【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~ 作:初雪空
広いグランドのような場所に、
「では……。参ります!」
俺の正面で試合のように向き合っている乃々葉の周囲に、拳ほどのボッと燃える球体がいくつも出現した。
彼女を周回する衛星のように飛び回り、やがて正面で円を描く。
(
日本の妖怪としては有名なほうで、火のついた車。
(さっき、未来の娘である
ブレザーの制服を着たまま、片足を後ろへ引いた乃々葉は姿勢を低くした。
右手を斜め前に下げている状態から、一瞬で距離を詰めてくる。
俺は第二の式神で和装になったまま、すでに抜いていた右手の刀で乃々葉の横一文字の抜きつけを受け流しつつの移動。
(まあ、当然くるよな?)
両足の裏に溜めた霊力でのスライドによって、四方から飛んできたファイアーボールを避けていく。
遠近の立体攻撃だ。
切っ先を戻しつつの斬撃が続き、乃々葉は攻勢を強めていく。
本来なら、斬撃とファイアーボールを捌ききれずに食らうが……。
(数打ちの……御神刀もどきか? 実体化させられるのは、便利だが)
妖刀というには、神々しい雰囲気。
しかし、
(儀式で失敗した廃品を引き取った……。そんなところか!)
俺が四大流派を統括していて、
次の代から、応じてくれないだろう。
素手でファイアーボールを弾くか、避けつつの剣戟。
乃々葉の太刀筋は――
(稽古をしているが、実戦経験が足りなさすぎる……。当たり前か!)
そもそも、千陣流の次代を担う少女を危険にさらすことが間違っている。
母親の千陣
斬撃と遠隔攻撃のコンボを完成させれば、隊長格になれる。
でも、乃々葉に求められていることは、それにあらず!
動きを止めた俺は、片手で刀を持ったまま、告げる。
「終わり! 悪くなかったが、これ以上のパワーゲームは無意味だ」
「……はい、ありがとうございました」
肩で息をしている乃々葉は、左腰の見えない鞘に納めつつ、周りを飛び回る火の玉を全て消した。
見事な所作で、お辞儀。
周りで見学していた四大流派の学生たちが、パチパチと拍手した。
ヒュッと飛び上がったシルエットが、猫のように着地する。
「次は、私!」
南乃楓子だ。
セーラー服なのにスカートの中を気にしない動きは、感心しない。
「行くのっ!」
抜刀の姿勢になった楓子は、乃々葉とは比べ物にならない速度で突っ込んできた。
先触れとしての切っ先が、俺を襲う。
風切り音は、グラウンドから遠くまで鳴り響く。
カアンッと、刀同士がぶつかる音。
その勢いに逆らわず、お互いに回転した。
けれど、楓子は追撃せずに距離をとり、なぜか納刀する。
「にゃっ!」
先ほどよりも速い抜刀術。
違和感を覚えつつ、両手で握った刀による受け流し。
2回、3回の納刀――
どんどん、速くなっている!?
「ほうほう! そういう妖刀か?」
ドヤ顔の猫娘は、語り出す。
「
抜刀術になった楓子は、さらに叫ぶ。
「オッパイだけが女の価値じゃないっ! お母さんは、そう言ってた!!」
次の世代が見ている中で南乃
改めて見ると、過去の自分がいかにアレだったか、よく分かる。
「おとーさん、覚悟ぉおおおおっ!」
パアンッ! と空気の壁を突破した楓子は――
「あ゛あ゛あああぁあああぁぁっ……」
俺がいなしたことで、お空高くへ飛んでいった。
唖然とするギャラリーと、ため息をつく乃々葉。
「自分が制御できないスピードになるな……」
もはや、ギャグである。
こういうオチになるから、誰も使わなかったのでは?
その後には俺と戦いたい男子や女子が続き、久々に体を動かした。
俺は全力で戦えないが、仕方ない。
ん?
「え、えっと……。一緒に戦わない? さっきは、凄かったね!」
乃々葉が、同年代の男子にナンパされている。
微笑ましい――
スススと俺のほうに来た乃々葉は、背中から俺にぶつかり、両手をとった。
「ごめんなさい! 私たち、こういう関係なんです……」
「そ、そうなんだ……」
制服越しに柔らかい感触を感じていると、ナンパしていた男子は逃げていった。
「大きくなったな……」
思わず娘の成長を実感していたら、視線を感じた。
そこには、宇宙を見ている猫のような顔の楓子。
俺が見つめたことで、ビクッと震え、一目散に遮蔽をとる。
顔半分だけで俺を見ながら、ガタガタと震え続けた。
「ふう――」
バッ!
隠れた。
そして、恐る恐る顔を出す。
バッ!
取り返しがつかない事態で途方に暮れていると、向き直った乃々葉はニコニコしている。
「どうでした?」
「……夕花梨に負けず劣らずだが、どうするんだ、これ?」
未来の詩央里が知ったら、シャレにならん。
そう思っていたら、乃々葉が言う。
「ご心配には及びません! 私が未来の母に説明して、そちらで南乃オバサマに話をしてもらいますゆえ……。南乃さんにも、あとで事情を説明します」
「ああ、うん……。頼む」