルイスから脱出したい女子2人は、沿岸部の海蝕洞窟にいた。

 

 コソコソと動いていたら、魂消るような女の悲鳴が反響する。

 

 気になって見に行けば――

 

 いかにも邪教のような魚面の奴らが、平らな部分に寝かせた裸の女を切り刻んでいる。

 

 思わず飛び出そうとした支鞍(しくら)千波(ちなみ)は、空賀(くが)エカチェリーナに止められた。

 

(無理だ! 奴らは見えているだけで、40人ほど……。自分で動けない女を抱えて脱出するのは不可能! 魔力を残さなければ、私たちも助からない)

 

 腕をつかまれたまま、震える千波。

 

(……分かったわ)

 

 背中から追いかけてくる悲鳴や助けを求める声を振り切るように、女子2人は移動する。

 

 やがて、海面がある部分にたどりつき、小さなボートに乗った。

 連絡用らしく、通路のような洞窟を含めて、使い込んでいる雰囲気。

 

 天然の洞窟だが、人の手が加わっている。

 

 一定間隔でつけられた灯りが、先導してくれた。

 

 ぼんやりと照らされるだけの洞窟を進んでいけば、月明かりの海へ。

 

 けれど、洞窟と外の境界線を強烈なライトが横切った。

 

 感嘆の声を上げかけた女子2人は、とっさに自分の口をふさぐ。

 

 ブウウウンッというエンジン音に、そのシルエットから、プロスルイスの漁船か何かだと分かった。

 

 どうやら、この辺りを巡回しているらしい。

 

 希望が見えた瞬間に突き落とされ、エカチェリーナはじっとりと汗をかいた。

 

 思わず膝をつきたくなるが、必死にこらえる。

 

(このボートで逃げ切るには、あと一手が必要だ……)

 

 時間をかければ、ここも囲まれるだろう。

 

 すると、海に通じている狭い洞窟が、大きく震えた。

 

 外でも、男たちの怒鳴り声。

 

「今だ!」

「ええ、帰りましょう!」

 

 魔法師(マギクス)としての魔力を注ぎ込み、ボートレースも真っ青な加速で飛び出す。

 

 夜の海に、何か巨大な物体がいる。

 

 そいつは海に浮かび直し、スピーカーらしき部分から大音量のユーロビートを流し出す。

 

「は?」

「えっ、何?」

 

 思わず動きを止めた女子2人のボートに、海中から飛び上がった人型がいくつも襲いかかる。

 

 しかし、潜水艦のような物体の上にのっかったことで、エカチェリーナたちはかろうじて避けられた。

 

 高速道路が似合いそうなユーロビートと共に海上を走り出す、小さなボート。

 

 やがて、下にいる物体が横になったことで急ブレーキ。

 

 上に置かれただけのボートは、勢いよく射出された。

 

「ああああっ!」

「きゃああああっ! 私たちは、空軍じゃないわよぉおおおおおっ!」

 

 しがみついたボートと共に落下していく、女子2人。

 

 けれど、空中で何かに抱き留められ、海面に叩きつけられての死亡を免れる。

 

 ロボット状態になったボールユニットは、着水しながらボートを運び出す。

 

 やがて、プロスルイスから別のエリアとなり、ボールユニットは離脱。

 

 九死に一生を得た女子2人は、ぐしょぐしょの下着の換えすらなく、再びハンバーガーを潰して食べたのだった。

 

 目についたモーテルに泊まり、途中でテイクアウトしたジャンクフードを食べる2人。

 

 どちらも全裸だが、別にそういう関係ではない。

 

 死んだ魚のような目で、ひたすらに食べる。

 

「美味いね、千波?」

「……塩味が効いているわ」

 

 若いころの母親を救った空賀みづはも、ボールユニットを回収した潜水艦と共に未来へ!

 

 帰る前に、対地ミサイルをありったけ射出して……。

 

 プロスルイスが未来まで残ったのかどうかは、不明だ。

 

 そもそも、魚雷の直撃に耐える巨大サメとは、いったい?

 

 多くの謎を残しつつ、地元の新聞紙に掲載されるぐらいの事件はクローズした。




過去作は、こちらです!
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