才羽モモイのずぼら飯   作:イッセ

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野菜尽くし ヴェリタスを救え

 

 

「ゲーム開発の予算がないよおおおお!」

 

 

いつものミレニアム、いつものゲーム開発部。

 

そんな部室でいつものように騒いでいるのは、我らが問題児モモイである。

 

 

「いや、誰のせいだと思ってるの。『グルメゲームの取材だ!』って言って、外食しまくったお姉ちゃんの自業自得じゃない。」

 

「そうですよモモイ!確かに連れて行ってもらったシャコのフライやお刺身のお店はおいしかったですが、流石に予算申請が通りません!」

 

「・・・ちゃっかりアリスちゃんも食べてた。・・・・・・・って、シャコ?」

 

 

そんなモモイに対してツッコミを入れるゲーム開発部の面々達。

 

どうやら、新作ゲーム開発の取材として珍しい料理を食べまくったが、会計のユウカに申請を却下されて金欠に陥ったらしい。

 

アリスはちゃっかりと、モモイに同伴していたようだが。

 

 

「・・・まあ、お姉ちゃんを拷問にかけるのは後にして「やめて、ミドリ!」これじゃあ新作ゲームの開発に取り掛かれないよ!何とかしてお金を稼がないと。」

 

「みんなでアルバイトでもしますか?「あの、ミドリを止めて欲しいんだけど」前にもみんなで働いた時、結構楽しかったですし」※コミックゲーム開発部だいぼうけん!より

 

「・・・いや、「お~い」アリスちゃん以外長続きしなかったし、せっかくならゲームに関係ある方がいいと思う。」

 

 

モモイを無視して各々が意見を出すが、有力な案は出てこない。

 

しかし、準備資金の調達面からゲームに関する何かしらを制作することは、満場一致したのだった。

 

 

「うがああああ!!!だったら!わたしに!いい考えがあるから無視しないでよ~~!!」

 

「・・・・・しょうがない、聞きましょう。でも、いい案だったら情状酌量を考えるけど、しょうもない案出したらギルティだよ?」

 

「うう、今回は真面目にしないといけないから、しっかりおねがい~。」

 

「モモイが真面目な案を出せるとは思えません!」

 

「共犯のアリスには言われたくないかな(# ゚Д゚)・・・・・大丈夫、ちゃんとゲーム開発だから、準備予算はおりるはずだし、必ず売れる内容だよ!!」

 

 

自信満々に胸を張るモモイ。

不安な顔をする周りをよそに、一呼吸おいて話し出した。

 

 

「先生を題材にした『エロゲー』を作って、ネット販売するよ!」

 

「「「「!!!!!」」」

 

 

モモイのぶっ飛んだ意見に目を見開くメンバーたち。

 

あまりにもな案に、しばらく呆気に取られていたが、正気に戻った順にモモイにツッコミを入れていく。

 

 

先方、ミドリ!!

 

 

「お姉ちゃん正気?!エッチな、それも先生を題材にするなんて・・・問題になるよ!」

 

「大丈夫!ちょっと大げさに言ったけど、何もがっつり18禁を作るわけじゃない!少し匂わせだけする15禁くらいのなら許されるよ!それに、先生とのイチャイチャゲーム。あればミドリも買うでしょう?」

 

「うぐっ!!」

 

 

ミドリ、撃沈!!!

 

 

 

次鋒、ユズ!

 

 

「でっ、でも!そそそんな勝手な事して先生に怒られないかな?」

 

「あくまで年上の男性教師で作るの!シャーレの先生って明言する必要ないよ!・・・それに、あのノリのいい先生だよ?15禁くらいの作品ならokしてくれるはず!」

 

「ううう、でっでも「このキヴォトスで、これ以上の需要があるゲームなんて思いつく?」・・・・・・・・・・つ、つかない。」

 

 

ユズ、撃沈!

 

 

 

大将、アリス!

 

 

「モモイ!ハーメルンに投稿してる『才羽モモイのずぼら飯』はR18じゃなくて一般の二次創作に「メタすぎる意見を出すなあああああ!!問答無用で却下だよ却下!!」うえ?エラー選択でしたか?」

 

 

アリス!作者権限により失格!!

 

 

 

「と、言うことで!先生を題材にした、ちょっとエッチなゲームでガッポガッポ稼ぐよ!みんなも意見をだして!!」

 

 

ほとんど勢いではあるがモモイの姿勢に押されて、3人は半ば無理やりに納得させられた。

 

引っかかる部分はあるものの、渋々と各自の意見を出していく。

 

 

「・・・うう、仕方ありません。それならアリスは・・・・」

 

 

最初はアリスの案から発表するようだ。

 

 

「すべての生徒は俺のものといった鬼畜な先生が、奴隷の勇者アリスとハーレムを作っていく、Sンスシリーズがいいです!物語を進めていくと、囚われたアリスを助けるためにお姫様と結婚して王様になったりもします!その時のタイトルは鬼畜王Sンスで!!」

 

「おおう、めっちゃ素早く案出してきた。」

 

 

訂正しよう。

 

最初こそ渋々という様子だったが、途中からノリノリである。

 

 

「・・・・・じゃ、じゃあ私は。」

 

 

次はユズが案を出すようだ。

 

流石に考える内容が内容だけに、いつも以上に恥ずかしそうで・・・・

 

 

「舞台は学園もので、心を感じとる能力を持つ先生が、魔女の血を引く自分の意志に関わらず発情してしまう生徒のエッチな所を覗いちゃうところから始まる、ラブコメで!題名は魔女からとって、ブルバウィッチで!!」

 

「・・・・まあ、学園ラブコメ出してくるあたり、ユズらしいのかな?というか、2人共その勢いはなに?」

 

 

ユズらしからぬテンションの高さに、少し引き気味になるモモイ。

 

ほぼノータイムで案を出してくる2人に、気圧されている。

 

 

「はあ、じゃあ次は・・・・私だね。」

 

 

そう言って進み出たのは、ミドリだ。

 

 

なぜか皆、全く悩む様子もなく、案を出してくる。

 

 

「私の案は、・・・・・・・退魔師をしている先生が、蟲型の魔物や触手にそれはもうどエロイことを次々とされていく凌辱もの「ミドリ?!ミドリさん?!」題名は妖怪と蟲からとって青妖蟲で!!」

 

「ミドリ・・・・お姉ちゃん、妹の性癖が心配になってきたんだけど?!?!?!」

 

 

双子の妹から出てきた案に、目を白黒させる。

 

いや、それ以前の話だが・・・・・・・。

 

 

「いや、15禁くらいのイチャイチャだって言ったじゃん!!何がっつり18禁な案を出してるのさ!!」

 

「「「・・・ハッ!」」」

 

 

先のやり取りで、15禁程度の内容に抑えると話したばかりである。

 

最もマシなユズの意見ですら、学生が作るのはアウトだろう。

 

 

「というか!なんでみんな、そんなにスラスラシナリオが浮かぶの?!エロゲ作るの初めてだよね?!」

 

 

「「「・・・・・・いや、なんか、アダルトゲームソフトのブランド会社並みに、頭に浮かんできて(-_-;)」」」

 

「大丈夫なのそれ!!」

 

 

自分で提案した意見だが、モモイは早くも後悔をはじめているのだった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「・・・もういつも通り、シナリオはお姉ちゃんに任すとしてさ。音声はどうするの?無声のノベル形式?それとも、先生に依頼する?」

 

 

全員が一息ついたころ、ミドリがふと訪ねてきた。

 

先生を題材にするのは良いが、ゲーム開発部を始め生徒はみんな女性である。

 

男性の声をどう用意するのかと、疑問を持ったようだ。

 

 

「えっ?先生ボイスで収録するんじゃないのですか?アリスは先生とイチャイチャ体験ができると楽しみにしていたのですが・・・」

 

「・・・いや、流石に先生も手伝ってくれないと思う・・・・私も聞きたいけど。」

 

 

音声がないノベルゲームもあるにはあるが、それでは味気ない。

 

ネット上に転がっている、人工読み上げソフトを使っても良いが、せっかくなら先生の声を使いたい。

 

とはいえ、流石の先生といえど、エッチなゲームの収録は手伝ってくれないだろう。

 

 

「・・・大丈夫だよ!」

 

 

そんな不安顔をしている部員たちに、モモイは自信を持って答える。

 

 

「私にちゃんと、宛てがあるんだ!」

 

 

モモイは、とある部活への協力を考えているのだった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「コタマああせんぱああいいいい!!よくもトキに余計な情報流してくれたなああああ#(※前話参照)。お詫びとして先生の音声素材よこせえええええええ!!」

 

 

ミレニアムの一角で、モモイの怒声が響きわたる。

 

ゲーム開発部でのやり取りの後、モモイが向かった先は、ミレニアムが誇るハッカー集団。ヴェリタスの部室であった。

 

 

モモイが目的の人物は音瀬コタマ。

 

 

ヴェリタスに所属する3年生で、趣味が盗聴という変った生徒であり、先生の盗聴を日課とするヴェリタスきっての問題児である。

 

 

「コタマ先輩?いないの?・・・マキ?・・・ハレ先輩?・・チヒロ先輩?」

 

 

これだけ騒いでいるのに、部室からは物音1つしない。

 

モモイは不安になりながらも、ヴェリタスの部室をのぞき込むと・・・・

 

 

「「「「・・・・・・う、うあ、あ、あ。」」」」

 

 

「うわきゃあああああああああ?!?!?!」

 

 

部屋の中で、4人のゾンビがうごめいていた。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「ビビビビックリした!よく見たらヴェリタスの皆じゃん!なんでそんな状態なのさ?」

 

 

入り口付近で力尽きているコタマに近づき、現状の理由を聞くモモイ。

 

話しかけられたコタマは、ノッソリとした動きながらも、こちらを見て答えた。

 

 

「・・・・・・・・犯人はちーちゃん。」

 

「・・・・・コロスよ、コタマ。」

 

「うん、コタマ先輩たちが悪いのはわかったよ。」

 

「・・・・・なんで~~~~?(´;ω;`)」

 

 

コタマの発言に反応をかえしたのは、机にうつ伏せとなっていた眼鏡の少女。

 

ミレニアム所属のヴェリタス副部長を務める、各務チヒロである。

 

いたずらっ子が多いヴェリタスにおいて、唯一良心的な保護者的立ち位置の生徒である。

 

 

「そんなチヒロ先輩とコタマ先輩だったら、当然、コタマ先輩たち3人が何かやらかしてチヒロ先輩が苦労したんだろうなとわかるよね・・・・。チヒロ先輩、3人がなにしたの???」

 

「・・・・ぐうの音もでない。」

 

「・・・・・モモも問題児のくせに~。」

 

「マキうっさい。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・ハレ先輩は、マジでやばそうなんだけど(;^ω^)」

 

 

同じくダウンしているものの、何とか返事を返してきたのが、ヴェリタス1年の小塗マキ。

 

うつ伏せのまま全く反応がないのが、2年小鈎ハレだ。

 

ハレに至っては、ヘイローが点いているにもかかわらず、ピクリとも動かない。

 

 

「・・・聞いてくれる?モモイ。・・・いや、聞いてモモイ。」

 

「う、うん(汗)」

 

 

まるでホラー映画の悪霊のような動きで、モモイにすり寄るチヒロ。

 

ちょっとした不気味さを感じてしまい、モモイも少し引き気味となる。

 

 

「このバカ3人、テレビに出てきたハッカーの番組が気に入らなくて、テレビ局にハッキング仕掛けて、番組の映像ジャックしやがったの。」

 

「!!おおごとじゃん!!」

 

 

想像以上のやらかしに、思わず身を乗り出す。

 

 

「幸いにも放送はまだされていないタイミングで発覚したから、急ぎ再ハッキングをして、差し替えていた動画を元に戻したの。終わったのがついさっきのこと。」

 

「・・・だってあの番組、ハッカーのことを情報盗んで愉快的な犯行をする犯罪者みたいな番組作るんだもん。」

 

「そーだよ、ちょっと懲らしめようとしただけじゃん。」

 

 

コタマとマキが不満そうに声をあげるが、キッ!っとチヒロがにらみつけると、気まずそうに視線を逸らす。

 

 

「・・・・同情の余地ないけど、一体どんな番組で何やろうとしたのさ?」

 

 

念のため、・・・あくまで念のためにことの詳細を訪ねる。

 

十中八九この問題児3人が悪いと思うのだが、質の悪い番組だった可能性もありえ・・・・・・・

 

 

「ハッカーは、公表されていない情報を勝手にあさっていくから質が悪いとか、情報を盗んだらこれ見よがしに、ウイルスや犯行画面を残していくって。」

 

「ハッキングがとんでもない犯罪行為みたいな説明がされてたんです。だからつい頭にきちゃって。」

 

 

・・・・・・まあ、ハッカーとは、ほとほとその通りの存在ではあるのだが、ホワイトハッカーを自称するヴェリタスにとっては見逃せない内容だったのだろう・・・・

 

 

「だから、番組会社のメインコンピュータにハッキングして、ありったけのウイルスと、『ハッカーバカにすんな!ピーーーー!のピーーーー!が!!』って言う画面が大音量の動画と共に流れるように仕掛けた「アウトーーーー!!!!」・・・えええ?「同情の余地一切なしだよ!!!!」・・・うう」

 

 

酷かった、・・・・分かっていたけど酷かった。

 

そして、疑問点がもう一つ。

 

 

「・・・あと、そんな番組が流れるってなんで知ったのさ?放送される前に解決したってことは、あんたらが番組の内容を知ったのも放送前でしょ「そりゃあ、色んな所をハッキングしてる時にたまたま。」・・・・救いようがないよおおおおおお#####」

 

 

番組の内容、大正解だった。

 

公開前の情報を盗む・ハッキング後にウイルスや犯行画面を残す。

 

どちらも思いっきりやっていた。

 

 

何処かにフォローできる箇所が無いかと思いながら聞いていたが、同情の余地が全くない。

 

 

「番組会社にバレないようにウイルスや犯行画像の除去、消去していた番組動画の復興と、実に3日ほどかかった・・・・・。」

 

 

3日間、それもほぼ無休憩でこなしたのだろう。

 

4人共ゾンビのようになるはずである。

 

 

「・・・うん、3人は同情の余地ないけど、チヒロ先輩は本当にお疲れ様。ゆっくりと休むといいよ。・・・・でも、ここじゃ体に悪いから仮眠室いきな?」

 

「・・・うう、モモイの気遣いが身に沁みる。」

 

「「私たちには~?」」

「・・・・・・・・」

 

「3バカは反省しろ」

 

 

・・・のそり・・・のそりとゆっくりとした動きながらも、隣の仮眠室へと移動していく。

 

ずっと突っ伏していたハレも、むくりと起きだしていた。

 

 

「・・・・そういえば部屋を見た感じだけど、4人共ロクな食事取ってないでしょ?」

 

 

モモイはヴェリタスの部室を見回すと、4人に尋ねる。

 

 

「・・・そういえば、この3日間カロリーメイトとコーヒー位しか、口にしていません。」

 

「・・・コタマ先輩。カロリーメイトはあくまで補助食品なんだよ?」

 

 

食べないよりはましだが、中々ひどい食事である。

 

 

「・・・・私菓子パンしか食べれてない。」

 

「マキ、太るよ?栄養も偏るし、良く3日もったね(-_-;)」

 

菓子パンは美味しいが、カロリー爆弾でもある。

 

実は菓子パン1個でラーメン以上のカロリー持つパンもあるのだ。

 

 

「・・・私はなるべくコンビニ弁当を食べてたけど・・・。」

 

「チヒロ先輩は一番マシだけど、野菜不足かな?コンビニのお弁当って、茶色いのばかりだから。」

 

 

上の2人に比べるとはるかにマシとはいえ、市販のお弁当は野菜が少ない。

 

 

「・・・・エナドリずっと飲んでた。これが無けりゃ乗り切れなかった。」

 

「3日間エナドリオンリー?!死ぬよ!?体に悪いとか太るとかじゃなくて、シンプルに死ぬよ!!」

 

 

ハレの机を改めてみると、大量の空き缶が置いてある。

 

そのすべてが、エナドリの味違いだった。

 

 

・・・・・・・・・ハレに至っては、至急まともな食事をとらせる必要がある。

 

 

(・・・ヤバイ。チヒロ先輩以外、何か作ってあげないとヤバイ!!チヒロ先輩も栄養が偏ってそうだし、野菜がいっぱい取れる料理を用意しないと!!)

 

 

仮眠室へと消えていく4人を見送ると、モモイは食材を買いにスーパーへと走り出すのだった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「さて、とりあえずこんなものかな?」

 

 

キッチンで購入してきた食材を広げる。

 

大根・ニンジン・キャベツ・えのき・しめじ・卵・コーンの缶詰・キュウリ・ちりめんじゃこ

 

今日は野菜尽くしの料理を作っていく予定である。

 

 

「まずは、時間のかかるご飯ものから。」

 

 

食堂から借りてきた10合炊ける炊飯器に、お米を5合分入れる。

 

水をゆっくりと入れていき、途中で手を介すことで、水流が米を傷つけないように注いでゆく。

 

 

「お米を研ぐときは、ゆっくりとかき混ぜるだけ。昔はシャキシャキと研いでたらしいんだけど、最近のお米はかき混ぜるだけで研げるみたい。」

 

 

3~4回水を入れ替えてから、一度ザルに移し、水気をきる。

 

次に鍋を用意すると、お湯を沸かしていく。

 

 

「沸かしたお湯にかつお節を加えて、出し汁を作るよ!作った出し汁は冷蔵庫に入れて冷やしておく、熱が取れたらお米に入れて、30分ほど放置!お米に出し汁を吸わせるよ!」

 

 

30分の浸水後は、炊飯を開始してキノコの炊き込みご飯ができあがる。

 

これで1品。

 

この放置時間を利用して、他の料理の下ごしらえをしていく。

 

 

「キャベツの芯を取り除いて、大体5㎜ほどの幅に切っていく。切ったキャベツはボウルに移して、塩をふって10分ほど放置。水分を出した方が、美味しいんだよね~♪」

 

 

キャベツの処理が終わると、次にコーン缶も開けて、水をきっておく。

 

 

「キャベツの水を絞ったら下処理はここまでなんだけど・・・先にドレッシングも作っちゃうか。」

 

 

お椀にマヨネーズ・レモン汁・オリーブオイルを入れて混ぜていく。

 

 

「分量はその日の気分だけど、マヨネーズに対して少量のオリーブオイル、更に少量のレモン汁って感じかな?酸っぱい目が欲しかったらレモン汁を多めで!」

 

 

モモイが作る料理の分量は、毎回適当だ。

 

故に、その日の気分によっても、配合が変わる。

 

 

「全部混ぜたら、『コールスローサラダ』の完成!これ好きなんだよね~♪」

 

 

一番簡単にできるサラダであるが、モモイはこの完成したコールスローにラップをかけて冷蔵後で冷やす。

 

サラダはちょっと冷たいのが、モモイの好みなのだ。

 

 

「次は、主菜と汁物だけど・・・・これは下ごしらえだけでいいかな?みんなが起きたら完成させれば・・・いや、3日間ロクなモノ食べてないのか・・・・スープだけ先に作ろう・・・。」

 

 

鍋でお湯を沸かしている間に、購入した野菜類の下処理に取り掛かる。

 

大根を手ごろなサイズにしたら包丁で皮をむき、賽の目と短冊切りの半々にする。

 

ニンジンは4分の1ほどイチョウ切りにして、残りの多くは皮だけ向き。

 

 

「ここで登場!!以前にエンジニア部で作ってもらった。『ニンジンのしりしり用スライサー』!!この千切り器より少し大きいサイズのスライサーが欲しかったんだよね!!」

 

 

取り出したのは、以前にエンジニア部で頼んでいたスライサーである。

 

おろし金具の部分は、一見すると刺身などについてくる大根の千切りを作るものに見えるが、穴が少し大きめだ。

 

 

「島国料理(沖縄料理)のニンジンのしりしりを作る用スライサー!中々納得のいくものが見当たらなかったんだけど、ウタハ先輩には感謝だよ~♪」

 

 

シュッシュッ!と、子気味よい音とともに、ニンジンの千切りができていく。

 

サラダなどでよく見るモノより、一回り太めの千切りができあがった。

 

 

ニンジンの千切りと大根の短冊切り、それと大根の切らなかった分は冷蔵庫に戻し、沸騰した鍋にチキンコンソメと残りの野菜を放り込む。

 

 

「ん~、最後に味の調節はするけど・・・・軽く塩だけ入れとこうか。みんなが起きて温めなおした段階で、オリーブオイルと塩、ブラックペッパーで、もう一度調整しよう。」

 

 

ひとまずは、野菜が柔らかくなるまで煮ていく、本来であれば、野菜の歯ごたえは残しておきたい派なのだが、今日の料理は弱ったヴェリタスの為の回復料理だ。

 

胃腸に優しい方が良いだろう。

 

 

「さて・・・・。ご飯が炊けるか皆がおきてくるまで、休んどこっかな?・・・・・・あ、シナリオ考えなきゃいけないんだった(;一_一)」

 

 

使用した道具を片付けて、ひとまずモモイは、キッチンから去っていった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「ふわあああああ、よく寝ましたね。」

 

「ちょっとスッキリしたよ~。」

 

「・・・・糖分が足りない。」

 

「ハレはいい加減にしないと、体壊すよ?コーヒー淹れてあげようか?」

 

 

数時間後、仮眠室からヴェリタスの4人が、のそのそと出てきた。

 

顔色はだいぶ良くなったものの、本調子にはほど遠い様子だ。

 

 

「あ、みんなおきた?ご飯用意したから、テーブルについてくれる。」

 

 

そんな4人に、モモイはひょっこりと顔を出して声をかけた。

 

モモイが料理?という顔を浮かべた4人だが、鼻孔をくすぐるよい匂いに、忘れていた空腹が刺激される。

 

ひとまず、食べれるものであれば問題ないと、モモイのいる部屋へと足を向けると。

 

 

「「「「え?・・・うわぁぁぁ♪」」」」

 

 

テーブルには、色とりどりの野菜料理が並んでいた。

 

ガラス容器に入っているのは、『キャベツとコーンのコールスローサラダ』。

 

隣の小鉢は、『ちりめんじゃことキュウリのおろしポン酢あえ』。

 

平皿には、『大根のお刺身』が盛り付けており、醤油とわさびの小皿がある。

 

ホカホカと湯気を立てているご飯は、『えのきとシメジの炊き込みご飯』。

 

今、モモイが注いでくれているのは、『野菜たっぷりコンソメスープ』。

 

主菜用のお皿に盛られているのは、『ニンジンと卵を使った沖縄版ニンジンのしりしり』。

 

 

「モモイのずぼら飯、『簡単美味しい野菜尽くし定食』だよ♪」

 

 

見事なまでの野菜料理の数々、あまりにも予想外の光景に、4人は唖然と立ちすくんでしまった。

 

 

「ほらっ!そんなとこに突っ立ってないで、席についてよ!せっかく作ったんだから早くたべよ~!」

 

「「「「え、ええ」」」」

 

 

モモイに声をかけられて、いそいそと席へと移動する。

 

眼前の料理に圧倒されつつも、皆が用意されていた箸を手に取った。

 

 

「消化に良い野菜スープと、大根おろしあたりから食べるといいよ!大根のお刺身は、醤油とわさびもいいけど、マヨネーズつけてサラダとして食べてもいいからね!!」

 

「「わ、わかった。」」

 

「「あ、ありがと」」

 

 

注がれたスープが全員に行き渡り、おそるおそる箸をつけていく4人。

 

ハレとマキは『ちりめんじゃことキュウリのおろしポン酢あえ』。

 

チヒロとコタマは『野菜たっぷりコンソメスープ』から箸をつけた。

 

 

「「「「いただきます。」」」」

 

「めしあがれ~♪」

 

“パク”

“ズズ”

 

 

動揺が収まらないまでも、ひとまず食事を始める4人。

 

違う料理を口にしながらも、最初に感じた思いは、4人共が共通したものだった。

 

 

((((やっっっっさし!!すっごく体にしみる~~~~!!!))))

 

 

4人は、3日間の疲れなど忘れ、ただ目の前の食事に全神経を集中させるのだった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

(おいしっ!ポン酢の酸っぱさと大根おろし、キュウリは塩もみしてる。)

 

 

ハレが最初に口にしたのは『ちりめんじゃことキュウリのおろしポン酢あえ』である。

 

大根おろしのさっぱり感とポン酢の酸っぱさが、エナドリのあまったるさを摂取していた口を、スッキリとしてくれた。

 

 

(ちりめんじゃことの相性もいいし、それに・・・)

 

“パリッ”

 

(キュウリの食感もよい。)

 

 

ハレ自身、日々の食事は無頓着な方である。

 

そんなハレだが、コレを食べるたびに、明らかに胃腸の調子が整うような感覚を覚えた。

 

 

(それに、食欲も刺激される!)

 

 

目を輝かせて、次々に箸を伸ばしていくハレの姿が、そこにはあった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

(ご飯ホッカホッカ!出汁がしみてて、薄味のはずなのにすっごいおいしいよ~!!)

 

 

マキは、嬉しそうに炊き込みご飯を味わっていた。

 

 

(えのきもいいけど、シメジの“クニクニ”とした食感もいい!!ほのかな醤油味と相まって最高だよおおお!!)

 

 

もぐもぐと炊き込みご飯を食べるマキだが、コトと左手にあたる、スープのお椀が目に入る。

 

 

「・・・・・・・“ズズ”、“ゴクン”。ふわあああああ。」

 

 

お茶碗をいったんおいて、一口飲んだ野菜スープは、ほのかなコンソメ味の他にも、野菜の甘みがしっかりと感じられた。

 

 

(モモの料理ってすごい!!ご飯とスープでずっとエンドレスできるよおおお!!)

 

 

マキはトリップに近い状態になりながらも、食事を勧める手を止めない。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

“パリッ、パリッ、パリッ”

 

“ポリポリポリポリ”

 

(この食感と音、最高過ぎませんか!!)

 

 

コタマは先ほどから、コールスローサラダと大根の刺身を交互に食べている。

 

 

(キャベツのシャキシャキ感もいいですが、レモン汁を多めに入れてるのでしょうか?さっぱりとしていて食欲をそそります!)

 

 

シャキシャキとしたキャベツとツプツプとしたコーンの食感が、濃厚なドレッシングと相まってとても美味しい。

 

 

(そして気になるのが・・・・)

 

「大根のお刺身・・・生なのに、辛くないんですね?玉ねぎみたいに水にさらしてるんですか?」

 

「あ、コタマ先輩料理するの?玉ねぎの辛さ抜くのは、その方法であってるけど、大根の場合は切ったあと、放置しとくだけでいいんだよ?大根の辛み成分は水に溶けにくいけど、揮発性が高いからね!」

 

 

何気ない独り言のつもりだったのだが、モモイからさらっと回答がかえってきた。

 

コタマも簡単な料理はできるが、正直、モモイにはかなわないだろうと、大根にわさびと醤油をつけて、ポリポリしながら考える。

 

 

「♪♪~♪」

 

 

モモイの方を向くと、彼女も同じく大根の刺身を食べているが、醤油ではなくマヨネーズをつけて、サラダのようにしている。

 

 

「・・・・・・シャリ、!!」

 

 

1つまねしてみると、少しだけ残っていた大根の刺激が緩和され、更にさっぱりとした味わいとなった。

 

 

(これなら、いくらでも食べれそうです。)

 

 

コタマは次の刺身に箸を伸ばし、料理の味と、アゴから聞こえる咀嚼音に、耳を傾けるのだった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「モモイ、このニンジンと卵の料理って何?すっごく美味しい。」

 

 

チヒロは今回の主菜である『ニンジンのしりしり』が気に入ったらしく、モモイに調理方法を聞いていた。

 

 

「美味しいでしょ!私もニンジン料理で一番好きなんだ~♪作り方も簡単だしね!」

 

 

作り方は、ニンジンの千切りをとき卵と一緒に焼き、最後に醤油で味付けするという簡単なものだ。

 

 

「ただ、専用の千切りスライサーを使わないと、この味は作りにくいんだよ。包丁で千切りにしたり、細いタイプの千切りスライサーでもできるんだけど・・・・なんか違うんだよね。」

 

 

モモイ自身、この料理を作るのにいろいろやってみたが、包丁では食感が、細い千切りスライサーでは、ニンジンの味が納得できなかったのだ。

 

 

「エンジニア部のウタハ先輩に作ってもらったから、同じのが欲しいなら言ってみるといいよ!」

 

「ウタハ部長がつくったのか・・・エンジニア部にしてはまともなモノを。」

 

 

いつもろくなことをしないエンジニア部が、この美味しい料理を作るのに一役買っている。

 

その事実に、何ともいえない表情を浮かべるチヒロ。

 

 

(・・・・・しかし、この味を再現できるというのは、捨てがたい)

 

 

軽く火を通したことによるニンジンの甘み。

 

細すぎない千切りによる食感の良さ。

 

ふわりとした卵に醤油の香り。

 

 

(手軽に作れるおかずなのに、すっごく美味しくてご飯にも合う!私のレパートリーに是非とも加えたい!!)

 

 

気がのらないのは確かだが、自分も同じ調理器具を作ってもらおうと、心に決めたチヒロであった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「「「「ごちそうさまでした。おいしかった。」」」」

 

「は~い、お粗末様!」

 

 

少し作りすぎたかとも思ったが、野菜ばかりということもあり、全員ぺろりと平らげていた。

 

ヴェリタスの面々も顔色がよくなり、部屋に訪れた当初のゾンビ状態からは見違えるほどに回復している。

 

 

「・・・・そういえばさ、モモはうちに何の用で来たの?」

 

 

お茶を飲み、皆で一息ついた所でそういえばとマキが訪ねる。

 

部室内で見たあまりにもな状態に焦るあまり、モモイ自身すっかりと目的を忘れていた。

 

 

「・・・そうだった!コタマ先輩にお願いがあったの!!」

 

 

そう、モモイの目的はゲーム開発・・・それも先生を題材にしたちょっとエッチな内容だ。

 

しかし、そんなゲームの作成に、先生が協力してくれるとは思えない。

 

そこで、常日頃から先生の音声を盗聴、録音しているコタマに、先生の音声素材を貰いに来たのだ。

 

 

「うーん、食事のお礼もあるし、あげてもいいんだけど・・・、シナリオはあるの?あまりにも先生の言動とかけ離れたセリフなら、編集しても違和感が残るよ?」

 

「・・・あ、そういえば、まだシナリオどころか設定すら考えてないや。」

 

「とりあえず、先生にしゃべらせたいセリフを一通り出してもらってから・・・・」

 

 

音声素材の詳細を夢中で話し合う2人だが、それを聞いていたマキがおそるおそる話しかける。

 

 

「あ~~~、ふたりとも・・・・ここで話すのはまずかったんじゃないかなあ?」

 

「へ?なんで?手が空いてるなら、マキ達にも音声ソフトの調声を手伝ってほしいんだけど?」

 

「・・・いや、私個人は全然問題ないんだけどね・・・・。」

 

 

そう言うと、マキがゆっくり視線をそらしていく。

 

その視線を追った先には・・・・・

 

 

「こ~た~ま~!!また先生に迷惑かけるつもり#。モモイも、最低限、先生の許可をとってきなさい!!」

 

 

ヴェリタスの部室に、副部長の怒声が響き渡るのだった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「うう~~~~、結局エッチなのは却下された~~~(´;ω;`)」

 

「まあ、しかたないですよ。幸いにも恋愛シミュレーションは、許可貰えたんですから。」

 

 

後日、再びヴェリタスに訪問したモモイは、コタマに愚痴をこぼしていた。

 

先生の了解をとるにあたり、やはりエッチな内容は許可できないと言われたのだ。

 

ただし、設定やシナリオ段階で、チヒロがチェックを入れることを条件に、先生の合成音声を使ったゲーム開発が許可された。

 

 

「中身のないエロゲーならともかく、シミュレーションゲームはシナリオを作り込まなきゃいけないじゃん。私の負担大きすぎるよ~。」

 

「まあ、そうかもだけど・・・・。先生の音声を使えるんだから、需要はすごいよ、きっと。」

 

 

机の向こうからハレが声をかけてきた。

 

何やら、パソコンで作業をしているらしく、カタカタとキーボードを叩く音が聞こえている。

 

 

「・・・・・・そういえば、ハレ先輩はなにしてるの?この間の問題は解決したんでしょ?」

 

「ああ、これをアリスに頼まれたの。」

 

 

そう言って見せてきたのは、USBメモリーのついた小さなロボット人形である。

 

 

「・・・ケイ?」

 

「うん、あの子結構この人形振り回すから、メモリーが壊れてないかの確認と、Kei.savの分析を定期的にしてるの・・・・・とはいえ、できることなんてあんまりない・・・・・・・・・・・え?」

 

 

ゲーム開発部の大事な仲間、ケイのデータが入ったUSBメモリー。

 

 

その中に、見慣れないデータを発見して、ハレは驚きの声をあげる。

 

 

「モモイ、このデータ、見覚えある?」

 

「・・・・何これ?ブルナド?」

 

 

シナリオと設定集が入った、この文章データを元に、モモイ達はとある恋愛ゲームを作ることになる。

 

ある学園を舞台とした、演劇部の再建話を中心に、数々のヒロイン達との交流を描いた「学園編」

社会に出た主人公とヒロインとの同棲からを中心とした「同棲・結婚編」の2部構成で作られたこのゲームは、キヴォトスを感動の渦に巻き込むほど人気のゲームとなるのだが・・・・・・・・それはまた、別の話。

 




12000文字を超えてしまった。
流石に長すぎるか(-_-;)
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