【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~ 作:初雪空
『護衛艦くまのん』にあるMA(マニューバ・アーマー)は、艦内のデッキで壁際に座り込んでいる1機だけ。
海上迷彩とは違い、暗所でも目立つオレンジ塗装……。
(これ、艦内の作業用か?)
いっぽう、海上に浮かびそうな下半身をしたMA3機が、実際に並走を始めた。
側面で開いたハッチから、荒れている海と、揺れる視界。
反射的に1人だけ逃亡しようとした俺は、我に返る。
(何を……やっていたんだ?)
しかし、ブリッジへ戻ろうと言う前に、艦長の声。
『艦長より全員へ! 正体不明のMAが多数、接近している!! 別命あるまで、攻撃を禁ずる! いいな!? これは訓練ではない! 繰り返す、訓練ではな――』
ブツッ……。
艦内放送が、いきなり切れた。
同時に、照明も暗くなる。
側面で開いたままのハッチ。
そこからの光がスポットライトのように――
海面よりも少しだけ浮かんでいる、見慣れぬMAが数機、横切った。
(胴体部に……コックピットブロック! ダルディアス帝国のか!!)
他の防衛官も注目していたらしく、一気に動揺する。
「お、おい! あれ、どこのだ!?」
「空を飛んでいたぞ!」
「……ハッチを閉めないと!」
誰かの叫びで、敵MAが飛び込んできたら虐殺されると周知された。
光が当たるほうへクルーが集まり、必死に動かそうとするも……。
「反応なし!」
「
「数が違いすぎる……」
古参の下士官が、ライトで照らしながら、怒鳴る。
「海鳥が戻ってきたら、修理と補給だ! ハッチが動かないのなら、悩む必要はねえ! 田口! お前はブリッジへ報告してこい! ったく! 伝声管を廃止した途端にこれだ!」
「は、はいっ!」
敬礼した1人が、艦内の通路へ。
息を吐いた俺は、作業用MAの背部へ回り、片手でコックピットを開けた。
「室矢少佐!?」
誰かの声が聞こえるも、無視。
前へ進みつつ、埋まるように乗り込む。
閉鎖しながら、補助動力によるスタート。
暗視装置による映像を見ながら、外部音声。
「こいつも出すぞ! 武装は?」
首を横に振った下士官が、頭を切り替える。
『そいつは……ええいっ! 乗ってるのは、陸上の人でしょう? MA用の武器だ! 手動のマニュアルがあったろ!?』
真っ暗なデッキで、右往左往する隊員。
その間にも、出撃した海上騎兵部隊からの無線が入ってくる。
『ちくしょう! 戦闘に入ったら、終わりだぞ!?』
『艦尾は、完全に押さえられた! 俺は動けん!』
『こちらも、左舷で銃口を向けられている……』
主動力が立ち上がり、オートの点検も終了した。
外部音声によって、怒鳴る。
「こちらで受領する! 誘導してくれ!」
立ち上がれば、高さ4mの景色に。
下部をフォローしているカメラの映像も……。
ガシャンと歩き出せば、進路にいた隊員が慌てて避ける。
フラッシュライトで示されたのは……巨大なアサルトライフルだ。
固定している部分をもぎ取り、右手に持たせる。
オートで弾数のチェックと、初弾の装填。
(人型だけに、構造は同じか……)
そう思っていたら、下にいる隊員の声。
『予備の弾薬は、すぐに出せません!』
それがあると思しきケースの前で、バッテンにした両手。
「何とかするさ……」
長方形に切り取られた光のほうを向き、そちらへ歩き出した。
外を覗き込むような位置で、両手による構え。
(まだ戦闘には……)
無線を聞いていたら、どうも護衛艦のシステムが丸ごと停止したと分かった。
(あるのか、そんなことが?)
同じ規格のようだが、割り込めば、あちらが混乱する。
そのため、傍受するだけに留めた。
(状況が分からなければ、動きようがない! 俺の力をやたらに見せるわけにも……)
異世界のダルディアス帝国がいるとなれば、尚更だ。
しかし、奴らはこちらを制圧しているだけ。
(その気になれば、撃沈できるはず……。話し合いをしたい? どうして?)
意味が分からん!
その時、ブリッジに行っていた隊員が戻ってきた。
『報告! 艦長は「こちらからの攻撃を禁ずる」のままです!』
それを聞いた下士官は、まさに地団太を踏んだ。
『撃ちたくても、撃てねーよ! 出した海鳥を除いて、どいつもこいつも電子制御じゃねーか!!』
次に、俺のほうを見上げた。
『今の、聞こえましたよね? 陸上さん! 撃たないでくださいよ!?』
「了解した! 別命あるまで、発砲しない」
やすりで削られるような、緊張した時間へ。
ライフルを持っている俺を気にしているのか、右舷でうろつく敵MAがしきりにハッチが開いたスペースを横切りつつ、見てくる。
(お前らは、蜂か?)
心の中でツッコミを入れながら、作業用MAを立たせたまま。
やがて、1機のMAが飛びながら、俺の前でポジションを固定。
片腕を伸ばし、ワイヤーのような物体を飛ばしてきた。
『聞こえますか?』
若い女の声だ……。
無視していたら、ため息をついた女が話し続ける。
『私は、ファトミレ・シュヴェーベル……。あなたが姫さまの――』
次の瞬間、ヴゥウウッ! という連射音。
どうやら、誰かが緊張に耐えかねて発砲したようだ。
それも、護衛艦のほうが……。