【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~ 作:初雪空
正体不明のMA(マニューバ・アーマー)のコックピットに座っている俺は、ぐっしょりした軍服のままで考える。
(操縦席があるってことは、ダルディアス帝国の機体か? しかし、なぜ――)
いかにも気品のある女の声が、コックピットに響き渡る。
『全機に告げます! 目的は達成しました! ただちに撤収するように!』
次に、中年男のダミ声。
『だそうだ! 姫さまが言うなら、もう帰るぞ! 豆鉄砲をばら撒くだけの船と遊んでいるんじゃねえ!! 他にも、2つの艦隊がいやがるんだぞ?』
言われているぞ、海上防衛軍?
いいのか、このままで!?
それ以前に、俺が撃墜されてから、護衛艦くまのんは大丈夫なのか?
考えていたら、オートで動き出すインフィニタ。
お?
艦に戻してくれるのか? 悪いな!
そう思っていたら、モニターの景色は海上になるも、どんどん護衛艦から離れていく。
「何、やってんだぁああああっ! てめぇええええっ!!」
必死に足のペダルや、左右でそれぞれ握ったスティックを動かすも反応がない。
俺の抵抗も虚しく、高さ4mの景色は、どこかの巨大な軍艦の甲板に……。
パブロフの犬のようにぐったりした俺の耳に、ダミ声が届く。
『総員に告げる! 今からミューヴィクラエフ公国へ帰還して、次の作戦を考えるぞ!! ワープに備えろ!』
「俺も、家に帰りたいんだよぉおおおおっ!」
せまいコックピットで絶叫するも、周りの景色が歪んでいく。
気づけば、外から強制的にコックピットを開かれる場面。
バシュッと開き、俺が座っているシートは後方の斜め下へせり出し、乗降できる状態へ。
視線を感じる。
そちらを見ると、ファトミレ・シュヴェーベルの声。
「良かった……。無事だったのですね! 強引に招待したことは謝罪いたします。けれど、あの状況ではこの騎士(エクウェス)に乗せるしかなく……」
アニメに出てきそうなパイロットスーツでこちらを見ているのは、お姉さんっぽい雰囲気の若い女。
淡いピンク色の長髪で、エメラルドグリーンの瞳だ。
「ファトミレ・シュヴェーベルです! ファトミレで構いません。エクウェスの隊長ですが、今回は単機でした」
「ええっと……。なぜ、俺を連れ出した?」
周りを見れば、他にもMAが壁際に並んでいるデッキだ。
さっきの甲板から地続きのようだが、今は大型ハッチが閉められたまま。
灯りがついた空間では、整備員やパイロットらしき人間が俺を見ている。
床からの振動が伝わってきて、この艦が移動していることが分かった。
近くで、悩ましい溜息。
「その件ですが……」
耳元で囁く、ファトミレ。
(この場では、話せません! 艦長にも挨拶する必要がありますので、ブリッジへ)
選択の余地もなく、吊られている状態のシートから降りた。
退いたファトミレの位置へ、足を下ろす。
そのまま、整備デッキの床に……。
「着替えたほうがいいですね? ロヴィエ! この方の着替えとシャワーを!」
同じくパイロットスーツの若い男が、抗議するように両手を広げた。
「私は、騎士隊長だぞ? そんな雑用、他の者にやらせろ!」
「あなたが! この方のエクウェスを撃墜するから!!」
感情的になったファトミレを止めつつ、言う。
「戦闘中だった! 敵は、倒すものだ」
短髪のロヴィエは、尊大なわりに爽やかな笑みでニヤリとした。
「ほう? その格好は、伊達ではないようだな……。1つ、聞きたい! どうして、銃口を向けたときに私を撃たなかった?」
護衛艦くまのんでブリッジを撃ちかけたのは、こいつのようだ。
「艦長に発砲を禁じられたから……。そうでなければ、撃っていたよ! 当たったかは知らんが」
笑い出したロヴィエは、愉快そうに話し出す。
「ハハハ! 貴様に命じていた艦長は、無能のようだな? それなら仕方ない! 来い!」
くるりと背を向けた、ロヴィエ。
ファトミレを見ると、無言でうなずいた。
ロヴィエを追いかけつつ、話しかける。
「俺がいた艦は、どうなった?」
「撃沈はしていない! 姫さまから、散々に言われていたからな! ところで、貴様はどれぐらいの立場だ? 指揮官クラスだと分かるが」
振り向いたままのロヴィエに、答える。
「一応、少佐だ……。えーと……。MAなら、12機ぐらいの隊長かな?」
「なら、私とほぼ同じだ! ちょうど、10機ぐらいのエクウェスの隊長をしている」
さっきまで殺し合っていたのに、だいぶ和やかな雰囲気。
士官向けと思われる個室に案内され、シャワーの後には着替えも。
海水漬けになった軍服一式は、とりあえず保留に。
「暫定的に、お前の部屋としよう! では、ブリッジに行くぞ? 食事は後だ」
「ああ、頼む」
ロヴィエに案内され、上へ進んでいく。
それにしても、男と話しているほうが平和とは、何だろうな?
宇宙船のような通路を歩き、エレベーターに乗り、やがて護衛艦よりもSFチックなブリッジへ辿り着く。
バシュッと横にスライドしたドアの先には、異世界ファンタジーのお姫さまのような格好で、金髪ロング、エメラルドグリーンの瞳をした少女が待っていた。
「……会いたかった」
俺、もう船を降りるよ!