才羽モモイのずぼら飯   作:イッセ

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誤字修正ありがとうございました。


お茶漬け

 

 

「あづ~い~、暑くて干からびそう~、木陰を歩いてるのにあついよ~。」

 

 

まるで、アビドスに生息するくじらおじさんのようなセリフを言っているのは、我らがモモイである。

 

 

「ここ最近の気温はおかしいよ~。37度とか、体温より高いじゃん!!」

 

 

ここ数日、ミレニアムでは30度後半を超える猛暑日が続いていた。

 

最近の夏が年々暑くなっているのは実感しているが、キヴォトスでも比較的過ごしやすいはずのミレニアムでこれである。

 

これが噂に聞くアビドス砂漠では何度になっていることか・・・・、想像したくもない。

 

 

「早く部室に帰って、クーラーで涼もう。」

 

 

シナリオ作成の気分転換にでも、と出てきたものの、ここまで暑いとそれどころではない。

 

部室にはユズがいるはずだし、クーラーが効いているだろうと、急いで歩を進めていると。

 

 

「おや、たしかゲーム開発部のモモイさんではないですか。ちょうどいい所に。」

 

 

変わった車いすにのった少女に声をかけられた。

 

 

「あ、えっと、確かヒマリさん「そう!ミレニアムで全知の学位を持つ、超天才清楚系病弱美少女ハッカーこと明星ヒマリです!」あ、はい、そうですか。」

 

 

清楚というにはあまりにも濃いキャラをしている先輩だが、ハッカー集団「ヴェリタス」の元部長で、現特異現象捜査部の部長をしている本物の天才でもある。

 

 

「ヒマリさんがひとりで出歩いてるなんて、珍しいですね?それで、ちょうどいいって、私に何か用事ですか?」

 

 

何やら嫌な予感を覚えつつも、アリスの件ではお世話になった先輩である。

 

無視するわけにもいかないだろう。

 

 

「ええ、そうなんですよ!!実は『環境バイオ研究部』からの依頼で、農作物の管理AIを作ったのですが、報酬を運ぶのに一苦労でして。ちょっと手伝っていただきたいのです。」

 

 

『環境バイオ研究部』とは、主に農作物の品種改良や農作業の効率化を研究している部活である。

 

毎年開催されるエロ野菜品評会や巨大かぼちゃ比較会は、結構な人気があるそうだ。

 

役に立つ研究題材をしているのだから、もっとまともな発表をしろと言いたい。

 

 

「・・・報酬ですか?一体なにをもらって・・・・!!これって!」

 

「はい、現物支給と言われて段ボールいっぱいの夏野菜をいただきまして。」

 

 

車いすで隠れていたが、ヒマリの後ろには1.3メートル四方の巨大段ボールが置かれており、その中には、ナスにキュウリ、トマトといった野菜たちがいっぱいに詰められていた。

 

 

「すごい、どれも瑞々しいし、多分とれたて?ちょっと変な形のもあるけど、普通に売られてるのよりずっと大きい。」

 

「新しい肥料を散布する水に混ぜたらしいですよ?日々の天気や気温に合わせて水やりをするために、それ専用のAIを作って欲しいと言われまして、出来上がった野菜がこれだそうです。」

 

 

肥料と言われると土に混ぜるイメージだが、散布する水に混ぜるというのは初めて聞くやり方だ。

 

しかし、この出来の良さを見るに、実験は大成功したのだろう。

 

 

「・・・・でも、こういう力仕事するのに、エイミを連れてこなかったんですか?大体、ヒマリさんのサポートについてきますよね?」

 

「今日もいますよ?ただ、あっちを見て貰えばわかるように、今日の暑さじゃ役に立たなくて。」

 

「・・・・あっち?」

 

 

そう言ってヒマリの指さす方に目をやると、ピンクのヘイローを浮かべた、顔のある、1.5mほどのスライムが鎮座していた。

 

「?!?!?!えいみ????えっ!あれエイミ?!?!?!溶けてない?!」

 

「まあ、今日は暑いですしね。愛用の超冷却扇風機も壊れて、修理中なんですよ。」

 

 

あまりの衝撃的な出来事に、無理に使っていた敬語もはずれてしまう。

 

 

「暑さが理由なの?!エンジニア部あたりの実験失敗で、ホイミスライムならぬエイミスライムになったとかじゃなくて?!?!?!」

 

「あ、エイミスライムって可愛いですね♪」

 

「なんで、そんな冷静なの!先輩は?!?!」

 

 

もはや人型の原型を保っていないエイミに近寄ると、意識があるか確認する。

 

ヘイローが浮かんでいるので意識はあるのだろうが、とてもではないが無事には見えない。

 

 

「エイミ!大丈夫なのそれ?!意識ある?!」

 

「・・・・・セヤナー。」

 

「キャラ崩壊してるじゃない!!ブルアカと別作品だよ!!」

 

 

のほほんと見守るヒマリを無視して、スライム状のエイミを抱え上げると、特異現象捜査部へと運び冷蔵庫にぶち込む。

 

その後、もう一度ヒマリの元へ戻り、野菜の段ボールを抱えて、再び特異現象捜査部へと運び入れた。

 

 

 

なお、野菜を冷蔵庫に入れる際には、エイミは普段の状態に戻っていた。

 

本当に同じキヴォトス人か疑問を持つ。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「いやはや、モモイさんがいてくれて助かりましたよ。私一人では、荷物もエイミも動かせませんでした。」

 

“ピッ、ピッ”

 

「いや、流石にあんな状態じゃほっとけないよ。」

 

 

大きな荷物に加えて、あんな状態のエイミまでとなると、足の悪いヒマリ1人ではどうしようもなかっただろう。

 

ツッコミどころ満載だったが、流石に放置しておけなかった。

 

 

“ピッピッ”

 

「さてと、なにかお礼をしなければいけませんね。ちょうどいい時間帯ですし、先ほどの野菜を使って何かごちそうしましょうか。」

 

「えっ!いいんですか!!すっごく美味しそうだったし、期待しちゃいますよ!!」

 

“ピッピッ”

 

「ええ、ご飯もありますし冷蔵庫に食材もあったはずです。エイミに何か作ってもらいま“ピッピッ”・・・・・」

 

 

「「・・・・・・・・エイミ!冷房の温度下げ過ぎ(です)!!!寒い(ですよ)!!!」」

 

「ええ~、まだまだ暑いよ~。こんな暑い中、料理なんて地獄だよ。」

 

 

エイミからエアコンのコントローラーを取り上げる、すると設定温度を10度にしていた。

 

 

「って、10度?なんでそんな温度設定にできるの?!「エンジニア部につくってもらった~。」ま・た・あの人らか!!」

 

 

このミレニアムで、変わった機械を見かけると、その作成者はだいたいあの人たちなきがする。

 

 

「とにかく、設定温度もっと上げるよ!」

 

「や~め~て~よ~!暑くてとけちゃうでしょ!「とけるか!!!・・・・溶けてたわ?!」全く、ああそうだ、お昼かき氷でいい?」

 

「いやですよ、せっかく美味しそうなお野菜をこの天才びしょ「はいはい、清楚清楚。」・・・むう、とにかくちゃんと作って下さい。」

 

「暑くてむ~り~。」

 

 

冷房を操作し、ヒマリやモモイにとって少し肌寒く感じる程度の気温に設定するも、エイミにとってはまだまだ暑いらしい。

 

こんな暑さで料理などしたくないと、床に突っ伏している。

 

 

「・・・ああもう!しょうがないなあ!ヒマリさん!キッチン借りて「かまいません!モモイさんの料理楽しみにしてますね!!」・・えええ??」

 

 

いつものごとく意外そうな反応をされるかと思ったのだが、まるでこちらが料理するというのを待ってたかのような反応を返される。

 

 

「モモイさんの料理ってずっと気になってたんですよね!未知ですよ未知!」

 

「この人、ゲーム開発部をハッキングか盗聴しやがってたな・・・。」

 

 

うちの部員にはアリスがいるし、監視の意味もあるのだろう。

 

あまり気分のいいものでもないが、いい加減モモイもお腹が減っていた。

 

 

「・・・適当なもので、すませますよ?」

 

 

そう呟くと、モモイはキッチンに足を進めていった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「ご飯はある、立派な夏野菜もあるし、他に何か・・・!」

 

 

備え付けの冷蔵庫をのぞき込み、献立を決める。

 

いくら暑い日とはいえ、冷房でこれだけ冷えた室内では、流石に暖かいものを食べたい。

 

対して、エイミは未だに暑がっているので、冷たいものを用意する。

 

 

「これがあるなら、メインは『お茶漬け』にしよっかな!」

 

 

これであれば、私とヒマリさんは暖かいものを、エイミは冷茶で食べれば行けるだろう。

 

 

「じゃ、早速つくりますか!」

 

 

やかんに水をいれて、麦茶の袋を放り込み火にかける。

 

 

「水だしのものも売られてるけど、私麦茶はやかんで沸騰させたのが好きなんだよね。」

 

 

次に、運んできた段ボールの中から、キュウリとナスを取り出し、キュウリはざっくりと大きめに、ナスは棒状に切っていく。

 

 

「切った野菜はボウルに入れて、多めの塩をふっておくよ!」

 

 

少し揉み込み、塩をまんべんなくいきわたらせて、15分ほど放置。

 

その間に、冷蔵庫にあったある魚に多めの塩をふって、グリルで焼く。

 

「麦茶が沸騰したら、火を止めて蒸らしておく。半分はピッチャーに入れて冷やすけど、熱いまま入れるとヒビが入るから注意だね。」

 

 

蒸らし終わったやかんから麦茶の袋を取り出して、やかんごと水にひたす。

 

そうすることで熱をある程度下げて、ピッチャーが割れないようにするのだ。

 

 

「冷やしてる間に、キュウリとナスだね。キュウリは軽く塩を流してから水気をふき取って、ビニール袋の中に入れる。その袋の中に、顆粒出汁・醤油を入れて揉み込んでから冷蔵庫の中に。」

 

 

なんちゃって浅漬けだが、これが意外とうまいのだ。

 

キュウリのコリコリ感を殺さないように短時間の調理ですませる。

 

 

「ナスは手で更に水気をしぼって!ガラスの器に入れて完成!醤油と七味で食べるよ!!」

 

 

切って塩ふって絞るだけだが、これだけでも美味しい漬物になるのだ。

 

私とヒマリさんの麦茶は熱いものを用意するため、やかんに残した麦茶を再加熱しておく。

 

 

「お魚もいい感じに焼けてきたね!小皿にあげておくよ!」

 

 

お茶碗にご飯を盛って、出来上がった焼き魚とナスの塩もみをテーブルにもっていく。

 

 

「エイミ用の麦茶は、この短時間じゃ冷え切らないから、氷を細かくして小鉢に盛って、キュウリももういいや!もってっちゃえ!」

 

 

荒いかき氷のような状態の小鉢と、キュウリの浅漬けモドキもテーブルにもっていく。

 

最後に、ピッチャーに入れた冷たい麦茶と、やかんに入った暖かい麦茶を持って行って。

 

 

「おまたせ!ふたりとも!モモイのずぼら飯、『焼きサバと漬物のお茶漬け』だよ!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「なるほど、お茶漬けですか。暖かくても冷たくても美味しい食べ物、よく考えてますね!」

 

「単なる手抜き料理だよ!お腹空いたし早く食べよ~!」

 

「ううん、冷たい食べ物用意してくれたの、ありがたい。あんまり食欲ないけど、これなら食べる~。」

 

程良く冷ましたご飯に、モモイとヒマリは暖かい麦茶を、エイミは。

 

 

「エイミはこの細かくした氷入れて、ピッチャーの麦茶を入れて!」

 

「おおっ!ほんとありがたいよモモイ!」

 

「そっちも美味しそうですね、冷房の温度がこれ程でなければ、そちらも食べてみたいです。」

 

 

エイミのお茶碗を見ながら、ヒマリがつぶやく。

 

とはいえ、自身の暖かいお茶漬けも大変美味しそうではある。

 

 

「それじゃあ、いただきますね。」

 

 

茶碗を持ち上げ、お茶漬けに口をつける。

 

熱々の麦茶が唇に触れるが、スルスルと口内に流れ込むご飯は、とても食べやすい。

 

 

「さて、それではいただいたキュウリから。」(ポリポリ)

 

 

醤油と出汁を纏ったキュウリを食べる。

 

冷蔵庫で程良く冷やされたそれは、熱いお茶漬けの箸休めとして、とてもあう。

 

 

(おいしいですね。短時間で完成させたからか、ポリポリとした歯ごたえがすばらしい。)

 

 

ほんの数分しか漬けていないのに、塩で水抜きした分、十分に味がしている。

 

 

「ナスも美味しい!醤油が染みて、その上に七味がピリリとして、冷たいお茶漬けにすっごく合う!」

 

 

エイミのお茶漬けは細かくされた氷が浮かんでいる、そのほとんどは麦茶を注いですぐに溶けてしまったが、少量の溶け残りが口の中でシャリシャリとして、爽やかさを増していた。

 

お茶漬けという食べ物は、ただでさえすっきりとして食べやすいものである。

 

故に、塩もみしたナスの醤油を吸った濃い味と七味のピリリとした辛みが合うのだ。

 

 

(そして同じ理屈で、私が意外とお茶漬けに合うと思っているのは。)

 

「しかし、意外と合うのはこのサバの塩焼きです!普通、お茶漬けと言えばシャケの印象があったんですが、サバの油分がここまでお茶漬けに合うとは!」

 

「これ、塩を多めにふってるよね!お茶漬けにちょこんと載せて食べると、すっごく美味しい!」

 

 

冷蔵庫をのぞいた時、サバの切り身を見つけたので、昼食はお茶漬けを作ることに決めた。

 

モモイ自身、シャケは好物であり、シャケおにぎりや白ご飯とシャケの皮の組み合わせは、ベストマッチだと思っている。

 

だが。

 

 

“ズズッ、ズズズッ!”“もぐもぐ”(この塩を多めにまぶしたサバの切り身とお茶漬けの組み合わせは、最高だと思うんだよね~!)

 

 

モモイ的に、これを超えるお茶漬けの友は、キュウリの九ちゃんやカリカリ梅くらいしか思い浮かばない。

 

それほどまでに、好きな組み合わせだったのだ。

 

 

「「ごちそうさまでした。」」

 

「はーい、お粗末様!」

 

 

普段から小食のヒマリと夏バテ気味のエイミであったが、結局ふたりともお代わりをして、2杯のお茶漬けを平らげていた。

 

特にヒマリは、2杯目をエイミと同じ冷たい麦茶で食べており、機嫌よくお腹をさすっている。

 

 

「エイミも暑いのは分かるけど、ご飯はしっかり食べた方がいいよ!特にまだまだある夏野菜は、体を冷やす効果もあるしね!」

 

「トマトやキュウリといった水分量を多く含む野菜類は、確かに体温を下げる効果が期待できます。正直サラダにするくらいしか思い浮かばなかったのですが、即席の漬物にするとは、流石のモモイさんですね。」

 

「いや、お茶漬けとはいえ、ここまで美味しく食べれるとは思わなかったよ。モモイって料理上手なんだね!」

 

 

お茶漬けという簡単な手抜き料理で、ここまで褒められるとは思わなかった。

 

美味しい夏野菜にもありつけたし、涼むこともできて、モモイとしてもよい報酬である。

 

 

「・・・とはいえ、荷物(エイミスライムを含む)を運んでもらった上に、お昼まで作って貰えたとは、何かお返しを別に用意しなければなりませんね。」

 

「ほえ?別にいいよ、私もキュウリやナス美味しかったし。」

 

「いえいえ、そうはいきません。」

 

 

ヒマリは部屋の中を見回すと、モモイに運んでもらった段ボールに目を止める。

 

 

「そうだ!モモイさんの料理がこんなに美味しいなら、いただいた夏野菜を半分差し上げます。元々エイミと2人じゃ食べきれそうにありませんでしたし、ゲーム開発部の皆さんと召し上がってください。」

 

「え、いいの!」

 

 

段ボールを見ると、今回使わなかったトマトに、キュウリもたくさん入っていた。

 

サラダにするもよし、マヨネーズや塩をふって丸かじりするもよし、きっとアリス達も喜ぶだろう。

 

 

「大体、ヒマリ先輩も貰いすぎなんだよ、冷蔵庫に入る分にも限界があるんだから。モモイ!その段ボールに入ってる分は持ってっちゃっていいからね!!」

 

「うわ~!ありがとう!!」

 

 

最初は嫌な予感がしたが、結局おいしい昼食とたくさんの食材が手に入り、ほくほく顔で特異現象捜査部を後にしたモモイだった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「いや、アッツ!んで、おっも!!」

 

そう、特異現象捜査部の部室は、エイミの暑がりによってクーラーをガンガンに利かせていた。

 

その為すっかり忘れていたが、外は猛暑の真っ只中であり、時間帯的にもお昼を過ぎという最悪のタイミングだった。

 

 

「その上、特異現象捜査部からゲーム開発部が遠すぎるよ~!いっぱいお野菜貰ったのは嬉しいけど、その分重いし、涼んだ意味がな~い!!」

 

 

モモイが一息つくには、もう少し時間がかかりそうである。

 




昔やってた永谷園のお茶漬けCMを思い出したら書いてました。

お茶漬けは、暖かいのが好きなんですが、あのCMは冷やしもおいしそうだったなあ。
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