魔法少女≠魔法少女   作:12club

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第5話 魔法少女と魔法少女狩り

(魔法少女狩り……ね)

 

 マミはテレパスで受けた杏子からの情報に、反復するように応えた。

 

(ほむらには言ってない。あいつの考えが読めない内は、まだこっちの手札を全部晒すつもりはないからな。マミもそのつもりで聞いてくれ)

(わかったわ)

 

 魔法少女狩り。

 マミにとっても触れたことのない新情報だ。

 

(佐倉さんはそれを、どこで知ったの?)

(昨夜のことだ。七海やちよっていう、神浜の魔法少女から聞いた)

(それなりに信憑性のある情報ってわけね)

 

 情報の確度は高そうだが、問題はそれがいったい何に繋がるかわからない、ということだ。

 とりあえず頭の隅に置いておく。

 もしかしたら、自分もその魔法少女狩りの対象にされていてもおかしくない。

 

(危険度が高い情報として、暁美さんに伝えた方が良くないかしら)

(あいつがその程度でくたばるやつなら、端からチームなんか組んじゃいない。もう少しあいつの出方を見てから渡したい)

(相変わらず素っ気ないわね。気持ちはわかるけれど、了解したわ)

(頼んだ)

 

 テレパスが切られる。

 

 マミは魔法少女姿に変身し、ビルの壁を蹴り伝って雑居ビルの屋上に立った。

 ひゅう、と朝の冷たい風が空を吹き抜ける。

 視線は感じていた。

 魔法少女として活動してきた数年間。

 危険を察知する能力はそれなりに長けていることは自負している。

 

「不躾だけど」

 

 マミが屋上から臨む鉄塔、その中ほどに立っている人物に眼を向ける。

 

「貴女が噂の、魔法少女狩りさんかしら」

 

 古びた帽子に露出度の高い衣装、ロングブーツに、大股には拳銃を収めたホルスター。

 ハリウッド映画から飛び出てきたようなウエスタンガンマンの女性の姿がそこにあった。

 

「……うずくのさ」

 

 恐らく――いや、間違いない。

 この人は魔法少女だ。

 それも、見た目同様に戦闘に特化した。

 

「頭ん中でさぁ……、誰かが言うんだよ……。魔法少女を殺せって、さぁ……」

 

 ガリガリと、目の前のガンマンは左手で顔を何度も引っ搔く。

 皮膚が削れようと、血が滴ろうと、構わずに強く目元を掻き続ける。

 

「一つ聞かせな……。アンタは魔法少女か……?」

 

 ごくりと、マミは唾を飲み込んだ。

 一目見ただけでその魔法少女の実力がわかる、なんて超能力じみた観察眼を持ち合わせているつもりはない。

 ただ目の前にいるこの魔法少女は、あまりにも歪だ。

 人間の気配ではない。

 ただ人間の部品を無理矢理に繋ぎ合わせたらこうなるだろう、という。

 そんな狂気を無意識に感じ取っていた。

 

「私が魔法少女だとしたら、どうするつもり? 殺すの?」

 

 引っ掻く指の隙間から光る眼光が、マミの体を貫いた。

 マスケット銃を生成し、咄嗟にガンマンへと向ける。

 

「カラミティ・メアリに逆らうな……煩わせるな……ムカつかせるな……オーケイ?」

 

 ホルスターから魔法少女――カラミティ・メアリが拳銃を抜いた。

 思った瞬間、マミの耳の傍を風音が貫いて。

 爆音。

 背後の壁が直系3メートルほどの大穴を空けていた。

 

「オーケイか、って……聞いてんだよぉッ!!」

 

 マスケット銃を再びリボン状に解き、マミは駆けた。

 カラミティ・メアリの銃撃の射程外へ。

 それだけを考えて、リボンを前方の鉄柱に向けて投げ込む。

 鉄柱に巻き付いたそれを、しなやかな長棒のように硬化させ、棒高跳びの要領で自分の体を隣の、さらに隣のビルへと飛び込ませた。

 カラミティ・メアリが追跡してくる。

 拳銃はとうに捨てていた。

 代わりに、これまたいつの間にか手にしていたサブマシンガンを連射しながらマミを追撃してきている。

 着弾跡はまるで徹甲弾がめり込んだかのような、ありえない銃創を作り出していた。

 このまま撤退することも考えた、が。

 

(拳銃やライフルの威力じゃない……! あんなモノが市街地に向かってばら撒かれたら……!)

 

 マミは決戦を決意した。

 あんな狂人を無辜の人々の前に出すわけにはいかない。

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 

 みかづき荘。

 午前10時を回り、魔法少女たちは少しばかりの休息を挟んで、安らぎを謳歌していた。

 

「っしゃ、オラァーッ! ぷよ12連鎖!」

「舐めるんじゃないわよ! 同調開始(トレース・オン)、基本骨子解明! 体はぷよで出来ていた!」

「ってオイコラーッ! プレイ中のゲームに魔改造とか卑怯なマネすんなしっ!」

「壊れなきゃいいのよ! よっしゃぷよ15連鎖返し! これ以上盛れるならやってみなさいよね!」

 

 ……安らぎと呼ぶには少々、うるさかったが。

 

「フェリシアちゃんも負けず嫌いだけど、クロも大人げないね……」

 

 落ちモノゲームに興じているクロとフェリシアを眺めながら、イリヤは呟いた。

 

「フェリシアさん、勝負事には手を抜かないから……」

「それ言うと、クロはどんな手を使っても勝ちは勝ちって言うタイプだね……」

 

 さなの言い様に、イリヤもため息をつく。

 

「イリヤ、ジュース入れたよ」

「ありがとうミユー」

 

 美遊がお盆に乗せて持ってきたオレンジジュースの入ったコップを手に取って。

 

「ってあれ、他の子の分は?」

「持ってきたのは私とイリヤの分だけ。他の人は自分で入れて」

 

 相変わらず平常運転の美遊に、またまたイリヤはため息をつくのだった。

 

「イリヤさんイリヤさん」

「何? ルビー」

「ちょっとだらけ過ぎですよー。このまま一日この家で時間潰しする気ですかー? フレッシュなお肌にしわが増えますよー」

「って言ってもなぁ」

 

 ソファに腰を埋めて、ジュースを一口。

 

「リンさんから連絡も無いし、そうなると私たちだけじゃ何もすることが思いつかないんだよねぇ」

「だからって日がな一日だらだらするのは良くないですよー。もっと若者らしく、活動的にならないと」

「ルビーがそう言う時ってつまり、自分が暇だからでしょ」

「まあそれは否定しませんけどねー」

 

 ガラステーブルにコップを置く。

 

「ねえ、イリヤちゃん」

「ん、どうかしたの? イロハさん」

 

 イリヤの後ろから話しかけてきたいろはに、イリヤは顔を向けた。

 

「良かったら美遊ちゃんと一緒に、この町を歩いてみない? あんまり詳しくないけど、案内するよ」

「あ、それいいかもー」

 

 ポン、と手を叩いて笑顔で応えるイリヤ。

 

「ミユもいい考えだと思うよね?」

「うん、イリヤと一緒なら」

「クロはどうする?」

 

 と。

 

「おーっし、17連鎖!」

「なにをーっ! ならこっちは18連鎖しちゃる!」

 

 もはや別次元と化したゲームの様相を前にしているクロに、声は届いていないようだった。

 

「……クロは置いていこっか。ゲームやってる方が楽しそうだし」

「もうあれは楽しいとかそういう次元を超えてる気がする」

 

 冷静に呟く美遊に、イリヤは「たはは……」と乾いた笑い声を漏らすだけだった。

 

 

 

「準備できた?」

 

 玄関で、いろはがイリヤに確認する。

 

「うん、いつでも大丈夫」

「私も」

 

 イリヤと美遊は共に頷いた。

 

「じゃ、行こっか。みんな、行ってきまーす」

 

 いろはが一応、リビングに向かって声をかけたが、聞こえてくるのは爆音を響かせるゲームの音楽と効果音だけだった。

 

「よーし、レッツ、ゴー!」

 

 意気揚々と出ていくイリヤといろはに従って、美遊も出ようとして。

 

(そうだ、ルヴィアさんに連絡しないと)

 

 スマートフォンを取り出して、アドレス帳からエーデルフェルト邸の番号を呼び出す。

 が。

 

 『お繋ぎの番号は現在、使われておりません』

 

 ……え?

 

 掛け間違えたかと思い、もう一度入力する。

 アドレス帳――エーデルフェルト邸――コールボタンの順に。

 

 『お繋ぎの番号は現在、使われておりません』

 

 ……どういうこと?

 

 張り切るイリヤ達の後ろで、美遊は言いようのない不安に駆られた。

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 

(……どうする? 考えるのよ、巴マミ!)

 

 ビルからビルへと飛びながら、逃げ続けるマミを、カラミティ・メアリは鉄塔を並走しながら執拗に追撃してくる。

 

(恐らく、射撃の威力だけなら私と互角。命中精度は下の下だけれど、それを手数で補っている)

 

 実際、カラミティ・メアリの銃撃が止むことがない。

 少しでも立ち止まればハチの巣――いや、ミンチにされるのは眼に見えている。

 

(手元を狙撃しようにも照準が間に合わない。となると――)

 

 走りながら、マミは自分の周囲にマスケット銃を多数、展開した。

 一斉放射し、カラミティ・メアリの撃ち放つ弾丸を残らず叩き落とす。

 しかし、マミを狙う銃撃は止むことを知らない。

 さらに多くのマスケット銃を生成、展開。

 それらから一斉に弾丸を発射、敵の銃撃を無効化する。

 

 幾度となくそれを繰り返して。

 カラミティ・メアリの銃撃が一瞬、止んだ。

 弾切れだ。

 だがそれもすぐに弾倉を交換するだろう。

 

(――ここ!)

 

 マミは急ブレーキをかけ、立ち止まった。

 リボンから巨大な臼砲を生成する。

 

「ティロ・フィナーレ!」

 

 臼砲が火を噴いた。

 砲撃がカラミティ・メアリを撃ち抜く、かと思いきや。

 体を少し捻った彼女に、弾丸は当たることなく遥か彼方へと飛んでいった。

 

「かかッ! ハズレだよ小娘ぇッ!!」

 

 空になった弾倉をサブマシンガンごと捨てて、長大な銃――いや、重砲をどこからともなく取り出した。

 アンチマテリアルライフル。

 車両や航空機すら行動不能にし得るそれを、カラミティ・メアリは獲物を前に舌なめずりする心地でマミへと向けた。

 しかし。

 

「……あぁ?」

 

 いない。

 確かに先ほどの砲撃を放った位置にいたはずの、黄色い魔法少女の姿が、カラミティ・メアリの前から見えなくなっていた。

 

「いったいドコにッ――!?」

 

 刹那。

 死角からのマミの強烈な蹴撃がカラミティ・メアリの頭部を打ち抜いた。

 ゴキン、と頸椎があり得ない方向に曲がる。

 マミのリボンが、カラミティ・メアリの立つ鉄塔を中心とした反対側に位置する電柱に巻き付いている。

 遠心力。

 マミは砲撃の衝撃を利用して空中へと飛び出し、鉄塔上のカラミティ・メアリへと不意打ちしたのだ。

 派手に吹き飛び、空中へと投げ出されるカラミティ・メアリ。

 地上に落ちていく彼女を追うように、マミもまた地上目掛けて身を投げ出す。

 

 それが仇となった。

 

 ガアン、と耳をつんざく銃声。

 

(うッ……!?)

 

 目の前には、首が折れ曲がりながら勝ち誇るカラミティ・メアリの狂笑の表情。

 体から何かが消失するような衝撃。

 ゴボッと、液体が体の底からせり上がる気色の悪い感覚。

 

 マミの右脇腹が消し飛んでいた。

 

 成す術もなく地面に転げ落ちる。

 

(痛覚遮断……! 傷口の応急処置……! 落ち着いて、落ち着くのよ、巴マミ!)

 

 ソウルジェムが急激に濁っていくのを感じる。

 ぐらつく体と意識をぐっと持ちこたえさせながら、マスケット銃を杖になんとか体を起こそうとするが。

 マミの頭に、固い物体が突き付けられた。

 

「死ネ……、魔法少女……!!」

 

 これまでか……!

 覚悟を決めたその瞬間。

 ボンッと。

 軽く、何かが爆発する音が響いた。

 びしゃびしゃとマミの頭に熱い液体が降りかかる。

 死にそうな激痛に身悶えしながら、必死でそちらを見やると。

 

「カラミティ・メアリに逆らうな、煩わせるな、ムカつかせるな。ああ、そうだね」

 

 頭の半分を、頭蓋骨ごと脳漿を破裂させたカラミティ・メアリの姿がそこにあった。

 マミに銃口を突き付けた格好のまま、支えを失った棒のように倒れ伏す。

 

「そんな夢はもう見なさんな、ねえ?」

 

 声の方を見れば。

 

(双子……?)

 

 もう一人、()()()()()()()()()が硝煙をくゆらせる拳銃を構えているのが見えた。

 訳のわからない心地のまま、マミは完全に脱力してその場に倒れ込んで。

 遠くから、自分の名前を呼ぶ声が聞こえたような気がした。

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 

「……? 何だろ」

 

 新西区の繁華街を歩くイリヤが、辺りを見回した。

 その様子に気が付いたいろはは周辺に気を配る。

 

「サイレンの音だね。どこかで事故でもあったのかも……」

 

 と。

 ドン、とイリヤに何かがぶつかった。

 

「きゃっ」

「す、すみませんっ!」

 

 よろけながら、謝る声を耳にした。

 それが聞こえた方向へ目を移すと、既に遠くへと走っていく人影が見える。

 声からして、女の子だろうか。

 とにかく、ぶつかった子のことを考えても詮無いので元来た道へと向かうと。

 ぬぅっと、また誰かが現れた。

 

「ひゃっ!?」

 

 驚き、素っ頓狂な声を上げるイリヤ。

 

「ごめんなさい、驚かせるつもりは無かったんですが」

 

 人影が姿を現し、ぺこりと頭を下げる。

 こっちも女の子だ。

 白い花をあしらったカチューシャを付けている、ワンピースの白いセーラー服に白いニーハイソックスと、全体的に白い装いの女の子。

 

「逃がしちゃったぽん?」

「近くで何か騒ぎがあったみたい。それに紛れて声も聞こえなくなった」

「せっかく下手人を見つけたのに、つまらない結果になったぽん」

「また機会はあるよ」

 

 ひそひそと一人で喋っているその少女に。

 

「あ、あのー?」

 

 イリヤは恐る恐る声をかけた。

 少女がイリヤ達を見て。

 

「貴女たちも魔法少女なんですね」

「あ、はい……って、ええ!?」

「すみません。私、そういうことがわかってしまうので」

 

 淡々とした口調でその少女が続ける。

 

「この辺りで逃げるように走っていく女の子を見ませんでしたか? ちょうど私と同じくらいの背丈の子なんですが」

「えーっと、何が何だか……」

「そうですか」

 

 ふと、何かを思案するように視線を下に向ける少女。

 

「私はスノーホワイト。御覧の通り、魔法少女です」

「あ、えーと、はい」

「魔法少女狩りというのをご存じですか?」

 

 魔法少女狩り。

 確か、やちよさんがそんなことを聞いてたような。

 

「ちょっとだけ耳にしたようなことがあると言うかないと言うか」

「忠告します」

 

 曖昧に返すイリヤに、少女――スノーホワイトは毅然とした表情になって。

 

「魔法少女なら、この町にいるべきじゃない。厄介なことに巻き込まれる前に逃げてください」

 

 そんなことを言った。

 

「あ、あの!」

「はい」

「貴女は何者なの? どうして私たちにそんな、忠告を?」

「そうですね……」

 

 言い淀む。

 というか、言葉を探しているようにも見えた。

 

「呼ばれるから」

 

 呼ばれる?

 

「忠告はしました。無事でいてもらえることを祈っています」

 

 そう言い残して、スノーホワイトはイリヤ達の元から離れていく。

 

「あっ、ちょ、ちょっと!?」

 

 止めようとするも時すでに遅く、スノーホワイトは繁華街の雑踏の中へと消えていった。

 イリヤの襟元からルビーが顔を出す。

 

「いいんですかイリヤさーん、あんな怪しげな子を放っておいて?」

「怪しい、っていうか、私たちのことを案じていたように見えたけど」

「そこが怪しいんじゃないですかー。いかにも物騒な秘密を隠し持ってます、ってノリでしたよー?」

「もう、ルビーが追いかけたいだけじゃないの。どうせ退屈なんでしょあなた」

 

 イリヤとルビーがじゃれ合っている傍らで、美遊が誰にともなく頷く。

 

「私はルビーに賛成。追いかける方が正解かもしれない」

「ミユ?」

「凛さんから未だに連絡が無いのは、連絡が来ないからじゃない。もしかしたら、連絡自体が不可能になっているのかも」

 

 言って、美遊は自分のスマートフォンをイリヤに見せた。

 

「ルヴィアさんに連絡しようとしても伝わらないの。この町は何かおかしい。なら自衛のためにも、私たちは積極的に情報を集めるべきだと思う」

「うーん、なんか色々あるのはわかるけど……」

「異常事態だよ。もしかしたら思った以上に厄介な事に巻き込まれているかもしれない」

 

 美遊の決然とした表情に、イリヤはたじろいだ。

 しかし。

 

「……だね。確かにミユの言う通り、何かしなきゃ始まらないもんね」

「じゃあ、イリヤちゃん。あの子のことを追いかけるの?」

 

 いろはが不安げにイリヤに言う。

 それに対して、イリヤは強く頷いた。

 

「ごめんね、イロハさん。私たちだって魔法少女なんだ。他人事じゃいられないよ」

「うーん、まあイリヤちゃん達がそう言うなら……」

「お願い、イロハさん!」

 

 強く詰め寄るイリヤ。

 いろははたじろいだが、頷く。

 

「わかった。私も魔法少女狩りのことは気になっていたもの。でも無茶は無しだよ」

「イロハさん、ありがとう!」

 

 かくして少女たちは決意を固め、再び繁華街へと足を踏み入れた。

 

 

 

「――ってことを考えてるみたいね。あの子たち」

「どうかしたぽん?」

「ううん、何でもない」

 

 雑踏を掻き分けて、繁華街を歩いていく。

 ざわつく人の群れ。

 遠巻きに眺める視線たち。

 その中央に。

 

「……これか」

 

 スノーホワイトは集まる視線を省みることなく、()()に近付き、傍に屈みこんだ。

 くたびれた女の死体。

 首が折れ、頭が半分なくなっている。

 間違いない。

 この不自然な損傷は明らかに、魔法の国のアイテムか、もしくは魔法で強化された武器によるものだ。

 

「それ、カラミティ・メアリぽん?」

「よく知ってるね」

「ファヴのデータにあったぽん」

 

 チャキ、と頭の後ろで金属がこすれる音が聞こえた。

 集まっていた、ざわつく気配がさらに遠巻きになるのを察する。

 

「ようやくお出ましかい、スノーホワイト?」

「貴女がメールの差出人?」

 

 声に振り向くことなく、物怖じもせずに返すスノーホワイト。

 

「その関係者、とだけ言っておこうかね」

「なら、河岸を変えようか」

「乗った」

 

 言うや否や、スノーホワイトはその場から跳び上がった。

 

 雑居ビルの屋上へと着地し、さらに遠く、遠くへと跳び、人気のない鉄塔へと辿り着く。

 背後の人物もまた、同じように鉄塔へと立った。

 

「話してもらってもいい? 今回の事の顛末を」

「オーケイだ、スノーホワイト」

 

 スノーホワイトは振り返り、カラミティ・メアリと対峙した。




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