【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~ 作:初雪空
電車は、ガタンゴトンと進む。
俺と未来の娘である、
地下鉄ではないため、トンネルを除き、左右の窓から日光が差し込む。
こいつの母親との電車プレイを誤魔化すべく、千陣
さすがに、後ろから両手を差し込んで、摘まんだり揉んだりはせず。
いっぽう、俺に背中を預けたままの乃々葉は、嬉しそうに返事をしている。
『次は―、室矢クァトル大学前ー! お出口は右側に――』
グイグイと体を押し付けていた乃々葉は、正面から抱き合う形から離れた。
「……名残惜しいですが、ここまでに」
「そうだな」
静かな攻防が終わったことで、ホッとするも――
(お母様と、どちらが良いですか?)
再び近づいた乃々葉は、耳元で囁いたあとに、俺の腕を引っ張った。
俺は、この娘と会わないために、他の娘とも会わないほうがいいのかもしれない……。
起きたら上でピョンピョン跳ねているのは、嫌すぎる。
再起不能か殺してもいいならともかく、乃々葉をただ動けないように押さえるのは無理だ!
(母親の真似をしたのか、物量と火力だからなあ……)
仮にも宗家の直系が、ここまで武装する必要はあるのか?
今は仕方ないけど、この様子だと普段から。
ともあれ、開いたドアから他の乗客と一緒に降りた。
――室矢クァトル大学
建設中の施設も多く、立入禁止の立て看板や工事計画が目立つ。
人の流れは、広いグラウンドのような場所へ向かっている。
「今日は、どのように?」
「……合意すれば、勝手に戦え! という感じだ! 止めるための異能者や監視もあるだろうが」
公式にすれば、四大流派の争いになってしまう。
お行儀よくするより、荒療治のほうがいいって判断だな……。
データを集めて、運営の参考にするのだろう。
立ち止まって見回せば、四大流派のエリアが用意されており、そこは手出し厳禁のようだ。
競技場のような広いスペースで戦っているのは、
他には、千陣流の若い退魔師も、式神を使っている。
「さあさあ! どんどん、かかってくるといいのっ!」
刀を振るっているのは、
「んんっ? 妖刀!? あー、
俺の叫びに、乃々葉は改めて見た。
「南乃
その女子高生は、丸顔。
動きやすそうな茶髪のボブ、茶色の瞳で相手を見ている。
(すごく、猫っぽい……)
乃々葉と比べて幼児体形だが、俊敏な動きだ。
さすがに、猫耳と尻尾はない。
夏用のセーラー服だが、その上から腰に帯を締めている。
その左腰に、鞘。
どういうスタイルか、いちいち納刀している。
パァンッ!
抜刀と同時に、空気の壁が破裂したような音。
刀を構えていた
抜きつけで斬り捨てた楓子は、切っ先を戻しつつ、高笑い。
「にゃははははは! よっわーい!!」
す、すごくアホっぽい……。
「美亜!? よくもっ!」
他のセーラー服の刀使いが、殺気立った。
ため息をついた乃々葉は、霊力で身体強化をしての高速移動。
突風が吹き、楓子を横合いから殴りつけた。
「うぼぉおおっ!?」
ギャグマンガのように吹っ飛ぶ、詩央里の娘。
(俺たちの娘は、元気だぞ……。でも……。あいつ……)
知性がっ!!
南乃詩央里は室矢家の正妻にして、千陣流の宗家の妻となるべく育てられた女。
今では、四大流派を横断するハーレムを仕切っているのに……。
その娘は、立派なアホの子になりました!
妖刀ぶんぶん丸の南乃家にチューンした感もあるけどさ?
詩央里は、未来でどう思っているのだろうか?
自分とそっくりの娘が、俺と同じ言動をしているのだから……。
横に吹っ飛んで、そのまま外壁にぶつかった楓子。
土煙に隠れた彼女から目をそらした乃々葉は、唖然とする演舞巫女たちに会釈。
「大変失礼しました……。あの娘には、よく言っておきますので」
「あ、はい……」
「分かりました」
なし崩しのうちに、事態は収まった。
全員の注目を集めた乃々葉はスタスタと歩いていき、片手で伸びている楓子の襟首をつかんだ。
「南乃さん? このまま焼かれたくなかったら、いい加減にしてくださいね?」
首の後ろをつままれた猫のような娘は、顔に縦線を入れた。
「あっ、ごめん……。でも――」
「お父様が来ています。ご挨拶を……し・て・く・だ・さ・い」
難色を示した楓子は、乃々葉のプレッシャーに震え上がった。
巨大な摘ままれストラップのまま、女子2人がやってくる。
全員の視線が移動して、俺も対象に。
地面に下ろされた楓子は、しぶしぶ自己紹介。
「南乃楓子……。お母さんは、詩央里」
彼女は、顔を伏せたまま。
「そうか……。俺を嫌いなら、それで構わない」
「お父さんは、それで! ……ハアッ」
顔を上げて抗議した楓子は、途中で言葉を切り、ため息をついた。
片足で地面をジャリジャリしている娘を見て、付け加える。
「俺は詩央里を正妻としているが、妻たちとの関係は一代限りだ……。現に、お前たちだって名字呼びで距離があるだろう? 四大流派のパワーバランスや国際的な駆け引きを押し付ける気はないし、一部の妻子を優遇すれば妬みになるだけ」
乃々葉が、すかさずフォローする。
「はい! 南乃さん? お父様にも、立場があるのです」
「うん……」