這い寄るダンジョン攻略は陰陽師の役目でしょ!~SAN値直葬の探索はヒロインが皆サブカル美少女なのだけが救いです~   作:山城京@カクヨム

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第8話「月の宮駅:後日談 前編」

 ここからは今回の一件の後日談パートになる。

 

 僕の時もそうだったように、翔太くんも異界ダンジョンから現世に帰ってこれてめでたしとはならないようだった。

 

 翔太くんは現世に戻ったその足で両親の元に帰宅すること叶わず、僕達は彼を伴って陰陽庁に来ていた。

 

 心愛ちゃん先導の元、僕達は呪術管理局の生活保全課なる場所を訪れていた。

 

「翔太くん、ここのおにーさんの言うことを聞いてくれるぅ?」

 

 心愛ちゃんは翔太くんの目線に合わせるようにしゃがんでそう言ったが、彼は僕の後ろに隠れてしまった。

 

「あららぁ。しょうがない、土御門くんからお願いしてぇ」

 

「よしきた。翔太くん、バンバンジャーからのお願いだ。このおにーさんの言うことに従ってくれないか? これはミッションだよ」

「わかった!」

 

 生活保全課の人に手を引かれていく翔太くんは、不安そうにこちらを何度も振り返っていたが、僕がサムズアップしてみせると安心したのかそれから振り返ることはなかった。

 

「さて、これであたし達の仕事は終わりだねぇ」

「え? もう翔太くんにはノータッチな感じ?」

「そだよぉ」

 

 それはあまりにも薄情というものではなかろうか。せめて彼が両親と再会する感動のシーンくらいは見たい。そんな考えが顔に出ていたのか、

 

「と思ったけどぉ、初めての任務だったしぃ栃木さんにお願いして結末を見届けよっかぁ」

 

「その方が嬉しいね」

「がっかりしないでねぇ」

 

 はて、何にがっかりするというのだろうか。

 

「栃木さん、入るよぉ」

 

 栃木さんのいる通称ボス部屋に入ると、彼は書類仕事をしているようだった。

 

「お疲れ様。土御門くん、初任務はどうだったかな?」

「疲れました。けど、知らない世界が広がってて楽しくもありましたね」

 

「それはよかった。任務結果はどうだったのかな?」

「迷子は無事に保護したよぉ」

「そうか。翔太くんといったかな? 彼の親御さんも安心することだろう」

 

 局長なんていうから、てっきり僕達の仕事内容の詳細なんて把握していないと思っていた。きちんと名前まで覚えてるなんてすごい。

 

「保護した人がどうなるのかあたしの口から説明したくないからぁ、栃木さん説明して?」

「ほんとに君という人は……」

 

 栃木さんはため息をつくと、翔太くんの処遇について話し始めた。

 

「彼の場合は幼いから、記憶を消して親御さんの元に帰すよ」

「記憶を消す? どういうことですか、僕の時には言ってなかったですよね?」

 

 僕が問いかけると、心愛ちゃんは栃木さんを睨んだ。と同時に栃木さんは痛いところを突かれたという顔を見せた。

 

「ちょっと栃木さんどおいうことぉ? 土御門くんにきちんと説明してないのぉ?」

「それには理由があってだね……」

「あたしが納得する理由なんだよねぇ?」

 

 確信した。やはりこの二人のパワーバランスは心愛ちゃんの方が上だ。

 責められている栃木さんはあーとかうーしか言えていない。

 

「どおせ土御門くんが欲しくてたまらなかったから騙したんでしょぉ?」

「騙したつもりはないが、結果として説明不足ではあったかな、うん」

 

「まったくぅ。ほんとにろくな大人じゃないなぁ」

「心愛ちゃん、つまりどういうことなんだい?」

「陰陽庁に入らない人はぁ、呪術で異界に関する記憶を消されるのぉ」

 

「ちょっと待って、心愛ちゃん式神とかは使えないって言ってたじゃないか」

「式神は使えないけど呪術はあるよぉ」

 

 なんだいしっかり陰陽師してるじゃないか。いつも思うけどそういうのは先に言ってほしいよ、心愛ちゃん。

 

「まあ言ってしまえば、異界ダンジョンに行ったという事実を消すんだよ。公的には失踪や家出をしていたということで処理されるんだ」

「おかしいですね。僕の記憶が確かなら栃木さんめちゃくちゃデメリットがどうのって言ってましたよね?」

 

「記憶にないなあ」

「卑怯だぞ!」

「大人は卑怯な生き物だよ」

 

 くそう。心愛ちゃんも言ってたけどこの人ろくな大人じゃないな。僕のことを騙していたなんて酷い!

 

「翔太くんの説明に戻るけど、彼の中からは異界に行ったという記憶が消される。つまり、異界で出会った君達の記憶もきれいさっぱり消えるんだ」

「え……」

 

 それじゃ僕をバンバンジャーと言って慕ってくれた翔太くんはいなくなってしまうじゃないか。

 

「残念だけど、こうして秘密は守られていくんだ。辛いかも知れないが、慣れるしかない」

「あたし達は陰陽師であってヒーローではないからねぇ」

「そ、っか……わかりました。教えてくれてありがとうございます」

 

 特段ヒーロー願望があったわけではないが、それでも小さい子供からヒーローとして扱われるのは気分がいいものがあった。

 

 それらが一瞬にして否定されてしまうと、僕はこれから何を目指して陰陽師を続ければいいのかわからなくなってしまったのもまた事実だった。

 

 心愛ちゃんが「がっかりしないでねぇ」と言っていたのはこういう意味だったのか。

 

「今回は特例ということで翔太くんを親元に帰す役割を与えてあげられるけどどうする?」

「やります。やらせてください」

 

 次に翔太くんに会った時、彼が僕のことを覚えていなくても、僕は彼にとってのヒーローでありバンバンジャーだ。

 

 バンバンジャーは最後まで彼のヒーローであり続ける義務がある。ならば、僕は翔太くんが無事に親元に帰るのを見届けなければならない。

 

「わかったよ。そのように手配しておく。ただ、ガッカリしないようにね?」

 

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