【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~   作:初雪空

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霊力ゼロだった室矢重遠は、地上にある宇宙を撃ち抜く!
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第81話 「お前もう船を降りろ!」と言ってくれ、頼む!

 正体不明のMA(マニューバ・アーマー)のコックピットに座っている俺は、ぐっしょりした軍服のままで考える。

 

(操縦席があるってことは、ダルディアス帝国の機体か? しかし、なぜ――)

 

 いかにも気品のある女の声が、コックピットに響き渡る。

 

『全機に告げます! 目的は達成しました! ただちに撤収するように!』

 

 次に、中年男のダミ声。

 

『だそうだ! 姫さまが言うなら、もう帰るぞ! 豆鉄砲をばら撒くだけの船と遊んでいるんじゃねえ!! 他にも、2つの艦隊がいやがるんだぞ?』

 

 言われているぞ、海上防衛軍?

 

 いいのか、このままで!?

 

 それ以前に、俺が撃墜されてから、護衛艦くまのんは大丈夫なのか?

 

 考えていたら、オートで動き出すインフィニタ。

 

 お?

 

 艦に戻してくれるのか? 悪いな!

 

 そう思っていたら、モニターの景色は海上になるも、どんどん護衛艦から離れていく。

 

「何、やってんだぁああああっ! てめぇええええっ!!」

 

 必死に足のペダルや、左右でそれぞれ握ったスティックを動かすも反応がない。

 

 俺の抵抗も虚しく、高さ4mの景色は、どこかの巨大な軍艦の甲板に……。

 

 パブロフの犬のようにぐったりした俺の耳に、ダミ声が届く。

 

『総員に告げる! 今からミューヴィクラエフ公国へ帰還して、次の作戦を考えるぞ!! ワープに備えろ!』

 

「俺も、家に帰りたいんだよぉおおおおっ!」

 

 せまいコックピットで絶叫するも、周りの景色が歪んでいく。

 

 

 気づけば、外から強制的にコックピットを開かれる場面。

 

 バシュッと開き、俺が座っているシートは後方の斜め下へせり出し、乗降できる状態へ。

 

 視線を感じる。

 

 そちらを見ると、ファトミレ・シュヴェーベルの声。

 

「良かった……。無事だったのですね! 強引に招待したことは謝罪いたします。けれど、あの状況ではこの騎士(エクウェス)に乗せるしかなく……」

 

 アニメに出てきそうなパイロットスーツでこちらを見ているのは、お姉さんっぽい雰囲気の若い女。

 

 淡いピンク色の長髪で、エメラルドグリーンの瞳だ。

 

「ファトミレ・シュヴェーベルです! ファトミレで構いません。エクウェスの隊長ですが、今回は単機でした」

 

「ええっと……。なぜ、俺を連れ出した?」

 

 周りを見れば、他にもMAが壁際に並んでいるデッキだ。

 さっきの甲板から地続きのようだが、今は大型ハッチが閉められたまま。

 

 灯りがついた空間では、整備員やパイロットらしき人間が俺を見ている。

 

 床からの振動が伝わってきて、この艦が移動していることが分かった。

 

 近くで、悩ましい溜息。

 

「その件ですが……」

 

 耳元で囁く、ファトミレ。

 

(この場では、話せません! 艦長にも挨拶する必要がありますので、ブリッジへ)

 

 選択の余地もなく、吊られている状態のシートから降りた。

 

 退いたファトミレの位置へ、足を下ろす。

 

 そのまま、整備デッキの床に……。

 

「着替えたほうがいいですね? ロヴィエ! この方の着替えとシャワーを!」

 

 同じくパイロットスーツの若い男が、抗議するように両手を広げた。

 

「私は、騎士隊長だぞ? そんな雑用、他の者にやらせろ!」

「あなたが! この方のエクウェスを撃墜するから!!」

 

 感情的になったファトミレを止めつつ、言う。

 

「戦闘中だった! 敵は、倒すものだ」

 

 短髪のロヴィエは、尊大なわりに爽やかな笑みでニヤリとした。

 

「ほう? その格好は、伊達ではないようだな……。1つ、聞きたい! どうして、銃口を向けたときに私を撃たなかった?」

 

 護衛艦くまのんでブリッジを撃ちかけたのは、こいつのようだ。

 

「艦長に発砲を禁じられたから……。そうでなければ、撃っていたよ! 当たったかは知らんが」

 

 笑い出したロヴィエは、愉快そうに話し出す。

 

「ハハハ! 貴様に命じていた艦長は、無能のようだな? それなら仕方ない! 来い!」

 

 くるりと背を向けた、ロヴィエ。

 

 ファトミレを見ると、無言でうなずいた。

 

 ロヴィエを追いかけつつ、話しかける。

 

「俺がいた艦は、どうなった?」

 

「撃沈はしていない! 姫さまから、散々に言われていたからな! ところで、貴様はどれぐらいの立場だ? 指揮官クラスだと分かるが」

 

 振り向いたままのロヴィエに、答える。

 

「一応、少佐だ……。えーと……。MAなら、12機ぐらいの隊長かな?」

 

「なら、私とほぼ同じだ! ちょうど、10機ぐらいのエクウェスの隊長をしている」

 

 さっきまで殺し合っていたのに、だいぶ和やかな雰囲気。

 

 士官向けと思われる個室に案内され、シャワーの後には着替えも。

 

 海水漬けになった軍服一式は、とりあえず保留に。

 

「暫定的に、お前の部屋としよう! では、ブリッジに行くぞ? 食事は後だ」

「ああ、頼む」

 

 ロヴィエに案内され、上へ進んでいく。

 

 それにしても、男と話しているほうが平和とは、何だろうな?

 

 宇宙船のような通路を歩き、エレベーターに乗り、やがて護衛艦よりもSFチックなブリッジへ辿り着く。

 

 バシュッと横にスライドしたドアの先には、異世界ファンタジーのお姫さまのような格好で、金髪ロング、エメラルドグリーンの瞳をした少女が待っていた。

 

「……会いたかった」

 

 俺、もう船を降りるよ!




過去作は、こちらです!
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