才羽モモイのずぼら飯   作:イッセ

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お久しぶりです。
忙しくてしばらく放置していたのですが、新たに感想などをいただいたので、再び投稿しました。
これからも不定期ですが、投稿していきます。


お魚尽くし シロコVSクロコ!アビドス釣り対決委員会

 

 

 

 

「海だ~~~!!潮風が気持ちいい~~~!!」

 

 

ミレニアムから離れたとある海岸に、我らがモモイの姿はあった。

 

季節は5月、長期休暇を利用してミレニアムから少し離れた海まで、遊びに来ているのだ。

 

 

「・・・・・お姉ちゃん、なんで海?最近急激に暑くなってきたとはいえ、まだ海水浴には早いよ?」

 

 

テンション高めのモモイとは違い、後ろから着いて来ている妹のミドリは、あまり乗り気ではない様子である。

 

まあ、元々妹はあまり外で遊ぶタイプではなく、この長期休暇も部室にこもる予定をしていた。

 

 

現に、ゲーム開発部部長のユズは、早めのクーラーをつけてアリスと共に部室でゲーム三昧としゃれこんでいる。

 

 

そんな中、何故私とミドリだけがミレニアムから離れて海まで来ているのかというと・・・・。

 

 

「・・・ん、今日こそ決着をつける。銀行強盗も先生を襲うのも、そして釣り人としても、私の方がはるかに強いと証明する!!」

 

 

「ん、それは無理。あなたとは圧倒的に経験値が違う。・・・弱シロコ。」

 

 

 

背後で睨み合っている、2人の砂狼が原因だった。

 

 

 

 

 

 

数日前

 

 

 

「おっ買い物♪おっ買い物♪新しいゲームとか出てるかな?」

 

 

この日、私こと才羽モモイは、ミレニアムから離れた大型ショッピングモールへと足を運んでいた。

 

 

暇つぶし、というのもあるのだが、来たるゴールデンウィークに皆と遊ぶゲームを見繕いにきていた。

 

 

・・・・そう、私も最初は、この長期休暇を部室で引きこもって過ごす気でいたのだ。

 

 

 

そうして目的の電気コーナーに向かっていたところ、ふと目を向けたアウトドアコーナーに、見たことのある人物がいることに気づいた。

 

 

 

「・・・・・・・・弱シロコ、これはあなたのようなチビには大きすぎる。私に譲るべき。」

 

 

「・・・ん#そんなことない、私の方がこれを上手に使える。そっちこそ譲るべき。」

 

 

 

砂狼シロコと砂狼シロコの2人が、釣り竿を取り合っていたのである。

 

 

・・・何を言っているのかと思われるだろうが、長身の黒ドレスを着ている方は別世界のキヴォトスからやってきた、砂狼シロコなのだ。

 

キヴォトスの空が真っ赤に染まったあの日、私たちゲーム開発部も先生と共に宇宙まで彼女を止めるために同行していた。

 

直接会話をしたことは無いが、彼女の身の上は大体把握しており、元気そうな姿にはホッとさせられる。

 

 

 

(・・・それはそれとして、一体何をもめているのだろう?)

 

 

 

知らない人ではないし、挨拶がてら話が聞こえる位置まで違づくと、もめごとの内容が分かってくる。

 

 

 

「「この大きさの釣り竿なら、ホシノ先輩を括り付けて投げたらシャチだって釣り上げられる!!」」

 

 

「何しようとしてるの!バカ2人!!」

 

 

 

モモイがアビドスの問題児2人に巻き込まれた瞬間である。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「・・・・で、その場ではお金を出し合って取りあえず竿を購入、どっちが所有するかは釣りで勝負することにしたんだ。」

 

 

「そ!だから、今回は釣りをするのが目的で、海水浴じゃないよ!海に入るのは夏にだね!」

 

 

 

その場をいさめるのに、釣り勝負を提案したのはモモイであった。

 

 

なので、乗り掛かった舟ということもあり、勝負の審判役を買って出たのだ。

 

 

とはいえ、1人で大して親しくない人たちと共に海へと同行するというのは、ちょっと気が引けたので、妹であるミドリも巻き込んだのは少し悪いと思っている。

 

 

・・・そして、ミドリだけでなく。

 

 

 

 

「うへ~、ほら2人共~。いつまでも睨み合ってないで準備しな~。モモイちゃん達も悪いね~、シロコちゃん達の争いに巻き込んじゃって。」

 

 

「2人とも、とりあえず宿に車は止めてきたから、ものを運ぶのは手伝ってほしいな。」

 

 

 

保護者役として、シャチの餌にされそうになっている小鳥遊ホシノさんと、シャーレの先生も巻き込んだ、釣り対決にまで発展したのは完全に予想外だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、ルールを説明するよ!制限時間は『4時間!』つり上げた魚の総重量で勝敗を決めるんだけど、魚は『食べられるもの』かつ『15センチ以上!』それ以外はリリースで!!」

 

 

「ん!」

 

「・・・ん。」

 

 

 

お昼を食べて一休みした後に、いよいよ砂狼シロコ達によるアビドス釣り対決が始まった。

 

 

「審判兼進行役は、ミレニアムサイエンススクールのゲーム開発部、モモイちゃんが務めるよ!解説役には、先生曰くお魚ガチ勢!アビドス3年のホシノさんにお願いしました!」

 

「うへ~、よろしくねぇ・・・・・お魚ガチ勢って何?先生?」

 

「・・・いや、ホシノお魚については本当に詳しいから(;^ω^)」

 

 

 

即興で設置した長机に座って、意気揚々と司会をするモモイ。

 

机の横には、解説役のホシノと彼女に詰められている先生も座っている。

 

 

 

「・・・シャーレの先生をゲストに迎えてのアビドス釣り勝負!シロコVSクロコ!「ん?クロコって私?まあ、いいけど。」一体どちらが巨大釣り竿を所有するのか!!そしてシャチの餌にされる予定のホシノさんはどうなるのか!!「待って、それ初めて聞くんだけど(゚Д゚;)」勝負スタート!!!」

 

 

「後でお説教だよ、シロコちゃん達。」

 

 

 

ホシノが静かにキレながら、シロコとクロコ2人の勝負が始まった。

 

 

 

 

 

クロコが選んだ釣り場は防波堤、竿はリール付きの若干長めの竿を用意している。

 

 

「さあ、はじまりました釣り勝負!クロコさんは防波堤からの釣りを行うようです!「シロコテラーの呼び方はクロコにするんだね(-_-;)」「まあ、いいんじゃないかな?先生もわかりやすいでしょ?」・・・いいでしょ別に!!それよりホシノさん!クロコ選手を見てどうですか!!」

 

 

私は魚の種類はともかく、釣りについては詳しくない。

 

魚が釣れるまでは、ホシノさんに解説を丸投げすることになるだろう。

 

 

 

「うへ、クロコちゃんは浮釣りをするみたいだね。用意している餌は『オキアミ』に『ヌカ』・・・団子釣りや紀州釣りって言われる釣り方かな。多分チヌあたりを狙って、他にもかかればって感じじゃない?」

 

 

「『ヌカ』って米ぬかのこと?」

 

 

「そ、針先にオキアミ(小さなエビ)をつけて、米ぬかと魚粉なんかを混ぜた団子で包むの。」

 

 

見るとクロコは、米ぬかと白い粉末を混ぜてから、海水をくみ上げて足し練り上げている。

 

 

「固めた団子は、海底で崩れて魚をおびき寄せる役目と針を沈める重し変わりになるんだよ。ウキ止めを動かすことでオキアミの位置を調節できるから、今は深さを計ってるのかな?針は3号くらいでハリスは1.5、サルカンから13㎝くらいを「ホシノ、釣りの専門用語が多すぎてモモイが呆然としてるよ?」・・・うへ~、ごめんよモモイちゃん。」

 

 

「う、うん、取りあえずチヌってことは、クロダイだよね?を狙ってるってのは分かったよ(;^_^A」

 

 

 

先生がお魚ガチ勢と言っていた理由がよくわかった。

 

クロコさんが釣りを始めてから、ホシノさんの目つきが変わり、専門用語飛び交う解説を始めたので、圧倒されてしまった(汗)

 

 

 

「とにかく、小さい魚・・・エサ取りっていうんだけど、それを避けた仕掛けをしてるのかな?ウキの感じ結構海底を探ってるみた・・・・早速かかったみたいだね。」

 

 

 

見るとクロコさんは竿を素早く立てており、竿先はびくびくと震えている。

 

 

とはいえ、サイズはそこまでなのだろう。

 

 

結構簡単に岸まで上げてくる。

 

 

 

「あれは・・・ベラかな?」

 

 

「おっ、モモイちゃん詳しいね。『キュウセン』とも呼ばれるスズキ目・ベラ亜目・ベラ科のお魚だよ。」

 

 

 

料理をする関係上、お魚の種類はある程度知っているが、やはりホシノさんの知識量は凄いらしい、私は『キュウセン』なんて呼び方は知らなかった。

 

 

 

「結構いろんなところで釣れるお魚なんだけど、この魚の面白いのは小さいときはほとんどメスしかいなくて、群れのオスが死ぬもしくはいなくなると、大きいメスが順番にオスに性転換するんだよ。」

 

 

「ニモみたいな感じ?」

 

 

「・・・えっと、クマノミのことかな?あっちはオスからメスに変わるから、更に珍しいね。実はクロコちゃんが狙ってるチヌ(クロダイ)もメスからオスに性転換する魚で、メス→オスは意外と身近な魚でも確認されてるんだよ。」

 

 

 

 

流石はお魚ガチ勢。

 

魚に関する知識量が半端ない。

 

 

 

「美味しい魚ってことしか知らなかった。えっと、クロコさ~ん!15㎝以上ありそう?」

 

 

「ん、20センチちょっと。まあ、ベラにしてはいいサイズ。」

 

 

「OK!取りあえず1匹ね!!」

 

 

「ん。」

 

 

 

この釣り勝負、最初の1匹目はクロコさんが先制のようだ。

 

 

 

 

 

「えっと、シロコさんはテトラポットにいるね!・・・・何してるのアレ?」

 

 

 

次に、シロコさんの方へと来てみると、短めの竿を持ってはいるものの、テトラポットの間に糸を垂らしている様子だ。

 

 

 

「アレは、『穴釣り』だね。テトラの間や岩の隙間に餌を落として魚を狙う方法で、『ボウズ逃れ』っていうほどよく釣れる釣り方だよ。」

 

 

「ん。絶対負けない・・・私に!!」

 

 

「モノトリアムかな?」

 

 

 

呼び方を変えたとはいえ、どっちもシロコさんだからややこしくなる。

 

幸いにも見た目が全く違うので、私たちは助かるのだが。

 

 

 

(“スカスカ”・・・将来性が期待できるのは、羨ましいけどね(;一_一))

 

 

「・・・・モモイちゃん。今度おじさんとご飯でもいこっか、奢ってあげるよ。」

 

 

「ん、・・・・将来性がないのは可哀そう。」

 

 

「「ぶっ飛ばすぞ(よ)バカ狼!」」

 

 

 

ホシノさんとは、とっても仲良くなれそうな気がした瞬間である。

 

・・・・シロコさんとは無理だ。

 

 

 

「・・・・テトラか。お姉ちゃん、ちょっと私も海の方に行ってきていい?」

 

 

 

シロコさんの様子を見ていると、それまで黙っていたミドリがおずおずと話しかけてきた。

 

 

妹は少し人見知りな所があり、今回のお出掛けでは私か先生の所から離れないと思っていたのだが・・・・。

 

 

 

「あと、ちょっとナイフ借りてくね?」

 

 

「・・・あっ、なるほど。OK!海に落ちないようにね!」

 

 

 

ミドリの視線の先を追うと、妹の目的がすぐにわかった。

 

 

 

「・・・先生、今日は泊りがけになるよね?今のうちにお酒でも買ってくるといいよ。」

 

 

「え?私は引率できてるんだし、アルコールは控えるつもりだったんだけど・・・。」

 

 

先生が生徒の前では飲酒を控えているのは知っている。

 

しかし同時に、そこそこの酒飲みであることも、以前のやり取りで知っていた。

 

故に。

 

 

 

「私たちは気にしないし、多分後悔するよ?」

 

 

「モモイちゃん?・・・・・あっ!うへ~、おじさん達も気にしないから、先生買ってきな~♪」

 

 

 

 

どうやらホシノさんも、ミドリの方をみて感づいたらしい。

 

 

魚以外の知識もあるのか・・・・流石である。

 

 

 

 

 

 

「ん、きた!」

 

 

 

先生を見送ってからしばらくすると、シロコさんの竿が曲がった。

 

 

 

どうやらかなりの大物らしい。

 

 

 

穴の奥に入り込んでいるらしく、引き上げるのにかなり苦労しているようだ。

 

 

 

「結構大物っぽいね。ホシノさん、穴釣りって何が釣れるの?」

 

 

「うへ、結構いろんなのが釣れるよ~。今の時期ならメバルとか夜なら穴子とかね~。でもあの感じだと多分・・・。」

 

 

 

 

ホシノさんが何かを言いかけた中、やっとのことでテトラの穴から魚が見えてきた。

 

 

足元まで寄せてきたその魚は、まだまだ激しく暴れており、引き上げるのに苦労している様子だ。

 

 

 

「!!!あれ、カサゴ?!?!すごくおっきい!!」

 

 

「うん、カサゴ・ガシラとも言うね。穴釣りで良く釣れる春先の魚だけど・・・実は冬に産卵のため、浅瀬のテトラとかに大きなのが来るの。で、時々化け物みたいなサイズが穴釣りで釣れる。」

 

 

 

シロコさんがやっとのこと引き上げたそのカサゴは、40センチ近くの化け物サイズだった。

 

 

 

「うへ~、このサイズだと穴の中に入られて中々上がってこないのに、良く引き上げられたね~。」

 

 

「ん、めちゃめちゃ頑張った。」

 

 

 

ホシノさん曰く、穴釣りは簡単な釣り方だけど大物が釣れた時は穴の深い所に潜り込まれやすく、糸がすぐに切られるそうだ。

 

 

このサイズの魚をあげられたのは、結構すごいことらしい。

 

 

 

「とにかく、これでシロコさんが1歩リードかな?「ん、こっちも釣れた。」!!って、クロコさんも調子いいね!」

 

 

「うへ~、お昼の段階でこんなに釣れるのはすごいことだよ~。クロコちゃんが釣ったのは『カワハギ』だね。フグ目カワハギ科、どこでも釣れる魚だけど漁獲量が多くないから、市場では結構高いんだ~。皮が分厚くて、その皮を剥いで料理するからカワハギって呼ばれるようになったお魚だよ~。」

 

 

 

何処でも釣れる高級魚ということで、そこそこの知名度がある魚だ。

 

この魚ならば私も知っている。

 

 

 

「実は体の模様で群れでの偉さが分かれてて、模様がくっきりなほど偉いリーダー格なんだよ~。薄いのは下っ端だね~。時々模様が変化して順位変動が起こるっていう面白いお魚だよ~。頭の角は立てて警戒に使われるんだけど、折れたら死んじゃうから血抜きの時注意だね~。」

 

 

 

・・・流石にそれは初めて知ったよ。

 

今度からホシノさんじゃなくてサカナさんって呼ぼうかな?

 

 

 

 

「・・・ん、流石は私、手強い。ここからはもっと量が釣れるやり方に切り替える!」

 

 

 

クロコさんの釣果を見て、シロコさんが竿を換えにいった。

 

 

今度はたくさん針がついたものに、一番下が籠となっている。

 

 

 

「うへ~、『サビキ釣り』かあ~、シロコちゃん本気だね~。」

 

 

「サビキ釣り?」

 

 

 

本気というからには、何か優れた釣り方なのだろうか?

 

竿も長いものに代わっている様子だが。

 

 

 

「アジング・・アジ釣りに使われる初心者にオススメの釣り方だよ~。波止場でよくやる釣りで、一番下についてる籠にアミエビを詰めて上の針にかかるのを待つんだけど・・・って、シロコちゃん、針全部にさっき使ってた石ゴカイつけてる(汗)」

 

 

 

本来であれば羽のような疑似餌がついている針に、アジが食いつくのを待つものらしい。

 

ところがシロコさんは、穴釣りの時に使っていたミミズのような餌を小さく切ってつけていた。

 

 

 

「『石ゴカイ』っていう小型のイソメだね。東の方ではジャリメとも呼ばれるよ。海中で泳げる生き物だからミミズよりも元気に動くし、オキアミよりも針にしっかりとかかるから、投げ釣りとかによく使われるよ~。」

 

 

 

・・・あなたお魚ガチ勢というよりも、釣りガチ勢なのでは???

 

なんで釣り餌の知識まで持ってるんですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数時間、クロコさんはずっと団子釣り、シロコさんはサビキ釣りを続けている。

 

 

 

「あっ、クロコさん釣れた!あれはグレかな?結構数があがってるみたい。」

 

 

「メジナ・クチブトグレだね。キヴォトス(日本)では3種類のグレがいて、クロコちゃんが釣ってるのはどれもクチブトグレばっかりだよ。まあ、20センチちょっとだし、全部木っ端グレだけどね。」

 

 

 

ホシノさん曰く、グレの種類を問わず小さなグレは釣り人の間で木っ端グレと呼ばれているらしい。

 

 

 

「シロコちゃんもたくさんアジが釣れてるみたいだね。湾の外向けにちょい投げで釣ってるからか、結構いいサイズもかかってるみたい。・・・ま、サビキを使ってる以上。15センチ以下の豆アジも多くて、リリースも多そうだけどね。」

 

 

 

・・・やはり、ホシノさんは魚に詳しいというよりも釣りに詳しい人な気がする。

 

 

 

「えっと、ホシノさんってやっぱり釣りも詳しいですよね?」

 

 

「・・・うへ~、そんなことないよ~。お魚に詳しいのは水族館が好きだからだし、シロコちゃんがやってるみたいな、サビキや穴釣りはほとんど経験がないし・・・。」

 

 

 

 

それにしては釣りの知識量が多い気もする・・・・ほとんど???

 

 

 

「おじさんはクロコちゃんがやってるみたいな、浮釣りが好きかなあ。もっと海流の流れや海底の状況を探って、チヌ単体を狙う繊細なやり方で・・・私なら浮は寝浮、それも発泡スチロールの発泡寝浮を使って細かいアタリが分かるみたいにして、海底だけでなくて時間帯でもっと深さを調節して、ほらクロコちゃん練り餌が渇いてすぐにばらけてんじゃん、ちょくちょく水足して団子の硬さを調節しないと。あと糸出し過ぎだよ、確かにある程度波に載せる必要があるから余裕はもたせないとだけど、あれじゃあ合わせた時にラグがありすぎてかかりが浅くなるし団子で集めている部分に針を滞留させないと団子釣りの意味が」

 

 

「いや、メッチャ釣り人じゃん!!言ってることほとんどわからなかったけど、目つきと雰囲気が玄人だよ!!」

 

 

 

途中から一人称が私になっているし、目つきが鋭くなっている・・・・先生?臨戦ホシノってなに??

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうすぐ5時半かあ、日も落ちてくるしそろそろ終了だねえ。」

 

 

釣り勝負を開始したのが2時だったので、残り30分ほどで終了である。

 

 

シロコさんは量が釣れているようだがアジばかり、最初に釣ったカサゴ以外はサイズが小ぶりだ。

 

 

キスやゴチなどもかかってはいたが、どれも15センチ未満のリリースサイズ・・・自分で決めたルールだがもったいなかったかもしれない。

 

 

小さい魚でも揚げ物にしたら美味しいのに・・・・(´・ω・`)

 

 

 

「クロコちゃんもメバルにグレの追加とか釣れてはいるけど・・・本命のチヌは上がってないね。まあ、チヌのシーズンは秋だからしょうがないけど。」

 

 

「えっと、釣った魚の総重量は・・・・ややシロコさんが勝ってるかな?もう時間もないし、クロコさんには厳しいか!」

 

 

「いやいや、朝間詰めと夕間詰めって言ってね?日の出・日の入り30分は魚が釣れやすい時間なんだ。この30分が一番の勝負所だよ!」

 

 

 

今の時期は18時過ぎに日の入りがあるため、ラスト10~15分ほどが今回一番のねらい目らしい。

 

潮の状態からも、この30分が一番期待できるそうだ。

 

 

・・・・・この人本当に詳しいな(汗)

 

 

 

 

「・・・・・・ん!きた!!」

 

 

「ん、こっちも大きい!」

 

 

 

 

ホシノさんの予想通り、終了10分前になって、クロコさん、シロコさん共に、大き目のヒットがあった。

 

 

時間的におそらくこれが最後の釣果となるだろう。

 

 

 

 

「うへ~、2人共いい引きしてるねぇ。クロコちゃんは多分チヌかな?引き方がそれっぽいしいいサイズそうだよ♪シロコちゃんはなんだろ?こっちも引きはいいけど・・・青魚?下手すりゃ『ボラ』かもだけど・・・モモイちゃん、ボラって食べる??」

 

 

「お刺身は結構おいしいよ!焼いたこともあるけど、パサパサしてまずかった!いいサイズのボラならお刺身にするからカウントするね!」

 

 

 

ホシノさんの予想では、シロコさんの方は外道と呼ばれる目的外の魚らしい。

 

 

どちらも無事に上げれれば、シロコさんの獲物が有効かどうかが勝負のカギになりそうだ。

 

 

・・・ちなみに、いくらおいしいとはいえ、トラフグなんかをつられても私は捌けないのでカウントされない。

 

 

『食べられるもの』=『私が調理できるもの』という審査方法なのである。

 

 

 

 

「・・・・ん!大きい。今年1番!!」

 

 

 

 

先に釣り上げたのはクロコさん、ホシノさんの予想通り、すばらしい大きさのチヌである。

 

 

銀色の光沢を放つからだに、刺々しい背びれ。

 

 

サイズは50センチを超えるだろうか?

 

 

かなり大きく、現時点ではシロコさんの総重量を軽く超えただろう。

 

 

 

 

 

「うへ~、見事なチヌだね~。東ではクロダイ、西ではチヌと呼ばれる有名な食用魚だよ、いろんなところ(北海道から九州まで)の内湾、河口域にいて、浅い所でも大きなサイズが釣れるから、人気の高い魚だね。実は淡水でも生きられるお魚だから、井戸水でも新鮮に生かせるってことで、夏の高級魚だったこともあるんだけど、雑食性で色んなものを食べるから、評価が分かれる魚だよ!釣る分には楽しいんだけど!」

 

 

 

 

ホシノさんのお魚うんちくも終わった所で、シロコさんの方も姿が見えた。

 

 

 

 

 

「あちゃ~!シロコちゃんの方は『バリ』かあ~。東ではアイゴ、西ではバリっていう魚だけど・・・残念ながら毒持ちだよ。トゲにあるからシロコちゃん気をつけてね~!」

 

 

 

「ん、残念。」

 

 

「ん、私の勝ち。弱シロコ。」

 

 

 

・・・・・シロコさんも無事に最後の魚をあげて、結果発表にうつる。

 

 

 

 

 

「結果発表~!ドンドンパフパフ~!「口で言うんだ?」さて!2人ともお疲れ様!最後の最後まで気が抜けないいい勝負だったね!」

 

 

「ん、頑張った。」

 

「ん。」

 

 

 

 

時間がきて、道具の片づけを済ませたら、いよいよ勝負の結果発表である。

 

 

1人で行動していたミドリや買い物を頼んでいた先生も戻っており、全員そろった状態で結果を告げることにした。

 

 

 

 

 

「勝負の結果は・・・・・最後の釣果が決め手になりました!「ん。」シロコさんの勝利です!!」

 

 

「「・・・・・・・・ん????」」

 

 

 

 

シロコ・クロコ共に、顔に?が浮かぶ。

 

 

 

 

「・・・えっと、モモイ?確か最後にシロコが毒持ちの魚を釣って、クロコが勝ったんじゃなかった?2人からそう聞いてるんだけど?」

 

 

 

 

未だにフリーズしている2人に代わり、先生が聞いてくる。

 

 

 

 

「うへ~、確かに最後はシロコちゃんが釣ったバリは毒持ちだから、カウント外になったんだけど・・・・・・・え?モモイちゃんひょっとしてそういうこと??」

 

 

 

流石ホシノさんだ。

 

この人だけはこの結果を少し予想していたらしい。

 

 

 

 

「えっとねえ、それは「・・・今、バリって言いました?」・・・」

 

 

 

 

説明しようとすると、魚の種類を聞いたミドリが話に入ってくる。

 

 

・・・まあ、ミドリは私の妹だ。

 

 

私が作ったことのある料理は、大体食べたことのある人物なわけで・・・

 

 

 

 

「バリが毒持ちって言うのは初めて聞きましたが・・・お姉ちゃんがお味噌汁に入れてくれる美味しいお魚の名前が、バリだったような。」

 

 

 

 

・・・というわけである。

 

 

 

「あはは、ルールは『食べられるもの』だからね!毒持ちでも私が料理できるから、バリもカウントしたよ!」

 

 

 

 

審査の基準は私が料理できるかどうかなので、このような結果となった。

 

 

 

 

「結果、勝者シロコさん!これにより、巨大竿の所有権もシロコさんとなりました!!」

 

 

 

「ん、勝利。ブイ」

 

 

「ん、まあしょうがない。」

 

 

 

 

どうやら2人共納得してくれたようである・・・・まあ、それはそれとして。

 

 

 

 

 

「「これでホシノ先輩に協力して貰えば、シャチやサメでも釣れる!(と思ったのに)」」

 

 

 

「・・・そうだった。2人共お説教だよ。」

 

 

「体格的に一番餌向けな人選のあたり、なおのこと質悪いよね。(ホシノ145cm)」

 

 

「お姉ちゃん。私たちにも刺さるから言わないで(モモミド143cm)」

 

 

 

「ホホジロザメでも釣る気かな?本気のホシノならコクマーでも釣れそうだけど。」

 

 

 

 

 

シロコさんもクロコさんも、揃ってホシノさんに説教されました(笑)・・・・・先生も何気にひどくない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、今日泊まるコテージに戻ってきたところで、早速お料理をしていくよ!!」

 

 

「うへ~、おじさんお腹ペコペコだよ~。」

 

 

「人数多いし、私も手伝うよお姉ちゃん。」

 

 

 

 

本日の宿泊先であるコテージのキッチンスペースには、私とミドリ、そしてホシノさんの姿があった。

 

 

なお、先生はシロクロコンビに突撃され、ひたすら頭をなでさせられている。

 

 

・・・・その姿をみるミドリの目が、ちょっと怖かったのは内緒だ。

 

 

 

 

 

「それじゃあ、ミドリはご飯を炊いてもらおうかな?炊飯器はないけど土鍋があるから、それ使って、えっと・・・やり方は分かる??」

 

 

「えっと、水どれくらいだっけ?「1合あたり200㎖!20分ほど吸水させてね!」分かった。」

 

 

「始めちょろちょろ、中ぱっぱ、ブツブツいうころ火を引いて、ひと握りのワラ燃やし、赤子泣くともふた取るな!だね~。」

 

 

「全文知ってる人初めて見たけど、それ竈の時だよホシノさん。」

 

 

「ありゃ?」

 

 

 

土鍋の場合は、最初から中火でかける為、はじめちょろちょろではない。

 

 

土鍋でのご飯の炊き方を簡単に紹介すると・・・

 

 

1. 研いだ米を水に浸けて吸水させる

 

2. 米と水を土鍋に移して中火にかける

 

3. 沸騰したら弱火にして15分程度炊く

 

4. 火を切って10分程度そのまま蒸らす

 

5. 完成、手早く混ぜる

 

 

 

という形になる。

 

 

 

 

「火を切る瞬間、強火にするとか細かい工夫はあるけど、基本的には上記の方法で炊けるよ。竈とはまた違うから、ちょっと注意だね。」

 

 

「わかった。」

 

「うへ~、そうだったんだ。」

 

 

 

まあ、ミドリも何度かやらしているし、そちらは任せていいだろう。

 

 

 

 

「私たちは釣った魚を捌いていくよ!・・・どうせホシノさん、こっちも詳しいでしょ?」

 

 

「うへ?おじさん基本的には食べる専門なんだけどな~・・・・・・捌けるけど。」

 

 

 

 

やっぱりか!

 

 

お魚解説を聞いていて分かったが、この人あきらかに釣り経験者である。

 

 

 

 

「ホシノさんはアジを3枚おろしにしてくれる?頭は落として、骨部分はできるだけ綺麗にね!」

 

 

「!!骨せんべいかな!楽しみだ~♪」

 

 

 

 

・・・捌き方を伝えただけで作る料理が分かったあたり、この人ある程度の料理もできるのではないだろうか?

 

 

しっかりと新聞紙を用意しているし、頭と内蔵、せいご(アジにある硬い鱗部分)をとるのも早い。

 

 

 

 

「身の方も揚げちゃうから、小骨はいいや!3枚にしてくれればいいから。」

 

 

「なら皮はいいのね、腹骨だけ取っとくよ。」

 

 

「お願い」

 

 

 

 

凄まじく話が早い。

 

大量にあったアジも、みるみる捌いているし、頼もしい限りである。

 

 

 

 

「私は他の魚の鱗と内蔵とりと・・・あ、先にバリを捌くか。」

 

 

 

クーラーボックスに入っている毒持ちの魚を先に処理することにした。

 

 

 

「間違って刺さると、1日くらいピリピリしちゃうからね!まずは調理はさみで毒トゲを切っていくよ。」

 

 

 

この時、切った後のトゲにも毒があるので、新聞紙で包んでからビニール袋を2重にして捨てる。

 

 

 

「この時に頭と内蔵も一緒に捨てとく。背中から切れ込みを入れて引っ張れば・・・皮も簡単にはがせるよ!カワハギもだけど、こうした皮が厚いお魚は、捌きやすいから好き!」

 

 

 

ここから3枚卸にしていくのだが、先に全ての魚の鱗と内臓を処理することにする。

 

 

 

「カサゴとメバルは鱗と内蔵をとって、ベラは内蔵だけ・・・本当に大きいなこのカサゴ、流石にこの時季じゃ卵はないか・・・念のためお塩をふって放置しておこうかな?」

 

 

 

これらの魚は、カワハギと共にすべて煮つけにする。

 

 

臭みが残ると嫌なので、塩をふったのは臭みけし目的だ。

 

 

 

「その間にカワハギを「モモイちゃん、アジ終わったよ。そっち手伝おうか?」えっ早!じゃあグレもお願いできます?」

 

 

 

あれだけあったアジが、すべて処理されている。

 

 

やはりこの人、かなりの腕前だ。

 

 

 

 

「うへ、グレはどうする?」

 

 

「・・・木っ端ばかりだけど刺身にする!ホシノさんお願いできる?」

 

 

「!!モモイちゃん、わかってるね~♪」

 

 

 

 

クロコさんが釣り上げたグレたちは、それほど大きなサイズではない。

 

 

なので刺身にする作業は私がする予定だったのだが・・・ホシノさんの実力を見ると任せてもよいだろう。

 

 

 

まったく、出刃包丁が似合う人である・・・・・・・・・モモイちゃんの方が似合うよ、デスモモイとかって考えた人は感想オクレ。刺身にしてやる。        

 

 

 

 

カワハギも内蔵と皮を剥いで、煮つけようの魚に合流させると、いよいよクロコさんが釣った大物、チヌの調理である。

 

 

 

鱗と内臓を同じように処理するが、この魚はシンプルな塩焼きが一番おいしいと思っている。

 

 

 

「外で火を起して、じっくり火入れしようかな?ここがコテージで良かったよ。」

 

 

 

家にある調理器具では、例え一番大きなフライパンを使っても、丸ごとの調理は出来なかっただろう。

 

 

 

 

(多分、おかしなゲーム画面みたいになるかも(笑))

 

 

 

 

このサイズのチヌを無理矢理フライパンで焼く姿を想像すると、つい笑ってしまいそうになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よいしょっと、おまたせ~!」

 

 

コテージの外に取り付けてあるテーブルに、調理済みの料理を並べていく。

 

 

シロコさんとクロコさんが、備え付けのバーベキューコンロに炭で火をおこしてくれているので、チヌを塩ふりして炙っていく。

 

 

 

「・・・ん?ちょっとミドリ!ミドリが取ってきたものがあるでしょ?早く出して!!」

 

 

「あ、そうだ忘れてた。」

 

 

 

 

そう言って持ってきたのは、海水の入ったバケツ。

 

その中には、テトラなどによく張り付いている、貝があった。

 

 

 

 

「うへ~、やっぱりマツバ貝か~♪」

 

 

「うん、正直アワビみたいな高級食材より、こっちの方が好き。お姉ちゃん、お願いできる?」

 

 

「まっかせて~♪」

 

 

 

 

バケツから1枚ずつ取り出していき、傘を下に向けて網に並べる。

 

 

そして、お酒と醤油を垂らして、焼いていくのだ。

 

 

 

 

「・・・う、これは犯罪的かも。」

 

 

「ね?お酒買ってきて正解だったでしょ?」

 

 

 

 

 

垂らしたお酒と醬油が沸騰してくると、香ばしい醤油と磯の香りがあたりにたちこめる。

 

 

“じゅ~!”というその音を聞いた先生は、思わず生つばを飲み込んでいた。

 

 

 

 

「モモイのずぼら飯!『取れたて海の魚介尽くし』だよ!できてるのから食べていこ!」

 

 

 

「「「「「いただきます!」」」」」

 

 

 

 

こうして、シロクロちきちき釣り対決のお疲れ様会は始まるのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

(磯の香りスゴ!醤油と酒の香ばしい匂いも合わさって、めちゃくちゃいいにおいがするな。)

 

 

 

先生はまず、ミドリが取ってきたマツバ貝を手に取っていた。

 

 

 

(傘の部分が熱いから気を付けてと・・・火を入れてから結構縮んじゃってる、でも大きいサイズを選んでとってきてたから、結構食べ応えがありそう。)

 

 

 

火傷をしないように片方だけ軍手をつけて、割りばしで身を傘からはずす。

 

 

 

(ホシノ曰く、市場にでない海辺周辺の庶民の食材、一体どんな味なのか・・・)

 

 

 

“ハムっ!”

 

 

2センチほどに縮んだ身を一口でほおばると・・・・

 

 

 

(・・・・・うっっっっっまっ!!!えっ?ちょっ、お酒!お酒!!)

 

 

 

“きゅ~~!”

 

 

 

磯の香りが飛ばない内に、買ってきていた日本酒を吸う!

 

 

 

強烈な貝の風味と焼かれた醤油の香ばしさ、それに少しの苦みが切れのある酒に流されていく!

 

 

 

(!!!日本酒!!ビールじゃなくて日本酒買って来た私!よくやった!!)

 

 

 

モモイの料理が食べれると聞き期待はしていたものの、引率ということでどこか気を引き締めていた先生。

 

 

生徒の前ということもあり、飲酒という行為にも、どこか罪悪感をもって食事を始めていた。

 

 

 

(・・・・・貝の出汁が入った残り汁・・・・“ジュル”・・・・!!!!!)

 

 

 

「ンんンんンんンんンンー♪」

 

 

 

 

しかし、今この瞬間。

 

 

教師であることや生徒の前ということを忘れ、ただ目の前の料理と酒を楽しむ『男子』の姿がそこにはあった。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

(うへ~♪ガシラにメバル♪ベラにカワハギ♪おじさん幸せだ~~~♡)

 

 

 

 

ホシノはモモイが作った、様々な煮つけを楽しんでいた。

 

 

 

 

(変な臭みは全くない・・・塩ふりして水取りした後、お湯をかけて丁寧に臭み抜きしてたからだね♪いい腕してる!)

 

 

 

 

最初はカサゴ、次にカワハギと次々に箸が伸びる。

 

 

でも、この料理には・・・・

 

 

 

 

 

(お米!お米が美味しい!!身に沁み込んだ醤油とみりんの濃い味で、永遠にご飯が進むよ~!!)

 

 

 

 

料亭や旅館で出てくるような薄味の出汁を利かせた煮つけではなく、甘辛くなるまで煮詰めた家庭で出てくるような煮つけ。

 

 

米との相性は抜群である。

 

 

 

 

 

(・・・・・・誰も見てないよね?)

 

 

 

 

皆、目の前の料理に夢中でこちらを気にしている様子はない。

 

気になっている先生も、料理とお酒をエンドレスで楽しんでいる。

 

 

 

 

(あっ、先生。アジの骨せんべい食べてる。・・・美味しすぎてちょっと固まってるし(笑)なんか可愛い♪)

 

 

 

 

 

とにかく、こちらを気にしている人物はそれほどいない。

 

 

唯一、モモイだけがニコニコとしながら、皆を見ているが・・・・。

 

 

 

 

(スプーンをつけてくれてるあたり、モモイちゃんは分かってるね。ちょっとお行儀が悪いけど・・・・。)

 

 

 

 

とろみがつくまで煮詰められた煮つけのタレ。

 

 

それをご飯に少しかけて、豪快にかきこむ!

 

 

 

 

“ハグハグ” 

 

「ううううぅぅぅんんん~♪」

 

 

 

(これだよ~♪魚の旨みが溶け込んだ甘辛いタレ!これだけでもご飯3杯は行けちゃうね!!)

 

 

 

小さな体に反して、豪快な食事を続けるホシノの姿がそこにはあった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

(ん、悔しいけど美味しい。)

 

 

クロコが大量に釣ったグレ。

 

 

これはホシノの手により、見事な刺身になっていた。

 

 

 

 

“モニュモニュ”

 

(かなり歯ごたえがある。醤油とわさびをつけてるけど、お魚の甘みもちゃんと感じるし)「ひょっとしてグレって、お魚の中でもかなり美味しい?」

 

 

「うん!刺身としてならかなり美味しいお魚だよ!実はチヌやタイなんかよりも高級なお魚!」

 

 

 

思わず声に出していた疑問に、モモイが答えてくれる。

 

 

 

「ん、グレは時々釣れるけど、あんまり大きいのは上がらないから持って帰らなかった。これからは釣れた時に持って帰ることにする。」

 

 

「お刺身は美味しいけど、木っ端グレは捌くのが面倒くさいんだよね。今回はホシノさんがやってくれたけど、面倒なら鱗と内蔵だけ取って煮つけにしても美味しいよ!」

 

 

 

 

そう言われて、ホシノ先輩が向こうで美味しそうに食べている煮つけをみる。

 

 

 

 

(めっちゃ美味しそうな食べ方してる・・・・後でまねしよ。)

 

 

 

 

「お刺身は一旦冷蔵庫で冷やしてから食べると、より美味しく食べれるよ!キヴォトス人は大丈夫かもだけど、捌く前に冷凍しておくと寄生虫対策もできる!ま、今回みたいにクーラーボックスに入れとくだけでも十分だけど♪」

 

 

「ん、流石モモイ。詳しい」

 

 

 

 

今度釣ってきたときにやってみようと思いながら、刺身にわさびをのせて、付け合わせている玉ねぎスライスと一緒に醤油につけて口へ運ぶ。

 

 

 

 

“パクッ”

 

「??・・・!!!!!んんんんん!!!!!モモイ!からい!この玉ねぎからい!!」

 

 

「・・・あ、うちではお刺身の臭み消しに玉ねぎのスライスをそのまま添え物にしてるんだけど・・・辛かった?ごめん!お茶とってくる!!」

 

 

 

 

 

サラダにするときなどにする、「水にさらしての辛みとり」を、刺身に付け合わせる時は行わないのがモモイ流だったのだが、どうやらシロコには辛かったようだ。

 

 

 

 

((((・・・・玉ねぎ・・・・犬だ。))))

 

 

 

それを見た他メンバーの考えが一致したのは、当人には内緒である。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

“ズズズ”

 

「ハァ、おいしい。」

 

 

クロコは、モモイが作ったお味噌汁に舌鼓をうっていた。

 

 

 

 

(ん、白菜にお味噌といい味をだしてるけど・・・なによりお魚の出汁がいい。・・・というかバリって食べられるものなんだ。)

 

 

実はクロコ、前の世界で釣りをした時に『バリ』を釣ったことがある。

 

 

そして針から外す際に間違ってトゲが刺さってしまい、一日中その手がしびれていた経験があったのだ。

 

 

 

 

(・・・その時から釣ってしまった時は逃がすようにしてたんだけど。小骨が無くて汁物に入れても食べやすいね。今度から持って帰ろう。)

 

 

 

土鍋で炊いたご飯と海鮮の出汁が効いた味噌汁。

 

 

 

クロコはしばらく、この2つを交互に食べていた。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

(もういいよね?チヌの塩焼き、久しぶりだなあ。)

 

 

 

 

 

ミドリは、網の上で焼かれた大きなチヌの身を箸でほぐしていた。

 

 

 

(これだけ大きいとお刺身でも美味しいけど、グレには劣るんだよね。それに正直、チヌはこうして網で塩焼きにするのが一番好き。)

 

 

 

姉のモモイが作る魚料理のレシピはいくつかある。

 

 

 

チヌの料理もお刺身、アクアパッツァ、煮ものと、何種類か作ってもらったことがあるのだが、ミドリはこの網で焼いた塩焼きが一番のお気に入りだった。

 

 

 

 

(お姉ちゃん曰く、チヌにはちょっとした臭みがあるから、塩での水抜きと余分なあぶらが落ちる網焼きが合ってるんだよって言ってたな。確かに臭みが気になったことは無いかも。)

 

 

 

 

そういえば。かつて作ってくれたアクアパッツァなどは、少し臭みがあったななどと思い出しつつ、ほぐした身を小皿にもってくる。

 

 

 

 

(最初はそのまま、ふってあるお塩だけで・・・“パクッ”・・・うん、ほっくほくだ!)

 

 

 

皮の部分に近いからか、しっかりと塩味が効いている。

 

 

余分なあぶらこそ網に落ちているが、身には旨みの詰まった上質な油分がぶくぶくと熱せられて食欲をそそる。

 

 

 

 

(次はほぐした身に、ちょこっとだけお醤油を垂らして。少し混ぜてからご飯の上にのせて!)

 

 

“ハグっ!”

 

 

「“ハフハフ”美味しい!やっぱり土鍋で炊いたご飯は美味しい!!」

 

 

 

 

お姉ちゃんに指示されながらとはいえ、自画自賛ものである。

 

 

ホクホクのお米と、ホクホクのお魚、ちょうどよい塩味と少量の醤油味。

 

 

これ程素晴らしい組み合わせは、他にないんじゃないだろうか・・・・。

 

 

そして、ミドリにはこの料理の一番おいしいと思う箇所があって・・・。

 

 

 

 

(・・・尻尾、貰っちゃおう。)

 

 

 

中央の骨を折って、チヌの尾を取り外す。

 

 

自分の小皿に取り分けたその尾を箸で持ち、周りをキョロキョロと確認してから・・・。

 

 

 

“シャク”・・・“サクサク”

 

 

(おいっっっし!!ちょっと濃い目に塩漬けされた尾っぽ!正直ここが一番好き!!)

 

 

 

 

焼き魚を作るとき、モモイはエラや尾っぽが焦げないように、多めに塩を振っている。

 

 

ミドリは、他より味の濃いこの部分を特に好いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「ごちそうさまでした!」」」」」

 

 

「はーい!お粗末様!!」

 

 

 

かなりの量があったお魚たちだが、結局すべて6人のお腹の中へと消えていった。

 

 

 

 

「いや~、美味しかったよモモイちゃん。いい腕してるねぇ~。」

 

 

「私も、骨せんべいって初めて食べたけど、めちゃくちゃ美味しかった。」

 

 

 

 

ホシノさんと先生が褒めてくれる。

 

 

特に先生は、大量にあったアジの揚げ物が気に入ったらしく、塩を振って酒の宛てとして骨せんべい共に一番食べていた。

 

 

 

 

「いやいや、ホシノさんの腕がいいからだよ。アジの3枚卸をあんなに早く、それもあんな綺麗に仕上げられるなんて思わなかった!!めっちゃ揚げやすかったし!!」

 

 

 

 

本心からの言葉である。

 

 

アジの骨せんべいは確かに美味しく、私も大好きなのだが、何せ捌くのが面倒なのだ。

 

 

 

それをあの早さでこなせるのだから、たいしたものである。

 

 

 

 

「ん、2人共すごかった。というかホシノ先輩がお魚を捌けると知れたのは大きい。今度から釣りに行ったらホシノ先輩に捌いてもらう。」

 

 

「ん、流石私。私もまたチヌが釣れたらアビドスにもっていく。」

 

 

「うへ~、あんまり持ってこられても、おじさん困っちゃうな~(;^ω^)」

 

 

 

 

こうして、モモイ達の長期休暇は過ぎていくこととなった。

 

 

揉め事も無事解決して万々歳である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、思われたのだが・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

「ずるいです!モモイとミドリだけ!!アリスもお魚食べたかったです!!」

 

 

「ずるい!!先輩たちだけ海に行ってたなんて!私なんかバイト漬けだったのに!!」

 

 

 

 

ミレニアムのゲーム開発部とアビドスの対策委員会にて、似たようなやり取りが同時期に行われていた。

 

 

 

 

「いやいや、アリスはユズと新作ゲームでこもってたじゃん。今回のゲーム、結構あたりだったんでしょ?」

 

 

「うへ~、セリカちゃんも誘いたかったけど、アルバイトが忙しいって休み前から言われてたから~。」

 

 

 

 

「「それはそれ、これはこれです!(よ!)」」

 

 

 

友人と後輩、ミレニアムとアビドス、相手や場所は違えど、モモイとホシノ共にタジタジ状態なのは同じである。

 

 

 

 

「これはまた、モモイにはお魚料理を作ってもらう必要があります!」

 

 

「えっ、私もミドリも海でたくさん食べたからもうしばらく魚料理はいらないんだけど!」

 

 

「あっ、お姉ちゃんの魚料理なら、私は食べたい。」

 

 

「ミドリ?!」

 

 

 

嬉しいが、嬉しいのだが・・・・そう何度も魚を捌くのは面倒なのだ。

 

 

 

 

「ん、また私が釣ってくるから、ホシノ先輩に頼めばいい。美味しいお刺身を作ってくれる。」

 

 

「シロコちゃんまで?!そう何度もやるのはおじさん勘弁してほしいんだけど~!」

 

 

 

どうやら騒がしい日常は、ミレニアム・アビドス共に続くようである。

 




15000文字超え(-_-;)
久々なこともあり、長くなってしまいました。
読みにくかったらもうしわけない。
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