魔法少女≠魔法少女   作:12club

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第3話 魔法少女とカレイドライナー

「……あら?」

 

 やちよが不意に立ち止まったのは、とある国道の梢前。

 つまり、凛たちと初めて出会った場所だ。

 

「どうしたの」

「魔女の反応が薄い……。それに誰か、別の魔法少女が既に結界内に入っています」

「そんなこともわかるの?」

「ソウルジェムの機能です。魔力の反応さえ追えば、それが魔女か魔法少女かくらいの判別は出来ます」

 

 ソウルジェムが激しく明滅している。

 既に結界内で、魔法少女が魔女と戦闘をしている。

 そして、魔女は既に消滅しかかっている。

 やちよはそう判断した。

 

「気を付けて」

「何をさ」

 

 どこか不満げな口調で、クロが口を開く。

 

「神浜の魔女は手強いと言ったでしょう。なら、その魔女を狩っている魔法少女はそれ以上の強さを持っていると見なして間違いない」

「でも、やちよさん」

「なに?」

 

 イリヤスフィールが疑問に思ったことを、やちよは先読みしていたが黙って先を促した。

 

「魔女を倒しているってことは、その人も魔法少女っていうことですよね。それが私たちにとって危ないことに繋がるんですか?」

「そうね……」

 

 結界が崩れ、晴れていく。

 それを感じながら、やちよはイリヤスフィールの問いに応える。

 

「貴女たちは知らないかもしれないけど、魔女は魔法少女の魔力を回復させるアイテム――グリーフシードを落とすの。使わなければ魔力が尽きて、戦えなくなる。だからグリーフシードの確保は魔法少女にとって必須事項なのよ」

 

 理由はそれだけじゃないけど、と。

 そのことだけは胸にしまっておいた。

 

「だから魔法少女にとって、他の魔法少女は大抵がライバル。ともすれば邪魔者に過ぎない。貴女も魔法少女なら覚えておきなさい、イリヤスフィール」

「え、私はグリーフシードなんて知りませんよ?」

「貴女たちの事情は知らないから、別に驚かないわ」

 

 やちよのセリフを皮切りに、魔女の結界が崩壊した。

 そこに。

 

「おいおいおい、せっかく孕んだ魔女を獲ったと思ったら、別口からの客人か?」

 

 国道と梢を挟む柵の上に、一人の魔法少女が立っていた。

 くせの強い長髪に、挑発するような眼光の鋭い瞳。紅い衣装の魔法少女。

 やちよは凛たちの前に立ち、変身することなく立ち塞がった。

 

「私は七海やちよ。彼女たちは、迷い人みたいなものよ。貴女は何者?」

「へぇー、自己紹介どーも」

 

 咥えていた串団子を一つ、手を使わず器用に口に流し込みながら、挑発的な言動で対峙する。

 

「あたしは佐倉(さくら)杏子(きょうこ)。風見野の魔法少女って言えばわかるかい?」

「……そういうこと。神浜の魔女を狩っている魔法少女の一人は貴女、ということね」

「おっと、縄張り争いがどうこうって話は無しだよ。ここに魔女が集まっているせいで風見野の魔女が減ってく一方なんだ。不可抗力と思って目をつぶってくんない?」

「それに関して私が不満を言うつもりはないわ。ただし、一つ質問がある」

 

 ひくり、と魔法少女――佐倉杏子の眉が吊り上がる。

 気付いたが、やちよは気にせずに続ける。

 

「魔法少女狩り……つまり、魔女じゃなくて魔法少女を狩っている存在について知っていることは無いかしら」

「魔法少女狩り?」

「ええ」

 

 一瞬、杏子はポカンとしたが、すぐに表情を引っ込めて頭の後ろを掻いた。

 

「魔法少女狩り……ねえ。大方、グリーフシード目当てのゴロツキ魔法少女の仕業なんじゃない?」

「貴女はその類?」

「馬鹿にするなよ。あたしはそんなケチなマネはしねえ。持ってるかどうかもわかんない魔法少女を狙うよりか、魔女を直接ぶちのめした方がよっぽど効率的だろ」

「そう、それならもう用は――」

 

 やちよはそう言って、杏子に背を向けようとした。

 が。

 

「ちょっとちょっと」

 

 口を挟んだのは、クロだった。

 

「貴女、魔女より強いんですって? ちょうどいいじゃない、私たちの対魔女相手の試金石としては打ってつけだわ」

「……あぁ?」

 

 杏子が眼を細めて、クロを睨みやる。

 明らかに、露骨に不機嫌な表情だ。

 

「ちょ、ちょっとクロ……!」

「別に構やしないわ。相手が魔女から魔法少女に代わっただけよ」

 

 クロが杏子に、挑発的な言葉を投げかけて。

 杏子は不機嫌な目元はそのままに、口の端を吊り上げた。

 

「あはは! 何それアンタ。もしかして、あたしに喧嘩売ってるの?」

「モチのロンよ。いい加減、私も燻ぶってるのよ。一手ご教授願えないかしら? それとも自分より小さな子は虐められないってタイプ?」

「ああ、そうだよ。あたしは弱い者いじめは嫌いなタイプさ。……でもね」

 

 チラリと、杏子がやちよ達に向けて視線を走らせる。

 団子を櫛からもう一個、口の中に滑り込ませて。

 

 一閃。

 杏子の背後から高速で槍が伸び出した。

 

「クロ!!」

 

 イリヤスフィールが叫ぶ。

 

「遅いんだよ、アンタら!」

 

 クロを狙ったと思しき一撃が、突然、急激に方向を変化させた。

 多節棍。

 鎖状に伸びた槍がイリヤスフィールと美遊の周囲に展開する。

 

「ッ! 避けなさい! イリヤ! 美遊!」

 

 凛が叫び声を発した。

 しかし、遅い。

 鎖で繋がれた棍がイリヤスフィールと美遊をまとめて縛り上げ、近くに立っていた大木に叩き付けられる。

 

「くッ……!」

「かはッ……!」

 

 美遊と、イリヤスフィールの苦しげな声が響く。

 やちよは即座に、魔法少女姿に変身した。

 杏子が柵から地面に降り立ち、直槍に戻して構え直す。

 

「そっちのお子様たちより、アンタの方がやり合えそうだ。おやつの時間くらいは、持ってくれよ――なっ!」

 

 槍がクロへと直進する。

 紙一重でそれを躱すクロ。

 真っ直ぐに伸びた槍は、背後の樹木たちを巻き込んで。

 たちまち端材と化して、大きな音を立てて崩れ落ちた。

 

 クロが魔法少女姿に転身する。

 

「ランサーか……、私には与し難い相手だけど、タネを明かしたのは失敗だったわね」

「はあ?」

「こういうことよ!」

 

 クロが無手のまま、杏子の懐へと飛び込む。

 杏子が槍を横手に持ち替え、守備の構えを取った。

 が。

 クロの両手に、それぞれ片手持ちの短剣が姿を現す。

 

「な……ッ!」

「どうしたの? 躱せるものならさっさと逃げたら?」

「吠えてなッ!」

 

 杏子が距離を離そうと、槍の柄でクロの双剣を受け流そうとするも、食い付かれて離すことが出来ない。

 双剣と槍の応酬。

 時間にして数秒だったろうか、何合か打ち合わせた後、杏子の槍がクロエの体を弾き飛ばした。

 杏子が崩した姿勢を正して、槍を構え直し――。

 

「バイバイ」

 

 後方に吹き飛んだクロが、空中に飛んだ姿勢のまま、長弓から黒鉄色の矢を撃ち放った。

 矢が杏子の胸元へと迫り。

 着弾。

 大爆発を起こした。

 衝撃で、辺りの木々が派手に砕け散ってバラバラと倒れていく。

 

「ちょーっと派手にやり過ぎたかしら」

 

 やちよは呆然と眺めて、一筋の汗が頬を垂れた。

 強い。

 クロというこの魔法少女は確かに練達の戦士だ。

 神浜の魔法少女と比べても遜色ない。

 けれど。

 

 バキバキ、と。

 

 巨大な槍の多節棍が飛び上がる。

 その衝撃で、吹き飛んだ辺りの廃材が散らばっていく。

 そこにはほとんど無傷の杏子が立っていた。

 

「なかなかやらかしてくれんじゃないの。正直、舐めてたよ。アンタのこと」

「……そのまま倒れてた方が痛い目見なくて済んだんじゃない?」

「ああ、そうかもな。……でもねぇ!」

 

 杏子の槍が繋がり、それに並行してクロへと直進して迫る。

 ――速い!

 しかしそれを待ち受けるクロの反応速度もまた、速い。

 

「ワンパターンの攻撃なんか、通じないっての!」

 

 双剣を構え直したクロも、杏子へ向かって直進した。

 剣と槍が交錯し、閃いて。

 杏子の槍が空中へと舞った。

 しかし。

 クロが斬り裂いた杏子の体が、霧散するように搔き消える。

 

「吠えてな、犬みたいにねぇ――!」

 

 クロの死角から姿を現した杏子が槍を振りかぶる。

 双剣で受け流そうとするが、わずかに杏子の方が速い。

 槍が、クロを横から叩き付ける。

 クロの体が横っ飛びに吹き飛び、道路に二度、三度と強く打ち付けられ、そのまま動かなくなった。

 気を失ったか。

 

「クロッ!!」

 

 イリヤスフィールが荒い呼吸のまま、クロに向かって叫ぶ。

 しかし彼女からは何の反応もない。

 

「ダメ! イリヤ! 今はこらえて!」

「でも……でも、クロが!」

 

 やちよはイリヤスフィール達には構わず、杏子へと視線を向けたまま離さない。

 それに気付いた杏子が、やちよへ――いや、凛へと話しかける。

 

「アンタがアイツらの保護者さん? 悪いんだけどさ、この辺で落とし前はつけたってことで、お互いノーカンにしない?」

 

 凛は杏子の視線を受けてたじろいだ。

 しかし、その瞳には微塵も移ろいはない。

 

「私も出来たらそうしたいんだけどね、フェアじゃないのはこっちだったし。でもね」

 

 杏子の意識が、一瞬、逸れた。

 反応に任せるがまま、後ろへと飛びすさる。

 その跡に、光弾が炸裂した。

 

「貴女、ちょっとやり過ぎたみたい。あの子たち、友達が傷付けられて黙っている子じゃないから」

 

 杏子は槍を構えたまま、光弾の発射地点を見据えていた。

 

「……へぇ」

 

 そこには二人の少女――いや、二対の魔法少女が立っていた。

 

「丁度いいや。まだまだ食い足りなかったんでね」

 

 串に残った最後の団子を口の中に滑らせて、咥えていたその串をプッと地面に吐き捨てる。

 

「第2ラウンド、受けて立つよボンクラども!」

 

 

 

 イリヤが空中へと舞い上がる。

 魔術礼装――マジカルステッキを構えて振りかざした。

 

放射(フォイア)!」

 

 ボンッと音を立てて飛び出た光弾は。

 杏子の槍の一振りで明後日の方向へと飛んでいった。

 

「なんだ、単発の豆鉄砲か?」

 

 やはり出力が弱まっている。

 美遊は林の中へと姿を隠しつつ、イリヤの動きを観察する。

 イリヤの役割は撹乱。

 本命は、自分だ。

 

「なら、最大出力の――散弾!」

 

 イリヤのステッキからさらに光弾が、今度は無数に放たれた。

 道路を抉るだけではなく、その下から除く地面から、幾つもの土煙が立ち昇る。

 

(ここだ! キャスター、限定展開(インクルード)――)

 

 破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)

 全ての魔法による契約を破棄する、魔術師殺しの礼装。

 これで相手の変身が解けば……!

 

「煙幕ねぇ。ならこっちは――」

 

 棒立ちになっている杏子に、美遊の持つ短剣が突き刺さり。

 その姿が赤い霧となって霧散した。

 

「なッ……!?」

 

 驚愕する美遊の背後に、赤い影が差す。

 

「残念、偽物(ハズレ)だ」

 

 美遊の目の前に迫った槍が割れ、多節棍に分かれた。

 咄嗟に空中に逃げようとするも、分かれた槍が美遊へと巻き付いて。

 空中へと投げ込まれ、イリヤ諸共に地面へと叩き付けられる。

 

「かはッ……!」

 

 アスファルトをも砕く一撃を受け、呼吸が一瞬、完全に止まった。

 

「おいおいどうした? もう終わりか? あっちの黒いお嬢ちゃんの方がまだ根性があったよ?」

 

 戦いの真っ最中にも拘らず、杏子はケラケラと笑い声を上げた。

 

「くっ……ルビー……、自動回復(リジェネレーション)を……」

「ダメです、そんな暇ありません! このまま逃げるか、防御力を高めて逃げるか、そのどっちかしか出来ませんよイリヤさん!」

 

 「ああん?」と杏子が訝し気な口を突く。

 

「なんだそりゃ。魔法のステッキが喋ってんのか? 回復? 逃げる? そんなこと――」

 

 分かれた槍を繋ぎ合わせ、体を後方へと引き絞り。

 

「――このあたしがさせるか、っての!」

 

 杏子が突進を敢行した。

 

「――拘束(ロック)!」

 

 ガクン――。

 

「あ?」

 

 杏子の突進が、止まった。

 星形のバインドロックが、杏子の腕を絞り上げている。

 

「この……猪口才な!」

「ミユ! 逃げて!」

 

 イリヤが叫ぶ。

 そんなこと、出来ない。

 だけど。

 

「ありがとう、イリヤ」

 

 杏子を押し留めている、隙。

 それを縫って太腿のホルダーから、カードを取り出す。

 

 剣士のクラスカード『セイバー』

 

「――夢幻召喚(インストール)!!」

 

 光の柱が美遊を包み込んだ。

 徐々にその体が現れていく。

 青を基調とした衣装に、手甲に腰甲、足甲。

 そしてその手には、黄金に煌めく直剣。

 

 杏子を押し留めていた拘束が破られる。

 しかし無理強いは危険と判断したのか、彼女は背後へと退避した。

 

「ランサーの魔法少女は、セイバーで相手をする!」

 

 美遊は剣を杏子に向け、高らかに宣言した。

 

 

 

 ヒュン――。

 青い剣士の姿が搔き消えた。

 

(んなッ……!?)

 

 思った瞬間、杏子は反射的に槍を前方に、横だめに構えていた。

 即座に、騎士の剣が槍の柄をしたたかに打ち据える。

 接近戦はまずい。中距離を保たないと――。

 しかし剣士の追撃は止まらない。

 なんとか距離を保とうと、背後へ、背後へと後退する。

 だが、止まらない!

 

「こなくそっ!」

 

 杏子は槍の持ち手を短くし、大振りの一撃を振り放った。

 剣士の攻撃を打ち払おうとしたその一撃は。

 しかし高く跳び上がった剣士の刃には届かず、逆に空中からの袈裟懸けに襲われる。

 

「ちいっ!」

 

 破れかぶれの心地で、背中から地面に向けて自ら倒れ伏して、その一撃は何とか回避した。

 だが絶望的な状況は依然として変わらない。

 本能的な反射に従って、両足で前方へと蹴りを打ち込んだ。

 運良く、その攻撃は剣士の腹に埋め込まれ、後方へと飛ばして距離が生まれる。

 

(攻撃が来る……! いや、その前に一撃入れる!)

 

 かなり無茶な姿勢からのせいか、足がもつれた。

 しかし攻撃行動に問題はない。

 突進する。

 そう見せかけて。

 槍を多節棍へと散らばせた。

 

(多方面からの拘束で動きを止める! これで……!)

 

 だが。

 直進してくる剣士はその一撃一撃を全て紙一重で躱し切って、杏子に肉薄した。

 

(ッ! コイツッ!)

 

 剣士の姿が目の前に迫った。

 

 殺られる!

 

 思った瞬間。

 剣士がガクンと膝を突いた。

 そして、苦し気にうめく彼女の胸から、一枚のカードが解放される。

 後に残ったのは、地面に落ちた一枚のカードと、元の姿に戻った魔法少女。

 反撃の好機。

 いや。

 

 杏子は二度、三度と地を蹴り、後方へと下がる。

 

(何だ……何なんだコイツ)

 

 どっと冷や汗が浮かぶ。

 

(魔女とか魔法少女とかじゃない……、そもそも人間と相手してるような気がしねえ)

 

 くるりと、魔法少女たちから背を向ける。

 

「逃げる気!?」

 

 凛と呼ばれていたか。

 その女が声を荒げて叫ぶ。

 杏子は顔だけそちらに向けた。

 

「どうにも手が見えない手合いとはやり合わない主義でね。アンタ達もこれに懲りたら諦めて帰りなよ」

「ったく、どっちのセリフよ」

「さあな、もう出会わないことを望むよ。あたしはね」

 

 それだけ言い残して。

 

(冗談じゃねえ……、これ以上やり合うのは二度とごめんだ)

 

 精一杯の負け惜しみを胸の中にしまい込んで、凛たちの前から姿を消した。

 

 

 

「大丈夫? クロ」

「痛っつー……、なんとかね」

 

 転身を解除したクロに、イリヤは手を貸した。

 

「悪かったわね、イリヤ、ミユ。変なことに巻き込んで」

「ううん、クロの言いたいことならよくわかってる。どうしても見極めたかったんでしょ? この神浜市っていう町の異常さを」

「お見通しってわけ。あーあ、なんか道化(ピエロ)だわ、私も」

 

 事の成り行きを見守っていたやちよが変身を解く。

 

「ずっと見てただけの私が言うのも何だけど、これでわかったでしょう? この町で生き抜くっていうことは、魔女だけでなくああいう手合いとも戦わないといけない。悪いことは言わないわ」

「ホントにね……。任務じゃなければ私も帰りたいところだけど」

「そういうわけにはいかない?」

「むしろ放っておくことの方が問題があるわ。これ以上のことが時計塔にバレたらもっと苛烈な指令が下るだろうし」

 

 凛の言葉を聞いて、やちよはふうっと溜め息をつく。

 

「貴女たち、今日は私の家に泊まっていきなさい。幸いまだ部屋は空いているわ。無理にとは言わないけど」

「無理……じゃないかな。明日、土曜日だし」

「じゃあイリヤスフィールさんはそれでいいとして、他の方たちは――」

「イリヤ」

「え?」

 

 やちよがポカンと、眼を丸くした。

 

「友達はみんなイリヤって呼ぶから。イリヤスフィールってよそよそしくて呼びにくいし、イリヤって呼んでください」

「そう……わかったわ、イリヤさん」

 

 言って、再びやちよは凛たちに眼を配らせて。

 

「イリヤさんが大丈夫なら、他の子たちも同じでしょう。せめて今日の泥くらいは落として、帰るのは明日にするといいわ」

 

 凛が美遊と眼を合わせる。

 二人して頷いて。

 

「悪いけど、お邪魔するわ」

「私も、よろしくお願いします」

 

 やちよが頷く。

 

「決まりね。古臭い所だけど、まあゆっくりしていって」

「はーい」

 

 イリヤが皆を代表して、元気よく手を上げた。

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 

 神浜市の一夜が終わった。

 残ったのは、神浜の魔法少女とクラスカードの魔法少女。

 その傷跡だけ。

 

 少女たちは胸にしこりを残したまま、その夜を過ごす。




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