【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~   作:初雪空

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霊力ゼロだった室矢重遠は、地上にある宇宙を撃ち抜く!
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第82話 電子の女王(クリスタライン)

 誰がどう見てもプリンセスに見える、金髪碧眼の少女。

 

 宇宙服のようなスーツを着ているブリッジで、1人だけ白いドレス姿だ。

 

 よく見れば、後ろにメイドらしき女も控えている。

 

 視線を戻した俺は、目の前の少女に応じた。

 

「地球の……室矢(むろや)重遠(しげとお)です! あなた方は、別の世界にあるダルディアス帝国と考えても?」

 

 それを聞いたブリッジ要員が、とたんに気色ばむ。

 

 片手を横に伸ばすことで、周りを止めるジェスチャーの少女。

 

 ブリッジが静かになったら、片手を下ろす。

 

「私は、シャルイーズ・ミューヴィクラエフ……。重遠さまが仰る通り……ああ、家名は前ですか? 室矢さまのご明察の通り、私たちはダルディアス帝国の一部でした」

 

「……だった?」

 

 首肯したシャルイーズは、説明する。

 

「私たちは、ミューヴィクラエフ公国として独立を宣言……。しかし、帝国の影響に抵抗しきれず、この戦艦級レーグヌムでやってきました」

 

「もう分かったでしょうが、地球の文明レベルは明らかに劣っています……。領土として支配する気ですか?」

 

 一緒についてきたロヴィエが、揶揄う。

 

「それも、いい考えだな?」

「ロヴィエ様! 失礼しました、室矢様。そのような考えはございません! 私は……以前にこの世界、地球と申されましたか? そちらへ亡命したポリーン叔母様を頼ってきたのです! 最悪、私たちの亡命を受け入れてもらおうと」

 

 すがるような目のシャルイーズに、俺は息を吐いた。

 

「それと俺を連行したことが、どう繋がるので?」

 

「あなたが……そのポリーン叔母様の血族です」

 

 …………

 

 はあっ!?

 

 思考停止した俺は、すぐに復帰した。

 

 首を横に振る。

 

「い、いえいえ! 俺は、違いますよ?」

 

「驚くのも、無理はありません……。しかし、私の電子の女王(クリスタライン)によれば、叔母様の固有波動と似た――」

「話を聞いてくれ! 俺の血筋は、両親ともにハッキリしている! その前もだ! 異世界からの来訪者がこっそりと入り込む余地はない!」

 

 目を見張ったシャルイーズは、動揺する。

 

「そんな……。私は、確かに……」

 

「こうなった以上、協力できることは協力しよう! せめて、そう判断した根拠を具体的に教えてくれ」

 

 間違って連れてきたと理解したシャルイーズは、混乱している。

 

 仕方なく、こちらから質問。

 

電子の女王(クリスタライン)とは、何だ? 護衛艦……俺が乗っていた艦が機能停止したのも、そのせいか?」

 

 俺を見たシャルイーズは、逡巡したものの、最後に溜息をついた。

 

「はい! ミューヴィクラエフ家の血筋には、電子的なものをネットワーク的に制する力があるのです……。ダルディアス帝国の支配を裏付けているのも、生体ユニットとして組み込まれている先人がいればこそ」

 

 聞けば、ダルディアス帝国のあらゆる通信機器、超能力にいたるまで、その管理下にあるそうだ。

 

 逆に言えば、その一元処理による力は凄まじく、あらゆる戦術、兵器についても即応して、予測する。

 

 SFのような市街地は綺麗で、言い換えれば、どこも監視されている。

 

「反抗する組織は、小さな国と同じ高位貴族を含めて、ことごとく敗れ去りました……。今の生体ユニットになっている方は常人が狂うほどのシミュレーションを続けており、AIですら追いつきません」

 

 その一方で、ダルディアス皇族を始めとする特権階級は腐敗して、もはや指導者と呼べない有様。

 

「私は、現状を打破するためにここへ……。でも、やっぱり叔母様は……」

 

 泣き出したシャルイーズに、気になったことを告げる。

 

「その叔母様と判断した波動は! どうして、俺から感じた? 何の関係もなければ、そうはならないだろう!?」

 

 ハンカチで涙をふいたシャルイーズは、呼吸を整える。

 

「そうですね……。お見苦しいところをお見せしました。少し、失礼いたします」

 

 正面で向き合う状態で前へ歩み寄った彼女は、片手を前へかざしつつ、目を閉じた。

 

 しばし、時間が流れる。

 

 目を開けたシャルイーズは、あるポイントを指差した。

 

「そちらに……何かございますか?」

 

 言われるままに手を入れて、中を探れば――

 

 女物のネックレスで、三日月のような意匠。

 

(……そう言えば、後で渡そうと持ったままだったか!)

 

 なくさないように財布に入れて、護衛艦くまのんに乗るときの軍服にもあったな。

 

 片手にのせている三日月を覗き込んだシャルイーズは、ようやく笑顔に。

 

「ああっ! これです!! このブローチから……。女性のものですね? 誰の……誰のものですか!?」

 

 感情的に叫んだ、シャルイーズ。

 

 ブリッジの全員も、俺を見つめている。

 

 それを感じつつ、俺は後ろにたたらを踏んだ。

 

(おいおい……。いや、そんな……)

 

 思い出したが、あまりの事実に理解が追いつかない。

 

(名前を言っていいのか? 黙っていれば、逆に問題が大きくなる?)

 

 悩んでいると、シャルイーズが懇願する。

 

「お願いしますっ! 私が叶えられる願いであれば、何でも――」

「落ち着いてくれ……。このネックレスは、たまたま預かっていただけ! そして、俺はその女を知っている」

 

 航法のシステム音と振動だけのブリッジに、俺の呟きが大きく響く。

 

「日本の傍にある大陸……。東アジア連合にいる、俺と同年代の女子」

 

 深呼吸をした後で、いよいよ宣言する。

 

「傅 明芳(フゥー・ミンファン)だ……」




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