「・・・・あああああ!!終わらないよおおおおお!!」
学園都市キヴォトスの誇る三大校の1つ、ミレニアムサイエンススクール。
その中にあるゲーム開発部の部室に、ある少女の声が響いた。
「締め切りが近いのに!シナリオの方向性すらきまらないいいいい!!」
そう言って頭を搔きむしっているのは、才羽モモイ。
ミレニアムサイエンススクールの1年生で、ゲーム開発部に所属している、シナリオライターである。
「活動実績を出さないと、部費をださないなんて!横暴だよおおお!ユウカのバカあああ!おおふとももおおおお!」
彼女の所属するゲーム開発部は、以前にシャーレの先生協力の元、ミレニアムプライスでテイルズ・サガ・クロニクル2を発表し、見事、特別賞を受賞して廃部の危機を回避したことがある。
だがそれ以降、これといったゲームを作ることもせず、部員の皆と遊び惚けていた結果、セミナーの会計であるユウカに雷を落とされたのだ。
彼女曰く、日々の活動や一定の実績を報告しなければ、廃部こそないが部費の減額があると言われて、モモイ達ゲーム開発部は次なるゲームの開発に着手することとなった・・・・・・・のだが。
「前回のテイルズ・サガ・クロニクルはRPGだったし、次はシューティングか格ゲーでも出したいんだけど、RPG以外のシナリオって思いつかないよ~(泣)」
触っていたパソコンから離れて、部室のソファーに倒れ込む
どの様なゲームを作るにせよ、シナリオライターであるモモイがゲームの方向性を決めなければ、他のメンバーも動けない。
ということで、ミドリ達からせっつかれているのだが、肝心のアイデアが何も思い浮かばないでいた。
「いっそのこと、勇者が中ボスや四天王、魔王にプロレス仕掛けていく滅茶苦茶シナリオでも書いてやろうかな・・・・。」
ぽつりとつぶやくが、そんな内容では妹のミドリや部長のユズに猛反対を食らうだろう。
今日はもうあきらめて、このままふて寝してやろうかと思っていると。
“ぐぅぅぅぅぅ”
「・・・・おなか、すいた。」
時刻は夜の12時。
ミドリたちと夕飯を食べたのは夕方の6時頃くらいだったか?流石に小腹がすいてしまった。
「おかし・・・は、ないか・・・・、しょうがない、なんか作ろう。」
後ろの棚をまさぐっても、すぐに食べられそうなものは見つからない。
軽くため息をつくと、部室の隅にある小さなキッチンスペースに足を運んでいった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「なんか、のこってたかな?」
今の時間からコメを炊く気力はないし、凝った料理をする気もおきない。
備え付けてある冷蔵庫をのぞくと、ジュース類以外にはちょっとした野菜とウインナーが一袋入っていた。
「食材、すくな。・・・なんか、メインになりそうな。」
そういって周りを見回すと、以前に買って放置していた乾麺のパスタが目にはいる。
「パスタ料理か、・・・いいかも。」
自身の作れるパスタメニューを思い浮かべながら、近くに置かれた大きめのフライパンを手に取り、水を注ぐ。
「深鍋でたくさんの水を使うのがいいらしいけど、時間かかるし重いからね。」
まだ、お湯は沸いていないが、ざっくり1人分のパスタ麺を手に取り、まだ水状態のフライパンに投入する。
全ての麺に水が浸かるようにならして、小さじに気持ち山もりの塩を入れ蓋をした。
「親指の第一関節に指先が来るくらいの量が、私の1人前なんだよね。」
だれもいない1人の部室だが、料理をしている時は、なぜか独り言が多くなる。
水状態から入れている分、パスタの袋に記載されている7分より、プラス2分ぐらいのゆで時間をみておく。
その間に食材を用意する。
「前に使った玉ねぎが半分残ってたから、更に半分に切って4分の1使おう、普段は豚肉を使ってるんだけど、ないからウインナーで代用して・・・。」
備え付けてある冷蔵庫を覗きながら、使用する食材を取っていく。
「ニンニクチューブって残ってたっけ?・・・ないね、まあいいか。」
普段であれば、オリーブオイルへの香り付けに刻みニンニクのチューブを使うのだが、どうやら切らしていたようだ。
ひとまず、取り出した食材を洗って、食べやすい大きさにカットしていく。
玉ねぎを適当な大きさに刻み、ウインナーは半分にする。
食材の下準備が済むと、フライパンのお湯が沸騰していたので、ふきこぼれないように蓋をとる。
この時、パスタ同士がくっつかないように、菜箸で軽くかき混ぜるのをわすれてはならない。
「・・・ウインナーに火を通しとこうかな?4分くらい経ったらフライパンに放り込むか。」
ウインナーの調理はその日の気分で、下茹でをするかそのまま焼くか決めている。
今日はパスタを茹でているので、一緒に下茹ですることにした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「そろそろかな~?」
ウインナーを放り込んで2、3分たってから、パスタの茹で加減を確認する。
料理はもっぱら感覚だよりのずぼら飯だが、味見だけは欠かさない。
特にパスタの茹で加減は、パスタ料理で最も大事な部分だと思っている。
「・・・わたし、アルデンテってちょっと固く感じるんだよね。プラス1分くらい茹でたのが好き。」
まあ、この辺は好みが分かれる部分だと思う。
前にミドリと、パスタの専門店に食べに行ったことがあるが、もう少し茹でて欲しいと感じた。
あの出されたパスタの硬さが、アルデンテと言われる硬さなのだろう。
「うん、いい感じかな。」
好みの茹で加減になったので火を止める。
近くの棚からザルをとりフライパンを持ち上げようとしたところで
「おっと、忘れるとこだった。」
近くにあったコップを取り、ゆで汁をひとすくいする。
「後は流しで、湯切りをして麺はオッケー。」
からになったフライパンをコンロに戻してもう一度火をつけた。
「同じ油なのに、オリーブオイルってサラダ油とかより高いんだよね。でも、これが無いとパスタ料理が味気なくなるし。」
フライパンにオリーブオイルを入れて玉ねぎを炒める。
玉ねぎが透きとおってきたら、ウインナーをフライパンに戻していく。
「ニンニクがあれば、もっとおいしいのにな~。刻みニンニクチューブ買っとかないと。」
すりおろしではなく、刻みのニンニクチューブでないといけない。
そこはモモイのこだわりポイントだ。
「玉ねぎがいい感じになったら塩コショウで味付け、まあ、これもその日の気分だけど。んで、軽くかき混ぜたら火を止めて。」
先ほどのコップを手に取り、取っておいたゆで汁をフライパンに入れる。
「こうしないと焼きパスタになるからね~♪」
フライパンの温度を下げて、ザルに入ったパスタもフライパンに投入する。
「火をつけて~、弱火にして~、・・・前に鉄板ナポリタンって食べたけど、焼けたパスタってちょっと苦手なんだよね。お客さん多かったし、人それぞれなんだろうけど。」
前にミドリと食べたナポリタンを思い出す。
鉄板に乗って出てきたナポリタンは、美味しそうではあったのだが、自分の好みには合わなかった。
「だから、手早くあえて~、焦げ付かないように気をつけて~、ゆで汁がなくなりそうなタイミングで醤油を回しかける!!」
再び熱くなってきたフライパンに醤油を回しかけて、温度を下げる。
手早くかき混ぜると、醤油を熱したときの良い香りが鼻孔をくすぐった。
「醤油使ってれば和風パスタになるだろうという安直な考え、・・・・でも好き。」
本来であれば、出汁を利かせたりもっと和風な味付けになるよう工夫するのだろうが、深夜に作るずぼら飯ならこんなものだろう。
「エリンギやシメジみたいなキノコを使っても美味しいんだけど、まあ玉ねぎとお肉類で十分いける。」
要は小腹が満たせればいいのである。
こじゃれたオシャレ感や映えなどはお呼びじゃない。
「オリーブオイル使う料理は、玉ねぎかニンニクのどっちかは欲しいけどね~♪」
オリーブオイルが無ければ物足りないが、オリーブオイル単体ではくど過ぎる。
ちょっとしたことだが、そこはこだわりと思っておこう。
最後に、ブラックペッパーを振りかけてフライパンから皿に移す。
「モモイのずぼら飯、和風パスタの完成~♪」
醤油の香ばしい香りがキッチンにたちこめる。
食器棚からフォークを取って、ホカホカと湯気を立てるパスタと共にテーブルへと運ぶ。
「和風だから箸でもいいんだろうけど、フォーク使いたくなるんだよね。というか、ウインナーにフォークを指すときの感じが好き♪」
机に料理とフォークをおいて、そのまま座らずに今度は冷蔵庫に向かった。
冷蔵庫を開けて取り出したのは・・・・・
「んで、意外と喉が渇くこの料理には、和風なのに“午後の紅茶無糖”が合うんだよ!無糖ってところがわたし的に重要!」
飲み物も用意してテーブルに戻る・・・・・・・・いざ実食!
「いっただっきまーす♪」
“クルクル”
フォークにパスタを巻き付けて、一口分を掬い取る。
巻いていくうちに太くなっていくので、最初にすくい過ぎないのが巻き付けるコツだ。
パスタを焼き過ぎて水気を飛ばし過ぎると、この時団子状態で巻きづらい上に、味もパサパサしてしまうので注意しよう。
“パクッ!”
「おいしっ!」
思わず笑みがこぼれる。
ほのかな醤油味のパスタはほどよい茹で加減であり、最後に振りかけたブラックペッパーがいいアクセントになっている。
オリーブオイルの油分が、空きっ腹にガツンとくるのも、とてもグットだ!
“プツッ”
次は、ウインナーにフォークを突き立てて口に運ぶ。
“プチュッツ!”
「うん、いい歯ごたえ♪安物のウインナーはこの歯ごたえがないんだよね。」
噛みついて皮を破ると、口の中で熱々の肉汁がはじける。
口内にじんわりと広がる肉の旨みと、確かな歯ごたえは、パスタ料理の満足感を何倍にも引き上げていた。
今回は炒める段階で味付けをしたが、そのままのウインナーに火を通すだけでも、十分に美味しいと思う。
“クルクル”
“パクッ”
“モニュモニュ”
「うん!玉ねぎの甘みもいい感じ♪・・・・なんだけど、フォークじゃちょっと食べにくいんだよね(汗)正直、このタイミングでは箸で食べたいと思うよ。」
この料理、フォークで食べると毎回玉ねぎが最後に残る。
箸で食べればそんなことないのだが、せっかくパスタを食べるのなら、フォークにクルクル巻いて食べたいと思ってしまうのは、幼さだろうか?
「・・・・・さて、この料理。確かにとっても美味しいんだけど、食べてると口の中の水分がなくなって、のどが渇いてくるんだよね。結構油分も多いし。」
これはスープパスタを除いた、パスタ料理全般に言えるのではないだろうか?
1人分を調理する時はそれほど気にならないが、大盛りにしようと作ると、特に喉の渇きが気になってしまう。
「今回は醤油味だから、なおのこと喉が渇いてくる。・・・そこで。」
テーブルに用意した“午後の紅茶無糖”の蓋を取り、勢いよくあおる。
“ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ、ぷはあ!”
「おいしすぎ!!」
料理を食べた時以上のリアクションである。
口の中の油分と醬油による塩分。
ウインナーによる肉汁と最後に欠けたブラックペッパーの辛み。
それらすべてが紅茶によって流されて、スッキリとした後味がより美味しく喉を潤してくれる!
「お茶系統、特に口の中がスッキリするタイプとの相性が良すぎなんだよ!この料理。」
そう!このモモイの和風パスタ。紅茶に限らず、お茶全般に合う料理といえた。
ペットボトルをおいて、紅茶以外の相性がよかった飲み物を思い浮かべと・・・
「今は見なくなったけど、“太陽のマテ茶”コンビニとかである“ルイボスティー”なんかも相性いいよね。」
全体的に後味がスッキリする飲み物と、特に相性が良いだろう。
パスタ料理はたまに作るし、コンビニで見かけたら買っておこうと決めて、再びフォークに手を伸ばすと・・・・・・
“ガチャ”
「お姉ちゃん?まだいるの?」
「うぇ!?ミドリ!?」
先に帰ったはずのミドリが、部室の扉を開いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・全く、こんな時間に夜食たべて。太っても知らないよ?」
「ははは、ちょっとお腹へっちゃって・・・。」
妹のジト目に視線をそらす。
体に悪いのは重々承知しているが、深夜に食べるご飯の魅力に抗えなかったのだ。
そうして言い訳をしていると・・・・・
「・・・・まあ、気持ちはわかるけどね。・・・・・1人分しか作ってない?」
ミドリが、少し気まずそうに聞いてくる。
どうやらミドリも、この醤油の香りにやられたらしい。
「あいにくこのお皿分だけしか作ってないけど、ちょっと食べる?」
「・・・・・・・・・・・・・・・もらう。」
少し悩んだ様子を見せたが、彼女も食欲に抗えなかったのだろう。
手に持っていたフォークとお皿をミドリに渡すと、恥ずかしそうに食べ始めた。
間接だが、双子の妹相手に気にすることではないだろう。
“クルクル”“パクッ”
「・・・おいしい。」
ミドリの顔にふわりと笑顔がこぼれる。
やはり、自分の料理を誰かに食べてもらうというのは、ちょっとした充実感をえられるものだ。
そんなミドリの顔を見ていると、ふと、あるアイデアがひらめく。
「そういえば、シナリオの方向性は決まりそうなの?ゲームの種類位決めとかないと、私やユズも動き出せないよ?」
「・・・・・それなんだけど、ちょっと思いついたことがあるんだ。」
和風パスタを作り、それを食べている妹を見て思いついたひとつのゲーム。
「料理のゲームはどうかな?自然の中で狩りや採集をして、食材アイテムを手に入れて調理するの。」
どうやら、ゲーム開発部次回作が無事に決まったようである。
とある掲示板のブルアカ反応集に影響されて作成しました。
料理の内容は、作者のリアルレシピです。
ちょっと手直ししました。