百鬼夜行編の更新があった日に、俺の中のシュロが「ナグサちゃ~ん、ナグサちゃ~ん!!」と泣いたかと思ったら、周年の為に貯めてた青輝石がなくなっていた。
な… 何を言っているのかわからねーと思うが、 おれも何をされたのかわからなかった。
何か恐ろしいものの片鱗を味わったぜ。
「先生~~~!頼まれたもの持ってきたよ~~!!」
D.U.の外郭地区にあるシャーレビル。
その1室であるシャーレオフィスに、我らが才羽モモイは、大きな荷物をもって出向いていた。
それは、彼女が本日の当番・・・・・というわけではなく、数日前にモモトークでこのオフィスの主である『先生』から、ある頼まれごとをしていたからだ。
「ありがとうモモイ。重かったでしょう?」
「いやいや、先生の頼みとあらばこれくらいね!・・・・・でも、一体どうしたの?私がハマってたことのあるものとかあれば、持ってきてほしいなんて?」
そう、数日前のモモトークで先生に頼まれていたのは、『モモイ自身がこれまで夢中になっていたものや面白そうなものがあれば、持ってきてほしい』という、なんだか珍しいお願いをされたのだった。
「うん、今日の当番の娘の為なんだけど・・・・・・・かなりの量持ってきたね(;^ω^)」
「まあね!これでもモモイさんは多趣味なのです!!」
胸をはり、ドヤ顔を決めるモモイだが・・・・・。
「・・・・・それにしては、何とも男の子心をくすぐるチョイスばかりという(汗)」
「うるさいよ、お互いに似たような趣味してるのは先生も知ってるでしょ!」
モモイが持ってきた箱の中には、ベイブレードにミニ四駆、ビーダマンとおよそ女の子がハマっていたものとは思えないようなチョイスが入っていた。
「流石にモモイが持ってきただけあって、携帯ゲーム機もあるね・・・デジモンにテトリス・・・うわっなっつ!!ヨーカイザーとかいつぶりに見るだろう!!」
「流石に先生も詳しいですなあ!もちろん妖怪図鑑も全埋めだよぉ!!」
(・・・・チョイスが私の世代よりも上なのは、何でだろう??モモイって15歳だよね???)
・・・作者の都合である、スルーして欲しい。最近の子供の流行りなんかわからんて(汗)
「ほらほら~♪この辺のロボットなんかは、先生の好みなんじゃな~い?」
「ゆ、勇者特急マイトガインのグレートマイトガイン・パーフェクトモードフィギュア?!?!勇者シリーズな時点で涙出そうなくらい懐かしいんだけど!!」
「たまごっちは、男子も女子も持ってたなあ・・・。みんな学校まで持ってきてた。」
「あはは、私めんどくさがりだから、すぐうんちまみれにしてたなあ(-_-;)」
「・・・・女の子がうんちとか言うんじゃありません。・・・まあ、わかるけど。」
「!!!!バトルドーム!!!!」
「!!!!超☆エキサイティング!!!!」
「!!ドンジャラもやったなあ!!アニメのキャラクターの顔をそろえるんだよね!」
「リーチ!一発!ドラドラ!満貫!!!」
「・・・・それはガチの麻雀では??」
「・・・あ、やばっ。」
「ちょっとモモイ?!やってないよね?!?!」
「・・・ヨーヨー?・・・いや、ハイパーヨーヨーか!!!」
「私のファイヤーボールが火を噴くぜ~!!」
「モモイ何までやれた?」
「・・・・・・・ウォークザドック。」
「犬の散歩じゃん!!」
箱の中から次々出てくる懐かしいおもちゃに、先生もテンションが上がっていく。
しかし、次に手に取ったものは、その用途が一切わからず。
先生の頭に疑問符が浮かんだ。
「モモイ?この箱?サイコロ?は一体何?なんか頭のマークとか足のマークが書いてるけど???」
これまで出てきたおもちゃたちは、先生が学生の頃によく遊んだものばかりだった。
何故今学生であるモモイが、当時のおもちゃを持っているのかは疑問だが、次にでてくるのも、自身の知っている懐かしいものだと思っていたのだが・・・・・。
「あ・・・・・んふふふ♪先生も多分知ってるやつだよ♪」
「?????」
モモイの返答にますます謎が深まる。
ルービックキューブ?サイコロ?
そのどれでもなさそうだし、こんな箱に心当たりはない。
「ま、私はこんなでもミレニアムの生徒で、ウタハ先輩たちエンジニア部とは仲がよいわけだ・・・・。」
モモイは得意そうに言うと、箱の中からゲームのコントローラーを取り出した。
「??64のコントローラー??」
「こっちのコントローラーが先生のね!と、必要なのはこれだよ!!」
そう言って取り出したのは、2つの砲台がついた何か。
コントローラーを受け取って持ってみると、片方の砲台部分が動いた。
どうやら、コントローラーのスティックと連動しているらしい。
「この砲台にさっきの箱を入れて・・・・先生は青い方ね!」
「えっ?結局なんなのこれ??」
砲台の中で先ほどの箱がカラカラと回りだす。
「対戦スタート!!」
「えええ??」
モモイの宣言と共に“ポンッ”という音をたてて、2台の砲台から先ほどの箱が発射される。
“コロコロコロ”と転がった箱は、先生のものが背中のマーク、モモイのものが足のマークを上にして止まった。
「あっ、足かあ。運がないなあ。」
「モモイ。これは一体?・・・・いや、なんかデジャブが・・・・・!!!!」
何かに気づきそうだったが、転がった箱の変化に驚きの声をあげる。
何の変哲もない箱だったはずが、頭のマークからは頭が、足のマークからは足が、手のマークからは腕が生えてきて、箱がロボットに変形したのだ!!
「ほら先生!!スティックまわして、ロボットを起して!対戦開始だよ!!」
「!!!モモイ!!これって!!これってぇぇぇえ!!!」
ここまでくれば、流石に気付いた。
当時、男子の間で大流行したテレビゲーム。
「カスタムロボの実体版ってこと?!?!?!最高すぎるよ!!!」
「ウタハ先輩さまさまだよね!!遊ぼう遊ぼう!!」
ここに、シャーレ対抗バトルレボリューションが開幕したのだった。
“コツコツコツ”
シャーレビルの廊下に、靴音が響く。
今日は前々から楽しみにしていた、シャーレ当番の日だ。
前日にした先生とのモモトークでは、何やら自分のために用意してくれたものがあるらしく、トリニティの寮を出た時からその足取りは軽かった。
「着いたらまずは、先生に挨拶して書類の整理からっすかね~。できる限り早めに終わらせて、先生が用意してくれたモノってのを見してもらうっす♪」
思わず独り言をささやいてしまうが、それだけ先生とのひと時を楽しみにしていたのだ。
自身の本性を受け入れてくれる男性、一緒に夢中になれるものを探してくれる大人。
これで意識するなという方が無理な話だろう。
(おっと、そうこうする間にオフィスっすね。きっと先生は、もう業務を始めてるでしょう。)
扉の前で立ち止まり、前髪を整えて一息つく。
制服にしわがないか?羽にほつれはないか?などをサッと確認して、ドアノブに手をかける。
「じゃじゃーん!イチカ、登場っす!先生!今日も一日、頑張っていくっす「だああああああ!負けたあああああ!!」よ~??」
そして予想外の言葉に、呆然と立ち尽くすのであった。
「・・・・で、モモイさんが持ってきたカスタムロボ?ってのに夢中になってたんすか・・・・・何やってんすか先生。」
「「いや本当に申し訳なく(-_-;)」」
イチカが正気に戻ってからしばらくたち、シャーレのオフィスには、床に正座させられ説教を受ける2人の姿があった。
「というか、いくら30センチくらいの小さなロボットとはいえ、オフィスで対戦なんかさせたら、滅茶苦茶になりますよ。書類をだめにしたらどうするんすか。」
「いやあの、ついつい私の少年魂が暴走してしまいまして(;^ω^)」
「ロボットを操縦するのは、子供の夢なんだよ!ロマンなんだよ!」
「・・・それで片付けに2時間かかったんすけど?私に言うことはそれだけっすか?」
「「なんでもありません、大変反省しております!」」
薄っすらと開いた瞳に睨まれて、頭をひれ伏せる2人。
表情は穏やかなままだが、見開かれた目がマジで笑っていない。
「ふ~、まあいいっす。私のために持ってきてもらったモノみたいっすし、これ以上は責めないっすよ。」
なんとか許されたようだ(;^_^A
「そういえば、モモイさんとは初対面っすよね?トリニティー総合学園、正義実現委員会所属の仲正イチカっす!」
「ミレニアムサイエンススクール、ゲーム開発部の才羽モモイだよ!モモイでいいよ!」
「じゃあ、モモイちゃんっすね!」
初対面の印象は強烈ではあったが、それはそれとして改めて自己紹介をする2人。
トリニティーの正義実現委員会は、キヴォトスでも自治組織として有名であり、モモイ自身聞いたことがあった。
そして・・・・・。
「ああ、そういえばモモイちゃんってあの『禁止リスト※10話参照』の才羽モモイっすか?正実にもセミナーから連絡きてたっすよ。」
「ここでもか!いい加減忘れて欲しいかな!!」
モモイ自身も悪評ではあるが、キヴォトスの有名人としてしられていた。
「・・・・つまり、イチカさんは夢中になれるものを探していて先生に手伝ってもらっていると。で、その一環として先生は私に今回の頼みごとをしたわけだ・・・・・・・・・私じゃ不適格なのでは(汗)」
「そんなことないっすよ・・・・・・と言いたいとこっすけど、持ってきてもらったモノのチョイス的にそうかもっすね。」
「なんか、私が嬉しいチョイスになっちゃってたね。ちゃんとトリニティーの生徒向けって言っとけばよかった(汗)」
モモイは一通りの話を聞いて、改めて思う。
そもそもモモイ自身、てっきり先生が必要としていると思っており、先生が喜びそうなものを選んでいたのだ・・・・・・・まあ、モモイ自身が好きなものというのも確かなのだが。
「にしても、夢中になれる趣味かあ。参考になるかわからないけど、私や友達たちの趣味でよければ聞く?」
「そうっすね、ちょっと色々やり尽くした感じがあるので、良ければ聞かせて欲しいっす。」
「ミドリやユズの趣味か、そういえばゲーム以外だと私も知らないなあ。」
そう言うと、モモイは自身の周りの人間を思い浮かべる。
「まずは、ミドリ・・・えっと、私の妹なんだけど、あの子は写真が好きで小さなカメラを持ち歩いてる。携帯でいいんじゃって聞いたこともあるけど、気軽にパシャリと撮れるのがいいんだって。」
「カメラっすか、結構いいかもっすね。」
カメラと言っても、ミドリが持っているのは本格的なものではない。
手のひらに収まるような小さなサイズのものであり、夕日がきれいだとか、道端の花が綺麗だとかで、咄嗟に撮る用だそうだ。
「まあ、ゲーム開発でミドリはイラストレーターしてるから、背景やキャラ作りの資料用ってのもあるみたい。お店の休憩スペースとか、屋台の後ろ側とか、変な虫とか、ネットで調べても出てこないような写真も結構撮ってる。」
「趣味兼作業用なんだね。」
ミドリはこんな所だろうか?
結構インドア派なため、カメラは妹の数少ないアウトドア的な趣味だったりする。
「次はユズ、うちの部長なんだけど・・・・・・実は匂袋の収集が趣味なんだよね。」
「トリニティー生でも、アロマなんかは流行ってたりするんっすけど、匂袋は珍しいっすね?」
流石はお嬢様学校、おしゃれな流行りものがある。
最もユズの場合、アロマやお香は無理な理由があり。
「ユズの場合、ロッカーに入ってやるから、一酸化炭素中毒に気を付けないといけないんだよね。」
「???ロッカー???いじめられてるんっすか????」
「いや、それも趣味・・・・う~ん、習性??」
「????????」
まあ、そういう反応になるだろう。
人見知りが過ぎてロッカーに自分で籠る生徒なんか、私もユズ以外見たことがない・・・・・・・・・・・・先生が他にも心当たりありそうな反応をしているのは、気のせいだろう。(ゴミ箱に入ってる子も知ってるんだよなあ。)こいつ、直接脳内に!
なお、ユズのこの趣味は、私がかつて『花岡ユズのロッカー臭』なるものを物販したことが原因であることは内緒である。
「アリスって子はお散歩が好きで、毎日日記をつけてるよ。」
「日記っすか?真面目な子なんすね。」
「名付けて『勇者アリスの冒険の書』。ユウカに会うたびに『にげる』コマンドが選択されてたのには、笑ったよね。」
「冒険の書??というかモモイちゃん、ナチュラルに人の日記読んでないっすか?」
「ナンノコトダカワカリマセンネ。」
「・・・・この子やっぱり、問題児っすね。」
やっぱりってなんだやっぱりって。
「後、知り合いのトリニティー生だと、グッツ集めとかかな?私たちゲーム開発部が作ってるシミュレーションゲームのキャラクターグッツとか、好きな人がいるよ。」
「ゲーム開発部のシミュレーション・・・・『ブルナド』っすか?」
「イチカも知ってるんだそれ(;^_^A」
『ブルナド※9話参照』は、先生の声を主人公として採用したことにより、キヴォトスでもかなりの知名度を持つこととなった、うちのゲームである。
イチカさんが知っていても、おかしくはないだろう。
でも、私が言っているとあるトリニティー生に人気のグッツがでているゲームは別であり。
「いや・・・・『乙女はペロロに恋してる2』って言うゲームなんだけど、ナギサさんがその主人公キャラのグッツをすごい数購入してるんだよね。」
「・・・・・・・今、ナギサ様の名前が出ませんでした??」
まあ、ナギサさんはトリニティーの代表であるティーパーティーの1人だ。
当然イチカさんも知っているだろう。
「ミカさんは『おとペロ2』から出てくるもう一人の主人公『コハくん』グッツを集めてて、食費を削って推し活してるって言ってたし。」
「ミカ様??コハくんって、コハル??ティーパーティー大丈夫なんすか?!?!」
「ミカに関しちゃ、今度お説教かな?」
最も、彼女たちの趣味については御存じなかったようだ、スポンサーのお2人、すまない(笑)
「知り合いの趣味だと、大体こんな感じかなあ。」
「グラフィティーやトレーニングはともかく、趣味が先生の声を盗聴ってのはどうなんすか(-_-;)」
「コタマをはじめとして、私にプライベートは無いからね!」
先生のやけくそ染みた言葉に涙を誘う。
一緒に遊んだ時に聞いているが、先生に対してストーカー染みたことをしている生徒はコタマ先輩だけではないらしい。
「わ、私のことはいいじゃないか!それで、肝心のモモイの趣味はどうなの?持ってきてくれたのは前にハマってたモノでしょ?」
「ああ、そういえばモモイちゃんの今の趣味を聞いてなかったっすね。やっぱ、ゲームが趣味になるんすか?」
私のことに話題が移り・・・・そこでふと考え込む。
確かにゲームは好きだし、趣味ともいえるだろう。
でも、それ以外と言われると、少々答えに詰まる。
「確かにゲームは好きだけど、趣味かというと・・・・う~ん、イタズラ?」
「・・・ユウカに怒られるよ。モモイは料理が上手だけど、その辺どうなの?」
「えっ、モモイちゃんお料理するんすか?」
イチカさんが驚いた様子でこちらを見るが、その反応はもう馴れ・・・・・いや、今日が初対面だった・・・流石に失礼では???
「料理は好きだけど・・・・私のはずぼら飯だからなあ。趣味にするなら、もっとこだわれるみたいな・・・・・・あ!!」
料理は違うと言いかけたが、そういえば料理に関しても、趣味と呼べるものがあったのを思い出す。
「『外食した料理の再現』と『食べた料理のずぼら飯化』は、私の趣味といえるかも!!」
「「食べた料理のずぼら飯化???」」
キョトンとした表情をしている2人を連れて、シャーレに備え付けのキッチンスペースへと移動する。
お昼も近いことだし、私の趣味をあじあわせてやろうじゃないか!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「最近はミレニアム外の知り合いも増えてね?色んなお店に行く機会があるの。・・・で、気に入った料理を自分で再現したりアレンジするのに挑戦してるんだよね!」
キッチンの片隅には、保温状態の炊飯器が置いてある。
今日のお昼は、何か適当に作って先生と食べようと思っていたので、あらかじめ4合ほど炊いていたのだ。
「よし、今日はキヴォトスの寒い所(東北地方)に行った時に食べた『きりたんぽ鍋』をずぼら飯にしていくよ!!」
「ずぼら飯っすか?」
「モモイのずぼら飯は名前に反して美味しいから、イチカも期待してていいよ。私はテーブル片付けてくるね!」
先生がでていき、イチカさんと2人で調理をはじめていく。
せっかくなので、私の趣味を一緒に体験してもらおう。
「イチカさんはきりたんぽって知ってる?」
「えっと、聞いたことはあるっす。たしかご飯をつぶして棒状にしたものをお鍋にいれるんっすよね?」
たんぽとは、すりつぶしたご飯を杉の棒(自宅で作るときは割りばし)に先端から包むように巻き付けて焼いたたんぽ餅のことだ。
それを棒から外して食べやすく切る、たんぽを切るので、きりたんぽと呼ばれている。
これを鶏(比内地鶏)のがらで取っただし汁に入れて、煮込んだ料理がきりたんぽ鍋となるわけなのだが・・・・・。
「普通に作るとめんどくさいんだよね、きりたんぽって。そもそも、炊いたご飯をすり潰す時点で洗い物がたいへんになる。」
「あ~、自炊でめんどくさいのって、洗い物っすからね~。」
誤解のないように説明するが、きりたんぽ自体はその労力に見合った素晴らしい食材である。
焼きを入れて水気を飛ばすことで炊いた後のお米でも長持ちするし、作った後冷凍庫で保存しておけば、いつでも使えるかさましおかずやおやつにもなる。
「とはいえ、割りばしに巻き付けるというのは、思った以上に手間だし、フライパンで焼くのに細長いたんぽは結構やりにくい。多分、囲炉裏を使ってた頃の名残何だろうね。」
「囲炉裏の砂の所に刺して焼いてたってことっすか。」
・・・・・・ではどうするか?
ここからが私の趣味。
郷土料理のずぼら飯化だ。
「サランラップを広げてその上に少な目のご飯、おにぎりを作る時みたいに包んだ後、この状態でスリコギでつぶすの!」
「・・・なるほど、余分な洗い物がでないようにっすか。」
「ラップが破れないようにだけ注意ね!」
ちなみに、この時のご飯の量はピンボールより小さくとる。
まあ、これは私の好みなのだが、きりたんぽの形を自分好みにするためなので、ここからの手順は作る人によりけりとなるだろう。
「で、ある程度米粒が潰れたら、私はちょっと平べったくつぶして楕円形にする!」
「??割り箸に巻き付けないんすか?」
「正直、囲炉裏で焼かないんならその工程自体が要らないと思うんだよ。フライパンで焼くなら、こういったおかき型の方が焼きやすいしね!」
私は食べる時、香ばしさと歯ごたえを求めるからそこそこ平らにしているが、本家のきりたんぽの方が好きな人は、もっと俵型にするとよいだろう。
「これだけじゃ何だから、普通のおにぎりもにぎろっか!冷蔵庫に梅干しがあるよ!」
「了解っす!こっちは私がやるっすね!」
たんぽならぬ、小判たんぽを作った私は、おにぎりをイチカさんに任せて汁物の用意へと移る。
「お湯を沸かして、今日も便利な顆粒出汁♪食材はスーパーでお安い鶏肉と、シメジに水菜を用意したよ!」
・・・・・うん、読者皆様の言いたいことは分かっている。
普通きりたんぽ鍋の具材は、長ネギ・まいたけ・ごぼう・せりである。
だが、これはあくまでずぼら飯!
「ごぼうも嫌いじゃないけど、調理が面倒なんだよ!お野菜高いし!近所のドラックストアで水菜が束100円なんだよ!マイタケじゃなくてシメジなのは?私がシメジ好きだから!!あと、白ネギが高い!!」
というわけだ。
「・・・さて、お湯が沸いたら鶏ガラ・・・は無いから創味シャンタンを入れて、鶏肉を入れる。そしたらお酒・みりん・醤油の順で入れて、ひと煮立ちして味見をする。」
この料理の味は、ここでほぼ決まる。
鶏の旨みをどれだけ生かせるかが鍵なのだ。
「んで、作ったたんぽモドキとシメジ、切った水菜を入れて完成!水菜には火を通し過ぎないように注意!!」
完成したこれを大き目のお椀に入れて、テーブルへと運んでいく。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「おまたせ~!これが私の趣味!モモイのずぼら飯『小判たんぽの汁物とおにぎりのセット』だよ!」
木製のお椀によそったたんぽ汁を、先生とイチカさんの前に置いていく。
ホカホカと湯気だつ汁物の隣には、イチカさんがにぎってくれた三角おにぎり2つと、たくあん2きれがのせられた小皿が並ぶ。
「・・・・“ゴク”いただきます。」
「私も、いただくっす!」
「めしあがれ~♪」
立ち上がる湯気の匂いに誘われるまま、3人は料理に箸をのばすのだった。
(なるほど、きりたんぽ鍋を汁物として椀にしたんすか。)
きりたんぽ『鍋』を作ると聞いていたので、お椀で出てきたのに少し驚いたが、これがモモイのいうところのずぼら飯化なのだろうか?
とはいえ、木製のお椀はその落ち着いた色合いから、田舎の郷土料理にマッチしている。
(お醤油ベースの出し汁なんすね。結構いい匂いしてるっす♪)
話しには聞いたことがあるものの、初めて食べる料理。
好奇心が刺激され、つい色々と探ってしまう。
(さて、肝心のお味の方は。。。)
“ずずっ”
軽く息を吹きかけて冷ました後、椀を傾けて少量の出汁を口にはこ・・・・
「!!!!!!!!!」
“ゴクン!!”
・・・・少量の出し汁を口に含む・・・つもりだった。
ワインのテイスティングのように、口内で転がして味わう・・・・つもりだった。
・・・・だが!
(鶏!圧倒的な鶏!!醤油・みりん・お酒を組み合わせた美味しさも確かにあるっすが・・・・最初に感じるのは圧倒的な鶏の旨みの暴力!!味を見るつもりが、一気に飲み込んでしまったっす!!)
郷土料理というイメージ
田舎料理というイメージ
なんとなく予想していた優しい味という勝手なイメージ
それらを完膚無きまでに、強烈な鶏肉の旨みによって吹き飛ばされた!!
「・・・・モモイちゃん・・・これ、お椀で出していい料理じゃないっすよ。」
「あ~~、まあ、言いたいことは分かる。すごいよね?これ。余計なおかず作らなかった理由わかったでしょ?」
わかった。
いやというほどわからされた。
(定食の汁物としては出せないっすね。圧倒的なメイン料理っす。)
そして、なぜこの鍋にきりたんぽが入っているのかも・・・・。
(・・・そうっすよね。コメっすもんね!餅みたいに潰してても・・・・醤油ベースの鶏と油に合わないわけないっすよね!!どんぶりものの味付けじゃないっすか!!)
濃厚な旨味の出汁を吸った小判型のたんぽ。
白米の上に親子丼のたれをかけたかのような、犯罪的な旨味と香りがイチカに襲い掛かる。
(なのに、平らに焼かれたたんぽが香ばしさと歯ごたえまで醸し出す?犯罪っすよ!!捕まえるっすよ!!)
鶏肉にかぶりつけば更なる鶏の油が口内をかけ巡り、たんぽをほおばれば出汁の旨みが、シメジはクニクニと楽しい食感を醸し出している。
(んで!何気に水菜のシャキシャキ感と青臭さがベストマッチしてんすよ!!何が「お野菜が高い」だの「ゴボウが面倒」っすか!!めっちゃ考えられた食材でしょう!!)
ここまでくると、ずぼら飯とは何なのかという話しである。
「どう?結構おいしいで「モモイちゃん・・・」???「お嫁に来てくださいっす。」?!?!?!?!?!」
気付けば、何やらすごいことを言った気もしたが・・・・今は引き続き、この食事を楽しむことにした。
“ハフハフ”“ズズズ!”
(おいし!!握り飯とたんぽ汁。いくらでも食べれる!!)
塩っ気のきいたおにぎりにかぶりつき、たんぽ汁を啜る。
すると、鶏油の旨みからまたおにぎりが欲しくなる。
そして、塩→醤油→塩と来たときに
(梅干しが顔を出してくれるんだよな~(≧▽≦)♪)
梅干しの酸っぱさが、更に食欲を刺激してくれるのだ。
箸休めとして、厚めに切られたたくあんがあるのも、地味にうれしい。
「モモイ!きりたんぽとおにぎりで、どっちもお米なのは気になったんだけど、めっちゃ合うね!」
「///////////えっ?あ、うん。鶏出汁とお米の相性が抜群だからね。」
「???なんか顔が赤いよ???」
「・・・・・なんでもないよ。」
ちょっと様子がおかしく見えたが、まあモモイのことだし大丈夫だろう。
「「ごちそうさまでした(っす)!」」
「は~い、お粗末様~♪」
最後に出してくれた冷たい麦茶を飲み切って、各々の食器を回収する。
洗い物も少ないので簡単に片づけを終えると、改めてテーブルに戻った。
「どうだった?お料理の場合は、ちょっとしたこだわり、今回なら郷土料理の再現だね、こういった工夫できる部分を取り入れることで、いい趣味になると思うんだけど。」
もしくは、カレーのスパイスや創作料理など、ちょっとしたこだわりが可能な料理は趣味の一つに成り得るだろう。
「・・・確かに、ちょっとしたお菓子作りなんかはやったことがあるっすが、長続きしなかったっす。」
「こだわれる部分がある方が、夢中になりやすいかもね。」
何なら、コーヒーや紅茶といった飲み物でもよいのだ。
いろんなことを試せたり、組み合わせたりできるものの方が、自身のこだわりを出せるというものである。
(・・・・・そうか、組み合わせかぁ。)
そこまで考えて、ふと思いつく。
「そもそもさ、趣味探し・夢中になれるもの探し自体が、立派な趣味になりそうだけどね。」
「???趣味探しが・・・趣味っすか???」
・・・まあ、言葉だけ聞くとそういう反応になるだろう。
でも、よく考えてほしい。
「これまでイチカさんは、色んな趣味に挑戦してきたんだよね?先生に勧められて、ギターとかも弾けるらしいじゃん。」
「まあそうなんすけど、長続きしないんっすよね(汗)「広く浅くでもいいんだよ。」??どういうことっすか?」
イチカさんが、いろんなことに挑戦しているってのが大事なのだ。
それを続けてさえ行けば・・・。
「例えば、さっきのギター。ちょっとでも弾けるようになったのなら、それだけで『演奏する』『人に教える』『知ってる曲を音にしてみる』みたいな、いくつかの趣味ができるよね?」
私なら、ゲームやアニメのBGMを手探りで演奏するとか楽しそうである。
これはつまり・・・・。
「で、他に『歌を歌う』とかの趣味を経験していれば『組み合わせ』をすることで『弾き語り』なんて趣味も生えてくる。」
私が作った料理もそうだ。
旅・外食・料理。
これ等を組み合わせてできたのが、今回の料理である。
「広く浅くでも、次々と趣味をこなしていったら、それらの組み合わせも無限に増えていく。やってた趣味の関連から次の趣味も見つかるだろうし、それって十分『こだわれる』ことじゃない?」
「・・・・・・・・。」
私は趣味が多いほど良いと思っている。
何か一つに夢中になることも、もちろんいいのだろうが。
私の“イタズラ”も、楽しいことを次々とやっていきたいというのが根底なのだ。
「コレをずっと続けていけばさ!その内すっごいものができそうじゃん!!」
人によっては、それが生涯のお仕事にまで発展するのではないだろうか。
「そもそも、この『才羽モモイのずぼら飯』自体が、“おっさんの自炊”と“自己満小説”と“食欲”の組み合わせてできたシロモノ「途中まではいいこと言ってたのに、メタい内容になってきたからそこいらで辞めようか(-_-;)」ありゃりゃ???」
先生に止められてしまった(汗)
「あははは・・・・・でもまあ、私がやってる趣味探しも、立派な趣味って事っすかね。」
・・・・・・それでも、イチカさんのどこか嬉しそうな表情を見ると。
私も役に立てたのかなと思える。
イチカさんの趣味探しはまだまだ続くだろうが・・・・今回はめでたしめでたしで良いのではないだろうか。
(いや!全然めでたくな~~~~~い!!)
「あなたが才羽モモイって人ですね!イチカ先輩とはどういった関係なんですか!!」
「手作りの料理をふるまったって本当ですか!」
「先輩はわたしません!」
「禁止リストの人ですよね!逮捕ですよ逮捕!」
「エッチなのはダメ!死刑!」
数日後、私こと才羽モモイはトリニティの正義実現委員会メンバーに囲まれていた。
どうも、何者かによってイチカさんの『お嫁に来て欲しい』という発言が、外部に漏れたようだ。
(いや、十中八九コタマ先輩でしょ?!いや、先生が言ってた別のストーカーか?)
いずれにしても、シャーレオフィスでのプライベートというのは、確かに存在しないことが立証された。
「って言ってる場合じゃなかった!私は関係ないんだってば~~!!」
「「「「「まて~~~~~!!!」」」」」
結局その日1日、正実の子たちに追い掛け回された。
最終的にはイチカさんとハスミという人が来て抑えてくれたのだが、怒った時のユウカよりしつこかったとだけ報告しておこう。