【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~ 作:初雪空
次代の
俺は着慣れていない制服に身をつつみ、潮風が吹いている場所へ来ている。
乗っている車が停まった。
「到着しました!」
「……うむ、助かった! 俺たちは、ここで降りる! 室矢少佐?」
「分かりました」
俺と
バンッと閉めれば、ゆるゆると進み出す車。
それを見送りつつ、海があるほうを見た。
中佐の階級章がまぶしい善仁は、いつものどっしりした様子とは違う表情へ。
「海に来るのは、久々です……。これが、護衛艦くまのん!」
いい年をした職業軍人であるのに、ウキウキした様子だ。
(今回は、ゲストだからなあ……)
そう思いつつ、貸衣装の軍服を着ている俺も、従来の軍艦とは違うシルエットを見上げた。
埠頭に浮かんでいる『くまのん』はグレーで塗られており、上に突き出たブリッジとレーダーや通信アンテナがあるものの、全体的に四角張った形。
戦闘用の兵器だけあって、ゆるキャラの雰囲気はない……。
「ずいぶんと、可愛い名前ですね?」
「ええ、まったく! これはこれで、愛嬌がありますけど……。ああ、軍帽はかぶってください」
制服とセットの軍帽をかぶったので、それに倣う。
忙しく動き回っている兵士や下士官の間から、1人の男がやってきた。
目立つ軍帽と白い制服、各所の金色で、士官だと分かる。
俺たちの前で直立不動になった男は、30代のようだ。
右手による敬礼。
「お待たせしました! 護衛艦くまのんで砲雷長見習いをしている、
……この人も、護衛艦の一部かな?
敬礼したままの竹熊に、善仁も右手による答礼。
「ご苦労さまです! 士官の方に迎えていただけるとは、恐れ入ります」
善仁から視線が来たので、すぐに右手を上げる。
「初めまして!」
善仁が右手を下ろしたので、俺も続く。
竹熊も、右手を下ろした。
(ああ、階級順と……)
ようやく理解したら、この場の最上位である善仁が話しかける。
「本日は、よろしくお願いします! 陸上防衛軍の人型戦車実験中隊の隊長をしている五十嵐中佐です」
「室矢少佐です……。軍属ではなく、Y機関にいます」
「ああ、そうですか! 陸上さんにしては、少し雰囲気が違うなと……」
相槌を打った竹熊は、俺の左胸にあるプレートを見て、固まった。
小さなブロックを固めており、その防衛官の経歴を示すものだ。
基本的に所属を示すアクセサリーのような徽章の下へ、まとめてつける。
今の俺は、五十嵐中佐に貸してもらった陸防の制服で、記念章がヤバい。
・
・海外勤務経験者
・国際貢献(救助)
・〃 (対テロ)
・海上戦闘
・水中戦闘
・海賊対処(エイリアン退治)
・国家防衛(防衛任務、空母打撃群の撃退)
・総理大臣感謝状
海上防衛軍を探しても、ここまでの実戦経験者はそういないだろう。
制服は陸軍で、艦上勤務の経歴がないのに……。
理解に苦しんだ竹熊が首をひねっていると、善仁がフォローする。
「室矢少佐は、特殊な経歴です! 話したいのは山々ですが、機密が多くて……。私も、全てを知っているわけではありません」
それに乗っかる。
「情報機関なので……。陸防としての乗艦ゆえ、最低限の説明はしておこうと制服を着ました」
「そ、そうですか……。ご配慮くださり、ありがとうございます! 立ち話も何ですから、ブリッジへご案内します」
3人で歩きながら、兵士や下士官に敬礼されていく。
善仁が歩きながら、質問する。
「そういえば……。わざわざ、士官を案内役にしたのですね? あなたに不満があるわけではありませんが」
苦笑した竹熊が、先導しつつ応じる。
「ご指摘の通り、下士官の案内が普通です……。しかし、陸上さんの質問に答えられて、ブリッジなどへ行き来できる立場は、そうありません。私はちょうど手が空いていたことも、大きいですね! 砲雷長として、ここのシステムを研修中で」
言いながらも、見晴らしがいいブリッジへ。
目立つ色のカバーがある椅子に、いかにも偉そうな男がいた。
(艦長か……)
竹熊は、その男の前で敬礼して、報告する。
「陸上防衛軍の五十嵐中佐、室矢少佐の2名をお連れしました!」
「……ご苦労! 私が護衛艦くまのんの艦長である、
立ち上がっての自己紹介に、俺たちは敬礼した。
慣れた感じで答礼した貴志が右手を下ろした後に、右手を下げる。
「陸上防衛軍の五十嵐中佐です。本日は乗艦させていただき、誠にありがとうございます!」
「同じく、室矢少佐です。海上防衛軍の精鋭ぶりを拝見させていただきます」
頷いた貴志は、ぐるりと見回した。
「くまのんは、これより正体不明の艦がいる海域へ向かいます! 助言を求める場合もあるでしょう。竹熊をつけますから、そちらへどうぞ」
会釈した善仁が、お礼を述べる。
「お気遣いいただき、感謝申し上げます! 少しでも役に立てればと存じます」
「よろしくお願いします……。私は、艦の指揮があるので」
自分のシートへ戻った貴志を後目に、竹熊の案内ですみへ。
文字通りに畑違いの俺たちは、正体不明のMA(マニューバ・アーマー)と関連があると思しき海上艦を調べに行く。
俺は、ダルディアス帝国の戦闘艦だと推測。
3回目にして、いよいよ本隊がやってきたのだ……。