才羽モモイのずぼら飯   作:イッセ

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豚汁うどん 給食部を手伝え!

 

 

「・・・さてと、万魔殿への提出書類はこれでいいわね。イオリは美食研究会の方どうだったの?」

 

「ああ、商店街の飲食店からは、追い払えた。残念ながら取り逃がしちゃったけど。」

 

「被害無く終われたならいいわ。アコ、商店街へのフォローは?」

 

「今回は物損被害もでなかったですから、報告書はもう仕上がっています。」

 

 

ゲヘナ学園。

 

自由と混沌が校風であるこの学校は、自治区内での事件が多発している。

 

それらの問題を一身に解決している組織こそ、空崎ヒナが率いるゲヘナ風紀委員会である。

 

 

「さてと、待たせてごめんなさいアリス。この間のやつ、セミナーから返事を持ってきてくれたのよね?」

 

 

そんな風紀委員会の一室には、普段では見られない2人の人物がいた。

 

 

「気にしないでくださいヒナ!お仕事してるヒナは見ててかっこよかったです!そして、ぱんぱかぱーん!セミナー会計のユウカから受けたクエストを達成しました!受け取りのサインをください!」

 

 

1人はミレニアムゲーム開発部のアリス。

 

彼女は委員長を務めるヒナと友人関係を築いており、時たま風紀委員会に遊びに来ている。

 

 

「・・・・・これ、受け取るの?」

 

 

 

そして、もうひとりは・・・・・・・。

 

 

 

「うわ~~~~ん!ユウカのばかあああああ!!」

 

 

首から『お詫びの品です。煮るなり焼くなりお好きにどうぞ<(_ _)>』というプラカードを下げて、簀巻きにされている才羽モモイであった。

 

 

 

 

「コレがあの禁止リストの才羽モモイかあ。」

 

「委員長のゲームを無断で製作・販売するなんて、何とすばらし・・・こほん、罰当たりな。」

 

「・・・・アコちゃん、本音が漏れてる。」

 

 

読者の皆様には思い出していただきたいのだが、前話にて紹介されたモモイのやらかしの数々、そのひとつに『がんばれヒナちゃん』というゲームをヒナに無断で販売していたことが判明、ヒナはセミナーに対して抗議文を送っていた。

 

 

「・・・で、セミナーからの返事がコレと。」

 

「うわ~~~~ん、なんで~~~(´;ω;`)」

 

「モモイがコユキ化しました・・・・まあ、自業自得です。」

 

「見捨てられた!!」

 

 

ゲヘナからの抗議文に対してユウカをはじめとしたセミナーでの話し合いの結果、『当人がしたやらかしは、もう本人に責任をとらせよう』という結論になり、こうして簀巻きモモイが完成、ヒナと交友のあるアリスが運搬役を任されたのだ。

 

 

・・・・・・完全に自業自得である。

 

 

 

「・・・大体、なんで私が主人公なの、需要なんかないでしょう。」

 

 

勝手にゲームキャラにされたことは不満だが、そもそも何故自分なのかという思いがヒナにはあった。

 

自己評価が低いヒナにとっては、自分のキャラが出てくるゲームに需要があるとは思えない。

 

 

 

だが実際は・・・。

 

 

「いや!小さくて・かわいくて・もこもこしてて・強い女の子が、大きい銃を持って冒険するゲームとか、需要しかないから!!」

 

「わかる(゜-゜)真顔」

 

 

そう、モモイが制作した『がんばれヒナちゃん』シリーズは、そのキャラクターが人気となり、売り上げを伸ばしていた。

 

 

「///////こほん、だからって勝手にゲームなんか作らないで。」

 

 

手放しに褒められて思わず赤面するも、それはそれとして勝手にゲームを作られるのは困る・・・・・。

 

風紀委員長としての威厳もあるし、何より恥ずかしいのだ。

 

 

 

 

なお、ノータイムで同意したどこぞの横乳は無視することにする。

 

 

「・・・実際ヒナの人気はすごいですよ?3作品目の『がんばるヒナちゃん~でろでろ道中お化けてんこ盛り』の泣き顔ヒナちゃんフィギュアは凄まじい売上でした。最新作の『ゲヘナぴかぴかシロモップ~ホコリたちを撃破せよ!~』に登場したメイドヒナちゃんのフィギュアも予約がいっぱいですし。」

 

「・・・余罪がでてきたわね(怒)」

 

「アリス?!?!」

 

 

フォローのつもりでしたアリスの発言により、自身のグッズが販売されていたという新たなやらかしが判明する。

 

 

 

この問題児にはもう少し尋問が必要だろう。

 

叩けば叩くほど余罪が出てきそうだ。

 

 

「うう~~、仕方なかったんだよ~~~、部費も限られてるし新しいゲームを作るには、お金が掛かるの~~~。」

 

「やっぱりお金欲しさ、か・・・悪質じゃないの。」

 

 

動機にも弁明すべきところが一切見いだせない。

 

ヒナがモモイに向ける視線もきつくなってくる。

 

 

「固定客が増えてたんだよ~~!!毎回数十体も買ってくれるユーザーもいたんだから!!“gehenagyouseikan”さんとか“syarenosensei”とか!!」

 

「お客のせいじゃなくて制作したあなたの責任を・・・・・“gehenagyouseikan”?・・・・・・・・・・“ゲヘナギョウセイカン”?」

 

 

更なる尋問を続けようとするが、モモイが口にした聞き捨てならないユーザー名に思わず黙り込む。

 

 

「「「「・・・・・・・・・・・・・・・(@_@)(サッ)」」」」

 

「・・・・・・・・・・・・・・(;一_一) (サッ)」

 

 

周りの風紀委員達の視線が一点に集中する。

 

視線を向けられた人物はあさっての方向に視線をずらす。

 

 

「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」

 

 

長い沈黙が風紀委員の部室を包み込んでいた。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「なんで私まで~~~~~~~~~~!!」

 

 

5分後・・・部室内には簀巻きがもう一つ増えていた。

 

 

「当然でしょうアコ・・・・あなた知ってたんじゃない。私のゲームが無断で製作されてたって。」

 

「・・・・・いや、まあ、アコちゃんならそうだろうなと思ったけど・・・・アコちゃんだし。」

 

 

ある意味予想通りではあるのだが、自身の所属する組織の委員長が、勝手にグッズ化されたのだから、何かしらの報告は入れてもらいたかった。

 

本当に予想通りではあったが・・・・。

 

 

「とにかく、2人とも今回の件については徹底的に追及していくから、そのつもりで「お話し中失礼します委員長!!緊急事態です!!」・・・・・・はあ、何?」

 

 

更なる尋問をしようと意気込んでいると、室内に焦った様子の風紀委員が走り込んできた。

 

何やら只事ではない様子である。

 

 

「給食部でバイオハザードが起こりました!!巨大な触手生物と小型のクリーチャー多数が、食堂からあふれ出してます!!」

 

「そんなことある?!?!」

 

 

ミレニアムですら滅多に起こらないバイオハザード・・・それも多数のクリーチャーが発生したという話しに、簀巻きで転がされていたモモイが驚きの声をあげる。

 

エンジニア部のおこす爆発事故や、新素材開発部などがおこす毒ガスなどはたまにあるが、流石に触手生物の暴動というのは、モモイも始めて聞く。

 

しかし。

 

 

「・・・ああ、いつものやつか「いつものなの?!?!」9人ほど人員を派遣して、通路を封鎖して、逃げ道を先につぶしてから順次せん滅するから。」

 

「メッチャ冷静!そんな頻繁にバイオハザードが起こってるの?!」

 

「いや、今週は初めてだな「ほぼ毎週起こってるって言ってる?!?!」いや、4日に1回くらいか?今週は持った方だな。」

 

「ゲヘナが本当にゲヘナだ!!!」

 

 

数々の問題をおこしているモモイだが、ゲヘナの日常にはツッコミの嵐をいれざるえなかった。

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・あ、あなたにも着いて来てもらうから・・・・逃げられると思わないで。」

 

 

「・・・・・・・・・・・ごまかされないかあ。」

 

 

いや、モモイもツッコミキャラを演じつつ逃げる算段をしているあたり、ゲヘナの適性が高いかもしれない。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

“ぐちょっ・・・ぐちょっ・・・ぐちょっぐちょっ・・・ぐちょっ”

 

 

薄暗い紫色の体。

 

動く度に流れ出す緑色の液体

 

円い体の四方からタコのような触手が多数飛び出している。

 

 

その不気味な生物は全長5mほどの巨体で、ゲヘナの食堂に居座っていた。

 

 

「・・・・・・・・なあにあれえ??(◎_◎:)」

 

「わあ、魔王城の後半あたりに出てきそうなモンスターです!」

 

 

かつてミレニアムも参加した晄輪大祭で、大暴れしたクリーチャーなのだが、モモイとアリスの2人は、これが初見のようだ。

 

モモイは唖然として動きをとめ。

 

アリスは目を輝かせてみている。

 

 

 

「うう~~、すみませ~~ん。今日はフウカ先輩がいなくて、給食に一品作ろうとしたら、パンちゃんになっちゃいました~(´;ω;`)」

 

「わかった、いつものね。」

 

 

涙目でヒナに報告しているのは、牛牧ジュリ。

 

給食部に所属する1年生であり・・・・・

 

 

「・・・・まって、今料理を作るつもりで、あのクリーチャーを生み出したって言った?」

 

「クリーチャーじゃなくて、パンちゃんです。パンケーキのパンちゃん。」

 

「パンケーキ要素どこだよ!!むしろ料理要素どこだよ!!!」

 

 

そして、生物兵器パンちゃんの生みの親である。

 

 

「・・・私、料理下手で、食材を洗ったり切ったりとした下ごしらえならできるんですが、焼く、煮るなんかの作業や味付けをすると、失敗するんです。」

 

「料理の失敗をしたら普通まずくなるんだよ!断じて生物兵器にはならないし『ギャアオオオオオオオオ!!』・・・鳴きだしたりもしないんだよ?!?!むしろ発声器官どこだよお前!!!」

 

 

あまりの理不尽に、ついにはパンちゃんに対してもキレだしたモモイ。

 

なお、今回は、フウカが用意したパンケーキにハチミツをたらしたらパンちゃん化したらしい。

 

最早どうしろというのだろうか。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

“どかあああああああああん”

 

 

「ヒナさんはヒナさんで、そっこー片付けてるし(-_-;)」

 

「・・・・・慣れてるから」

 

 

風紀委員達による避難と、ヒナによる銃撃で、巨大パンちゃんと増殖した小型パンちゃん達はすぐにせん滅された。

 

その鮮やかな手腕から、本当に高い頻度で起こっている騒動なのだろう。

 

 

「ありがとうございます!これでお昼の給食準備が進められます!!」

 

「今日、フウカがいないんだっけ?大丈夫なの?」

 

「はい、美食研究会の方たちに連れられて、商店街の方に行ってしまいました・・・・でも!私一人でもなんとかするので大丈夫です!!」

 

「いや、まってよ。これ程説得力のない発言ないでしょ。」

 

 

モモイも最初は黙って聞いていたが、流石に口を挟む。

 

 

「調理作業ができないんだっけ?メニューどうするの?」

 

「・・・キャベツやレタスをちぎったサラダに丸ごとニンジン、後パンがあります。」

 

「OK、私が手伝うから今週のメニュー表見せて、フウカって人が作ってるでしょ?」

 

 

まあ、調理作業ができないのであれば、作れるのはサラダくらいだろう。

 

それでは流石にゲヘナの生徒が不憫なので、モモイ達も手伝うことにした。

 

 

・・・・にしてもニンジン丸ごとって、ゲヘナ生は馬か何かか・・・せめて切れ。

 

 

 

「・・・・うん、このメニューならあれが作れるかな?このうどん麺使ってもいいよね?」

 

「・・・はい、昼夜のどちらかで使用するつもりだったので、むしろ使ってもらえた方が助かります・・・・・・ただ、ゲヘナの食堂は4000人が利用するので、かなり大変ですよ?」

 

「給食部部長の愛清フウカも、毎回苦労している。モモイ、大丈夫?」

 

 

ジュリとヒナが心配そうにモモイを見る。

 

普段のフウカを見ている2人としては、その作業がどれほど大変かが分かっている分心配もなおさらだ。

 

・・・・だが

 

 

「ま、私にまかせてよ!量を作るのは『ずぼら飯』の得意分野だからね!!」

 

 

モモイは自信満々に宣言するのだった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

(それにしても、このメニュー表)

 

先ほどジュリに渡されたメニュー表に目を落とす。

 

(部長のフウカって人が作ったらしいけど、この構成って・・・・)

 

 

なにやら思う所があるらしいが・・・・。

 

 

(いや、後にしよう。とにかく時間がないし早くはじめないとね!)

 

何やら思う所があるらしいが、早速料理に取り掛かるようだ。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「まずは下ごしらえだけど、ジュリって食材を切ったり洗ったりはできるんだよね?」

 

「はい、下ごしらえの範疇であれば問題ありません。」

 

「アリスも手伝います!!」

 

「ありがと、アリス。それじゃあジュリは、大根を短冊切りに、ニンジンをイチョウ切りにしてくれる?アリスは、長ネギを適当な大きさに切ってシメジをほぐして!」

 

 

食堂が開くまでには後2時間ほど、モモイは2人に指示を出して、自身も急ピッチで作業に入る。

 

 

(まずは大きな寸胴鍋に水を張って、お湯を沸かしていく。本来なら昆布で出汁をとりたいところだけど、時間も限られてるし顆粒出汁で代用。)

 

 

お湯を沸かしている間に、モモイも食材の下ごしらえに参加する。

 

 

「まずは豚肉の切り落としを一口サイズに切って、大きなフライパンにごま油をひく、・・・・ジュリ!ニンジン切れたやつこっちちょうだい!アリスは白ネギもらっていくね!!」

 

 

フライパンが熱くなるタイミングで、豚肉・ニンジン・長ネギの順に炒めて一度ボウルへ移す。

 

作る量が多いので、この作業を何度かの回数繰り返していく。

 

 

「寸胴鍋のお湯が沸いたら顆粒出汁を入れて、ジュリの切った大根、さっき炒めたボウルの中身を順番に寸胴鍋に投入!ひと煮立ちしたら、アリスがほぐしてくれたシメジもいれるよ!」

 

 

これ等の食材を投入後、冷蔵庫から味噌を出しておく。

 

 

(使ってるのは業務用の合わせ味噌か、これは確か出汁が入ってないタイプ。まあ、その方が味の調整がしやすくて助かるかな。)

 

「よし!ジュリはうどん麺を用意しといて!アリスは作業替わって!ゆっくりとかき混ぜながら、灰汁を取り除く作業をお願い!」

 

「ハイ!」「わかりましたモモイ!」

 

 

アリスにお玉を渡して自分は次の作業へと取り掛かる。

 

 

(うどんとはいえ、一品だけじゃ味気ないからね!小鉢を一つ用意するよ!)

 

冷蔵庫から絹豆腐を取り出して、キッチンペーパーで包んで水気をきる。

 

また、豚汁を作っている寸胴とは別に、鍋へと水を張って沸騰させておく。

 

沸騰するのを待つ間に、段ボールから小松菜を取り出し一口大に切っていく。

 

合わせて、残しておいたイチョウ切りのニンジンも、更に切って千切りにしておく。

 

 

「お湯が沸いたら、切った小松菜とニンジンを茹でていくよ!茹で時間が違うから、ザルにそれぞれ入れて取り出しやすいようにしようかな!」

 

 

茹でた小松菜とニンジンの水切りをしたら下準備完了である。

 

 

「アリス!寸胴の火をとろ火にして、こっち手伝って!ジュリは小鉢を用意して!」

 

 

2人に指示を飛ばして、いよいよ仕上げに入る。

 

「アリス!ボウルを持って私のマネをして欲しいの!まずは・・・」

 

そう言ってモモイはアリスにお手本を見せる。

 

ボウルに水をきった小松菜とニンジン、それと絹豆腐をつぶしながら入れる。

 

そこに濃口醬油・砂糖・味噌・すりごまを加えて、全体がなじむまで混ぜ合わせる。

 

 

「ジュリ!小鉢に移していくから、できたやつから持ってって!!アリス!味付けは私がするから、私の作ったのと同じ位になるまで混ぜてってほしいの!」

 

 

3人がせわしなく作業する中、料理は着々と進んでいき、無事12時の開店を迎えることができたのであった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「あ~~~~疲れた~~~~。」

 

「ぱんぱかぱーん!アリスは無事クエストを達成しました!!」

 

 

お昼の時間が過ぎて、生徒たちがいなくなった給食部には、疲れ切ったモモイとまだ元気そうなアリスの姿があった。

 

 

「本当に助かりました!ありがとうございます!」

 

「お疲れ様ふたりとも。よくお昼のピークを乗り切れたわね。」

 

 

そんな2人に声をかけたのは、共に昼食の提供をしていたジュリと、撤収作業を終えたヒナであった。

 

 

「ホントつかれたよ~。ジュリに、もうひとりのフウカって人、良くこれを毎日できるよね~。」

 

「私ができるのはお手伝い位ですが、フウカ先輩はすごいんですよ!」

 

「あんまり美味しくないらしいけどね。」

 

 

まるで自分のことのように得意げな顔をするジュリと、生徒達からの感想を思い出すヒナ。

 

提供している時に生徒達の会話を聞いていたモモイは、ちょっと思うことがあったのでそのことについて口を開こうとしたのだが・・・・。

 

 

「悪かったわね。美味しくなくて・・・・遅れてごめんなさい。今戻ったわ。」

 

「フウカ先輩!」

 

 

2人の人物が話しかけてきて、口に出す機会を逃してしまった。

 

 

「フウカさんの実力なら、もっとおいしい給食を提供できるはずですのに・・・本当に勿体無いことです・・・・・・あ、それはそれとして。今日の給食がとっても美味しかったと評判でしたので、わたくしもいただきにきたのですが。」

 

「・・・ハルナ、どの口で言うのよあなた、商店街のてんまつは報告受けてるわよ。」

 

「これ以上、ミレニアムの生徒さんに迷惑かけんじゃないわよおバカ。」

 

 

給食部の部長と共に現れた銀髪の美少女に、ヒナが苦い顔をする。

 

話しを聞くに、部長のフウカをさらったのが、このハルナという生徒のようだった。

 

 

「疲れるんだから、こんなところで争わないでよ~。私とアリスもお昼まだだし、ちゃちゃっと作るから・・・・・・・フウカさんとヒナさんもたべる?」

 

 

視線を2人に向けて、確認する。

 

 

「いいの?部室に帰ってお弁当食べる時間はないし、いただいていこうかしら。」

 

「私も食べてみたいです。ご迷惑にならなければですが・・・。」

 

“ギャアォォォォォ”

 

 

「別に、3人分作るのも7人分作るのもあんまり変わらないし、ちょっと待っててね。」

 

 

そう言ってモモイは、キッチンへと足を向けた。

 

 

 

 

(ん?7人?・・・・・・なんかいた?)

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

“コト、コト、コト、コト、コト、コト、コト?”

 

 

「できたよ~、お腹空いたし食べよ~。」

 

 

人数分?の昼食を用意して、席につくモモイ。

 

テーブルの上には、ホカホカと湯気を出す、どんぶりがのっていた。

 

 

「豚汁のうどんですか、最近は寒くなってきましたし、嬉しいメニューですね。」

 

「あ、お野菜使い切ってくれたんだ。助かる。」

 

「美味しそうね、早速いただきましょう。」

 

“ギャアォォォォォ”

 

 

運ばれてきた料理を前に、各々が感想をいいあう。

 

とはいえ、全員が腹ペコであることも確かなので、おしゃべりを切り上げて料理へと向いた。

 

・・・・・・やはり何かいる気がする。

 

 

「まあいいや、モモイのずぼら飯『豚汁うどんと小松菜の白和え』だよ!召し上がれ!」

 

「「「「「いただきます!」」」」」

 

“ギャ♪”

 

 

こうして、6人と1匹は箸と触手を使って遅めの昼食にありつくのだった。

 

・・・・・・・・・・・・匹?触手?

 

 

“ズズ”“ゴク”

 

ハルナはまず、レンゲを使って豚汁の汁をすする。

 

まず感じるのは味噌の奥深い香り、舌に感じるのは味噌の味なのだが、同時にごま油の香ばしさや豚肉の旨み、野菜の旨みもかすかに感じることができる。

 

 

(美味しい豚汁ですね、うどんと合わせているので、濃い目の味付けにしていると思ったのですが、出汁と具材の旨みを上手に組み合わせて、むしろ味噌の量は少な目に抑えています。その分、豚の油分やごま油の香ばしさが旨みを足してますね。野菜の旨みもしっかりと感じられて、とても良いです。)

 

 

レンゲから箸に持ち替えて、次はうどん麺を持ち上げた。

 

 

“ちゅる、もぐもぐ”

 

 

(少しやわらか目に茹でられてますが、コシはちゃんとありますね。おそらく、一度水でしめたのでしょう。ちゃんと味がマッチしているので、その後豚汁ごと温めてますね。おいしいです。)

 

満足げに食事を続けていくハルナ。

美食研究会に爆破されないことからも、この料理のおいしさが分かるのだが、モモイは乗り切った危機を自覚していないだろう。

 

 

 

(小松菜の白和えだっけ?美味しいわねこれ)

 

 

ヒナも食事を続ける中、モモイが箸休めとして用意した小鉢が気に入ったようである。

 

 

(お豆腐をつぶしてるのね、全体的にすっごく優しい味。五臓六腑に染み渡るってこういう料理を指すのかしら?)

 

 

日々の激務に疲れ切ったヒナの体に、数々の栄養が染みわたる。

 

そんな感覚を、ヒナは受けていた。

 

(すりゴマが多めに入ってるの嬉しいわね。)

 

 

こちらも、モモイの料理を楽しめている様子だ。

 

 

“ギャ♪ギャ♪ギャオ♪”

 

“ギャギャギャ??”

 

「ああ、確かにおにぎりつけても合うと思うけど、うどんを入れたから重くなっちゃうとおもってね。」

 

 

“ギャオ、ギャオ、ギャギャ!”

 

「豚汁定食は確かに思いついたけど、そうなるともう2品ほど小鉢が欲しかったかな?漬物、豚汁、白ご飯の定食も確かに美味しいと思うよ。」

 

 

“ギャ~~~♪”

 

 

「・・・・うん、なんで私がパンちゃんと意思疎通できてんのかってツッコミは、もう疲れてるからしないことにした。後でヒナさんに消し飛ばして貰えば解決するし。」

 

 

“ギャ~~~~!!Σ(゚Д゚)”

 

 

・・・・・・・・・まあ、平和そうでなにより。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「「「「「ごちそうさまでした。」」」」」

 

「はい、お粗末様!」

 

 

全員が食べ終わり食器をまとめると、フウカが麦茶を入れてくれたので一息入れることにした。

 

熱々の豚汁うどんで火照った体に、冷たいお茶が心地よい。

 

 

「それじゃあ、私は見回りに行ってくるわ。モモイも今回は見逃すけど、勝手に私のグッズを売り出さないでね。」

 

「は~い、気をつけま~す。「現存するグッズはすべて回収するから」うへ~~。」

 

 

麦茶を一気に飲み干すと、ヒナが荷物をまとめて出ていく。

 

風紀委員長である彼女は、お昼休憩もろくに取れないのだろう。

 

今回のお詫びに、今度何か差し入れでも持っていこうと思う。

 

 

 

できれば、新たなヒナちゃんグッズの許可をゴホンゴホン。

 

 

「はあ、それにしても本当に助かったわ、ありがとう。ジュリだけじゃあ食堂を開けれなかっただろうし、生徒達からの評判も良かった。・・・・・普段の評判を知ってる身としては少し複雑だけど。」

 

 

改めて、モモイとアリスの2人に礼をいうフウカ。

 

それはそれとして、無事にお昼を乗り切れた安心感もあるが、普段の「味がいまいち」という評価を受けているので、今日の給食が人気だったことに、複雑な感情を見せている。

 

 

「フウカさんも実力は確かなんですから、もっと自信を持っていいんですけどね。」

 

「今回アリス達は3人でしたし、普段からこの量を2人で用意してるフウカは、すごいと思います!」

 

「そうですよ!フウカ先輩はすごいんですから。」

 

 

そんな表情を察して、ハルナ・アリス・ジュリの3人は、フウカのフォローを入れる。

 

しかし・・・・

 

 

「でも、モモイさんの料理を見てると、ちょっと自信がなくなるよ。いくら3人でも今日の料理はすごく美味しかったし・・・。」

 

 

フウカの表情は優れないものがあった、毎日一生懸命に給食を提供しても、生徒達からの評価があんなのでは、確かにやる気もそがれるだろう・・・。

 

 

「そんなこと・・・・モモイからも何か言ってあげてくだ・・・・・??なんでモモイは初めてパンちゃん見た時みたいな顔で、フウカを見てるのです??」

 

「いや、だって・・・・え?あれ無自覚でやってるの?・・・フウカさん化け物か何かなの?」

 

 

「「「???」」」

 

 

フウカの話を聞いていたモモイだが、そのあまりの無自覚さに唖然とした表情を浮かべていた。

 

しかし、他の面々は当人であるフウカを含めて、モモイが何に驚いているのかわからない様子である。

 

 

“はあ”

 

一息のため息をこぼして、モモイはテーブルに座る面々、特にフウカへ向けて、ぽつりぽつりと話し出した。

 

 

「まず、料理の工程を省略したら味が悪くなるのは確かだけど、大人数分作るんなら、雑にやってもそこそこの味に仕上げることはできる。料理が下手な人ならともかく、調理場を見る限り、フウカさんの腕は相当なものだよ。」

 

 

「・・・ですけど、普段の給食部が出してる料理は正直微妙ですわよ?」

 

「うう、悔しいけどハルナのいう通り。自分でも微妙だと思ってるわよ。」

 

 

普段の給食部を知っているハルナに、作っている当人なフウカが反論する。

 

事実、多くの生徒が給食部の味は微妙という評価をしているのだ。

 

 

しかし、モモイはそうじゃないと首を振った。

 

 

「私が言いたいのは、『量が多くて忙しいことが料理の味を落としている直接の原因じゃない』ってこと。いや、確かに作業が多かったり人手が足りないのも原因の1つなんだけど・・・・・・・。」

 

 

モモイは少し黙り込むと、調理場に向かいあるものをとってきた。

 

 

「これ、私が作ったメニュー表?」

 

「うん、今回昼食を作るにあたって、ジュリに見せてもらったの。これには、1週間分のメニューが書いてある。」

 

 

テーブルに置いたメニュー表を、皆がのぞき込む。

 

そこには、1週間分のメニューと食材、調理法が記載されていた。

 

 

「これがどうかしたんですか?」

 

「気づかない?フウカさん、あなた、『たんぱく質・脂質・炭水化物・ミネラル・ビタミン』といった人間に必要な栄養素を1日及び1週間単位で計算してメニュー作ってるでしょ?それも、理想的なカロリーや塩分量まで計算して」

 

「「「!!!!!」」」

 

「え?そりゃそうでしょう?給食部だし???」

 

「「「?!?!?!」」」

 

 

モモイの発言にもだが、フウカの何でもないといった返しに対しても驚愕する面々。

 

モモイはその無自覚な様子に、もう一度ため息を吐いて続ける。

 

 

「各種栄養素の摂取はともかく、カロリーや塩分摂取量まで計算するのは難しいんだよ。1日の推奨摂取量が6.5g未満だから、1食2.5g位で計算した?加工食品の利用が制限される上に、旨味を出すにはしっかりと出汁取りみたいな作業をしないと薄味になる。・・・そりゃあ作業工程の省略が味に直結するわけだ。」

 

 

その上、5大栄養素や各種ビタミンなどを1週間のメニューで一通り賄えるようにしている。

 

おそらく、この給食を食べ続ければ、風邪や体調不良とは無縁の生活を送れるだろう。

 

 

「やってることが栄養士レベルなんだよ!・・・・料理人としてならともかく、給食という分野においては、はっきり言って1人で化け物みたいなことしてるから!」

 

「???そうなの???」

 

「「「「そうなの!!!」」」」

 

 

室内にいた全員から、フウカに対して総ツッコミが入るのだった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「はあ、つかれた~~~ただいま~~~!」

 

「ぱんぱかぱーん!アリスが帰還しました!ただいまですミドリ!ユズ!」

 

 

ゲヘナでのアレコレが終わり、2人がミレニアムに帰ってきたのは夕方になってからだった。

 

「お帰りアリス、お姉ちゃん。?お姉ちゃんは帰ってこれたんだね?てっきり何日か捕まるかと思ったんだけど。」

 

「いや、酷いよミドリ。」

 

「給食部の手伝いが無ければ、正直捕まってたと思いますよモモイ。」

 

「何があったの?ふたりとも。」

 

 

モモイとアリスが帰ってきたことで、ゲーム開発部の部室はいつもの騒がしさが戻っていく。

 

今にして思えば、ゲヘナの騒がしさも楽しかったが、やはりこのミレニアムの感じが自身の性に合っていると思う。

 

 

「さて、2人は何のゲームしてたの?私も混ぜて欲しいかな。」

 

「格ゲーだよ、ユズちゃんに鍛えてもらってたの。」

 

「アリスも混ざります!モモイ!勝負しましょう!」

 

「なら私は一旦抜けるね、勝った方がミドリと対戦で、ミドリも教えたコンボを実践で使えるか試してみて。」

 

 

アリスはいそいそとソファーへと向かい、ユズはアリスに席を譲って、ミドリの後ろについた。

 

 

「あ、その前に飲み物取ってくるね。」“ぐちょ”

 

「モモイ!アリスの分もとって・・・・いま、何か聞こえませんでしたか?」

 

 

冷蔵庫に向かうモモイを見送っていたアリスだが、変な異音を聞き取り、モモイの姿をよく見る。

 

その視線を追うようにして、ユズとミドリもモモイの後ろ姿を目で追ったところ・・・・

 

 

“ギャ~♪”

 

 

「「ぎゃああああああああああ!!!」」

 

「うわ!パンちゃん着いてきたの?!?!」

 

「あ、モモイの足元に緑の液体が溜まってます!」

 

“ぐちょっ、ぐちょっ”

 

「ちょっと動かないで!!」

 

 

 

どうやら、ゲーム開発部に新たな仲間が加わったようである。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・

 

・・・

 

 

「さて、明日の食材はこんなものかな?ジュリも今日はお疲れ様。」

 

「お疲れ様でしたフウカ先輩!」

 

 

夜も更けて、あらかた片付いたゲヘナの食堂で、給食部の2人が話をしていた。

 

 

「ミレニアムの2人にも、改めてお礼しなきゃね。特にモモイって子にはお世話になったし。」

 

「本当に、私ひとりじゃどうにもなりませんでした。」

 

 

思い出すのは今日手伝ってくれたミレニアムの生徒。

 

 

「しかし、モモイって子の料理は本当に美味しかったわね。ああいう人を見ると私もまだまだだと思うわ。」

 

「何言ってんですか。フウカ先輩も給食という分野においては化け物級って、そのモモイさんから大絶賛されてたでしょう?」

 

 

ハルナやアリス、なによりそのモモイ自身がフウカを評価したのだ、あれだけ言ってもまだ、自分の料理に自信が持てないのだろうか?

 

そんなところも先輩のすごい所ですが、とジュリが続けると、フウカから思いもよらない話をされた。

 

 

「何本気にしてるのよ?あんなのリップサービスでしょ?私は大したことしてるわけじゃないもの。」

 

「・・・・・・・まだ言ってんですかフウカ先輩。」

 

 

この先輩の自己評価の低さは何とかしなければいけないだろう、今回来てくれたモモイも、確かに料理上手ではあったが、コト給食という分野においてフウカ以上の人物など・・・・・・

 

 

「現に、モモイさんも栄養価や減塩を意識して、なのにあれほど美味しい料理を作ってたしね!私も負けてられないわよ!」

 

「・・・・・・・・・・・・はい?」

 

 

なにを・・・・言ってるのだろうか・・・・・

 

モモイが手伝いを申し出てくれたのは、場のなり行きだ。

 

いくらフウカのメニュー表を見せたと言っても、お昼のメニューを考えたのは一瞬のうちだった。

 

なにより。

 

 

「フウカ先輩?モモイさんが作ったのは豚汁、つまりは味噌汁ですよね。なんで減塩料理になるんですか???」

 

「ん~、確かに味噌は塩分量が多くて、自治会によっては1日1食を推奨するところもある位なんだけどね?」

 

 

そう、味噌汁というのは確かに栄養価が高く、具材によっては野菜類を多く取れるのだが、塩分量が多い食材のはずだ。

 

 

「けど、顆粒出汁だけじゃなくてごま油とか豚肉の旨みで、味噌の量を少量に抑えてたし、具だくさんの味噌汁は汁が少なくて済む分、全体的な塩分量が抑えれてた。」

 

 

そう、具材を多く入れることで摂取する塩分を抑えることができる上、栄養価が高くなるのだ。

 

今回はうどんも入っていたので、その分汁の量もそれ程多くなかった。

 

 

「小鉢の『小松菜の白和え』も、あれ自体が減塩料理だし、すりごまを多くすることで、醤油や味噌の量を抑えてた。定食全体で見ても、大した塩分量じゃなかったよ。」

 

 

フウカの説明を聞いていくうちに、ジュリの額に冷や汗が流れる。

 

だって・・・だって・・・、一瞬だった。

 

メニュー表を見て・・・すぐに料理を始めて・・・メニュー表を見返して何かに気付いた様子を????

 

 

「ミレニアムの1年生って言ってたよね?・・・・今度、私も・・・一緒に料理したいなあ。」

 

 

化け物なのはどっちだったのか・・・・自分と同じ学年でどうしてあれほどなのか・・・

 

ジュリはその日、朝まで眠ることができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、私、忘れられてません?ヒナ委員長?イオリ?誰かこれほどいてくれませ~~ん!!」

 

ちなみに、風紀委員の部室で簀巻きになっていたアコが解放されたのは、翌日になってからだったそうな(笑)

 




はい、モモイの仲間にパンちゃんが加わりました(笑)

TwitterでみつけたSDパンちゃんがあまりにも可愛かったので、このままうちのレギュラーにします(笑)

豚汁はそれ単体でも美味しいですが、うどんやおじやなど、工夫してもおいしいですよ!

手軽に野菜をとりたいのなら、結構おすすめの料理です!
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