【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~ 作:初雪空
第78話 ランナウェイ、室矢重遠
フィーン! フィーン!
いかにも戦闘らしき、警報音。
それが鳴り響いているのは、護衛艦くまのん……ではなく。
日本の海域に近い太平洋サイドに浮かぶ、赤で塗られた艦だ。
海上艦に思えるが、それにしては目立ちすぎるカラーリングと巨体。
それでも、一番高いところにブリッジらしき部分。
艦長や司令が座りそうな、高さが変わる1人用のシートにいる金髪碧眼の女子高生ぐらいの少女が叫ぶ。
「艦長! 戦闘は避けてください!」
けれど、彼女の隣にある1人用シートに座っている中年男は、首を横に振る。
「そうしたいですが……。相手の出方に、よりますな! 準備が遅いぞ!? 戦闘よーい!」
泣きそうな少女は、なおも食い下がる。
「私は! 先に来ているはずのポリーン叔母様を頼って――」
「騎士(エクウェス)、出せます!」
ブリッジ要員の1人が報告すると同時に、前方の平べったいカタパルトらしき部分に4mほどの巨大ロボットが列をなす。
艦長が、座ったままで命じる。
「よーし! ロヴィエ隊、ミドレ隊を出せ!! 勝手に攻撃するんじゃないぞ?」
『努力する!』
『攻撃されたら、別ですよね?』
次々に発艦したのは、地球でMA(マニューバ・アーマー)と呼ばれているロボットのような兵器だ。
胴体部分にブロック式のコックピットがあることが、異なっている。
甲板で射出されたあとで、重力を無視したかのように海上をホバー移動。
それぞれ、装備した武器を持つ。
『こちらは、接近中の艦へ向かう!』
『俺たちがいるのに、撃たないでくださいよ?』
「おう! こっちも、何とかするぜ! 他の隊はレーグヌムの直援だ! 各砲塔は接近中の艦へ指向しつつ、命令を待て! 主機関、いつでも飛べるようにな?」
艦長の指示で忙しく動き回る、クルーたち。
『出るぞっ!』
『ミドレ隊も続く!』
エクウェスと呼ばれたロボット部隊は、一気に出力を上げた。
見る見るうちに、遠ざかっていく……。
それを見るしかない少女は、悔しそうに顔を伏せた。
「私は……」
けれど、距離を空けての臨席にいる艦長は、真面目な表情で告げる。
「姫さま……。いざとなったら、お願いしますぜ? あなたの言う、平和的な解決のためにも! 遠巻きに、2つのグループもいやがるんだ」
「分かっています……」
意気消沈した姫さまは、祈るように両手を組み、目を閉じた。
(お願い! せめて、叔母様か、その血縁の方と!)
目を開けた姫さまは、小声で呟く。
「気配はある……。取り返しがつかなくなる前に……」
その弱々しい声は、騒がしくなったブリッジで搔き消される。
◇
嫌な予感がした俺は、ブリッジで窓のほうを向く。
それを見た
「どうかしましたか、
「いえ……。急に、帰りたくなって……」
「船酔いですか? 私も、この揺れは慣れないですね……」
違う。
そうじゃないんだ……。
このままでは……。
「
「……な、何でしょうか?」
面食らったような竹熊のほうを向く。
「この艦、MAを積んでいますか?」
「はい!
首肯した俺は、断言する。
「動くやつでいいから、俺を乗せてください!」
見なくても、善仁の気配が、お前はいったい何を言っているんだ? と告げてくる。
けれど、俺は止まらない。
これ以上、女を増やすわけには!
丸投げできる正妻ガードは、通用しないんだ。
「致命的な事態を避けるために、どうしても必要です」
「……か、確認します!」
困った竹熊は、定位置の艦長のところへ。
2人が、こちらを見た後で、また話し合う。
早足で戻ってきた竹熊は、報告する。
「許可が出ました! 今は戦闘配備で、機体が空いていれば、という条件付きですが」
それ、実質的にお断りだよね?
欲しいゲームを買って欲しくて駄々こねている子供か、俺は!?
…………
いや、状況的にそのままだな……。
「動けば、十分です! デッキは?」
「こちらへ!」
――MAデッキ
回転するランプに、警報音。
ヴィ――ッ! ヴィ――ッ!
下士官らしき男が、大声で叫ぶ。
「海鳥は、全部出すぞ! これは訓練じゃねえ!!」
フレームに固定された、4mほどのMAに背中からパイロットが乗り込む。
パワードスーツ式で、着るのに近い。
補助をしている整備員が、それぞれ声をかける。
「お気をつけて!」
「戦果を期待しています!」
「気にせずに、ぶん回してください!」
バシュッと閉じる、後部ハッチ。
全部で、3機だ。
固定していたフレームが動き、開いた側面から出る位置へ床ごとの移動。
「あ゛あ゛ああっ? この忙しいときに、陸上のお遊びに付き合え!? 分かってんですか、竹熊大尉! 今は戦闘中ですよ?」
俺たちが見たら、怖い下士官が怒鳴っている光景。
ごめん、竹熊さん。
俺のせいで――
「投下――っ!」
ガシャンと金属音が続き、時間差でブルー迷彩のMAが置き去りにされていく。
いっぽう、俺は壁際に座っているMAを見つけた。
(これ、使われていないのか?)