できる限り返していくので、これからもよろしくお願いします!
「えいえい!ガードをくずして・・・トドメです!」
「あ、あっ、まって、ぎにああああ!!」
ゲーム開発部の一角では、アリスとモモイがゲームで遊んでいる。
今日は、部長のユズとミドリの姿がないが、代わりにいつもと違う人物が来客していた。
“いやふたりとも、今日は次回作の方向性を決めるんじゃないの?”
“エンジニア部に機材を借りに行ったユズやミドリが怒るよ?”
「「はっ!そうだった!(でした!)ゲームの参考にしようと始めたらつい!!」」
そう声をかけたのは、この学園都市キヴォトスで唯一の人型の大人。
連邦捜査部シャーレの『先生』である。
“シナリオの内容はともかく、ゲームの大体の方向性は決めとかないと、作業が先に進まないって、ミドリが言ってたよ?”
「うう、いや、料理を主題に狩猟や採取でアイテムを集めていくっていうのまでは思いついてるんだよ?でもそこからが進まなくって・・・。」
「でもモモイ、格闘ゲーム要素を取り込んでマンモスやエゾシカに殴る蹴るの格闘狩猟をけしかけるのは、無茶な気がします!」
一週間ほど前、前回のミレニアムプライスで特別賞を受賞したテイルズ・サガ・クロニクル2に続く次の作品として、モモイは料理をテーマにしたゲームを思いついた。
しかし、肝心のゲームシナリオはおろか、どういった種類、方向性のゲームを作るかといった案が全く思いつかず、他の部員たちやユウカにせっつかれたモモイは、シャーレの先生に助けを求めたのである。
とはいえ・・・・。
“私にゲーム制作のことを聞かれても、思いつかないんだけどね♪”
「そんなぁぁぁぁぁ!!」
「モモイ!勇者と魔王が世界征服をかけて料理対決をするのはどうでしょう!?美味しい料理を作ったら、世界の半分がもらえます!!」
「それ、勇者が籠絡されてんじゃん!!」
数々の問題や事件を解決してきた先生だが、ゲーム開発となると戦力外。
ましてや料理というジャンルでは、普段から外食かコンビニで済ましている自分では、なおのこと力になれそうにない。
“(フウカやルミに声をかけてみる?ハルナ達美食研究会には・・・やめといた方がいいか(汗))”
料理ゲームということで料理が上手、もしくは食事にこだわっている生徒たちを思い浮かべる。
“(けど、ゲームの料理となると、なんか違うだろうし・・・、やばいぞ、全く役に立てる気がしない・・・。)”
頼りになる大人として、何かしらの手助けをしたいところだが、あいにく先生にも良い案が浮かばない様だった。
「そもそもですけど、狩猟や採集にリソースを割きすぎても、ゲームの趣旨があやふやになっちゃいますよ?狩猟が中心なら、モンスハンターみたいなゲームです。」
「う~ん、それはまずい。あくまで料理をメインにしたいし・・・けど、料理ゲーって一体なんだろう?包丁で切ったり鍋で煮たりをカーソル操作でやるの?難しくない?」
何処か、外の世界で聞いたようなゲームの話をしているが、中々意見はまとまらない。
午前中からはじめたこのやり取りも、午後に食い込み、そろそろ午後1時を迎えるところだった。
“まずは、メインになる料理パートをどういった形式にするかから”ぐぅぅぅぅぅ“・・・考えたらいいと思うけど、・・ごめん。”
料理の話ばかりしていたからだろうか。
時間も時間なため、ついお腹の虫が反応をしてしまった。
「・・・まあ、こんな話題してちゃね。まずはどこかに腹ごしらえでもいこっか?」
「アリスもお腹すきました!!そしてモモイ!心配はいらないです!!ユウカから借りてきた炊飯器で、美味しいお米を炊いてます!!」
モモイと先生が外に向かおうと立ち上がると、アリスが予想外の発言をした。
「・・・・アリス、今なんて?炊飯器?ユウカから?というか、ご飯炊いてるの?」
“え?料理するの?アリスもついに自炊できるようになったんだ?”
予想外の事態に戸惑うふたりだが、モモイはなんとなく、次にアリスが言い出す言葉が分かる気がした。
「違います!!アリスはまた、モモイの料理が食べたいです!!」
無邪気な笑顔でそういったアリスに、モモイはやっぱりかという顔をし、先生は宇宙猫状態でフリーズするのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
“え?モモイが作るの?それは・・・何というか・・・大丈夫?”
「・・・うん、その反応、いい加減なれたよ。」
「モモイの料理はおいしいですよ!!」
ユズが調子を崩して雑炊を作った日から、アリスはモモイに対して何度か手料理をねだるようになっていた。
普段から自身の料理をずぼら飯と自称するだけあって、高頻度で料理をするのは少々面倒だったが、簡単な料理でも美味しそうに食べてくれるアリスを見ると悪い気はしない。
それに伴い、狭いキッチンスペースには、いくつかの調味料が増えていた。
「でもアリス、冷蔵庫になんかおかずになりそうなものあったっけ?この間、卵は買って来たけど、それくらいしかなかったような?」
「・・・あ、失敗しました。野菜が少しありましたが、魚や肉類みたいなメイン食材はありませんでした。」
“ぽかーん( ゚д゚)”
そういえばここ数日、ロクに買い物をしていなかったことを思い出し、アリスは目に見えて落ち込んでいる。
(とはいえ、ご飯を炊いてるなら、炊き立てを食べたいし。)
残っている食材を思い出しながら、キッチンスペースに入っていくモモイ。
湯気を吹いている炊飯器に視線をやりつつ、続いて冷蔵庫をのぞき込む。
(残っている野菜は、キャベツが4分の1玉に玉ねぎが1玉。・・・あ、味噌がまだある。みそ汁つけたら形になるかな?)
「・・・モモイ、なにか作れそうですか?」
“ぽかーん( ゚д゚)”
不安そうに顔を覗き込んでくるアリスに、いまだ再起動しない先生。
そんなふたりに振り向くと、モモイはにこりと笑いかける。
「うん!大丈夫だよ!美味しいご飯作ったげる!!」
「・・・・・よかった。楽しみです♪」
モモイの反応に、アリスは安心したような笑みを浮かべた。
「・・・・・・・それと先生はいつまで宇宙猫してるの!!」
“・・・・・・・ハッ!!”
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
キッチンスペースに立つモモイに、そちらが気になる二人。
テーブルを片付けながら、方や楽しそうに、もう片方は不安そうに作業を進める。
「モモイ~!アリスも何か手伝いましょうか~!?」
「大丈夫だよ~!今回はすぐ完成するから、先生とテーブル拭いてて~!」
“モモイ!私も何か手伝うよ!!消火器とか準備しようか!?”
「先生の顔面も拭いて、黙らしてて~!そっちはぞうきんでいいよ~!」
「わかりました!!」
“いやまって!じょうだワップ!!”
余計なことを言った先生をアリスが黙らせたのを確認して、モモイはキッチンに向かった。
(まずは、お味噌汁の準備。お水を張った鍋に顆粒出汁を入れて火にかけておく。)
鍋でお湯を沸かしている間に、手早くメイン料理の準備に入る。
(次に食材の準備、卵がいっぱいあるから、3人分に九個、ボウルに割っておく。)
台所の角を使ってヒビをいれ、片手で次々卵を割る。
(子供の頃、平らな面でヒビを入れるって教わったけど、片手で割るのには角を使った方がわりやすいんだよね。)
卵を割る逆の手で菜箸を用意し、卵の入ったボウルをかき混ぜる。
(次に野菜だ、キャベツと玉ねぎは千切りに、キャベツの半分は、更にざく切りにする。)
『トントン』と野菜を切る音が、リズムよくキッチンから聞こえてくる。
不安交じりだった先生の表情も、意外なものを見たといったものに変わっていた。
(切った野菜は溶き卵の中に、追加でかき混ぜてなじませておく。)
玉ねぎの半分と千切りキャベツを少し残して、切った野菜をボウルに加えてかき混ぜる。
そして調理台から、ある調理器具を取り出した。
(今回使うのは、卵焼き用フライパン!なぜかユウカが部費で落としてくれたんだよね。)
冗談半分で部費申請した調理器具だが、なぜか会計のユウカが申請可で通してくれた。
(サラダ油を引いて、ボウルの中身を3分の1流し込む。)
キャベツや玉ねぎでボリュームを増した溶き卵が、フライパンの中に流し込まれる。
モモイは菜箸を上手に使い、縦長のフライパンの隅まで卵をいきわたらせた。
(こっちは卵が固まるまで放置、残した玉ねぎをみそ汁の方に入れる。そしてここで・・・)
モモイは冷蔵庫の中から、味噌とある缶を取り出し、缶の中身を小さじほど鍋に入れた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
“ねえアリス、モモイって料理できるの?”
テーブルと食器の用意を済ませて席に座っていた先生が、隣に座るアリスに語り掛ける。
料理前にしていたやり取りから、アリスはモモイの料理を食べたことがあるというのは予想できる。
しかし、普段のモモイを知る身としては、モモイが料理上手というイメージが沸かない。
「モモイの料理はとってもおいしいです!わたしは大好きですよ!!」
花が咲いたような満面の笑みに、思わずこちらも笑みがこぼれる。
素直なアリスがここまで言うのなら、モモイの料理は本当に美味しいのかもしれない。
「ふたりとも~おまたせ~!!」
キッチンからモモイが顔を出すと、その手にはお皿が2枚のせられていた。
「モモイのずぼら飯、野菜卵焼きだよ!!ご飯とお味噌汁も配ってくね~!!」
テーブルに置かれた平皿には、卵焼き機の長方形型になった、少し焦げている平らな卵焼きが千切りキャベツと一緒に載せられていた。
「よし、お味噌汁とお茶碗に小鉢もいきわたったね!それじゃあ早速たべよう!!」
ホカホカのご飯に、玉ねぎの味噌汁が美味しそうに湯気立つ。
“(ふふっ、ちょっと焦げてるし、卵巻くのがめんどくさかったのかな?平べったい形してる(笑))”
美味しそうではある料理だが、所々で感じる手抜き感や失敗箇所から、モモイらしさを感じて、心の中で笑みを浮かべる。
決してバカにしているわけでも無ければ、まずそうでもないものの、いつものモモイ通りの料理が出てきてホッとしたのだ。
しかし、気になるのはメインとなる卵焼きであり、このカラの小鉢である。
「卵焼きは、ソースを使ってね!小鉢に入れて、つける感じで!」
そうしてモモイが渡してきたのは、ウスターソースだった。
“えっとモモイ、申し訳ないんだけどお醤油ってないかな?私、卵焼きや目玉焼きは醤油で食べる派で・・・。”
「あっ!先生も目玉焼きには醬油派なんだ!私も半熟の目玉焼きをご飯にのっけて醬油たらして食べるの好き!」
「え~!!目玉焼きもソースの方が美味しくないですか!」
“うん、この話題を掘り下げるのは辞めようか。下手すると、きのこたけのこ並みに戦争になる。”
少し空気が変わったのを機敏に感じ取り、早い段階で話を切り上げる。
以前、美食研究会のハルナ達とこの話をした時に、風紀委員を巻き込んでの大騒動に発展したのを思い出したのだ。
「・・・まあ、そこは好みだけど、この料理に限ってはソースを試してほしいかな。騙されたとおもってさ!!」
笑顔で、しかし何かをたくらむようにも見える顔で、モモイはソースを渡してくる。
そこまで言うのならと、先生も小鉢に少量のソースを注いだ。
“それじゃあいただくね”
「いただきますモモイ!」
「はい、召し上がれ!」
味噌汁の具を少し食べて箸を濡らし、卵焼きを切り分けて“ちょんちょん”とソースにつける。
良く焼かれた卵焼きの香ばしさに、ソースの匂いがプラスされて食欲をそそる。
“パクッ、もぐも・・・・・・・ぐ。
一口目を口に運び咀嚼する途中、先生の動きが固まった。
「どうですか先生?モモイの料理はおいしいですか?“とぽとぽ”・・・ん?先生?」
ソースを注ぎながら料理の感想を聞くアリスだが、反応を返さない先生に視線をやる。
“・・・・・・・アリス。そのソースもう一回もらっていい?”
「?いいですよ?」
アリスが使い終わったのを確認してから、再びソースを受け取ると、今度は小鉢に勢いよく注ぎ始めた。
“とぽとぽとぽ”
“コト”
“じゃぶじゃぶ”
多めに注がれたソースの小鉢に、卵焼きをくぐらせる。
一口目よりだいぶ多くついたそれを・・・
“ガブリ!もぐもぐ”
勢いよくかぶりついた。
“(うっっっっっまっ!!!)”
少し焦げるまで焼かれた卵焼きは、ソースの濃い味とよく馴染み、食欲を刺激する。
具材の玉ねぎによる甘さが舌の上でとろけ、まだ瑞々しさがあるキャベツがシャキシャキとした歯ごたえと共に、ソースの濃さをスッキリとした後味にしていた。
そして、この絶妙な味の組み合わせは・・・。
“(ごはん!・・・ご飯が欲しい!!)”
“がばぁ!ハフハフ!”
お茶碗を持ち上げて、ご飯をほおばる。
炊き立てアツアツのご飯が、ソースで濃くなった口にベストマッチして舌が喜ぶ。
「!!美味しいです!モモイ!!ご飯にこんなに合うなんて!!」
アリスが歓声をあげる。
そう、アリスの言う通り、この組み合わせは凶悪だ。
卵焼き→ご飯→卵焼き→ご飯の無限ループが誕生する。
“「モモイ!おかわりちょうだい(下さい)!!」”
卵焼きを半分ほど食べた所で、お茶碗のご飯が空になり、二人ともお代わりをたのんだ。
“・・・はあ、本当にうまい。ソースにやばいくらい合う。”
思わず素でつぶやいてしまうほど、モモイの料理はおいしかった。
“(これ、平らなのも焦がしてるのもわざとか。普通のふっくらとした卵焼きじゃあ、ここまでソースには合わない。)”
モモイが炊飯器でお代わりを用意してくれている間に一息つく。
ソースの味を流す目的も兼ねて、味噌汁に手を伸ばした。
“(『卵焼き』って言われたけど、どっちかといえば『お好み焼き』の生地が卵オンリーになった感じだ。そりゃあソースが合うはずだよ。)・・・・・・・・え?うま!”
卵焼きの持つ美味しさの理由に考えを巡らせていると、何気なく口にした味噌汁の美味さに不意打ちをくらった。
“え?味噌汁うまっ!玉ねぎしか入ってないのに?”
「そうなんです!モモイの作るお味噌汁ってすっごく美味しいんですよ!ほんと驚きです!」
後ろから聞こえてくる声に、モモイは思わず笑みがこぼれた。
(本当にいいリアクションをしてくれるよ。いろいろ調味料を揃えたかいがある。)
アリスに料理をねだられるようになってから、以前は塩と醤油くらいしかなかった調味料をだいぶ増やした。
味噌汁に入れたのは、増えた調味料の1つ。
(『創味シャンタン』、お湯に溶かすだけでも、美味しい中華スープができるんだけど、味噌汁に入れるとコクや旨味を驚くほどアップしてくれる。)
野菜具材だけでコクや旨味を出そうとすると、めんどくさい過程や工夫がいる。
なので、今回みたいな魚肉系食材がない場合、どこか味に物足りなさを感じるのだ。
(創味シャンタンや鶏ガラなんかは、そんな時にすっごく役立つんだよね!買っててよかった!)
2人分のお代わりをもって、キャイキャイと騒ぐテーブルに向かうモモイの顔には、自然と優しい笑みが浮かんでいた。
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“ほんとに、本当においしかった。モモイがここまで料理上手だなんて思わなかったよ!”
「ですよね!本当、モモイの料理は最高です!!」
昼食の後、一息つくタイミングで、モモイは2人に料理の腕をべた褒めされていた。
「そ、そうかな?私の料理って自分好みに整えただけの適当なものなんだけど。」
“いや、本当にいい腕だよ!!ご飯をすすめる手が止まらなかったもの!”
特に、ご飯に合う濃い味付けは、男性である先生にはテキメンだったようだ。
先ほどの味を思い出しては舌鼓をうつその様子から、本当に美味しかったのだとわかる。
「まあ、冷蔵庫の中の限られた食材で、適当に作るのは得意だからね、逆に凝った料理とかは苦手なんだけど(笑)」
“それがすごいんじゃないか!”
あまりのべた褒めに恥ずかしくなり、凝った料理は出来ないと謙遜すると、それが逆にすごいとかぶせてほめてくる。
“残り物の処理や、買い物がめんどくさい時とかにササっと作れるのは、ほんと一人暮らしとかに役だ・・・・・・!”
続けて褒めようかという段階で、何かに気づいたように黙り込む先生。
“それ、ゲームに使えるかも。”
「えっ?」
「先生?どういうことですか?」
行き詰っていたゲームの進捗、ネックだったのはメインとなる調理パートの趣旨。
“限られた食材からできる料理を見つけていく、作る作業をするんじゃなくて作れる料理を増やしていくゲーム!舞台はお店とかにしてさ!メニューを増やしてお客さんにどれだけ評価されるかを採点するの!”
「・・・いけるかも、採点の高さによって食材をランダムで増やしていく。」
「お店同士のオリジナルメニューで大会とかも面白そうですね!!ユズやミドリがかえってきたら、早速伝えてみましょう!」
シャーレが受けたゲーム開発依頼、今回も上手くこなすことができそうだ。
6000文字をオーバーしてしまった。
読みにくかったら申し訳ない。