【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~ 作:初雪空
誰がどう見てもプリンセスに見える、金髪碧眼の少女。
宇宙服のようなスーツを着ているブリッジで、1人だけ白いドレス姿だ。
よく見れば、後ろにメイドらしき女も控えている。
視線を戻した俺は、目の前の少女に応じた。
「地球の……
それを聞いたブリッジ要員が、とたんに気色ばむ。
片手を横に伸ばすことで、周りを止めるジェスチャーの少女。
ブリッジが静かになったら、片手を下ろす。
「私は、シャルイーズ・ミューヴィクラエフ……。重遠さまが仰る通り……ああ、家名は前ですか? 室矢さまのご明察の通り、私たちはダルディアス帝国の一部でした」
「……だった?」
首肯したシャルイーズは、説明する。
「私たちは、ミューヴィクラエフ公国として独立を宣言……。しかし、帝国の影響に抵抗しきれず、この戦艦級レーグヌムでやってきました」
「もう分かったでしょうが、地球の文明レベルは明らかに劣っています……。領土として支配する気ですか?」
一緒についてきたロヴィエが、揶揄う。
「それも、いい考えだな?」
「ロヴィエ様! 失礼しました、室矢様。そのような考えはございません! 私は……以前にこの世界、地球と申されましたか? そちらへ亡命したポリーン叔母様を頼ってきたのです! 最悪、私たちの亡命を受け入れてもらおうと」
すがるような目のシャルイーズに、俺は息を吐いた。
「それと俺を連行したことが、どう繋がるので?」
「あなたが……そのポリーン叔母様の血族です」
…………
はあっ!?
思考停止した俺は、すぐに復帰した。
首を横に振る。
「い、いえいえ! 俺は、違いますよ?」
「驚くのも、無理はありません……。しかし、私の
「話を聞いてくれ! 俺の血筋は、両親ともにハッキリしている! その前もだ! 異世界からの来訪者がこっそりと入り込む余地はない!」
目を見張ったシャルイーズは、動揺する。
「そんな……。私は、確かに……」
「こうなった以上、協力できることは協力しよう! せめて、そう判断した根拠を具体的に教えてくれ」
間違って連れてきたと理解したシャルイーズは、混乱している。
仕方なく、こちらから質問。
「
俺を見たシャルイーズは、逡巡したものの、最後に溜息をついた。
「はい! ミューヴィクラエフ家の血筋には、電子的なものをネットワーク的に制する力があるのです……。ダルディアス帝国の支配を裏付けているのも、生体ユニットとして組み込まれている先人がいればこそ」
聞けば、ダルディアス帝国のあらゆる通信機器、超能力にいたるまで、その管理下にあるそうだ。
逆に言えば、その一元処理による力は凄まじく、あらゆる戦術、兵器についても即応して、予測する。
SFのような市街地は綺麗で、言い換えれば、どこも監視されている。
「反抗する組織は、小さな国と同じ高位貴族を含めて、ことごとく敗れ去りました……。今の生体ユニットになっている方は常人が狂うほどのシミュレーションを続けており、AIですら追いつきません」
その一方で、ダルディアス皇族を始めとする特権階級は腐敗して、もはや指導者と呼べない有様。
「私は、現状を打破するためにここへ……。でも、やっぱり叔母様は……」
泣き出したシャルイーズに、気になったことを告げる。
「その叔母様と判断した波動は! どうして、俺から感じた? 何の関係もなければ、そうはならないだろう!?」
ハンカチで涙をふいたシャルイーズは、呼吸を整える。
「そうですね……。お見苦しいところをお見せしました。少し、失礼いたします」
正面で向き合う状態で前へ歩み寄った彼女は、片手を前へかざしつつ、目を閉じた。
しばし、時間が流れる。
目を開けたシャルイーズは、あるポイントを指差した。
「そちらに……何かございますか?」
言われるままに手を入れて、中を探れば――
女物のネックレスで、三日月のような意匠。
(……そう言えば、後で渡そうと持ったままだったか!)
なくさないように財布に入れて、護衛艦くまのんに乗るときの軍服にもあったな。
片手にのせている三日月を覗き込んだシャルイーズは、ようやく笑顔に。
「ああっ! これです!! このブローチから……。女性のものですね? 誰の……誰のものですか!?」
感情的に叫んだ、シャルイーズ。
ブリッジの全員も、俺を見つめている。
それを感じつつ、俺は後ろにたたらを踏んだ。
(おいおい……。いや、そんな……)
思い出したが、あまりの事実に理解が追いつかない。
(名前を言っていいのか? 黙っていれば、逆に問題が大きくなる?)
悩んでいると、シャルイーズが懇願する。
「お願いしますっ! 私が叶えられる願いであれば、何でも――」
「落ち着いてくれ……。このネックレスは、たまたま預かっていただけ! そして、俺はその女を知っている」
航法のシステム音と振動だけのブリッジに、俺の呟きが大きく響く。
「日本の傍にある大陸……。東アジア連合にいる、俺と同年代の女子」
深呼吸をした後で、いよいよ宣言する。
「傅 明芳(フゥー・ミンファン)だ……」