ギターと、恋と、百合の花。   作:ローマン

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 なんだかんだで、5月も最終日ですね(1ヶ月以上も空いてしまいました、すみません)

 6月はささ恋11巻が発売なので、楽しみに待たなければ……!

 それではどうぞ!!






天沢キョウ

 

 

 

 

 〜咲視点〜

 

 

 

 

「咲、放課後一緒に行きたい所があるんだけど……」

 

「どこかしら?」

 

「駅前にあるスイーツショップで……」

 

 

 

 ある日の放課後、友人の百合花が一緒に出掛けたい場所があるという提案をしてきた

 

 インドアな百合花が珍しい

 

 

 

「百合花がそういうお店に行きたいだなんて、どうしたの?」

 

「百々花ちゃんが前に教えてくれたんだ、それで気になってたんだけど、1人で行くのが不安で……」

 

「なるほどね、折角だから私も行ってみようかしら。」

 

「ほ、本当!?」

 

 

 

 そう言って、百合花は安心したような顔をする

 

 普段はあまり目立たない存在だが、彼女がギターをかき鳴らしている姿は本当に楽しそうで、私も笑顔になる

 

 この笑顔を見られるのが……私だけなら良いのに……

 

 

 

「先行ってて、日誌書いちゃうから。」

 

「分かった、じゃあお先に。」

 

 

 

 先に教室を出て行った百合花の後ろ姿を眺めた後、その日が日直だった私は、手早く日誌を書き終える

 

 そして職員室に提出し終えた後、私は親友の待つ場所へと向かうのだった

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

「こ、ここなんだけど……」

 

「ここは……」

 

 

 

 私たちが辿り着いたスイーツショップ

 

 かなり賑わっていて、百合花が私を誘ったのが直ぐ理解できた

 

 だが、私はこの場所を見てあることを思い出した

 

 

 

「咲、ここ来たことあるの?」

 

「えぇ、まぁ……」

 

「そうなの!? やっぱり咲は心強いよ〜!」

 

「大げさよ……」

 

 

 

 私がここへ来たのは約2年ぶり

 

 店構えは少し変わってしまっているが、大まかな設計はそのままだった

 

 

 

「いらっしゃいませ〜! お好きな席へどうぞ!」

 

「お、お邪魔します……」

 

「百合花、あの窓際の席にしましょう。」

 

 

 

 前に来た時座った席が空いていたので、百合花と共に窓際の席に座る

 

 ここ、見晴らしが良いのよね

 

 

 

「咲は前来た時、何を頼んだの?」

 

「……あんまり覚えてないわ、あの人と少しお話しただけだから。」

 

「あの人?」

 

「……」

 

 

 

 あの人……

 

 言葉に出すのは簡単なはずなのに、その人の名前が中々喉から出てこなかった

 

 

 

「あ、ごめん、話しづらいことなら……」

 

「……大丈夫よ、私がここで最後に会った憧れの人のこと……」

 

「憧れの人……?」

 

「今でも私の目標のヴァイオリニスト……天沢キョウさんよ。」

 

「天沢キョウさんって、確か先輩の……」

 

「えぇ、お姉さんね。」

 

 

 

 百合花が妹の始さんに想いを寄せていたのは知っていた

 

 けれど、キョウさんのことは知らないだろう

 

 

 

「天沢先輩って、お姉さんがいたの!?」

 

「いたわ……2年前に亡くなってしまったけれど……」

 

「そんな……」

 

「けど、キョウさんがいなくなっても、前を向いて生きていくと決めた人たちがいたの、だから私もここまで頑張れたの。」

 

「その人たちって……」

 

「百合花も知っている人よ。」

 

 

 

 私の中で、キョウさんは憧れの存在だった

 

 それは今も変わらない

 

 彼女と最後に会った日

 

 あなたは、何と私に言葉を掛けてくれたのだっけ……

 

 

 

 

 

_____________________

 

 

 

 

 〜2年前〜

 

 

 

 

「わざわざお時間頂き、ありがとうございます。」

 

「平気だよ、今日はお休みだから。」

 

 

 

 この日、私はキョウさんを喫茶店に呼び出していた

 

 理由としては、相談に乗ってほしかったからだ

 

 

 

「それで、私と話したいことがあるんだよね?」

 

「はい、実は……」

 

 

 

 私の悩み……

 

 それは、とあるヴァイオリンのコンクールに私が出場することになったというもの

 

 側から見れば吉報なのだが、そのコンクール出場の話を受け、私はどこかモヤモヤとした感情が渦巻いていた

 

 

 

「コンクール、出たくないの?」

 

「出たくないわけじゃないんです……けど、私より出るに相応しい人がいて……」

 

「……なるほど。」

 

 

 

 その子は私とほぼ同年代の子で、よく同じコンクール内で一緒に演奏していた仲間だ

 

 先日のコンクールでは私が選ばれたけど、どうもその結果が呑み込めずにいた

 

 

 

「つまり咲ちゃんは、その子のヴァイオリンの方が凄かったと思ったのに自分が選ばれてしまったことに納得がいってない……ってことで合ってるかな?」

 

「そうだと思います……」

 

「咲ちゃん、私にも昔ね、凄いヴァイオリンを弾く子がいたんだ。」

 

 

 

 キョウさんは自分の憧れていた、あるヴァイオリニストの話を始めた

 

 自由気ままに演奏するその姿は、自分が見たヴァイオリン演奏の中で1番素晴らしかったそうだ

 

 

 

「キョウさんは、ヴァイオリンが好きじゃないんですか?」

 

「勿論好きだよ? でも私は……ギターがやってみたかったんだよね。」

 

 

 

 初耳だった

 

 キョウさんが、ヴァイオリン以外の楽器に興味を持っていたなんて

 

 

 

「今は忙しくてできそうにないけど、いつか時間ができたらね、けど志帆はギターを始めてバンド組んでるんだ!」

 

「しほ……?」

 

「あぁ、さっきのヴァイオリンの子の名前、志帆って言うんだ。」

 

 

 

 志帆さん

 

 その人がキョウさんの憧れるヴァイオリニスト

 

 けど、ギターを始めてバンド……?

 

 ヴァイオリンはどうしたのだろうか……?

 

 

 

「志帆、私のせいでヴァイオリン辞めちゃったんだ、私が審査員に合わせた演奏をしなければ……」

 

「……キョウさんは何も悪くありません。」

 

 

 

 自分のせいで誰かが悲しむことになるなんて、実力主義のこの世界では言い出したらキリがない

 

 そうでもしなければ、掴めない幸せがある

 

 それはきっと、勝負の世界ではよくある話だ

 

 

 

「たとえキョウさんがその子を苦しめてしまったとしても、私みたいに……あなたに救われた人もいるんです。」

 

「咲ちゃん……」

 

「私の考えが正しいとは限りません、だから……」

 

「分かったよ、咲ちゃん。」

 

 

 

 私は顔を上げると、そこには優しい笑顔を浮かべたキョウさんの姿があった

 

 

 

「私、志帆と話してみる。」

 

「本当ですか?」

 

「うん、今度の日曜に志帆がまたライブやるんだ、その後にでも話できないかな……? いや、話してみせるよ!」

 

「良かったです、いつものキョウさんに戻りましたね。」

 

「そうかな? えへへ……!」

 

「私も頑張ってみます。」

 

「そうだね、咲ちゃんも自分を磨いて、悔いのない結果を残してね、応援してるから。」

 

「フフッ、期待してて下さい。」

 

 

 

 その時のキョウさんは、幼い少女のような笑みを浮かべていたのを覚えている

 

 きっとキョウさんなら、志帆さんと分かり合えるだろう

 

 そう思っていたのに……

 

 この日がキョウさんと話した最後の日になるなんて、その時の私には想像もつかなかった

 

 

 

 

__________________

 

 

 

 

※百合花視点

 

 

 

 

「……」

 

「咲、話してくれてありがとう。」

 

 

 

 咲は涙を堪えながら、私に話をしてくれた

 

 天沢キョウさん

 

 咲が憧れていたヴァイオリニスト

 

 

 

「咲は凄いよ、目の前が壁で塞がれても立ち向かってる、それに比べて私は……」

 

「百合花、あなたにだって強い一面はあるわ、だって私は……」

 

 

 

 咲は言葉を詰まらせたように、そこから先の言葉を言わなかった

 

 

 

「何でもないわ、頼みたいの決まった?」

 

「じゃあ私は、フラペチーノで。」

 

「私も同じのにしようかしら。」

 

 

 

 私がフラペチーノを頼むと、咲も同じ物を頼んだ

 

 さっきの話の後ってのもあるけど、咲の気持ちが沈んじゃってる気がする

 

 この空気で、あの話をしても大丈夫だろうか……?

 

 

 

「あ、あの〜咲?」

 

「何かしら?」

 

「ひとつ話したいことがあるんだけど、いいかな……?」

 

「いいわよ。」

 

「今度の動画、久々に咲に出てほしいんだけど大丈夫かな?」

 

「出るわ。」

 

「そうだよね、やっぱり忙し……えぇっ!?」

 

 

 

 てっきり断られると思ってたのに、咲はあっさりと快諾してくれて、私は素っ頓狂な声をあげてしまった

 

 

 

「で、でも、今度のコンクール近かったんじゃ……」

 

「そうね、でもたまに百合花とセッションするのは、良い演奏を弾くための刺激になるから。」

 

「そ、そこまで思ってくれてたなんて……! ありがとう〜!!」

 

「フフッ、あなたのヴァイオリンは……私だけなんだから。」

 

 

 

 咲は今まで見たことのない微笑みを浮かべながら、私の頼みを聞き入れてくれたのだった

 

 その時の彼女が嬉しそうにしていた理由を知るのは……もう少し先のお話

 

 

 

 

 

 







 キョウさんというよりかは、オリ主たちの関係性がメインな感じのお話でした

 キョウさんは過去回想でしか登場しませんでしたが、クマのぬいぐるみがないと泣き出してしまったりと、幼くてキュートな部分が個人的には好きなキャラクターです

 ささ恋11巻の特典シール、全部神過ぎませんか!?

 絶対に買わなければ……!

 次回もお楽しみに!!





今後、どんなお話が読んでみたい?

  • オリキャラ視点のお話(今まで通り)
  • オリキャラたちの掘り下げエピソード
  • クロスオーバー(主に百合作品を予定)
  • アニメ未登場のキャラ登場回
  • 全部読みたい!
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